ファーストエイド一覧

「エピペン&小児BLS」講習は応用力を鍛えるプログラム

今日は、湘南のインターナショナル・スクールで「エピペン&小児BLS」講習でした。

 

これは単に「エピペン講習」と「小児心肺蘇生法講習」をくっつけただけではなく、その間をシームレスにつなげたBLS横浜オリジナル講習です。

この2つの間をつなぐのが、「生命危機の評価と観察の視点」です。

アナフィラキシーを起こした子どもがどのように命を落としていくか、またそこに「介入」することで、どのようにして生に向かって転じていくかを知れば、エピペン注射や気道確保、人工呼吸と胸骨圧迫の意味と必要性が理解できます。

その過程で体に起こる変化を見て、好転しているのか、悪化しているのかを予測して、介入し、観察・記録して救急隊員に引き継ぐこと。

こんな、エピペン講習だけ/BLS講習だけではない、新たな価値観で両者をつなげたのがBLS横浜の工夫です。

結局、「エピペン&小児BLS」講習の中身はファーストエイド講習の本質部分にかなり食い込んでいると言えます。アナフィラキシー・ショックとCPRを例題にして、末端技術にとらわれないファーストエイド的思考の理解を促したと言えるかもしれません。

その証拠に、この研修の後、受講いただいたインターナショナル・スクールの先生たち(特別な医療の知識がある方たちではありません)にこんな質問をすると、教えたわけではないのに自分たちで考えて答えを導き出せました。

 

「子どもが突然けいれん発作を起しました。痙攣が停まった後、意識がなさそうです。なにを観察して、どう行動したらいいですか?」

 

人が生きるしくみと死ぬしくみを理解すれば、痙攣のファーストエイドを勉強していなくても、問題の本質を考え、対応できるようになるのです。

実際のところ、けいれん発作の原因は、てんかんかもしれませんし、低血糖かもしれませんし、熱中症かもしれませんし、突然の心停止かもしれません。

病名を探ろうとすると、思考停止に陥ります。医師ではない人間がわかるわけありません。しかし原因は何であろうと、今は目の前に意識がない子どもが倒れているのです。そんな本質に気づけば、簡単です。

  • 呼吸確認をする → 10秒でよくわからなければCPR開始と119番
  • 呼吸をしていれば、気道確保(体位と口腔内確認)と119番、呼吸が停まらないか観察を続ける。余裕があれば転倒時の外傷チェック等
  • 呼吸が停まれば、CPR開始

基本的な考え方を「理解」すれば、ファーストエイドはそれほど難しいものではありません。

幅広い知識より、この本質部分を伝えていきたいと思います。

 

※「エピペン&小児BLS」講習は、次回、公募で6月12日(火)に開催します。若干名残席あります。 → BLS横浜ホームページ


止血帯(ターニケット)使用トレーニング考

ガイドライン2015準拠日本語DVDが発売開始になって、ようやく本格稼働が始まった AHAハートセイバー・ファーストエイドコース。米国のファーストエイド講習では、G2010に引き続いて止血帯の使用が解説されています。

ということで、今日は、止血帯(ターニケット)の話題を少々。

圧迫止血でコントロールできない四肢からの大出血の場合には、上腕部や大腿部をきつく締め上げることで、動脈を遮断して出血を停める止血帯法が米国では推奨されています。

日本でも以前は折り畳んだ三角巾と棒きれを使った止血練習が救急法講習で取り入れられていましたが、2005年の「救急蘇生法の指針」の改定で止血帯は非推奨となり、そのままJRCガイドライン2015までは救急法教育からは封印されてきました。

しかし、ここ最近の日本国内事情を見てみると、東京オリンピックのテロ対策として、東京消防庁が救急隊に軍用ターニケットを配備するなど、日本においても止血帯への注目が高まってきています。

聞くところによると、日本国内の応急手当普及団体の中でも講習プログラムの中に再び止血帯使用を盛り込んでいくことも検討されているとか、、、、

BLS横浜では、ハートセイバー・ファーストエイドコースの中で、軍用ターニケットの使用を皆さんに体験してもらっていますが、基本的なスタンスとしては、市民救護にターニケットは不要であり、むしろ危険である、という立場を取っています。

