幼稚園の救命講習 親向けと教職員向けの違い

先日、横浜市内の幼稚園で親御さん向けに「子どもと赤ちゃんの救急蘇生法」講習を開催させていただきましたが、同園では去年8月に教職員向けの「小児BLS&エピペン研修」を開催しました。
 

BLS横浜オリジナルの子どもCPRとファーストエイドのアルゴリズム

 
小児マネキンを使って、こども(1歳〜思春期まで)のCPRを教えるという点では同じですが、先生向けと親御さん向けで同じ展開をしたわけではありません。
 
それは幼稚園の先生と親御さんでは、立場がまったく違うからです。
 
例えば人工呼吸の方法が違います。
 
親御さん向けにはマウスtoマウスの人工呼吸を指導しますが、幼稚園の先生向けにはポケットマスクを使った人工呼吸で練習してもらいました。
 
唾液などへの接触によって病気が感染するリスクは高くはないとは言われていますが、子どもとは言え他人に口をつける動作を抵抗なくできる人はいません。
 
子どもの蘇生法では人工呼吸が特に大事と言われていますから、着実に人工呼吸をしてほしいと考えたら、フェイスシールド系のものではなく、やはりポケットマスクです。(園には2つ配備されています)
 
また幼稚園の教職員は、業務中の救急対応を想定していますから、一人法CPRだけではなく、胸骨圧迫の交代の仕方も含めて、二人法CPRの連携についても強調して練習してもらいました。
 
また練習をする上での動機づけも、教職員は「救護義務がある」という点で親御さんとは決定的に違います。
 
いざとなったら救命処置を行わなければならないという責務を負っているのが学校教職員です。
 
ですから、職業意識やプロフェッショナリズムに根ざした動機づけや指導が必要です。中身も形だけの体験学習のようなものではなく、「しっかりと身につける」ためにはある程度の練習量と、それに見合ったマネキン配置、スタッフ配置、そして時間が必要となります。
 
命に関わることをインスタントに終わらせてはいけない、そう考えています。
 
 
同じ幼稚園で、続けて2つの救命講習を企画させていただきましたが、そんな違いについて再認識した次第です。
 
 

 

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ポケットマスク人工呼吸指導を、運動スキル・認知スキル・態度スキルに分解して考える

BLS横浜では、BLSプロバイダーコースや、ハートセイバーCPR AEDコースのオプションのシミュレーション練習の中で、ケースに入ったポケットマスクを組み立てて手袋を装着して人工呼吸を行う体験をしてもらってます。

これが、けっこう手間取るんですよね。やってみるとわかります。

これをどのタイミングで、どの優先順位でするかを考え、意思決定するのが、現実の課題かなと思います。ケースバイケースで答えはありませんが、そんな問題に直面し、考える、ということが重要です。

人工呼吸要ポケットマスクと感染防護手袋(グローブ)

既成のポケットマスクを購入すると、ニトリル手袋が標準でついています。

講習会での練習ではほとんど無視されていますが、現実にポケットマスク人工呼吸を行うなら手袋装着が必要と思ったほうがいいでしょう。口から泡を吹いていたり、よだれがついていたり、出血したりと、口周りはあまりキレイではないことが多いものです。

ファーストエイド講習なんかは特にそうですが、「手袋をしたフリ」ではなく、傷病者対応の一連の流れの中で、手袋を身につけさせる体験は絶対にさせたほうがいいです。

意外と手間取るという現実を知ることと、手袋をしながらも声掛けをする、観察をする。そんなノン・テクニカルな技術が重要だということに気くからです。

これは手袋を付ける、外すという、パーシャルタスク(断片的な部分技能)で練習しても意味がありません。それはただの「運動スキル」の練習に過ぎないからです。

状況を判断して手袋をどのタイミングでつけるかの意思決定をするのは「認知スキル」です。

そして傷病者を目の前にして、ただだまって黙々と手袋を装着するのか、なにか声掛けをしたり、観察をしながら平行して行うのか。これは「態度スキル」に相当する部分です。

このように実際の人間の行動は、「運動スキル」「認知スキル」「態度スキル」という3つの技能から成り立っています。これらが統合されて発揮されて、はじめてパフォーマンスとして成り立つわけです。

