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医療者向けBLS講習と、市民向け心肺蘇生法講習は違います

BLS横浜は、心肺蘇生法教育に関しては下記の3つのジャンルの講習を展開しています。

・一般市民向け
・業務上の対応責務がある市民向け
・医療従事者向け

一言に心肺蘇生法とかCPRと言っても、こうした3つの区分があり、それぞれ内容や教え方は違っています。

しかし、日本国内の一般的な救命法普及団体の動向を見ると、医療者向けと市民向けで団体そのもののカラーというか、対応領域がはっきり別れていて、市民向け講習もやりつつ、医療従事者向けの講習もしているというところは多くないように思います。

例えば、日本赤十字社や消防庁、MFAやEFRのプログラムは、一般市民もしくは対応責務のある市民向けのみで、医療従事者レベルの講習は展開していません。

逆に日本救急医学会のICLSやBLSは、医療従事者を前提としたものであり、市民向け教育は一切行っていません。

またアメリカ心臓協会(AHA)の活動拠点でも、市民救助者向けのハートセイバーコースや、一般市民向けのファミリー&フレンズ講習をレギュラー開催しているところは多くはありません。

 

もともと日本国内の市民向け救命講習のみを手がけている団体やインストラクターはいいのですが、日頃、医療従事者相手の講習をメインで指導している人が、たまに市民向け講習を依頼された場合に、いろいろ問題が起こりがちです。

医療従事者向け講習と、市民向け講習は違う、という認識と理解の問題なのですが、ややこしいところなので、整理しておきたいと思います。

1.市民向け講習では、脈拍触知は教えない

市民向けのCPR開始の判断は、「反応なし+呼吸なし or 死戦期呼吸」です。息をしていなければ循環も停まっていると考えます。ゆえに「補助呼吸 Rescue Breathing」という概念はありません。例えば溺水などで呼吸は停まったけど、まだ心臓は動いているという場合であっても、市民には胸骨圧迫をするように教えています。

この点、医療従事者は違和感を感じるかもしれませんが、考えてみれば、無脈性電気活動(PEA)は、血圧が低すぎるだけで心臓が動いているという状況でも、現に胸骨圧迫はしているわけですから、大きな問題ではありません。

2.圧迫の深さは6cmを越えない、ということは教えない

これは医療従事者向け講習であっても同じなのですが、ガイドラインに書いてあるからと言って、「6センチを越えるな」という指導はむやみには行いません。JRCガイドライン準拠では「約5cm」、AHAガイドライン準拠では「少なくとも5cm」とだけ指導します。

5cm以上かつ6cm未満と言われて、この幅1センチを正確に押せる人がいるか、という話です。そして6センチを越えるなと言われたら、人間心理としてどうしても浅くなります。強すぎる害より、弱すぎる害の方が問題ということで、指導書レベルでは、フィードバック装置を使わない限りは6センチを越えないという指導は行わないことになっています。

3.AEDの充電中に胸骨圧迫するのはNG

病院内で使う手動式除細動器の場合、心電図の解析後に患者から手を離した後、充電中のわずかな時間でも胸骨圧迫を再開するように強く推奨されていて、これは病院の現場でもだいぶ浸透してきています。

しかし AEDは別 です。この点は、ACLSプロバイダーマニュアルG2015の96ページにもはっきり書かれていますが、AEDは製品仕様に従うことが前提の道具ですから、AEDから胸骨圧迫再開の指示があるまでは触れてはいけません。

今現在、日本で認可されているAEDで、充電中に胸骨圧迫をするように促す仕様の機械はありませんし、胸骨圧迫を自発的な体動と誤検出して充電がキャンセルされるリスクがありますので、少なくとも市民向け講習や、医療者向けであっても不特定多数向けの一般講習でこのように教えるのは不適切です。

