インストラクターを目指す方へ一覧

デブリーフィングとフィードバック、指導法の違い

BLSやACLSなど、救命法指導のための技法として、フィードバックとデブリーフィングという手法がよく知られています。

どちらも、受講者の行動を修正するという点では同じですが、中身を考えると、まったく違うロジックで成り立っています。

人が考え、行動し、結果を出すプロセス

まず、人の行動【Action:アクション】に着目した場合、なぜそのように行動するに至ったかという考え方【Frame:フレーム】があります。このフレームつまり考え方の枠組みはその人個人の頭の中にあるものですから、他の人からは見えません。

そして、アクションによって 【Results:結果】 が目に見える形で現れます。


例えば胸骨圧迫で考えてみましょう。

胸を押すという【アクション】によって「胸郭が少なくとも5cm沈み、それが1分間に100~120回のテンポで繰り返され、その都度、胸壁が完全にもとの高さまで戻る」という【結果】が得られる、ということです。

私たちは、インストラクターとして指導するときは、胸の沈み具合、戻り具合、テンポといった【結果】を見て、それで受講者の【アクション】の良し悪しを判断していると言えます。

フィードバック技法

このとき、結果として「圧迫が浅い」ことを観察した場合、インストラクターはどうするでしょうか?

受講者のアクションに対して「もっと強く」と指示をします。そして、適切な強さになったら、「OK、その力をキープして」と現状維持の指示を送ります。

こうして、【結果】を見ながら、その原因となっている【アクション】に対して直接働きかけ、調整していくわけですね。

これが、フィードバックです。なぜうまくできなかったか、など理由はどうでもよく、とにかく結果を伴うようなアクションに変われば良いという考え方。

きわめてシンプルです。言い方を変えると、ある意味、短絡的な、即物的な指導法ともいえます。

デブリーフィング技法

それに対して、デブリーフィングという指導技法では、【アクション】ではなく、【フレーム】に働きかけます。行動を決定する思考過程を問題とするのです。

具体的にはどうするかというと、例えば、胸骨圧迫が浅いという【結果】を観察したなら、受講者に問いかけます。

「圧迫の深さはどれくらいでしたっけ?」
「今、5cm押せていると思いますか? そう、浅いですね。」
「それじゃ、どうしますか?」

など。まず「胸の沈みが浅い」という問題点に気づかせるような働きかけをします。そのためには、正しい知識を持っている必要があり、それと目の前で沈むマネキンの胸郭の動きを比較して、「浅い」という認識を保つ必要があります。

ついで、浅いという問題を解決するにはどうしたらいいかを考えてもらいます。浅い、だからもっと強く押せばいいんだ、というのが解決です。

受講者の頭の中にある知識を探り、受講者は動作をしながら何を観察していたか、そしてその情報をどう処理して、今の動作につながっているのか? そんな自分の行動のプロセスを手繰っていく作業がデブリーフィングです。

その結果、受講者は自分の持っている知識と行動のつながりについて内省し、自ら考え、行動を正していくのです。

これは、【結果】に対して、頭の中の情報処理の仕方、つまり【フレーム】に働きかけていると言えるのです。

フィードバック vs デブリーフィング

さて、胸骨圧迫の深さを修正するためには、フィードバックでもデブリーフィングでも、どちらでも目的は達成できることはわかりました。

しかし、胸骨圧迫の指導には、どちらが適しているのでしょうか?

おそらくそれは、フィードバックです。

場面を想像してみてください。フィードバックなら、「もっと強く!」と一声かければ、練習している最中に手を停めさせることなく、あっという間に修正できます。

それに対して対話で進めるデブリーフィングでは、正直、上記を読んでいて、めんどくさいなと感じませんでしたか? そうなんです。受講者の動作は止まってしまいますし、もうちょっと深く押せばいいという単純なのことを、いくつもステップも経て回りくどく教えるのは、時間の無駄、かもしれません。

つまり、単純な運動スキルで構成されるテクニカル・スキルについては、フィードバック技法のほうが効率がよく実用的と言えるでしょう。

デブリーフィングが適する場面


しかし、もっと複雑な動作を伴う一連の流れや、状況判断によって対応が違ってくるような行動については、フィードバックは不適切です。

例えば、BLSの中の呼吸確認。

この場合、インストラクターから見える受講者のアクションは「5秒以上10秒以内という時間枠の中で、マネキンの胸を見ている」という動作です。そしてその結果として、胸骨圧迫を開始すれば、呼吸確認をちゃんとしていた解釈します。

しかし、受講者が本当に呼吸の有無をチェックしていたかどうかは、その動作だけではわかりません。インストラクターに言われるがままに、操り人形のように約10秒間マネキンの胸元に顔を向けて、その10秒後に胸を押すという動作に移っただけ、かもしれないからです。(これを「文脈理解による行動」ともいいます。後日、これをテーマに書きたいと思います)

この行動だけでは、「胸の動きがなかったから、呼吸なしと解釈して、胸骨圧迫が必要性だと判断してCPRを始める」という受講者の思考(フレーム)は読み取れません。

BLS講習の中で、呼吸確認が短すぎる受講者は多いですが、それを「少なくとも5秒は胸を見て!」とフィードバックで返して反復練習させても、呼吸確認というスキルの本質的なものごとはなにも伝えられていない、というのはおわかりいただけると思います。【アクション】にしか働きかけていないからです。

このような場合は、デブリーフィングの技法で、思考回路つまり【フレーム】に働きかける指導が望ましいというのはご理解いただけるでしょうか?

