インストラクターの仕事は、学習環境を整えること【会場設営編】

前回は、学習環境を整えるのがインストラクターの仕事であると書きました。

特にビデオ学習が中心に据えられているAHA講習では、それは顕著です。

インストラクターになると、うまく教えようと意気込んで準備をしてくる新人インストラクターさんが多いですが、その多くは空回りに終わります。

AHA講習はビデオベースです。つまり、教える主体はDVDであり、学習者はビデオを見て自己学習しており、ビデオに合わせて自己練習をしているというのが基本的な図式になっています。

インストラクターは、それをサポートするに過ぎません。

ここのメインとサブの関係性をきちんと理解していないと、一生懸命がんばってはいるけど、方向性が違うよ、ということになりがちです。

逆にこのことをきちんとわかっていると、会場セッティングがいかに重要かという認識が変わってくると思いませんか?

会場設営は、前準備という脇役的な位置づけではなく、人間のインストラクターが行なうべき最大の業務なのです。

受講者の導線を考える

プロジェクター投影する場合の照明の調整については前回書きました。

それ以外に注意するべきことは、まずは受講者の導線でしょうか。

BLSのように座席とマネキンの間を行ったり来たりする場合、その動きはスムーズでしょうか?

マネキンの前に椅子を配置するだけなら問題はないかもしれません。

しかしそれでは受講者がテキストを開いて置く場所がありません。

講習中にテキストを参照することを推奨しているAHA講習では、テキストを気軽にテキストを開ける環境が望ましいですね。またメモを取るにもテーブルがあったほうが親切です。

そこで、マネキンと椅子の間にテーブルを配置した場合、テーブルの間に十分な隙間を取らないと、練習ごとの受講者の移動が滞り、これも学習に集中するのを妨げる要因となります。

さらにはマネキンとマネキンの間には十分なスペースがあるでしょうか?

インストラクターが指導に入っても前のDVD画面のじゃまにならないスペースはありますか?

見ながら練習を考えると、画面の高さが高すぎると見づらいですし、画面に近すぎても端っこの人は画面が薄くて見づらくなります。

受講者を戸惑わせない先回りの配慮を

さらに成人学習指導の柱である、モチベーションを高める働きかけを考えると、会場設営にはさらに注意が必要となります。

一言で言えば、快適に気持ち良くストレスなく学べるような配慮が大切ということです。受講者をとまどわせないこと、と言い換えてもいいかもしれません。

受講者が会場に入って来た時のことを想像してみてください。

第一印象って大事ですよね。

これから学ぶぞ! という意欲がゲンナリすることがないように、むしろ来てよかったという期待感を高めるような準備ができているでしょうか?

インストラクターたちがバタバタと準備をしていて、来たことにきづいてくれないとか、最悪ですね。会場に入ったはいいけど、どこに座ったらいいのか、荷物をどこにおけばいいのかなどわからず、キョロキョロしている。ありがちな光景です。

ですから、会場準備が整うまでは、受講者を会場に入れないということもプロに徹するためには必要なことかもしれません。

そのためには受付開始時間の明示や、早く着いた場合の待機場所の案内など、受講者への事前案内もインストラクションの一環に含まれていることには意味があります。(インストラクターマニュアルに受講者へのサンプルレターが載ってるのはこういう意味です )

受講者がいちばんとまどいを感じるのは会場に入ったときです。そのとき、会場がきちんと整っていて、インストラクターが笑顔で迎えてくれて、先回りした案内があれば、学習のモチベーションを良好に保つことができるでしょう。

そう考えると、オアシスとも呼ばれている茶菓子類をどこに置くか、アシスタントインストラクターの居場所をどこに設置するかという点でも取るべき配慮が見えてきます。

受講者が入り口から入ってきて、荷物をおいて席に着く。そして休憩時間にお菓子を取りに行くという導線を考えた時に、それを邪魔するように物がおかれていたり、インストラクターの席が設置されているようなことはありませんか?

こういった配慮のもと、はじめての会場であってもきちんと会場設営し、他のインストラクターをコントロールできるのが、いわゆるディレクターに求められる能力です。

インストラクターの立ち居振る舞い

学習環境を整えるはずのインストラクターが学習環境を邪魔しているケースは時々見られます。例えばDVD視聴中に後ろの方でインストラクターが次の打ち合わせをしていて声がうるさいとか。

インストラクター同士の私語もそうですよね。

例えば、私たちもお店の中でショップ店員どうしが仕事と関係ない私語をしていると、客としては気に障りますよね。それと同じです。受講料を払って学びに来ているわけですから、インストラクターに対してはプロフェッショナリズムを期待しています。それは指導内容だけではなくカスタマーサービスとしてもプロであることを求めています。

顧客サービスのプロであることを。

これが指導内容、指導方法云々の前にインストラクターに求められていることなのです。

この部分は新人だから経験不足でできないとか、そういう次元の話ではないのはお分かり頂けると思います。要はインストラクターとしての態度の問題、受講者という存在そのものをどう考えているか、という基本姿勢の部分なのです。

インストラクターに医療従事者が多いことから、とかくAHA講習はこの部分が弱い傾向があるかも知れません。

 

顧客目線で物事を考えること

 

そんな視点の切り替えで、講習会は設営も、その在り方も大きく変わると思います。

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