4.AEDでショック後は、ただちに圧迫再開ではなく、音声を聴くように指導する

これは前述のこととも関係しますが、AEDはその設計仕様に従って、つまり音声メッセージに従うことで正しく使用できる、というコンセプトの道具です。機種ごとに挙動が違いますから、講習で教えるべきことは、「メッセージを一生懸命聞いて、それに従う」という態度に関するスキルと言えます。

先回りして行動することを教えるのは、正しい態度とはいえません。

医学的な判断からすると、ショック後にただちに胸骨圧迫を開始するのは意味があることですが、本来は医師以外が使えない危険な道具を市民が使っていいという前提は「音声指示に従う」からこそ安全性が担保されているわけです、この点を尊重すべきです。

非常に稀ではありますが、日本では今でもG2000仕様の3回連続ショックするタイプのAEDが残っている可能性があります。ゆえに未知のAEDを使う可能性がある人向けの講習では、この点が特に重要です。

5.人工呼吸を省略してはいけない場合がある

市民向け救命講習と言えば、最近では、人工呼吸はまったく教えなかったり、指導したとしても「やらなくてもいいからね」と言った伝え方が多くなっているようです。しかし、このような指導スタンスは、見ず知らずの人を善意で助けるのが前提のバイスタンダーCPR講習にはいいのですが、例えば、幼稚園や保育園、小学校の教職員向け研修としては適切とは言えませんし、プールの監視員向けの救命講習では、間違いと言わざるを得ません。

子どもや溺水者など、低酸素による心停止が疑われるケースでは、胸骨圧迫のみを行っても、組織と細胞の酸素化は期待できません。血液に酸素を溶け込ませるための人工呼吸があるからこそ、胸骨圧迫の意味がでてくるからです。

人工呼吸の省略は、基本的にはCPR着手の心的障壁を減らすのが目的で、目の前で卒倒した成人傷病者にのみ適応されるということでスタートした概念です。これはバイスタンダーCPRの向上を目的としています。

ですから、保育士や学校教職員、プールの監視員などのような管理責任がある立場、つまり「バイスタンダーではない」人は、人工呼吸が心的障壁にならないように、きちんとしたバリアデバイスの準備と訓練をしておく必要があるということです。

このあたりの区別は講習会の導入の動機づけの部分でも、一般市民向け講習とは違ってくるはずです。

まとめ

以上、ざっと医療者向けBLS講習と市民向け救命講習の違いを中心に、指導員が注意すべき点をざっと取り上げてみました。

一般市民の受講者は、医師や看護師が教えてくれたことは、おそらく無条件で受け入れます。「お医者さんが言っていたんだから絶対に正しい」と信じ込みます。だからこそ、市民向け講習ほど慎重に取り組む必要がありますし、そこで市民にとっては不適切なことを教えてしまったり、誤解させてしまったら致命的です。

日頃医療従事者相手に教えているから、市民向けは簡単などと思っていたら大間違い。

指導員の力量としては、市民向け講習のほうが格段に難しく、高度な理解と指導力、対応力が求められるのです。

この他、今回は取り上げませんでしたが、日本版ガイドラインと米国版ガイドラインの違いも重要です。特に日頃、AHAインストラクターをしている人が、一般市民向けに教えるときに間違いやすい落とし穴もたくさんあります。

そういった意味で、国内で市民向け講習を手がける医療従事者インストラクターは、救急蘇生法の指針2015【市民用・解説編】 は必携、熟読の必要があるでしょう。日本国内の市民向け救命講習は、基本的にこの本を準拠として作られているという原本的な資料です。

BLS講習でもよく聞かれるようなQ&Aコーナーも充実しており、例えば「AEDの電気ショックって何ボルトくらい?」みたいな質問へのヒントも載っていて、読み物としても普通に勉強になります。