胸を10秒見るという行動よりも、

「生きている人間は呼吸をしているはずだ。胸の動きを見れば、それがわかる。でも呼吸は正常でも4-5秒に1回なのだから、5秒から10秒は見なくて判断できない。さて、いま9秒胸を見たけど、明らかな呼吸運動はなかった。つまり、この人は呼吸をしていない。さっき反応がないことは確認した。反応なし+呼吸なし、だから、胸骨圧迫を始めるんだ」

という頭の中のフレームを作り上げることが、この場合の学習目標なのです。

そして、そのフレームに基づいたアクションができること。

デブリーフィングとフィードバックの使い分け


胸骨圧迫と呼吸確認というのは、ひとつの例ですが、このようにBLS講習の中でも、動作に分けて、その特性に合わせて指導方法を変えていく必要があります。

単純化して言うなら、シンプルな運動スキルはフィードバック。そしてそれらを組み合わせる複合的な動作や、認知スキルや態度スキルに関しては、デブリーフィング、というのがざっくりとした使い分けです。

それとあとは講習時間内での配分でしょうか。

フィードバックに比べてデブリーフィングは時間がかかるため、講習時間内にすべてを収めるためには、本来はデブリーフィングで進めるべき指導を、やむをえずフィードバックに置き換えざるを得ない場合もあるかしれません。

救命法の指導員/インストラクターとして目指すところは、規定の講習をこなす、ことではなく、受講者ができるようになることです。ここに異論はないはず。

で、あれば、受講者の行動、さらには、実行性という現実的なアウトカムに向けて、講習自体や指導法を見直し、チューンナップしていきたいものです。


インストラクターの仕事は、学習環境を整えること【会場設営編】

前回は、学習環境を整えるのがインストラクターの仕事であると書きました。

特にビデオ学習が中心に据えられているAHA講習では、それは顕著です。

インストラクターになると、うまく教えようと意気込んで準備をしてくる新人インストラクターさんが多いですが、その多くは空回りに終わります。

AHA講習はビデオベースです。つまり、教える主体はDVDであり、学習者はビデオを見て自己学習しており、ビデオに合わせて自己練習をしているというのが基本的な図式になっています。

インストラクターは、それをサポートするに過ぎません。

ここのメインとサブの関係性をきちんと理解していないと、一生懸命がんばってはいるけど、方向性が違うよ、ということになりがちです。

逆にこのことをきちんとわかっていると、会場セッティングがいかに重要かという認識が変わってくると思いませんか?

会場設営は、前準備という脇役的な位置づけではなく、人間のインストラクターが行なうべき最大の業務なのです。

受講者の導線を考える

プロジェクター投影する場合の照明の調整については前回書きました。

それ以外に注意するべきことは、まずは受講者の導線でしょうか。

BLSのように座席とマネキンの間を行ったり来たりする場合、その動きはスムーズでしょうか?

マネキンの前に椅子を配置するだけなら問題はないかもしれません。

しかしそれでは受講者がテキストを開いて置く場所がありません。

講習中にテキストを参照することを推奨しているAHA講習では、テキストを気軽にテキストを開ける環境が望ましいですね。またメモを取るにもテーブルがあったほうが親切です。

そこで、マネキンと椅子の間にテーブルを配置した場合、テーブルの間に十分な隙間を取らないと、練習ごとの受講者の移動が滞り、これも学習に集中するのを妨げる要因となります。

さらにはマネキンとマネキンの間には十分なスペースがあるでしょうか?

インストラクターが指導に入っても前のDVD画面のじゃまにならないスペースはありますか?

見ながら練習を考えると、画面の高さが高すぎると見づらいですし、画面に近すぎても端っこの人は画面が薄くて見づらくなります。

受講者を戸惑わせない先回りの配慮を

さらに成人学習指導の柱である、モチベーションを高める働きかけを考えると、会場設営にはさらに注意が必要となります。

一言で言えば、快適に気持ち良くストレスなく学べるような配慮が大切ということです。受講者をとまどわせないこと、と言い換えてもいいかもしれません。

受講者が会場に入って来た時のことを想像してみてください。

第一印象って大事ですよね。

これから学ぶぞ! という意欲がゲンナリすることがないように、むしろ来てよかったという期待感を高めるような準備ができているでしょうか?