これを逆説的に、身につけさせよう、トレーニングしようと思ったら、バラバラにやるだけでは不十分で、特に認知スキルと態度スキルは、部分を切り取ったものではなく、一連のシナリオのなかで経験をしなければ学べないということが見えてくると思います。

だからこそ、現場で使えるための技術はシミュレーションでないと学べないのです。

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親子で学ぶ救命教室〜地域密着企画講習の意義

今日は、本牧にある「かいじゅうの森ようちえん」での講習会でした。
 
題して「親子で学ぶ救命教室」。
 
毎年この時期に開催させてもらって、もう4年目になります。
 
ようちえんのお子さんと、そのご家族とで一緒に心肺蘇生法を体験・練習しようという企画。家族ごとに成人マネキン1体と小児マネキン1体を用意し、親子ともども一緒に心肺蘇生法を体験してみようという企画です。
 
子どもたちもアンパンマンの音楽に合わせて一生懸命マネキンの胸を押していました。
 
今回は、赤ちゃんを連れて参加された家族が2組いたので、急遽、乳児のCPRと窒息解除法も付け加えてみました。
 
すでに来年の予約も頂いて、次回は2018年2月3日(土)予定です。今回は、遠く埼玉や東京からボランティアでインストラクターが駆けつけてくれました。
 
来年もまた近くなったら募集させていただくと思いますが、直近だと3月6日(月)にも横浜市内の幼稚園で親御さん向けの小児・乳児蘇生法教室を予定しています。
 
現在、お手伝いいただけるボランティア・スタッフを募集中です。
 

かいじゅうの森ようちえんでの親子で学ぶ救命教室
園のパンフレットと園長先生に頂いた朝取れのたまご

 
 
さて、私たちはいろいろな形で救命スキルを伝える講習や普及活動を展開していますが、今日の幼稚園でのご家族向け講習のような機会は、特にやりがいのある仕事だと思っています。
 
日頃BLS横浜でしているような一般公募での講習に来てくださる方は、基本的には意識の高い方、といえます。特に医療従事者向けのBLSプロバイダーコースなどは、もともとある程度できる人が、スキルアップを目指してくるというケースが少なくありません。
 
それはそれで意義のあることですが、地域社会での救命率を上げるという公衆衛生学的な意義を考えたときには、もともとは救命法をまったく知らなかった人たちが、新たに技術を身につける、意識をもつということには、また違った次元での絶大な価値があると思うのです。
 
わざわざ出向いてまで救命講習を受けようとは思っていない方にアプローチするのはどうしたらいいか?
 
それが可能となるのが、今回のような既存の地域コミュニティ内での救命講習の企画です。
 
今回は、幼稚園でしたが、日頃通っている身近な幼稚園の中で救命講習をするなら、参加してみようかな、と思う方もいます。
 
 
そんな、公募講習をしているだけでは決して出会うことができない方たちに、救命法をお伝えできる機会は私たちにとっても非常に意義深いやりがいを感じる時間です。
 
そういった意味で、こうした依頼をいただくことに感謝しています。
 
インストラクターとしても自分たちが持っているスキルが、社会に還元できることを実感できるひととき。
 
感謝です。
 
 
 

 

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最新のAHA-BLSプロバイダーコース、BLS-IFPとBLS-PHPコースの違い

ながらくAHA-BLSとして知られていたBLSヘルスケアプロバイダーコースが、ガイドライン2015改訂に伴い、BLSプロバイダーコースと名称変更され、内容がガラリと一新されました。
 
教材設計的な違いについては、これまでも何度も取り上げてきましたが、今日はシナリオによって2種類の内容が混在していることについて紹介します。
 
すでに日本語化されているBLSプロバイダーマニュアルを見ても、まったくわかりませんが、この新しいBLSプロバイダーコースは、DVD教材の上では、完全に2種類に分けられています。
 