AED充電中の胸骨圧迫の是非 AHA-BLS2015

新しいG2015版BLSプロバイダーコースのDVDの中では、シナリオの中でAEDの充電中のわずかな時間でも胸骨圧迫を行うように指示している場面があります。
 
これは、G2010のACLSプロバイダーコースでも見られた場面なのですが、今回は明確な形でBLSコースにも入ってきました。
 
エビデンス的には明解で、G2010のBLSヘルスケアプロバイダーマニュアルでも書かれていたとおり、ショックの直前まで胸骨圧迫をしている方が自己心拍再開の可能性が有意に高いという論拠があります。
 
これは医学的には正しいです。
 
しかし、教育指導の上でどうするかは別問題。
 
日本で認可されているAEDの中には、充電中に胸骨圧迫を行うと、「体動を検知しました」ということで充電がキャンセルされる機種があります。
 
それにどのAEDも、解析のために「患者に触れないで下さい」というメッセージを流し、充電中に胸骨圧迫を指示する機種はありません。
 
ご存じの通り、医師が除細動をする時以外は、AEDの音声メッセージに従うからこそ、医師法違反が阻却されているという法論理があります。
 
ですから、いくら自己心拍再開の可能性が高いという医学的根拠があったとしても、日本国内で認可された医療機器としてのAEDの取扱説明書(添付文書)とその音声メッセージに従うというのが正解です。
 
医療機関内での職員研修で、院内に配備されているAEDが充電中に胸骨圧迫をしても問題ない機種であることが確認できている場合は別かもしれませんが、一般市民向け講習や、どのAEDを使うかわからない公募BLS講習では、充電中に圧迫するように指導するのは適切ではないでしょう。
 
 
この点は、AHA-BLSのDVDの中では日本事情は言及されていません。ビデオだけを見ると、誤解されかねない部分がありますが、BLSプロバイダーマニュアルのAED解説ページを参照すれば、「AEDの音声指示に従うこと」と明確に書かれています。
 
講習中は、この部分にはぜひ着目してほしいと思います。
 
 

 

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AEDトレーナー(FR-2)に充電式単三電池を使うアイデア

BLSやAED救命講習で使い勝手が良くて人気のAEDトレーナーFR2。

欠点は単2電池6本使用で重いのと、電池交換のコストがかさむこと。

そこでの一工夫として、単3電池を単2電池がわりに使えるスペーサーを活用して、充電できる単3型のニッケル水素電池を使用しています。

AED練習機にスペーサーをかませた充電式単3電池を使う

ニッケル水素電池といえば、かつてのSANYOのエネループが有名ですが、いまでは同等品で安いのがいろいろ出ています。写真のは Amazonのオリジナル の充電電池。

スペーサーは100円ショップで3つ入り108円で購入できます。(充電電池は100円ショップでも1本108円で買えますが、旧世代のニッケルカドミウム電池で、長期保存ができないのでAEDトレーナーにはあまり勧めません)

使用頻度が低いと元が取れない場合もあるかもしれませんが、ガンガンとAED講習をしている方にはおすすめです。

電池のスペーサーを使う場合は、写真のFR2の場合は、プラス電極の部分が電池ボックスのスプリングと接触不良になる場合があるので、その場合は、キッチン用のアルミホイルを小さく畳んだものを挟み込んでおくと解決します。

独立系のインストラクターの皆さん、参考にどうぞ。

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BLSマネキンが服を着ていないといけない理由

先日、BLS横浜の講習会に手伝いに来てくれたインストラクターの方に言われました。
 
「わざわざマネキンに服を着せているんですね!」と。
 

BLSマネキンには服を着せる必要がある

 
心肺蘇生法練習用マネキンを購入すると、専用の前開きのシャツがついてきます。
ただ、ジッパーの部分が壊れやすく、壊れたらそのまま使わなくなる=裸のままの状態で使用、ということが多いようです。
 
BLS横浜では、マネキン専用の服が壊れた後は、写真のようにお古の服を着せています。マネキンを並べると、みんな違う色とりどりの服を着ているものだから、パッと見で目立つんでしょうね。
 