この点を解説していきます。

1.止血帯が非推奨から推奨に転じた背景

米国においても、2005年版のAHA/ARCファーストエイドガイドラインで推奨されなくなった止血帯ですが、5年後の2010年には、再び推奨に転じました。

急展開に見えましたが、その背後にあったのはアフガニスタンなど戦線激化による米軍兵士による使用実績増加でした。

米軍兵士への軍用ターニケットの標準装備が進み、軍事衝突の機会が増えたので使用実績があがり、その有用性が確立されたというわけです。

つまり、ガイドライン改訂に至った止血帯が有効であるという根拠は、「戦時下において訓練を受けた兵士が既製品を使った場合」という条件付きのものであったという点を理解しておく必要があります。

・既製品としての止血帯
・軍人としての訓練を受けている
・救護が受けにくい戦闘状況での使用

こうした条件は、極めて特殊なものと言わざるを得ません。

このことを持って、市民の応急救護においても有用であると言えるのか? という点は熟考する必要があります。

2.止血帯使用のリスクと教育

応急救護、ファーストエイドの基本ですが、何かの介入をする、すなわち処置や手当を行う以上、それには必ず潜在的なリスクが伴います。

BLS/CPRは例外で、この場合は心停止という究極の条件下になりますから、それ以上、悪化することは論理的にあり得ません。メリットとデメリットのうち、デメリットは無視できるのです。だから、何もしないよりは、多少間違ってもいい、なんでもいいからやりましょう、と言われているわけです。

しかし、出血対応も含めてファーストエイド介入は生きている人間に対して行うことですから、それによって状態が悪化させてしまう、別の傷害を与えてしまうというデメリットを考慮しなければなりません。

つまり、止血法の場合は、止血帯使用の弊害やそれによって引き起こされる有害事象について知らない、判断できない人が使うべきではないということです。

ここでは詳説はしませんが、止血帯の使用に際しては下記のような有害事象が考えられます。

・締め付けによる疼痛
・神経損傷
・中途半端な加圧による出血量増加(静脈閉塞、動脈開存)
・末梢虚血による組織壊死(切断のリスク)
・圧迫解除によるクラッシュ症候群(高カリウム血症による心停止)

これらのデメリットを理解した上で、止血帯を使用するメリットの方が勝るという判断があって、はじめて止血帯が適応となります。

大出血を見たら止血帯! というものではないということです。

この判断のためには出血という事象に対する理解も不可欠です。

そもそもどれくらいの出血だったら止血帯が適応となるのか?
それをどうやって判断するのか?

そのためには、人体にある血液がどれくらいあるのか? そして命に関わる出血があった場合の身体症状といった基礎的な理解も欠かせません。

これらが止血帯を使う上での必要な基礎教育に含まれているべきでしょう。

これがターニケット使用訓練を受けている、ということの意味です。

単に器具としての止血帯の操作方法がわかるというだけでは不十分ですし、それだけしか知らない人が使うとしたら、それははかえって危険であると言わざるを得ません。

3.軍隊におけるターニケット使用教育

今、日本国内の救護情勢として止血帯といったら、既成の軍用ターニケットのことを指します。軍用品で、戦地での実績から来たものなので、その使用方法は軍での教育が参考にされているものと思われます。

そこで軍隊におけるターニケット教育はどのようなものなのかということで、某陸軍の新兵向け教育を知る機会がありましたが、そこではっきり感じたのは、日本の市街地で医療従事者以外が使うことを前提としたファーストエイド訓練には使えない、という点でした。

最大の問題と感じたのは、軍隊教育では、止血帯が適応となる出血とそうでない出血の評価という視点がなかったことです。

戦地においては四肢を打たれたら、打たれた人は条件反射的に自分自身にターニケットを巻ように教育されています。

傷の大きさとか出血量とか、そんな判断はせずに、とにかく打たれて血が出たらターニケットを1秒でも早く巻く。

弾丸が飛び交っている戦場を想定したターニケット使用教育は、いかにすばやく確実に巻くかであって、理屈抜きの条件反射、単なるテクニカルスキルのトレーニングなのです。

4.日本の市民向けファーストエイドで止血帯が必要か?