BLS for Prehospital Provider
 
BLS for in facility Provider
 
プレ・ホスピタルという単語は直訳すると病院前。
 
傷病者が医療機関に運び込まれる前に対応する人向けのBLSということです。具体的には救急隊員やプライベートで救急対応する非番の医療従事者、スクールナース(日本で言うと保育園看護師や看護師免許を持った養護教諭)などです。
 
in facilityというのは、あまり馴染みがない単語かもしれませんが、Facilityは施設という意味です。ここでも主に病院を主とした医療施設内で緊急対応する人のことを指しています。
 
つまりざっくり言うと、BLSコースが、病院内対応と病院外対応でわけられるようになったということです。
 
AHAガイドライン2015は、Life is Whyというスローガンに象徴されるように、現場主義が強く打ち出されてます。お作法的に技術を教えるだけでは不十分で、それを現場で使えるようにするためには、応用力を培わなければいけない、という考え方です。
 
そこで、これまではあえて避けてきた現実の複雑な状況判断と意思決定の場面を、リアルなシナリオ動画の中で描くことで、身につけるべき基礎技術と、それを現場で使うために必要なノン・テクニカルスキルの例を提示するようになりました
 
その最大公約数が、病院内での急変対応と、病院外での救急対応の2種類というわけです。
 

AHAガイドライン2015正式版BLSプロバイダーコースのIFPとPHPシナリオ一覧

 
どちらを選んでも実技試験、筆記試験は同じで、学ぶコアコンテンツも同じです。しかし、提示されるシナリオ動画が、病院勤務の医療者と、病院外で活動する救急隊やスクールナース、警備員などで、現場をイメージしやすいように分ける工夫がされています。
 
今後、日本でもこのDVDが日本語化されて、公式開催されるようになったら、公募段階でBLS-IFPコースと、BLS-PHPコースが区別されて募集されるようになるのではないでしょうか?
 
これまで、BLS横浜では、FPとPHPをいいとこ取りををして混在型でコース開催していましたが、4月以降は公募段階で明示していくつもりでいます。
 
 
 

 

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CPRをシミュレーションと振り返りで身につける

2017年度最初の講習は、ハートセイバーCPR AEDコース でした。
 
世界中のAED講習の元祖となったプログラムだけに、基本に忠実なベーシックな内容。
 
その分、時間も短時間で終わりますので、BLS横浜では、いつも最後に受講者に合わせたシミュレーションや、おまけの補講を付け加えています。
 
今日は、受講者さんから、「ポケットマスクの組み立てるタイミングはどうしたらいいですか?」と質問があったので、それをシミュレーションでやってもらい、デブリーフィング(振り返り)で考えてみました。
 
現実問題、日本でよく見かけるレールダル社のポケットマスクは、畳まれたマスクを広げて(これが冬場はけっこう固い!)、マウスピースを取り付ける必要があるので、意外と手間です。慌てるとマウスピースがコロコロと転がっていくし…
 
そもそも傷病者を発見した時点で、Myポケットマスクを持っている人もそう多くはないので、AEDを持ってきたら、一緒にポケットマスクがついていたという方がまだ現実的。
 
ということで、やってみました。
 

AEDと一緒にポケットマスクが届いたシミュレーション

 
1人で胸骨圧迫のみのCPRをしているところ、第二救助者がAEDとポケットマスクを持って到着。
 
そんなとき、さっそく二人は壁にぶつかります。二人が行うべきプライオリティの高い行動はどれか?
 
1.胸骨圧迫継続
2.ポケットマスクを組み立て→人工呼吸開始
3.AEDの電源スイッチを入れて、指示に従う
 
3人目がいれば、また違ってきますが、やるべきことが3つあって、二人しかいなければ優先順位を決断しなければなりません。
 
傷病者の年齢や発見時の状況などで違ってくるので、ここでは答え的なものは提示しませんが、こういうときこそ、シミュレーションでやってみて、振り返って、みんなで考える、という経験学習が重要になってきます。
 
答えを見出す、のではなく、考え方を醸成するような教育アプローチが必要です。
 
この日の午後に開催した 新しいG2015教材を使ったBLSプロバイダーコース では、まさにこうした経験学習とデブリーフィングによる学習が新たな手法として正式に取り入れられています。
 