インストラクターたちがバタバタと準備をしていて、来たことにきづいてくれないとか、最悪ですね。会場に入ったはいいけど、どこに座ったらいいのか、荷物をどこにおけばいいのかなどわからず、キョロキョロしている。ありがちな光景です。

ですから、会場準備が整うまでは、受講者を会場に入れないということもプロに徹するためには必要なことかもしれません。

そのためには受付開始時間の明示や、早く着いた場合の待機場所の案内など、受講者への事前案内もインストラクションの一環に含まれていることには意味があります。(インストラクターマニュアルに受講者へのサンプルレターが載ってるのはこういう意味です )

受講者がいちばんとまどいを感じるのは会場に入ったときです。そのとき、会場がきちんと整っていて、インストラクターが笑顔で迎えてくれて、先回りした案内があれば、学習のモチベーションを良好に保つことができるでしょう。

そう考えると、オアシスとも呼ばれている茶菓子類をどこに置くか、アシスタントインストラクターの居場所をどこに設置するかという点でも取るべき配慮が見えてきます。

受講者が入り口から入ってきて、荷物をおいて席に着く。そして休憩時間にお菓子を取りに行くという導線を考えた時に、それを邪魔するように物がおかれていたり、インストラクターの席が設置されているようなことはありませんか?

こういった配慮のもと、はじめての会場であってもきちんと会場設営し、他のインストラクターをコントロールできるのが、いわゆるディレクターに求められる能力です。

インストラクターの立ち居振る舞い

学習環境を整えるはずのインストラクターが学習環境を邪魔しているケースは時々見られます。例えばDVD視聴中に後ろの方でインストラクターが次の打ち合わせをしていて声がうるさいとか。

インストラクター同士の私語もそうですよね。

例えば、私たちもお店の中でショップ店員どうしが仕事と関係ない私語をしていると、客としては気に障りますよね。それと同じです。受講料を払って学びに来ているわけですから、インストラクターに対してはプロフェッショナリズムを期待しています。それは指導内容だけではなくカスタマーサービスとしてもプロであることを求めています。

顧客サービスのプロであることを。

これが指導内容、指導方法云々の前にインストラクターに求められていることなのです。

この部分は新人だから経験不足でできないとか、そういう次元の話ではないのはお分かり頂けると思います。要はインストラクターとしての態度の問題、受講者という存在そのものをどう考えているか、という基本姿勢の部分なのです。

インストラクターに医療従事者が多いことから、とかくAHA講習はこの部分が弱い傾向があるかも知れません。

 

顧客目線で物事を考えること

 

そんな視点の切り替えで、講習会は設営も、その在り方も大きく変わると思います。


インストラクターの仕事は、学習環境を整えること【DVD操作編】

今日は、これからインストラクターを目指す人や、新人インストラクターさん向けに指導のコツを書いてみようと思います。

 

学習者は自ら学ぶ存在

 

これが成人学習の基本です。

ですから、インストラクターは教えるのではなく、学ぶのを支援する存在です。

特にアメリカ心臓協会の講習の多くはDVD教材が充実しています。

会場でDVDを見ることは、言い換えれば、受講者はDVD教材を通して自己学習を進めている、とも言えます。

ですから、インストラクターは、DVD視聴を妨げないようにし、そこに集中させることに神経を注ぎます。

つまり、インストラクターコースで教わるように、学習を阻害するものを排除するのがインストラクターの仕事。

そして、それは会場設営の段階から始まっているのです。

 

例えば、プロジェクターにDVDを投影する場合は、どのような点に注意しますか?

プロジェクターを使う場合は、部屋の照明の具合にもこだわりたいですよね。白っちゃけて見づらいということがないように。

会場設営の際には、部屋の照明の消え具合を確認して、投影位置を決める必要があります。

また照明のオンオフが必要なら、誰が調整するのか?

自分ひとりしかいない場合は、映像操作をしながら、照明のオンオフができるような動線を考えた会場配置が必要かもしれません。

 

 

また、受講者を画面に集中させたいと考えたら、上の画面はどうでしょうか?

目障りなものがいっぱい表示されていませんか?

パソコンのツールバーとか、DVDソフトのコントロールパネルとか。

細かい点ですが、これらも受講者の注意を削ぐ要因のひとつです。

DVD再生ソフトもPowerPointも、全画面モードというのが必ずあります。

どう考えても、こちらの画面の方がスッキリと見やすいですよね。

 

 

また、パソコンのDVD再生ソフトを使う場合、マウスで一時停止をしようとすると、余計なツールバーがでてきてしまって、チカチカとうるさい感じになります。

これを解消するためには、DVD再生ソフトのショートカット機能を使うのが正解です。

これはソフトによって違いますが、たいていのDVD再生ソフトは、スペースキーで再生/一時停止をコントロールできるようになっています。マウスを使わずスマートに画面操作をすること。

こんなパソコン操作に習熟しておくことも、受講者にストレスを与えることなく、学習に集中してもらうコツと言えます。

いかにうまく教えようとか、そんな方向にばかり気を取られがちなのが、新人インストラクターさんの特徴。

教える、という以前に、学習を阻害しないように、インストラクター自身が学習阻害要因にならないように、というところから見つめ直したほうがいいでしょう。

 

スマートにかっこよく、いきましょう。


AHAインストラクターを目指す前に

アメリカ心臓協会(AHA)のインストラクターになりたい!