さて、BLS横浜の心肺蘇生法講習で、きちんとマネキンに服を着せている理由ですが、ひとつはアメリカ心臓協会の講習開催基準で定められているからです。
 

ハートセイバーCPR AEDコースの必要機材準備リスト

 
これは対応義務のある職業人のためのハートセイバーCPR AEDコースのインストラクターマニュアルの必要機材リストの一部ですが、manikin with shirtと書かれています。
 
ただのマネキンではなく、「シャツを着た」という指定が付いているんですね。
 
これを基準として、BLS横浜の講習では、原則的にすべてのBLS系講習でマネキンと服はセットで考えています。
 
実は、主に医療従事者向けのBLSヘルスケアプロバイダーコースのインストラクターマニュアルでは、(シャツを着ている)マネキンという限定はされていません。
 
ただ、マネキンとしか書かれていないのです。
 
そこで、BLSヘルスケアプロバイダーコースしか開催しないトレーニングサイトでは、とかく衣服には無頓着になるのだと思います。
 
ハートセイバーコースであえて、服を着ていることが求められている理由ですが、医療者にとっては、AED使用の際に衣服をハサミで切るのはあたりまえのことですが、学校教職員や警備員、一般の方など、いわゆる市民救助者にとっては、見ず知らずの人を衣服をはだけるという動作は日常的なことではありません。
 
「本当に服を脱がせていいのか? 切っていいのか?」
 
この所作が心理的に障壁が大きいことは想像に固くありません。
 
そこで、CPRを開始するときやAEDを装着するときに、服をはだけるという動作を意図的に練習させているのです。
 
そんな意図を考えたら、たかが服一枚ですが、あるなしでは大きな違いですよね。
 
 
一般講習では、練習の簡便さとのバランスで前開きのベストを1枚着せているだけですが、警備員さん向け講習など、リアリティが求められる講習では、Tシャツを着せた上にベストを着せたり、より現実に近い設定にして行うこともあります。
 
その場合は、AED練習機に入れてあるハサミで、実際にTシャツを切ってもらう練習もしています。
 
やってみるとわかりますが、練習とはいえ、CPRをしている状態で、襟元からハサミで服を切ってもらうという体験は受講者にとってはインパクトが大きく、大抵の方がためらいを示します。
 
その様子を見ていると、練習とはいえ、服を着る体験というのが、現実の行動への期待を考えた時にはとても意味のある練習だと思います。
 
たかが服1枚ですが、救命法指導員の方は、再考してみてはいかがでしょうか?
 
 

 
 

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ポケットマスク人工呼吸、指導の動機付け(教育工学的視点から)

2010年版からBLSヘルスケアプロバイダーコースでは、口対口人工呼吸の練習がなくなりました。
 
BLS-HCPコースは、救命のプロのための一次救命処置講習です。
 
米国では労働安全衛生局(OSHA)の勧告で、業務上の蘇生では感染防護具を使うことを義務付けられています。そこで医療者レベルの教育では、練習するのはバッグマスクとポケットマスク(フェイスマスク)換気だけになってしまいました。
 
ただ、日本の医療現場では、ポケットマスクは知られていませんし、病院として用意しているところもほとんどないでしょう。
 
BLS-HCP講習で、初めてポケットマスクの存在を知ったという医療従事者も多いことと思います。
 

小児BLSマネキンとポケットマスク:成人用と小児用

 
米国で作られた講習DVDでは、ごくあたりまえのようにポケットマスクの練習が始まりますが、この点、日本では「医療従事者であっても知らない人が多い」という事情に合わせて、一歩踏み込んで説明しておいたほうがいいと思っています。
 
特に、見たこともなく、どこで使うのかもわからないポケットマスクの練習をさせるなら、教育工学の動機付けモデル(例えばARCSモデル)を考慮して、学ぶ意義は伝えるべきかと思います。
 
そこで、BLS横浜では、この写真のようなケースをお伝えしています。
 
 

AEDと共に配備されたポケットマスク
↑ 横浜市内の公民館に置かれていたAEDとポケットマスク

 
 
これは、とある公民館に設置されていたAEDの写真です。
 
赤いAED本体の上に、黄色と黒(青?)の物体が置かれているのが見えますか?
 