このような背景を考えると、軍需から生じた止血帯のニーズを、日本の市民向けファーストエイド教育にそのまま入れ込むことは不適切と考えます。

戦場において、安全確保ができない状況下でのセルフレスキューとしてターニケットが発展してきました。

日本国内において、他者を救護する立場としては、直接圧迫止血法を試みるのが第一義なのは変わりません。他者が直接圧迫を続けることができれば、完全止血までは行かないとしてもある程度コントロールできます。

出血をしながらも自力で、離脱しなければいけない状況ではないからです。

救急車が来れないような野外環境下などにおいては、ターニケットが適応となる場面もあるかもしれません。

しかし、そのための教育としては、軍隊式のターニケットありきの教育をしたのでは、不必要なのにターニケットを使用したことで重大な傷害を残す事故が多発するでしょう。

軍隊式の教育とは別の市民向けターニケット使用研修が必要です。

5.まとめ

日本では、米軍にならってかなり前から自衛隊員にもターニケットが配備されています。

そして去年になって、オリンピックのテロ対策という名目で東京消防庁の救急隊員にも軍用ターニケットが配備されるようになりました。

昨今ではコンバット・メディスン(戦闘救護)の官向け、民間向け研修も広がりを見せており、医療資格を持たない人に向けた止血帯使用トレーニングの機会も増えていくことが予想されます。

この点で、これまで当ブログで取り上げてきた ウィルダネス・ファーストエイドにおける医行為の問題 や、打ち方だけの練習で形骸化したエピペン講習と同じような、命と医療と救護の狭間のグレーゾーンな懸念材料が増えていくことを危惧しています。

使わなければ死んじゃうんでしょ?

そんな安直な考えに立脚した誤った正義感が、出血コントロールの問題にも広がっていかないように願っています。


ABCDEアプローチの順番-酸素の流れを追う

PEARS/PALS、ACLSでもおなじみのABCDEアプローチ。
 
これは救急医療で標準の考え方でもあります。
 
D(神経学的評価)とE(全身観察)の評価内容と介入の中身については、外傷系や神経系では若干の方言がありますが、根本的な考え方は変わりません。
 

ABCDEアプローチ【体系的アプローチ】

 
生命危機というゼネラルな考え方の中で特に重要なのは、大気中の酸素が体の中の細胞に届くまでの過程を追っているという点です。
 
その上ではABCDという順番を無視することができません。
 
傷病者がパット見で「意識障害あり」と判断された場合、ついつい神経系の観察を優先してしまいがちですが、その意識障害がショックや呼吸不全による脳細胞の酸素供給不足だとしたら、どうでしょうか?
 
ですから、どんな場合でも、気道が開通していることと、呼吸機能が保てていること、循環機能が保てていることを、この順番で確認していくことが大切です。
 
 

 

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ファーストエイドのシミュレーション

昨日は、久々の開催となるハートセイバー・ファーストエイドコースでした。
 
心停止以外のあらゆる急病やケガへの対応を学ぶ米国労働安全衛生局(OSHA)規格のプログラム。
 
BLS横浜では、部分的にシミュレーション・トレーニングを取り入れて、救急対応を「しっかり学びたい人」向けの展開を行っています。
 
ファーストエイドは、失神への対応、やけどの対応、など、ミクロな視点でいくと、内容があまりに膨大すぎてとても覚えきれるものではありません。
 
そこで、「呼吸、循環、神経系」という生命維持の3大要素と、優先順位の考え方という原点に、すべての処置を帰着させることを強調した展開を行っています。
 
ハートセイバー・ファーストエイドのDVDでも、どの処置を見ても最後は「CPRの必要を確認する」となっています。これは結果的には、反応と呼吸の確認を常に行うことの必要性を言っています。
 