そんな相談をよく受けます。

BLS横浜の講習を受講した上でそう考えてくださる方もいれば、ネット検索等でホームページに行き着いて、メールをくださる方もいます。

BLS横浜では、インストラクターになりたいという希望があれば、まずはBLS横浜の講習に見学等にいらして下さいとご案内しています。

そして、BLS横浜での講習のスタイルを知って頂き、その上で、個別にお話をさせていただき、必要があればインストラクターコースを企画、参加いただくようにしています。(BLS横浜では、必要な方がいれば、その都度企画するオンデマンドの個別講習に近い形でインストラクターコースを提供しています)

AHA Instructor is Why.

インストラクターコース受講希望者に個別面談で必ず尋ねるのは、

 

AHAインストラクターになってなにをしたいか?

 

です。

このビジョンが、

  • 本当にAHAインストラクターになることで実現できるのか?
  • そして、その具体的な可能性はどうか?

という点を、一緒に検討します。何事にもメリット/デメリットがあります、相応の妥当性があり、双方の合意が得られれば、インストラクターコースにご案内しています。

しかし、そこまでたどり着くのはかなり稀な話で、多くの場合は、「AHAインストラクターになる必要はない」という結論で、白紙に戻るケースが多いです。

その理由は、インストラクター志望者の、AHAインストラクターに対する理解や認識が不十分であり、実像を理解していないというのがほとんどです。

まず、ありがちな誤解は、AHAインストラクター資格は、ボランティア講習をするための資格ではない、という点です。

AHAインストラクターはプロの資格

AHAインストラクターは、米国労務省の職業安全衛生局OSHAの公認資格を発行する権限を持った救命法指導のプロフェッショナルです。

職業上の責務を負ったプロの職業人に対して、救命スキルを指導し、その技術認証を与え、資格証を発行するプロフェッショナルがAHAインストラクターです。

ご存知のとおり、アメリカ心臓協会講習のほとんどは有償です。それも決して安い金額ではありません。

このように対価を頂いてプロとして活動する職業資格とも言えます。

ですから、公務員のような副業・兼業が認められない立場の方に、AHAインストラクターは向きません。

そして、受講対象は対価を払って資格認証を受ける必要性がある人ですから、一般市民向けではありません。

一般市民向けの普及啓蒙活動を行うだけでしたら、AHAインストラクター資格は不要です。

AHAではファミリーフレンズCPRというプログラムがありますが、これを開催するだけなら、インストラクター資格は不要で、DVDを買えば誰でも開催可能です。

日本国内のAHA-ECCプログラム展開を理解する

もう一点の落とし穴は、日本国内のAHA講習を展開しているのは、AHA本部ではなく、国際トレーニングセンター(ITC)と呼ばれる活動単位であるという点です。

アメリカ心臓協会の講習は、日本国内ではAHA本部直轄での運営はされていません。

ある意味、フランチャイズのようなもので、日本国内の既存団体(NPO法人、一般社団法人、任意団体、株式会社、医療法人等)が米国AHAと提携して、講習実務を展開しています。

運営母体はAHAというよりは、あくまでも日本国内のそれぞれの法人組織なのです。

ですから、それぞれの活動母体(トレーニングセンター)によって運営方針は違います。

受講料や受講資格(ACLS受講にBLS資格が必要か不要か、など)が異なるのはそのためです。

当然、インストラクターになるための条件や、インストラクターになった後の活動範囲や権限も異なります。

インストラクターになってどんな活動展開をしたいのか?

それによって、インストラクターとして提携する活動母体(トレーニングセンター)を吟味し、選ぶことが重要です。

AHAインストラクターになる前に十分なリサーチを

AHAインストラクターを目指す方には下記の点を十分に調べましょう。

1.日本国内にはいくつの活動母体(トレーニングセンター)があるか?
2.それぞれのトレーニングセンターの特色は?
3.トレーニングセンターごとのインストラクターになるための条件や受講料の違い

上記の点を把握した上で、

1.自分がAHAインストラクターになりたいと考えたのはなぜか?
2.インストラクターになってなにをしたいのか?
3.AHAインストラクターになることでそれを実現できるのか?
4.自分の目的にあったトレーニングセンターはどこか?

という点と合わせて熟考し、事前に各トレーニングセンターや活動拠点に問い合わせをしたり、見学に行ったりして、十分な準備をして臨むことを強くおすすめします。

経費と時間をかけてAHAインストラクター資格を取得しても、2年後の資格更新を迎えずにフェードアウトしていく人が少なくないのが現状です。

だからこそ、BLS横浜では、安易にインストラクターになることを勧めませんし、希望者がいたとしても、十分なコンサルタントをした上で、受け入れを決定しています。

入り口に立つ前の十分なリサーチと、自身の目的・目標の吟味が重要です。


医療者向けBLS講習と、市民向け心肺蘇生法講習は違います

BLS横浜は、心肺蘇生法教育に関しては下記の3つのジャンルの講習を展開しています。

・一般市民向け
・業務上の対応責務がある市民向け
・医療従事者向け

一言に心肺蘇生法とかCPRと言っても、こうした3つの区分があり、それぞれ内容や教え方は違っています。

しかし、日本国内の一般的な救命法普及団体の動向を見ると、医療者向けと市民向けで団体そのもののカラーというか、対応領域がはっきり別れていて、市民向け講習もやりつつ、医療従事者向けの講習もしているというところは多くないように思います。