今までは、ACLSやPALS、PEARS(シミュレーションを省略しているPEARSコースを除く)でのみ、採用されていた教育メソッドが、BLSにまでおりてくるようになったのです。
 
 
いままでは武道の演舞のような、型を身につけ模倣する心肺蘇生法教育が標準でしたが、G2015のAHA-BLSから、心肺蘇生法教育が変わっていきます。
 
 

 

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沖縄、BLS2015、Sim-PEARS、急変対応の学び方

2月に3日間、出張講習で沖縄に行きます。
 
2月24日(金) 13:00〜19:30 BLS-USプロバイダーコース
2月25日(土) 9:00〜11:30 「急変なんて怖くない!」院内急変対応の考え方と学び方
2月25日(土) 12:00〜18:30 BLS-USプロバイダーコース 【キャンセル待ち】
2月26日(日) 8:00〜18:00 Sim-PEARSプロバイダーコース 【キャンセル待ち】
 
すでに定員に達してキャンセル待ちになっているコースもありますが、いずれも普段は横浜でしか体験できない特別プログラムばかり。
 
AHA-BLS-USプロバイダーコースは、日本ではまだ正式導入されていない最新のG2015準拠正式BLSプロバイダーコースを米国ハワイ州のAHAナショナル・トレーニングセンター所轄で開催します。
 
DVDは英語ですが、日本語を母国語とする人でも無理なく学べるように工夫していますのでご安心ください。受講者テキスト はすでに公式日本語化されています。
 
プロバイダーカードの台紙自体はふつうに日本で受講するのと同じものですが、◯◯協会とか◯◯学会のような日本国内団体ではなく、ハワイの American MedicalResponse(米国人なら誰でも知っている救急車運行の最大手企業です) から資格が発行されるので、米国に留学するとか米軍基地内での就労を考えている方にはいいかもしれません。
 
 

「急変なんて怖くない!」院内急変対応の考え方と学び方 in  沖縄・那覇

 
「『急変なんて怖くない!』院内急変対応の考え方と学び方」in 沖縄 は、BLS横浜オリジナル企画で、資格発行コースではないので、500円でのOne Coinで気軽に参加いただけます。
 
BLS、ACLS、PEARSのエッセンスをギュッと圧縮した2時間。ライセンスより中身を求める人には最適。
 
最近変わりつつある病院内での急変対応の考え方をお伝えします。
 
都合の付く方はぜひいらして下さい。
 
 

 

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子どもだけじゃない! 新タイプの急変対応研修 PEARS が注目される理由

BLS横浜がよく話題にしているPEARS(ペアーズ)とはなんなのか? というご質問をいただきました。
 
PEARSプロバイダーコース は、アメリカ心臓協会(AHA)が開発した新世代型の医療者向けの急変対応研修プログラムです。
 

PEARSプロバイダーマニュアル(ペアーズ)

 
医療者向けの急変対応といえば、BLS と ACLS のイメージがありますが、これを一次救命処置、二次救命処置と言い換えた場合、PEARSはゼロ次救命処置に相当します。
 
心停止が起きてしまったらどうしよう、というのではなく、心停止は予兆に気づけば防げるもの、という視座で作られている点で、今までにない画期的なプログラムです。
 
 

(院内)心停止は突然じゃない!

従来型の急変対応研修や救命講習は、「心停止は突然に起きる」という前提で組み立てられていました。
 
これは成人に多いとされる心原性心停止を考えればその通りなのですが、病院内で起きる心停止に関しては必ずしもそうではないと言われだしたのが2005年頃でした。
 
いまでは、病院内の心停止のうち、除細動が適応となる心室細動・無脈性心室頻拍によるものは2−3割程度にすぎないことが知られてきています。
 
逆にいえば残りの7−8割は、段階的に進行する「防ぎ得る心停止」であるというのが、最近の考え方です。
 
とすると、BLS や ACLS といった心停止後の対応を学ぶだけでは、救える命を救えないといえます。
 
そこでいま、ゼロ次救命処置研修である PEARS が着目されているというわけです。
 
 