いわゆるファーストエイド処置は、実は行っても行わなくても生命という点ではそれほど重要な問題ではありません。どんな状態からでも、いつでも心停止に移行してしまうという可能性を意識してCPRに備えるというのが、根底にあることを忘れてはいけません。
 
例え軽症に見えたとしても、もしこの人が命を落とすとしたらどんな経路を取るか? それを想像しつつ、いつも最悪に備えて監視するというのがファーストエイドの本質です。
 
 
ファーストエイドコース終了後に1時間半ほどかけて行った複合シミュレーションでは、ありがちな落とし穴をたくさん仕込んでいたのですが、皆さん、そこには引っかからず、命に関わる優先順位の高い問題に着目して行動していたのが印象的でした。
 
意識障害と呼吸障害の両方があった場合、どっちを優先した対応を考えるか?
 
ケースバイケースで明確な答えを示すことは難しい状況でも、どこに原則を置いて考えるか、というノンテクニカルな思考の部分が少しでも伝わったのかなという、手応えが嬉しい講習会でした。
 
ご参加いただいた皆様、傷病者役としての迫真の演技、またシミュレーション後の活発な意見交換、ありがとうございました。
 
インストラクターも含めて、学びの多い8時間でした。
 
 
 

 
 

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ファーストエイド講習で学ぶこと|【知識ではなく考え方】

先日開催した、ハートセイバー・ファーストエイドコースにご参加頂いた方から感想のメールを頂きました。ご本人様の了承を頂き、一部をご紹介させていただきます。
 
今までは、講習の中でもおっしゃっていたように、傷病名ありきの対応で学んでいたので、実際現場では応用がきかないなと感じていました。今回の講習で、シュミレーションから知識と行動がともなわずこんなにも何もできなくなるのかと自分の状況を実感することができましたし、また、何を優先にして考え対応していけばいいのかを、繰り返し伝えてくださったので、そのことが感覚としてわかったのがものすごくよかったです。
 
 
ファーストエイド(応急処置)講習は、とかく病名やケガの羅列になってしまい、雑多な知識の押し付けで終わってしまいがちです。
 
そんな情報の海の中に一本筋を通すのが大切かなと思ってコース進行しています。
 
枝葉に目を向けると難しい印象のファーストエイドですが、幹に着目すれば、意外とシンプル。どんなケガや病気であれ、それが原因で命を落とすとしたら、原因はなにか? 人が生きる仕組みの破綻という視点や、酸素の流れで考えていくとわかりやすいです。
 
ファーストエイドは病名当てクイズではありません。幅広い知識がなくても、エッセンスさえ抑えておけばどんな場面でも、考え、行動できるようになります。
 
そこに気づき、納得し、考える姿勢を学べるのがシミュレーションという経験型の学習です。
 
ファーストエイド講習では、知識ではなくそんな「考え方」を、なるほどと思って体感してもらうことが最大の目的かなと思っています。
 
 

 
 
 

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窒息対応ホントにできますか?【シミュレーションでわかること】

窒息解除法といえば、救命講習の中でも定番で、度重なるガイドライン改訂でもほとんど変わらない古典的な技術です。
 
一般の救命講習でも、ほぼ必ず扱っている内容なので、なにをいまさらと、感じる方もいるかもしれません。(特に指導員は)
 
しかし、訓練方法を変えて、シミュレーションベースでやってみると、様相は一変します。
 
 
誰もできないのです。
 
 
日頃救命法の指導員をしているような人でも、セオリー通りに動ける人は、ほとんどいません。
 
 
こうした現状を見ると、しばしばニュース報道でも見るような、現実の気道異物窒息事故で適切に行動できなかったのは仕方ないことなのかなという気にもなります。
 
 
 
ということで、BLS講習や救命講習を手がけている方は、ぜひ窒息解除法のシミュレーションを講習の中に含めることをお勧めしたいです。
 
特別な道具は必要ありませんし、時間もほとんどかかりませんから。
 
 
 
私達がやっている窒息解除のシミュレーションのポイントは、
 
1.テーブルの前に椅子に座った状態
2.苦しがる演技(できれば派手目に)
 