例えば、日本赤十字社や消防庁、MFAやEFRのプログラムは、一般市民もしくは対応責務のある市民向けのみで、医療従事者レベルの講習は展開していません。

逆に日本救急医学会のICLSやBLSは、医療従事者を前提としたものであり、市民向け教育は一切行っていません。

またアメリカ心臓協会(AHA)の活動拠点でも、市民救助者向けのハートセイバーコースや、一般市民向けのファミリー&フレンズ講習をレギュラー開催しているところは多くはありません。

 

もともと日本国内の市民向け救命講習のみを手がけている団体やインストラクターはいいのですが、日頃、医療従事者相手の講習をメインで指導している人が、たまに市民向け講習を依頼された場合に、いろいろ問題が起こりがちです。

医療従事者向け講習と、市民向け講習は違う、という認識と理解の問題なのですが、ややこしいところなので、整理しておきたいと思います。

1.市民向け講習では、脈拍触知は教えない

市民向けのCPR開始の判断は、「反応なし+呼吸なし or 死戦期呼吸」です。息をしていなければ循環も停まっていると考えます。ゆえに「補助呼吸 Rescue Breathing」という概念はありません。例えば溺水などで呼吸は停まったけど、まだ心臓は動いているという場合であっても、市民には胸骨圧迫をするように教えています。

この点、医療従事者は違和感を感じるかもしれませんが、考えてみれば、無脈性電気活動(PEA)は、血圧が低すぎるだけで心臓が動いているという状況でも、現に胸骨圧迫はしているわけですから、大きな問題ではありません。

2.圧迫の深さは6cmを越えない、ということは教えない

これは医療従事者向け講習であっても同じなのですが、ガイドラインに書いてあるからと言って、「6センチを越えるな」という指導はむやみには行いません。JRCガイドライン準拠では「約5cm」、AHAガイドライン準拠では「少なくとも5cm」とだけ指導します。

5cm以上かつ6cm未満と言われて、この幅1センチを正確に押せる人がいるか、という話です。そして6センチを越えるなと言われたら、人間心理としてどうしても浅くなります。強すぎる害より、弱すぎる害の方が問題ということで、指導書レベルでは、フィードバック装置を使わない限りは6センチを越えないという指導は行わないことになっています。

3.AEDの充電中に胸骨圧迫するのはNG

病院内で使う手動式除細動器の場合、心電図の解析後に患者から手を離した後、充電中のわずかな時間でも胸骨圧迫を再開するように強く推奨されていて、これは病院の現場でもだいぶ浸透してきています。

しかし AEDは別 です。この点は、ACLSプロバイダーマニュアルG2015の96ページにもはっきり書かれていますが、AEDは製品仕様に従うことが前提の道具ですから、AEDから胸骨圧迫再開の指示があるまでは触れてはいけません。

今現在、日本で認可されているAEDで、充電中に胸骨圧迫をするように促す仕様の機械はありませんし、胸骨圧迫を自発的な体動と誤検出して充電がキャンセルされるリスクがありますので、少なくとも市民向け講習や、医療者向けであっても不特定多数向けの一般講習でこのように教えるのは不適切です。

4.AEDでショック後は、ただちに圧迫再開ではなく、音声を聴くように指導する

これは前述のこととも関係しますが、AEDはその設計仕様に従って、つまり音声メッセージに従うことで正しく使用できる、というコンセプトの道具です。機種ごとに挙動が違いますから、講習で教えるべきことは、「メッセージを一生懸命聞いて、それに従う」という態度に関するスキルと言えます。

先回りして行動することを教えるのは、正しい態度とはいえません。

医学的な判断からすると、ショック後にただちに胸骨圧迫を開始するのは意味があることですが、本来は医師以外が使えない危険な道具を市民が使っていいという前提は「音声指示に従う」からこそ安全性が担保されているわけです、この点を尊重すべきです。

非常に稀ではありますが、日本では今でもG2000仕様の3回連続ショックするタイプのAEDが残っている可能性があります。ゆえに未知のAEDを使う可能性がある人向けの講習では、この点が特に重要です。

5.人工呼吸を省略してはいけない場合がある

市民向け救命講習と言えば、最近では、人工呼吸はまったく教えなかったり、指導したとしても「やらなくてもいいからね」と言った伝え方が多くなっているようです。しかし、このような指導スタンスは、見ず知らずの人を善意で助けるのが前提のバイスタンダーCPR講習にはいいのですが、例えば、幼稚園や保育園、小学校の教職員向け研修としては適切とは言えませんし、プールの監視員向けの救命講習では、間違いと言わざるを得ません。