小児で発達したアプローチを成人に活かす

PEARS の P は Pediatric(小児)。PEARS は本来的には、小児急変対応研修です。
 
小児領域では、もともと子どもは心原性心停止は多くないという理由から、「心停止の予防」にフォーカスした教育展開を行ってきました。その集大成が AHA の PALS (パルス)なのですが、その PALS の中からアセスメントと心停止予防の部分を切り出して、強化されたのが PEARS です。
 
2008年に開発されて、2012年にアップデートされたのが現在の PEARS は、引き続き小児急変をテーマとしていますが、そこで学ぶ呼吸障害と循環障害の病態生理とアセスメントの視点は、子どもに限らず、成人の生命危機のアセスメントにもそのまま使えます。
 
BLS横浜では、特に PEARS を小児以外に応用するという視点を強化した PEARS を展開しています。
 
 

命を落とす仕組みがわかれば救う手立ても見えてくる

ヒトが命を落とす原因を突き詰めれば、呼吸の問題と循環の問題に大別できます。さらにそれぞれの問題のタイプを下記のように分類できます。
 
 呼吸障害
 ・上気道閉塞
 ・下気道閉塞
 ・肺組織病変
 ・呼吸調整機能障害
 
 循環障害
 ・循環血液量減少性ショック
 ・血液分布異常性ショック
 ・心原性ショック
 ・神経原性ショック
 
目の前にいる具合の悪そうな人が命を落としてしまうとしたら、原因は呼吸障害なのか循環障害なのか? さらにはタイプはなに?
 
視点を絞って観察し、アセスメントして障害のタイプが分類できれば、必然的に命を救う手立てが見えてきます。
 

PEARS(ペアース)体系的アプローチの概要

 
例えば吸気時喘鳴があって、上気道閉塞にタイプ分類できれば、咽頭部の腫れを引かせるために血管収縮薬(アドレナリン)が必要という判断ができます。その間にも窒息で命を落とす危険があれば、何らかの方法で気道確保をし、自発呼吸が難しければ人工呼吸によって、酸素供給をして根本治療までの時間稼ぎをする手立ても見えてきます。
 
このように命を落とす仕組みを理解して、心停止にさせないための介入を行う、そのための体系的なアセスメント法を学ぶのがPEARSです。
 
 

ホンモノの患者映像、バイタルサインで観察力を身につける

実際に生命危機に瀕している患者映像とバイタルサインデータ、呼吸音など使って観察とアセスメントを訓練していくというのも PEARS が絶大な支持を受けている理由のひとつです。
 
恐らく日本では倫理的な問題から、このような映像教材を作るのは極めて難しいと思います。
 

PEARSのケース映像(G2005版)
(開発当初のG2005版PEARS ProviderコースDVDより)

 
 
呼吸努力が見られて、呼気延長とウィーズ( Wheeze 呼気時喘鳴 )があったら、下気道閉塞疑いが濃厚、というのは教科書的に学べます。
 
しかし、患者を診たときに呼気延長やウィーズに気づけるか、が問題です。
 
知識と臨床判断をつなげるような訓練は、実臨床で鍛えていくのがいちばんですが、学べる現場は極めて限定的です、そこを体系的に訓練できる教材は PEARS 以外ないでしょう。(PALS の DVD でもそこは学べません)
 
 

シミュレーションの効用

PEARSで学ぶのは、大きく次の2点です。
 
・体系的アプローチ(アセスメント法)
・安定化のための介入
 
アセスメント法はリアルな映像教材を見ながら、受講者同士のディスカッションを通して学びます。
 
アセスメントの目的は、障害のタイプと重症度を判定することですが、判定をしたらオシマイ、というものではありません。言うまでもなく、次のステップである急変対応(介入)につなげるための過程に過ぎません。
 
その安定化のための介入をトレーニングするのが、シミュレーション・セクションです。
 
マネキン相手ではありますが、所見を見ながら、気道確保をしたり、経路と流量を考えながら酸素投与したり、輸液をしたり。それによってリアルタイムにバイタルサインや患者の反応が変わってきます。反応を再評価して判定、介入を繰り返していく訓練は机上で行うものとはまったく違います。
 