です。
 
演技の迫真さ(?)が大切ですので、傷病者役はデモンストレーション的にインストラクターがやっています。
 
 
受講者の中で誰か一人救助者役をやってもらいます。
 
腹部突き上げや背部叩打は”振り”だけで、力を入れないようにお願いしておきます。しかし、それ以外のことは本気でやってほしいことも。
 
その他の受講者はその場に居合わせた通りすがりの人ということにしておいて、なにか頼まれたら、嫌でなければ協力してもらうことにします。(拒否するというハプニングのシミュレーション的にはアリです)
 
そんなブリーフィングをしてから、職場の食堂などで食事中に喉にものを詰まらせたという設定で、インストラクターが気道完全閉塞の演技をはじめます。
 
そこで救助者は教わったとおり、腹部突き上げ法(ハイムリック法)や背部叩打法をしようとしますが、問題となるのは傷病者の姿勢です。
 
椅子に座った状態でどうやって、腹部突き上げ法や背部叩打法を実施するか?
 
そこでとまどう方が多いです。
 
教わったはずの立位の姿勢でないために、どうしたらいいかわからなくなってしまうのです。
 
 
助け舟を出す場合は、窒息介助の手順を思い出してもらいます。
 
いきなり背中を叩いたり、お腹を押したりはしないですよね?
 
まずは状況評価と救助の宣言。
 
「詰まったんですか? 今から助けますね」という事になってましたよね?
 
この時に、座ったままで背部叩打や腹部突き上げ法がしにくいようであれば、立ちあがってほしいという旨を伝えればいいわけですね。
 
もしくは自分が膝をついて傷病者の腹部圧迫を行うというのも手です。
 
肘掛けがある椅子の場合や、老人ホームの設定で車いすの場合は、自分で立ってもらうのも困難で、座位での腹部突き上げも難しければ、座ったまま出来る方法として、背部叩打法ということになるでしょう。
 
 
つまり、チョーキングチャーリー(窒息介助練習専用マネキン)相手に腹部突き上げや背部叩打の技術(テクニカル・スキル)を練習しても、問題となるのはその手前のノン・テクニカルな部分が重要な鍵だということです。
 
 
 
 
シミュレーションの中では、背部叩打や腹部突き上げ法だけでは終わらせません。ファーストエイドの基本は常に最悪の状態を想定すること。つまり、そのまま意識を失う演技を続けます。
 
意識を失うタイミングは、現実の時間で言うと1分~2分の間くらいです。
 
窒息解除法は意識(反応)がある場合とない場合でやり方が違ってきます。そこをきちんと認識して対応できるか、というのも、このシミュレーションのポイントです。
 
市民向け講習の中には、意識消失した場合の対応をきちんと教えていない講習もあるようですが、反応がなくなった場合は、床に寝かせて胸骨圧迫からCPRを開始するのが国際コンセンサス。
 
それがわかっていても問題となるのは、どうやって椅子から床に下ろすのかという点です。
 
ここで固まっていたり、試行錯誤しているうちに平気で数分が経過してしまいます。
 
人が息を止められるのは何秒か? そんなことを考えるとこの時間の遅れの重大さがよくわかると思います。
 
シミュレーションで学んでほしいのは、窒息介助は時間との戦いであるという点です。
 
この点と合わせて通報をどのタイミングで誰が行うかというのも問題です。
 
このあたりを受講者全員でディスカッションして、考えられるといいですね、
 
 
やっていることはあくまでもシミュレーションであって、リアルな現場ではありません。
 
シミュレーションゆえにどこまで本気になっていいかわからないからこそ、うまく行かなかったという部分もあるとは思います。
 
しかし心肺蘇生法の国際コンセンサスCoSTR2010のEIT(教育、実行性、チーム)の章でも明記されているように、いざCPRができなかった最大の要因は「パニックになった」という点です。
 