子どもや溺水者など、低酸素による心停止が疑われるケースでは、胸骨圧迫のみを行っても、組織と細胞の酸素化は期待できません。血液に酸素を溶け込ませるための人工呼吸があるからこそ、胸骨圧迫の意味がでてくるからです。

人工呼吸の省略は、基本的にはCPR着手の心的障壁を減らすのが目的で、目の前で卒倒した成人傷病者にのみ適応されるということでスタートした概念です。これはバイスタンダーCPRの向上を目的としています。

ですから、保育士や学校教職員、プールの監視員などのような管理責任がある立場、つまり「バイスタンダーではない」人は、人工呼吸が心的障壁にならないように、きちんとしたバリアデバイスの準備と訓練をしておく必要があるということです。

このあたりの区別は講習会の導入の動機づけの部分でも、一般市民向け講習とは違ってくるはずです。

まとめ

以上、ざっと医療者向けBLS講習と市民向け救命講習の違いを中心に、指導員が注意すべき点をざっと取り上げてみました。

一般市民の受講者は、医師や看護師が教えてくれたことは、おそらく無条件で受け入れます。「お医者さんが言っていたんだから絶対に正しい」と信じ込みます。だからこそ、市民向け講習ほど慎重に取り組む必要がありますし、そこで市民にとっては不適切なことを教えてしまったり、誤解させてしまったら致命的です。

日頃医療従事者相手に教えているから、市民向けは簡単などと思っていたら大間違い。

指導員の力量としては、市民向け講習のほうが格段に難しく、高度な理解と指導力、対応力が求められるのです。

この他、今回は取り上げませんでしたが、日本版ガイドラインと米国版ガイドラインの違いも重要です。特に日頃、AHAインストラクターをしている人が、一般市民向けに教えるときに間違いやすい落とし穴もたくさんあります。

そういった意味で、国内で市民向け講習を手がける医療従事者インストラクターは、救急蘇生法の指針2015【市民用・解説編】 は必携、熟読の必要があるでしょう。日本国内の市民向け救命講習は、基本的にこの本を準拠として作られているという原本的な資料です。

BLS講習でもよく聞かれるようなQ&Aコーナーも充実しており、例えば「AEDの電気ショックって何ボルトくらい?」みたいな質問へのヒントも載っていて、読み物としても普通に勉強になります。


AED充電中の胸骨圧迫の是非 AHA-BLS2015

新しいG2015版BLSプロバイダーコースのDVDの中では、シナリオの中でAEDの充電中のわずかな時間でも胸骨圧迫を行うように指示している場面があります。
 
これは、G2010のACLSプロバイダーコースでも見られた場面なのですが、今回は明確な形でBLSコースにも入ってきました。
 
エビデンス的には明解で、G2010のBLSヘルスケアプロバイダーマニュアルでも書かれていたとおり、ショックの直前まで胸骨圧迫をしている方が自己心拍再開の可能性が有意に高いという論拠があります。
 
これは医学的には正しいです。
 
しかし、教育指導の上でどうするかは別問題。
 
日本で認可されているAEDの中には、充電中に胸骨圧迫を行うと、「体動を検知しました」ということで充電がキャンセルされる機種があります。
 
それにどのAEDも、解析のために「患者に触れないで下さい」というメッセージを流し、充電中に胸骨圧迫を指示する機種はありません。
 
ご存じの通り、医師が除細動をする時以外は、AEDの音声メッセージに従うからこそ、医師法違反が阻却されているという法論理があります。
 
ですから、いくら自己心拍再開の可能性が高いという医学的根拠があったとしても、日本国内で認可された医療機器としてのAEDの取扱説明書(添付文書)とその音声メッセージに従うというのが正解です。
 
医療機関内での職員研修で、院内に配備されているAEDが充電中に胸骨圧迫をしても問題ない機種であることが確認できている場合は別かもしれませんが、一般市民向け講習や、どのAEDを使うかわからない公募BLS講習では、充電中に圧迫するように指導するのは適切ではないでしょう。
 
 
この点は、AHA-BLSのDVDの中では日本事情は言及されていません。ビデオだけを見ると、誤解されかねない部分がありますが、BLSプロバイダーマニュアルのAED解説ページを参照すれば、「AEDの音声指示に従うこと」と明確に書かれています。
 
講習中は、この部分にはぜひ着目してほしいと思います。
 
 

 

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AEDトレーナー(FR-2)に充電式単三電池を使うアイデア

BLSやAED救命講習で使い勝手が良くて人気のAEDトレーナーFR2。

欠点は単2電池6本使用で重いのと、電池交換のコストがかさむこと。

そこでの一工夫として、単3電池を単2電池がわりに使えるスペーサーを活用して、充電できる単3型のニッケル水素電池を使用しています。

AED練習機にスペーサーをかませた充電式単3電池を使う

ニッケル水素電池といえば、かつてのSANYOのエネループが有名ですが、いまでは同等品で安いのがいろいろ出ています。写真のは Amazonのオリジナル の充電電池。