というのは、そこにはチームが介在するからです。
 

PEARS(ペアーズ)の評価―判定―介入のサイクル

 
 
なぜか2012年の改訂 PEARS では、シミュレーションを省略しても構わないと方針転換されたため、時間短縮のためにシミュレーションを一切行わない PEARS コースも増えてきているのですが、現場でのアウトカムを考えたときに、シミュレーション訓練は欠かせないと考えています。
 
その分、時間が長めになるのは致し方ない部分ですが、せっかく1日かけて、新しい急変対応の概念を学ぶのであれば、しっかりと見につけてほしい、という思いで PEARS 展開しています。
 


 
ということで、PEARS がいかに画期的なプログラムかということを説明してきました。
 
2008年にPEARSが開発されてから、日本でも似たコンセプトでいくつかの研修プログラムが作られてきましたが、やはり、リアルな患者の動画を使うという点では PEARS に追いつくものとはなっていません。
 
今後も倫理的な問題を考えると、日本人の実際の患者映像を使った教育プログラムができるかといえば、難しいのではないかと思います。
 
だからこそ、米国で撮影された非アジア系の子どもの映像であるという、私たちからしたら日本の現場にそぐわない部分があったとしても、それでもあまりある価値があると考えています。
 
 
現時点、横浜での次回の PEARSプロバイダーコース with シミュレーションの開催予定は立っていませんが、2017年3月以降くらいには計画していきたいと思っています。
 
また、
 
 12月23日(祝)・・・福岡県久留米市(CPR-net久留米と共催)
 12月26日(月)・・・静岡県藤枝市(BLS静岡スキルアップラボと共催)
  2月26日(日)・・・沖縄県那覇市(BLS沖縄と共催)
 
での Sim-PEARS 開催は決まっており、引き続き参加者募集中です。
 
 
PEARS自体は今は全国展開されていますが、本来のシミュレーション込みの PEARS プロバイダーコースを開催しているところはほとんどありません。そのため、BLS横浜が提供する Sim-PEARS の需要は高く、求めに応じて全国に出向いて講習展開を行っています。
 
もし病院等で開催希望があれば、出張講習も検討しますので気軽にご連絡ください。
 
 

 
 

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G2015-BLSプロバイダー暫定コースとは?

昨日は横浜で AHA-BLSプロバイダーコースG2015 でした。

BLSプロバイダーG2015正式版講習開催風景

 
BLS横浜では、日本ではまだ公式開催されていない英語DVD教材を使った最新のBLS講習を先行開催しています。
 
米国ハワイ州のトレーニングセンター直轄活動拠点だからこその英語DVDを使った講習展開でしたが、英語であっても先行開催の意味は大いにあるなと毎回感じています。
 
現在、日本のITC(International Training Center)で開催しているガイドライン2015講習というのは、G2015と銘打っていても、その中身は古いG2010版のDVDを使った【G2015暫定コース】です。
 
古い教材を使って、変更点を注釈として説明しつつ進行する【仮】の講習展開です。
 
中身としてはいちおうは最新のガイドライン2015に準拠しているといって間違いはないのですが、それは蘇生科学に限っての話。
 
逆に言えば、G2015暫定コースでは蘇生科学に関わる僅かな部分を補正しただけ、とも言えます。
 
今回のガイドライン2015では劇的にBLSコースが変わりましたが、それは蘇生科学とは別の教育工学に関する部分です。
 
ガイドライン2015暫定コースと正式コースを比較した場合、その違いは雲泥の差とも言えます。
 
G2015正式コースにあって、暫定コースにないものを列挙すると、、、
 
1.院内心停止の救命の連鎖
2.チームダイナミクス
3.チーム蘇生のシミュレーションとデブリーフィング
4.オピオイドによる緊急事態への対応
5.実技試験をゴールとしない現場への転用
 