あたまが真っ白になる。それはリアルな現実でも起きることです。
 
知っているはずの技術がいざというときに使えないという現実をシミュレーションで知ることで、本当に動けるためには何が必要なのかが見えてくるはずです。
 
窒息解除もCPRとおなじで、決して難しい技術ではありません。
 
しかし、それはお作法をこなすだけの講習では使えるレベルでは身につかないという現実を直視すべきです。
 
ほんのすこしだけ踏み込んで、5分程度でできるシミュレーションを取り入れることで、受講者意識は劇的に変わるはずです。
 
せっかくの学びの時間をムダにしないために、、、、
 
ぜひ、指導法を検討してみてください。
 
 

 
 

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ファーストエイド・インストラクター育成の方法論

企業から、ファーストエイド・インストラクター育成の相談を受け、取り組んでいるのですが、やはりファーストエイドの指導ができる人材を育てるというのはなかなか難しいです。
 
応急処置は心肺蘇生法ほど単純じゃありませんし、扱う範囲が広い。そしてまた、明確な答えがないという点が大きな要因です。
 
やけどの処置とか、喘息発作の対応など、ひとつひとつを切り分けて、標準的な対応を伝えるだけなら簡単ですが、実際のところ、「何が問題なのか?」を特定する観察法や視点、考え方ができていなければ、個々の処置にはいたりませんし、また複数の問題が合併している場合の優先順位の付け方など、処置以前の問題が山積しています。
 
そこをどう伝えるかが問題です。
 
人が生きる仕組みと死ぬ仕組みを理解して、まずは心肺停止という最悪の事態になっていないかを判定し、次いで心停止につながりかねない危険な状態(生命危機状態)の可能性を吟味し、それから具体的な個々の処置が登場します。
 
この理屈を理解することと、その判断能力を身につけることはまた別問題。
 
頭でわかったことを実践する体験・訓練を経て、初めて「できる」ようになります。
 
簡単にいうと、基礎知識を「レクチャー」で頭で理解したら、すぐにシミュレーションでそれを使えるか試してみる。その繰り返しで知識と技能を結びつけていく作業が必要となります。
 
こうした学習構造を理解して、講義、タスクトレーニング、シミュレーショントレーニング、デブリーフィングといった学習プランを組み立てられるのが、ファーストエイド・インストラクターです。
 
指導者としてゼロの状態からスタートして、どうしたらここまでできるようになるか?
 
その試行錯誤をしているところですが、まず大きな壁は、指導する/教えるということの経験値の絶対的不足があるように思います。
 
いきなりファーストエイドを教えようとすると、そのコンテンツの多さと答えのないつかみどころのない感じに打ちのめされてしまいます。
 
そこでまずは、教える内容(コンテンツ)が確立している心肺蘇生法に特化して指導経験を積むことによって、成人学習の組み立て方やシミュレーションの設定方法の経験値を上げていくのがいいのではないかと考えるようになりました。
 
まずはシンプルなCPR講習を気負わずにできるようになるまで経験を積む。次いで、受講者対象に合わせたCPRのシナリオトレーニングを組み立てられるようにする。
 
このへんまでくれば、学習支援ということの意味や、学習者の反応を見ながらインタラクティブに講習をアレンジする能力が身についていますので、心停止対応を少しずつ拡張する形でファーストエイド指導に幅を広げていくことが可能になっていくことが期待できるのではないか?
 
そんなことを考えて、いま、進めているところです。
 
ファーストエイド・インストラクターには、コンテンツとしてファーストエイドの知識と技術が必要ですが、それ以上にシミュレーション訓練のノウハウがなければ、単なる情報横流し屋に終わってしまいます。(このレベルならビデオ教材で十分です)
 
ファーストエイド講習の目的は、ファーストエイドの知識の流布ではなく、ファーストエイドスキルを持った人材の育成です。
 
それ自体、かなりハードルが高い内容ですが、それを指導する指導員育成をどうやっていくか? 課題は大きいですが、やりがいのある仕事だと思っています。
 
 

 

