医療者にありがちなAED使用法の勘違い(充電中の圧迫)


AEDの解析とショックの間の充電中に胸骨圧迫を行うことは危険です。

なに言っているの? あたりまえじゃない? と思われる方は、ここでページを閉じてください。この先を読む必要はありません。

おそらく市民救助者の方の大半は、上記の点を正しく理解しているはずです。

しかし、なぜか医療従事者の中には、AEDの充電中に少しでも胸骨圧迫を行うことが正しい、と勘違いしている人が少なからずいるのです、そこで、このような記事を書かせてもらいました。

この勘違いの原因は、AHA の BLSプロバイダーコース で使われているDVDにあります。

AED使用に関するデモ映像の中で、心リズム解析のためにいったん患者から離れたのに、充電の最中に胸骨圧迫を再開している場面が描かれているのです。

さらにはDVDのナレーターの解説として、下記のような言葉が入っています。

「この圧迫担当者は、AEDの充電時間すら無駄にせず、数回、圧迫を行っています。これはとても重要なことです。」

これが受講者を混乱させ、誤解を生じさせている原因です。

さらに悪いことにインストラクターの中にも、これを真に受けて、「DVDのようにAED充電の間、少しでも圧迫するように」と指導し、実際に練習時にもそうさせている指導員がいる(らしい)ということも問題を増長しているようです。

しかし、結論から言います。

日本のAEDは、充電中に胸骨圧迫をしちゃダメです。

じゃ、AHAのDVDが間違っているのか? というと、そういうわけでもありません。

先ほどのナレーターの言葉には、前置きがあります。画面に表示されるクローズド・キャプションが途中で切れているので分かりづらいですが、つなげるとこのような一文になります。

また、AEDの指示に従うことも大切です。この圧迫担当者は、AEDの充電時間すら無駄にせず、数回、圧迫を行っています。これはとても重要なことです。」

つまり、この場面は、とある固有のAEDが充電中に圧迫するように指示を出したので、それに従って行動した、という場面なのです。

一般論の話ではありません。米国には、充電中に圧迫を指示するようなAEDが、数ある中の一つとして存在するということです。

参考まで、英語の原文では、このように言っています。

“And it’s also important to follow your device’s prompts. You may have noticed there that the compressor took advantage of the time the device was charging to deliver a few crucial compressions.”

言うまでもなく、AED操作の基本は、音声メッセージに従って行動することです。これはBLSプロバイダーコースであっても同じです。

BLSプロバイダーマニュアルG2015 の 35ページにはっきり書かれています。

「聞こえてくるAEDの指示に必ず従うこと」

そして、2018年現在、日本国内で承認されているAEDの中で、充電中に圧迫を再開するように指示を出す装置は存在しません。

ですから、今の日本ではAEDの充電中に少しでも胸骨圧迫を行なうように、という指導は適切ではない、ということになります。

この先、日本でもそのような機種が承認される可能性はありますが、現時点は少なくともありませんし、米国においてもすべての機種がそうだというわけではなく、あくまでも個別のAEDの指示としてそう言われたのであれば、それに従えというだけの話です。

このあたりはDVDの訳語が不親切なので、インストラクターが正しく整理して伝え直す必要がある部分と言えるでしょう。難しくはありません。「とにかく音声メッセージに従って下さい」とテキストに書いてあるとおりに伝えればいいだけです。

それでは、実際のところ、日本国内において、AEDの充電中に(指示もないのに勝手に)胸骨圧迫を行ったとしたらどうなるかというと、胸骨圧迫の刺激を「体動あり」と検出して充電がキャンセルされる可能性があります。

つまり、ショックが必要な心電図波形なのに、ショックができないという事態になりえるのです。

ご存知のように除細動は1分遅れると、助かる可能性が10%近く低下すると言われています。

AEDの指示を無視して勝手なことをして、それが救命の可能性を下げたということになったら、、、、


あくまでもアメリカ心臓協会のプログラムは、米国のものですから、社会環境や通念の違いをきちんと埋めてフォローアップするのが日本人インストラクターの役割です。

二次救命処置(ACLS)における手動式除細動器の充電中の圧迫とは、条件が違いますので、この点を混同しないように、きちんと日本の法的側面や機器としてのAEDの使用説明書にも習熟しておくことが必要でしょう。

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