ポケットマスク、がきちんと用意されていたのでした。
 
このように、「病院では見たことないかもしれないけど、街中に設置されているAEDの中には、ポケットマスクが準備されている場合があるんですよ」とBLS講習の中で伝えることは大切かなと思っています。
 
なので、BLS横浜で開催するBLSヘルスケアプロバイダーコースやハートセイバーCPR AEDコースでは、AED本体だけではなく、収納ソフトケースも示して、「もし、街中で救命する機会があって、AEDといっしょにこんなケースがあったら、これだ! と思ってぜひ使ってくださいね」という話をしています。
 
 
 
BLSヘルスケアプロバイダーコースを受講に来る方の大半は、病院業務で活かすためと考えていますので、勤務先病院にポケットマスクがなければ、練習を行う意義について空虚になりがちです。
 
ですから、インストラクターは、「学習内容が自分にとってどのように役立つのか?」というARCSモデルの Relevance(関連性)を提示しつつ、学習を進めることは大切だと思っています。
 
 
さて、街中のAEDにポケットマスクが用意されているのは普通のことなのか、という話ですが、これはなんとも言えません。
 
AEDを購入ないしはリース契約をする際に、販売業者はさまざまなオプションを勧めてきます。服を切るためのハサミやタオルやカミソリをまとめたポーチや、予備のAEDパッドなど。
 
この中の一つとしてポケットマスクがあるわけですが、それを追加購入するかどうかを決めるのは、施設の設置者です。
 
知り合いのAED販売をしている人は、医療・福祉系施設に納入するときはポケットマスクの追加配備を強く勧めて、練習もしてもらっている、といっていましたが、一般の販売員がどこまでポケットマスクの重要性を認識しているかによって温度差はあると思います。
 
 
先ほどの写真の施設は、業者から勧められるままにポケットマスクを配備したというよりは、おそらく中身をきちんとわかった職員や第三者によって整備されたもののように思います。
 
というのは、AEDの脇にジップロックに入ったガーゼやタオルが見えますが、明らかに「手作りキット」だからです。
 
別の例として、とある小学校を訪問した際には、ポケットマスクだけではなく、バッグバルブマスクもAEDケースの上においてあって驚きましたが、ポケットマスクは、ケースに収めた状態ではなく、すぐに使えるように立体的に組み立てた状態でジップロックに入れてAEDとつなげておいてありました。
 
これは学校内でシミュレーションを行った際に、ポケットマスクの組み立てが時間がかかって現実的ではないと気づいたからだそうです。
 
 
AEDを配備するのはいいですが、その施設ごとの特性や訓練内容と合わせて、AED付属キットのアレンジを考えていくのは大切なことと思います。
 
 

 

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AEDトレーニングに適した練習機とは…

AED講習でAEDの「使い方を覚えさせる」ような教え方をしてはいけません。
 
AED操作で教えるべき唯一の動作は電源スイッチを入れること、ただそれだけです。
 
現在日本で認可されているAEDのほとんどは、蓋を開ければ自動でスイッチが入るタイプですから、もはや「技術」としてAEDを教える内容はなくなったといってもいいかもしれません。
 
AEDは機械の設計として、「音声指示に従って操作する」ことを前提として作られた機械です。つまり、訓練を受けていない人が使う道具である、という基本を思い出しましょう。
 
AED講習で教えるべきなのは、パッドの貼り方などではなく、「音声指示に従う」という「態度」なのですが、このことはあまり理解されていません。
 
施設職員向け研修などでは、施設に配備されたAEDの操作を「覚える」ような講習展開もありと思いますが、不特定多数向けの一般講習で、あるメーカーの特定機種の使い方を覚えさせても、受講者が遭遇するのが同じ機種とは限りません。
 