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防災 ―DMAT増強と地域のファーストエイド力底上げ

昨晩、東日本大震災で初動にあたっていた救急の医師複数とお話する機会がありました。
 
DMATの立ち上げがいくら早くても、交通路が確認されて現地に到達できるまでには24時間〜48時間はかかるという現実。
 
政府としてはDAMT隊を増やすという施策を打ち出していますが、いくら部隊が増えても、東日本並みの災害では、発災直後の肝心な部分は、被災地の人たちや現地の医療者による自助、共助的な部分が生命線になるのは間違いないようです。
 
外部から支援をどう入れるかという発想も大事ですが、それ以上に地元の医療者の防災意識とスキルを底上げすることに力を割くべきではないかという意見。まさにそのとおりだと思いました。
 
医療従事者であっても、免許取得までの間にファーストエイドを学ぶ機会はありません。病院という整った箱の中で立ち回る術は学ぶだけです。ファーストエイドはもともとは市民レベルの応急手当ですが、それすら医療従事者は身につけていないという現実に目を向けるべきです。
 
この部分でBLS横浜はファーストエイド講習の老舗として、果たせる役割があるのではないかと感じた次第です。
 
 

 

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喉にモノが詰まったときのセルフレスキュー

さて、お正月です。
 
この時期話題になるのが、餅による窒息。
 
他人が喉にモノを詰まらせた場合の対応は、救命講習でも指導されていますが、盲点なのは自分が喉に詰まらせたらどうするか? という点。
 
ガイドライン2000の頃は教えられていたのですが、最近はあまり話題にも上らないので参考まで書いておきますね。
 
ガイドライン2000当時、言われていたセルフレスキューの要点は次の二つです。
 
1.気道異物による窒息を起こしたことを周りの人に知らせる
2.救助が得られなければ、自分で自分に腹部突き上げ法を試みる
 
喉にモノが詰まったことを周りの人に知らせて助けてもらう、そのために考案されたのがチョークサインです。喉のところに両手を当てるあのしぐさです。
 
万国共通の窒息のサインなどといっていますが、昔の文献を見ると、このやり方を周知すべきである、と書かれていて、ある意味人為的なサインであることも伺えます。
 
米国ではそれなりに周知されているのでしょうが、日本においてはまだ有用といえるものではない気もします。
 
 
もし救助を得られなければ、自分で自分に腹部突き上げ法(ハイムリック法)を行うしかありません。
 
そのやり方として例示されていたのが、椅子の背もたれや、ドアノブなどの突起物を使う方法です。
 

窒息のセルフレスキュー:椅子を使ったハイムリック法(腹部突き上げ法)

 
突起に自分で腹部を勢いよく強く押し付けて、横隔膜を挙上させ胸腔内圧を上げて喉の詰まったものを飛ばそうという理屈。
 
どれだけ有効なのかはわかりませんが、「藁にもすがる」上での予備知識としては意味があるかもしれません。
 
 

 
 

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ハートセイバー小児ファーストエイドコースの奥深さ

先日、7月末にリリースされたばかりのAHAの最新講習プログラム、Heartsaver Pediatric First AId CPR AEDコースを開催しました。
 

AHAハートセイバー小児ファーストエイドCPR AEDコース

 
Pediatricというのは、「小児」という意味です。
 
つまり、ハートセイバー小児ファーストエイド&CPR AEDコース。
 
AHAコースの中でもハートセイバーシリーズですから、「対応義務のある市民向け」です。
 
米国労働安全衛生局OSHAが定める、職業上必要な救命スキルの、ライセンス認証をするプログラムになります。
 
子どものいざというときに備えなければならない職種、つまり、主には学校教職員や保育士向けのやや高度な応急処置&救命処置講習です。
 
成人傷病者を対象としたハートセイバー・ファーストエイドは、オフィスから工場、作業現場まで幅広い守備範囲がありますが、このAHA小児ファーストエイドコースは、学校や保育所に限局されています。
 
そのためより深く、具体的にファーストエイドの真髄に迫っている感じがあり、’開催していても新たな気づきが多く、改めて「ファーストエイドは個人スキルではなくシステムである」ということを痛感するに至りました。
 