スペーサーは100円ショップで3つ入り108円で購入できます。(充電電池は100円ショップでも1本108円で買えますが、旧世代のニッケルカドミウム電池で、長期保存ができないのでAEDトレーナーにはあまり勧めません)

使用頻度が低いと元が取れない場合もあるかもしれませんが、ガンガンとAED講習をしている方にはおすすめです。

電池のスペーサーを使う場合は、写真のFR2の場合は、プラス電極の部分が電池ボックスのスプリングと接触不良になる場合があるので、その場合は、キッチン用のアルミホイルを小さく畳んだものを挟み込んでおくと解決します。

独立系のインストラクターの皆さん、参考にどうぞ。

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BLSマネキンが服を着ていないといけない理由

先日、BLS横浜の講習会に手伝いに来てくれたインストラクターの方に言われました。
 
「わざわざマネキンに服を着せているんですね!」と。
 

BLSマネキンには服を着せる必要がある

 
心肺蘇生法練習用マネキンを購入すると、専用の前開きのシャツがついてきます。
ただ、ジッパーの部分が壊れやすく、壊れたらそのまま使わなくなる=裸のままの状態で使用、ということが多いようです。
 
BLS横浜では、マネキン専用の服が壊れた後は、写真のようにお古の服を着せています。マネキンを並べると、みんな違う色とりどりの服を着ているものだから、パッと見で目立つんでしょうね。
 
さて、BLS横浜の心肺蘇生法講習で、きちんとマネキンに服を着せている理由ですが、ひとつはアメリカ心臓協会の講習開催基準で定められているからです。
 

ハートセイバーCPR AEDコースの必要機材準備リスト

 
これは対応義務のある職業人のためのハートセイバーCPR AEDコースのインストラクターマニュアルの必要機材リストの一部ですが、manikin with shirtと書かれています。
 
ただのマネキンではなく、「シャツを着た」という指定が付いているんですね。
 
これを基準として、BLS横浜の講習では、原則的にすべてのBLS系講習でマネキンと服はセットで考えています。
 
実は、主に医療従事者向けのBLSヘルスケアプロバイダーコースのインストラクターマニュアルでは、(シャツを着ている)マネキンという限定はされていません。
 
ただ、マネキンとしか書かれていないのです。
 
そこで、BLSヘルスケアプロバイダーコースしか開催しないトレーニングサイトでは、とかく衣服には無頓着になるのだと思います。
 
ハートセイバーコースであえて、服を着ていることが求められている理由ですが、医療者にとっては、AED使用の際に衣服をハサミで切るのはあたりまえのことですが、学校教職員や警備員、一般の方など、いわゆる市民救助者にとっては、見ず知らずの人を衣服をはだけるという動作は日常的なことではありません。
 
「本当に服を脱がせていいのか? 切っていいのか?」
 
この所作が心理的に障壁が大きいことは想像に固くありません。
 
そこで、CPRを開始するときやAEDを装着するときに、服をはだけるという動作を意図的に練習させているのです。
 
そんな意図を考えたら、たかが服一枚ですが、あるなしでは大きな違いですよね。
 
 
一般講習では、練習の簡便さとのバランスで前開きのベストを1枚着せているだけですが、警備員さん向け講習など、リアリティが求められる講習では、Tシャツを着せた上にベストを着せたり、より現実に近い設定にして行うこともあります。
 
その場合は、AED練習機に入れてあるハサミで、実際にTシャツを切ってもらう練習もしています。
 
やってみるとわかりますが、練習とはいえ、CPRをしている状態で、襟元からハサミで服を切ってもらうという体験は受講者にとってはインパクトが大きく、大抵の方がためらいを示します。
 
その様子を見ていると、練習とはいえ、服を着る体験というのが、現実の行動への期待を考えた時にはとても意味のある練習だと思います。
 
たかが服1枚ですが、救命法指導員の方は、再考してみてはいかがでしょうか?
 
 

 
 

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ポケットマスク人工呼吸、指導の動機付け(教育工学的視点から)

2010年版からBLSヘルスケアプロバイダーコースでは、口対口人工呼吸の練習がなくなりました。
 
BLS-HCPコースは、救命のプロのための一次救命処置講習です。
 
米国では労働安全衛生局(OSHA)の勧告で、業務上の蘇生では感染防護具を使うことを義務付けられています。そこで医療者レベルの教育では、練習するのはバッグマスクとポケットマスク(フェイスマスク)換気だけになってしまいました。
 
ただ、日本の医療現場では、ポケットマスクは知られていませんし、病院として用意しているところもほとんどないでしょう。
 
BLS-HCP講習で、初めてポケットマスクの存在を知ったという医療従事者も多いことと思います。
 

小児BLSマネキンとポケットマスク:成人用と小児用

 
米国で作られた講習DVDでは、ごくあたりまえのようにポケットマスクの練習が始まりますが、この点、日本では「医療従事者であっても知らない人が多い」という事情に合わせて、一歩踏み込んで説明しておいたほうがいいと思っています。
 
特に、見たこともなく、どこで使うのかもわからないポケットマスクの練習をさせるなら、教育工学の動機付けモデル(例えばARCSモデル)を考慮して、学ぶ意義は伝えるべきかと思います。
 
そこで、BLS横浜では、この写真のようなケースをお伝えしています。
 
 

AEDと共に配備されたポケットマスク
↑ 横浜市内の公民館に置かれていたAEDとポケットマスク

 
 
これは、とある公民館に設置されていたAEDの写真です。
 
赤いAED本体の上に、黄色と黒(青?)の物体が置かれているのが見えますか?
 