以前は「AEDは機種が違っても操作は大きくは変わりません」という点を強調していましたが、いろんなメーカーの様々な機種が認可されてきた今、直感的に使えるAEDだけではなくなってきていますので、分かった気になってAEDの指示を聞かずに操作することは危険です。
 
そこで大事なのは、音声指示を先回りしてでも早期除細動を目指すような指導ではなく、機種固有の音声メッセージをよく聞いて従う、という態度を醸成することです。原則論に立ち返るべき、とでもいいましょうか。
 
 
そう考えた時に、一般向けのAED訓練に使うAEDトレーナーの機種選定では、実機が存在するかどうかという点は重要な問題ではありません。
 
むしろ実機の存在しない練習用オンリーの機種の方がトレーニングには適しているといえるかもしれません。
 
 

 

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AED装着のタイミング、勘違いしていませんか?

「いざという時にはAED!」という意識が根付いてきたのはうれしいことですが、不正確な理解が広まっているのが気になるところです。
 
特に、AEDを装着するタイミングは、驚くほど誤解されています。
 
AEDは医療機器ですから、使用条件(適応)がきっちりと定められています。
 
1.反応なし
2.呼吸なし
 
上記の条件を満たした場合、つまり心停止を疑う場合にはじめて使用する道具です。
 
「大丈夫ですか?」と呼びかけて反応確認をした後、「あなたAED持ってきて!」となりますが、すぐにAEDが届いたとしても、呼吸確認をするまでは、AEDは装着しない、ものなのです。
 
もう一度いいます。「AEDは心停止が強く疑われる人」に使用するものであって、具合の悪い人に念のため装着するものではありません。
 
意識・反応がない人がいたら、胸から腹にかけての動きを目で見て、「正常な息をしている」と10秒以内に確信が持てなければ、胸骨圧迫を開始しますし、AEDがすでに届いていれば、この時点でAEDの電源を入れて装着します。
 
呼吸をしていない!(もしくは普通じゃないヘンな呼吸をしている)
 
この確認を守らないと、酔っぱらいや失神発作で倒れた人が、みんな服を切られて、公衆の面前で裸にされることになってしまいます。
 
意識がなければAED手配と119番通報するのは正解ですが、AEDが手元に届いても、明らかに呼吸がある場合や、朦朧としていてでも意識がある場合はAEDを装着する必要はないということも知っておいてください。
 
また指導員は、このAED使用の原則についてきちんと知っておく必要があります。
 
普及促進という点ではまどろっこしく感じる部分もあるかもしれませんが、胸骨圧迫と違って除細動は紛れもない医療行為であるという認識を、指導員は忘れないようにしたいものです。
 
 

 

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窒息解除法指導をめぐる複雑な事情

喉にものが詰まることで生じる窒息。
 
窒息解除法も「救命処置」のひとつであり、心肺蘇生法と並んで、「救急車を待つのでは間に合わない」超緊急事態です。
 
そして、おそらく、心肺停止より遭遇する可能性が高い、リアリティを持って学び身に付けるべき処置と言えます。
 
しかし、そのやり方やバリエーションが、心肺蘇生法ほどシンプルではないので、正しい知識と技術が伝わっているかというと、CPR以上に厳しい現実があるように思えます。
 
そこで、いまさらではありますが、【乳児以外の全年齢】の窒息解除法(反応がある場合)のポイントを整理してみます。また、ガイドラインによる違いについても簡単に説明したいと思います。
 
反応のある成人・小児に対する窒息解除法として、国際コンセンサスにより推奨されているのは、
 
・背部叩打法
・腹部突き上げ法
・胸部突き上げ法
 
の3つです。
 
米国では、腹部突き上げ法がメインで指導されており、妊婦や肥満により相手の腹部に両手がまわらない場合は、胸の真ん中(胸骨圧迫と同じ位置)を自分側に強く引き寄せる胸部突き上げ法が指導されています。
 