特に小児だからこそ、そうしたファーストエイドの本質が見えやすいのかもしれません。
 
例えば、皆さんもよくご存知の通り、小児の救命の連鎖小児は「予防」から始まっています。(日本版ガイドライン2010では、成人も小児も共通で予防からになりましたが、米国版AHAガイドラインでは、依然成人と小児で違います)
 
子どもは予備力が少なくて心停止に陥ってしまったらほとんど助からない。
 
また、子どもは呼吸原性心停止が多く、いきなり心臓が停まることは少ない。
 
こんなことから小児BLSでも予防、というか心停止に至る前からの介入を教えているのですが、それがファーストエイドになるとさらに顕著になってきます。
 
コースDVDの各論部分の解説でも、必ずprevention、つまり予防から論じられているのです。
 
またファーストエイドはシステムであるという点が何度も示唆されているのも興味深いところです。
 
例えば、学校での授業中に糖尿病による低血糖発作を起こした子どもを救助する場面では、教員は携帯電話で職員室(保健室?)へ電話して、その子の応急救護計画は用意されているかと聞くのです。
 
教員の個人スキルとして、低血糖発作だとは気づいて処置もわかっているものの、糖分の入ったジュースを飲ませるという処置の前には、持病を抱えた子どもに関する情報と事前の打ち合わせ内容を確認しているという場面です。
 
低血糖発作と判断して、糖分を摂らせるというのは、見方を変えれば、診断→治療です。
 
無理矢理飲ませるのでない限り、大きな害もありませんから、ファーストエイドの範疇でいいと思いますが、厳密にいうなら本来は医師にしか許されていない判断です。
 
そんな心理的な負担を現場の教員ひとりに負わせるのではなく、予めリスクがある子どもに関しては対応をプロトコルとして決めておいて、学校のシステムとして子どもを守る準備をしておく。
 
これが本来の学校にあるべき応急救護計画ではないでしょうか?
 
 
また、DVDで示される別の場面。これは保育園のようですが、乳児をこれから預けようとしているママさんが、園の見学に来て、説明を受けている場面があります。
 
そこで母親は保育園の緊急時対応計画について尋ねています。それに答える保育士の説明が見事で、園で行なっている事故予防対策、救急医療機関との連絡体制などを説明しつつも、「私達も皆訓練を受けています。医療機関に引き継ぐまでの対処は、応急処置の範囲としてはしっかりとやらせていただきます」と毅然とした笑顔で伝えていました。母親は赤ちゃんに語りかけながら、「これで安心してあなたを預けてママは仕事に行けるわ」と。
 
こうしたやりとりの中から読み取れるのは、学校や保育所などにおいて、ファーストエイドは教職員個人のスキルではなく、学校施設全体の安全管理システムとして構築しなければいけないということです。
 
養護教諭や保育園ナースがすべてを背負うのではなく、個々の教員も含めて、皆、システムの一部。それがうまく動くようにするのは「計画」なのです。
 
もちろん学校は医療機関ではありませんので、専門的な対応は求められていません。
 
基本は119番して救急車を呼ぶこと。
 
しかし、その119番にしても対応計画を練っておかないとスムーズな引き継ぎはできません。
 
例えば職員室の電話から119を押しても消防にはつながらないかもしれません。外線のゼロ発信が必要な場合もあるでしょう。
 
また学校のどこに救急車が到着するのか? 普段は閉じているゲートを誰が開けるのか? 誰がどういう経路で学校内を誘導するのか?
 
親御さんへの連絡体制も強調されています。
 
 
これまで、BLS横浜では、子どものファーストエイドは、AHAのファミリー&フレンズ・ファーストエイドforチルドレンを中心に開催しており、学校教職員向けにもそれでいいかと考えていましたが、ファーストエイドを個人スキルとして考えるか、システムとして捉えるか、という点で、両者のプログラムは決定的に違っているということに、いまさらながら気付かされました。
 
学校の先生たちにも、学校現場におけるファーストエイドはどうあるべきか、システムという概念で考えていただくためにも、Heartsaver Pediatric First AId CPR AED(HS-PFA)コースは価値があると思います。
 
 

 
 
 
 

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