ポケットマスク、がきちんと用意されていたのでした。
 
このように、「病院では見たことないかもしれないけど、街中に設置されているAEDの中には、ポケットマスクが準備されている場合があるんですよ」とBLS講習の中で伝えることは大切かなと思っています。
 
なので、BLS横浜で開催するBLSヘルスケアプロバイダーコースやハートセイバーCPR AEDコースでは、AED本体だけではなく、収納ソフトケースも示して、「もし、街中で救命する機会があって、AEDといっしょにこんなケースがあったら、これだ! と思ってぜひ使ってくださいね」という話をしています。
 
 
 
BLSヘルスケアプロバイダーコースを受講に来る方の大半は、病院業務で活かすためと考えていますので、勤務先病院にポケットマスクがなければ、練習を行う意義について空虚になりがちです。
 
ですから、インストラクターは、「学習内容が自分にとってどのように役立つのか?」というARCSモデルの Relevance(関連性)を提示しつつ、学習を進めることは大切だと思っています。
 
 
さて、街中のAEDにポケットマスクが用意されているのは普通のことなのか、という話ですが、これはなんとも言えません。
 
AEDを購入ないしはリース契約をする際に、販売業者はさまざまなオプションを勧めてきます。服を切るためのハサミやタオルやカミソリをまとめたポーチや、予備のAEDパッドなど。
 
この中の一つとしてポケットマスクがあるわけですが、それを追加購入するかどうかを決めるのは、施設の設置者です。
 
知り合いのAED販売をしている人は、医療・福祉系施設に納入するときはポケットマスクの追加配備を強く勧めて、練習もしてもらっている、といっていましたが、一般の販売員がどこまでポケットマスクの重要性を認識しているかによって温度差はあると思います。
 
 
先ほどの写真の施設は、業者から勧められるままにポケットマスクを配備したというよりは、おそらく中身をきちんとわかった職員や第三者によって整備されたもののように思います。
 
というのは、AEDの脇にジップロックに入ったガーゼやタオルが見えますが、明らかに「手作りキット」だからです。
 
別の例として、とある小学校を訪問した際には、ポケットマスクだけではなく、バッグバルブマスクもAEDケースの上においてあって驚きましたが、ポケットマスクは、ケースに収めた状態ではなく、すぐに使えるように立体的に組み立てた状態でジップロックに入れてAEDとつなげておいてありました。
 
これは学校内でシミュレーションを行った際に、ポケットマスクの組み立てが時間がかかって現実的ではないと気づいたからだそうです。
 
 
AEDを配備するのはいいですが、その施設ごとの特性や訓練内容と合わせて、AED付属キットのアレンジを考えていくのは大切なことと思います。
 
 

 

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AEDトレーニングに適した練習機とは…

AED講習でAEDの「使い方を覚えさせる」ような教え方をしてはいけません。
 
AED操作で教えるべき唯一の動作は電源スイッチを入れること、ただそれだけです。
 
現在日本で認可されているAEDのほとんどは、蓋を開ければ自動でスイッチが入るタイプですから、もはや「技術」としてAEDを教える内容はなくなったといってもいいかもしれません。
 
AEDは機械の設計として、「音声指示に従って操作する」ことを前提として作られた機械です。つまり、訓練を受けていない人が使う道具である、という基本を思い出しましょう。
 
AED講習で教えるべきなのは、パッドの貼り方などではなく、「音声指示に従う」という「態度」なのですが、このことはあまり理解されていません。
 
施設職員向け研修などでは、施設に配備されたAEDの操作を「覚える」ような講習展開もありと思いますが、不特定多数向けの一般講習で、あるメーカーの特定機種の使い方を覚えさせても、受講者が遭遇するのが同じ機種とは限りません。
 
以前は「AEDは機種が違っても操作は大きくは変わりません」という点を強調していましたが、いろんなメーカーの様々な機種が認可されてきた今、直感的に使えるAEDだけではなくなってきていますので、分かった気になってAEDの指示を聞かずに操作することは危険です。
 
そこで大事なのは、音声指示を先回りしてでも早期除細動を目指すような指導ではなく、機種固有の音声メッセージをよく聞いて従う、という態度を醸成することです。原則論に立ち返るべき、とでもいいましょうか。
 
 
そう考えた時に、一般向けのAED訓練に使うAEDトレーナーの機種選定では、実機が存在するかどうかという点は重要な問題ではありません。
 
むしろ実機の存在しない練習用オンリーの機種の方がトレーニングには適しているといえるかもしれません。
 
 

 

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