日本では、背部叩打法が中心に指導されており、腹部突き上げ法も併せて指導することが多いようです。反対に胸部突き上げ法はテキスト的に示されることはあっても口頭で指導する場面は少なくないようです。
 
この3つの方法が蘇生科学的に推奨されているわけですが、どの方法がよいのか、と誰もが気になる部分については勧告はありません。結論として書かれているのは、2つ以上の方法を試す必要があるかもしれないということだけです。
 
いくつか気になる研究データは示されており、腹部突き上げ法は致死的な合併症の報告があること、また腹部突き上げ法と胸部突き上げ法を比較した場合、胸部突き上げ法の方が強い気道内圧を得られるという点です。
 
だからといって、腹部突き上げ法より胸部突き上げ法が推奨されるということはなく、勧告に反映されるほどの根拠とはなっていないようです。
 
こうした根拠性は国際会議での論文ベースの検討によって国際コンセンサスとして示されます。
 
その国際コンセンサスを元にして国単位で作られるのが「蘇生ガイドライン」です。
 
そしてその各国ガイドラインにもとづいて、作られるのが、日本でいえば「救急蘇生法の指針」であり、各団体はそれに基づいて救命講習を立案しています。
 
ですから、ガイドライン作成団体で国ごとの着眼点や解釈の違いが生じますし、さらには各団体の指導要録の段階でも多少の差異が生じるというわけです。
 
日本で、純粋に日本版ガイドラインだけで教えられていればそんな苦労はないのですが、医療従事者の世界ではAHAガイドラインが標準となっている実態があり、結果的に日本では日本と米国のふたつのガイドラインが混在しているのが現状だからです。
 
救命法の指導員は、こうした国際コンセンサスレベルで理解をしておくことが望ましいのかなと思います。(日本版ガイドラインは、ほとんど国際コンセンサスの直訳みたいなものなので、とりあえずこれだけでも読むことをおすすめします)
 
このややこしい現状、どうにかしてほしいとは思うのですが、いろいろ難しい問題があるので、それについてはまた機会があったら書きます。
 
 

 
 

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救命法/ファーストエイド講習、シミュレーション組み立てのポイント

最近、既存のBLS講習や救急法講習のようなスキル・トレーニングだけではなく、シミュレーション学習を取り入れているという報告をよく目にするようになりました。
 
そこでBLS講習やファーストエイド講習でシミュレーションを取り入れる場合のコツをいくつか書いてみようと思います。
 
1.意図をもってよく練られたシナリオ
2.前提条件の事前オリエンテーション
3.模擬体験を振り返り、一般化する作業・・・デブリーフィング
 
シミュレーション・トレーニングは、経験学習理論に沿って進められます。とにかくやらせればいいんだというのとはちょっと違います。
 
まずは、シナリオは意図をもってしっかり練られたものであるべきです。
 
シミュレーションのなりゆきは、参加者の判断と考えによってどう転んでいくかわかりません。そこをしっかりとコントロールしなければ、意図した学習効果は得られません。場合によっては逆効果に終わる場合もあります。
 
特に、どこまで実施してほしいのかを明確にしておかないと、受講者としては戸惑いだけで終わってしまう場合も少なくありません。
 
例えば119番通報する場面があったとします。シミュレーションの意図としては通報も模擬体験をさせたいと考えていても、前提条件をきちんと伝えて、「インストラクターが通信指令員の役をしますので、想定される住所をきちんと声に出して通報してください」、という点をはっきり言っておかないと、「119番通報しました」という通報した体で先に進んでしまいがちです。
 
また模擬患者を設定する場合、傷病者役に実際にどこまでを処置を行っていいのか戸惑う場面が多いため、「胸骨圧迫だけはやったふりだけにしてください。その他、体の向きを変えたり、移動することは実際に出来る範囲でやってください」などと具体的に示しておくことが重要です。
 
また講習参加者には、受講者同士で模擬傷病者と救助者の役割を演じてもらうということをあらかじめ示しておかないと、急に演技をしろと言われてもそれは無理難題です。
 
また、いきなり難易度の高い演技(役どころ)を指示するのも避けたいところです。成人学習理論に則り、参加者のストレスに敏感でありたいものです。参加者同士の親和性を高めつつ、段階的にステップアップしていくような講習展開を心がけるべきでしょう。
 
講習参加者に傷病者の役を演じてもらうためには、求める演技をどのように指示するかも問題です。
 
徐々に経験してもらうことでうまくいくこともありますが、基本的に凝った演技や微妙な役どころを講習参加者に求めるのは難しいです。
 
その場合、インストラクターが傷病者役をしたり、あらかじめ打ち合わせを行える人を準備しておくことが無難です。
 
もしくは最初のシミュレーションの演技を、インストラクターが派手にやって、ある意味、模範演技を示してから、参加者に模擬傷病者をお願いするというのも手です。
 
他人同士の前で演技を行うというのは、なかなかハードルの高い行動です。そのハードルをストレスなく越えられるような配慮と段階的な進め方、それがポイントといえるでしょう。
 
 
経験学習理論での学びは、よく練られたシナリオで模擬体験をし、その体験を振り返り、良かった点、改善点などを抽出して、それを一般化し、次の模擬体験に活かしてみて、評価を行うサイクルを繰り返すことから得られます。
 
その学習を支えるのが、デブリーフィングです。簡単にいえば振り返りです。
 
振り返りは、シミュレーション体験をした学習者たちが内省することで促進されます。
 
インストラクター(ファシリテーター)は、「内省」と「経験知の一般化」をサポートする促進係であり、教えを与える立場ではありません。この位置づけを理解していることも重要です。
 
シミュレーションを取り入れると言いつつも、この経験学習理論の基本的成り立ちがわかっていないと、シミュレーション教育風古典教育に終わってしまいます。
 
シミュレーション教育のよいところは、ノン・テクニカルな認知判断領域や態度領域のスキルをも鍛えることができるところにあります。
 
自分が求めることはシミュレーション教育で実現できるのか、それとも反復練習や講義など別の学習形態で伝えるべきなのか?
 
なんでもかんでもシミュレーション・ベースにするのではなく、多様な教育方法をよく吟味して、適材適所な学習進行をできるのが理想です。
 
 
 

 
 

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ハートセイバーCPR-AEDコースを受けにくる方たち

AHAインストラクターハートセイバーCPR AEDコースの日本国内での需要について書いてみようと思います。
 
日本で公募講習をコンスタントにやっているのは、横浜だけだと思いますが、公募をするとコンスタントに申し込みがあり、ほぼ毎回キャンセル待ちがでるほどです。
 
参加してくださる方の多くは、何らかの救命講習受講経験があり、さらにしっかり学びたい、身につけたいという思いでいらっしゃる方が多いようです。
 
一方、初めて心肺蘇生法を学ぶという方は、資格取得のための要件整備として、ということが多い印象です。
 
これまで参加された方は、ヨガやティラピス、ヨットのインストラクター、プロスポーツ選手のトレーナーなど。
 
また外資系企業で、もともと持っていたCPR/AED資格が失効してしまうからというケースも多いです。
 
その他、インターナショナルのスクールナース、米国の教員免許ホルダーなど、日本の救命講習修了証ではダメなので、というケースも。
 
いずれにしても職業的に心肺蘇生法技術の習得と資格更新が必要な方たち。
 
 
こんな本来はあたりまえの商業に根ざした安全対策としての心肺蘇生法。善意の救命処置だけではなく、こうした需要に答えられる人材の養成が日本でも求められるようになってきています。
 
 

 

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