そもそもこんな項目をあげること自体ナンセンスなほど、インストラクショナル・デザインに基づいた教材設計が根本から変更されています。
 
つまり、G2015暫定コースと、G2015正式コースは、まったく別物です。
 
G2015らしさというのは、正式コースでしか体感することはできないでしょう。
 
 
昨日もG2015正式版を開催して思いましたが、G2015コースで最大の山場は受講者全員で取り組んでもらう10分間のCPRにあります。
 
現実にありうるシナリオで、CPRを10分間実施してもらい、その後、「デブリーフィング」で振り返りをしてもらいました。
 
昨日の場合は、受講者さんたちの意向も踏まえて、駅で見ず知らずの人たちを巻き込んでのCPRということになりましたが、難しいのはモチベーションも技術もバラバラな人たちをどうやって蘇生チームに引き込んでいくか、という点でした。
 
うまくいっても、うまくいかなくてもどっちでもいいのです。
 
やってみて、参加者たちで振り返りをして、実践に活かせる示唆を得ることができれば…。
 
これまでのBLS講習では、アルゴリズムを覚えて、そのとおりに模範演技ができることがゴールになっていました。
 
しかし、G2015では現場での転用に重きが置かれるようになり(つまりLife is Whyです)、現場での実践は講習会場では保証できないということがはっきりと銘打たれたのが最大の違いです。
 
この部分はG2015暫定版ではまったく触れられていません。
 
結局、カークパトリックのレベル2を限界としていたのがG2010までのAHA-BLS講習であり、それを踏襲せざるを得ないG2015暫定コースは、形だけはG2015ですが、その本質はなにも盛り込まれていないと言わざるを得ません。
 
講習終了後に行う自分の職場でのシミュレーションと自主的なデブリーフィングという学びの機会を作ること、ここに持っていくのがG2015の正式なBLSコースです。
 
 
G2015のBLSプロバイダーコースDVDが発売されるのが2017年1月〜3月というのがAHAの公式な発表です。DVD発売後60日間は古い暫定コースの開催が認められます。
 
それを考えるとガイドライン2015の恩恵をすべての人がフルに体感できるのは来年の6月以降ということになりそうです。
 
 
ということで、2017年6月までの間にAHA-BLSコースを受講する人は、自分が受けるコースが暫定版なのか、正式版なのかは確認した方がいいと思います。
 
受講控えということは勧めたくありません。
 
G2015暫定版コースを開催しているところでも、カード有効期限の2年間は復習参加無料というところもあります。そんなところを見つけて、暫定版であっても早めに受講することをお勧めします。
 
そして、来年の1月〜6月の間に日本語DVDが発売されたら、無料でコース参加するというのがいちばんのオススメのパターン。
 
BLS横浜ではすでにG2015正式版に移行していますが、英語DVDに日本語での解説を加えながらの進行です。もちろん復習参加制度を設けていますので、あらためて日本語DVD発売後に来ていただくことを積極的に推奨しています。
 
 

 
 

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AEDトレーナー(FR-2)に充電式単三電池を使うアイデア

BLSやAED救命講習で使い勝手が良くて人気のAEDトレーナーFR2。

欠点は単2電池6本使用で重いのと、電池交換のコストがかさむこと。

そこでの一工夫として、単3電池を単2電池がわりに使えるスペーサーを活用して、充電できる単3型のニッケル水素電池を使用しています。

AED練習機にスペーサーをかませた充電式単3電池を使う

ニッケル水素電池といえば、かつてのSANYOのエネループが有名ですが、いまでは同等品で安いのがいろいろ出ています。写真のは Amazonのオリジナル の充電電池。

スペーサーは100円ショップで3つ入り108円で購入できます。(充電電池は100円ショップでも1本108円で買えますが、旧世代のニッケルカドミウム電池で、長期保存ができないのでAEDトレーナーにはあまり勧めません)

使用頻度が低いと元が取れない場合もあるかもしれませんが、ガンガンとAED講習をしている方にはおすすめです。

電池のスペーサーを使う場合は、写真のFR2の場合は、プラス電極の部分が電池ボックスのスプリングと接触不良になる場合があるので、その場合は、キッチン用のアルミホイルを小さく畳んだものを挟み込んでおくと解決します。

独立系のインストラクターの皆さん、参考にどうぞ。

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BLSの新トピック-オピオイドとナロキソン

昨日開催したBLSプロバイダーコース(G2015英語版)で受講者の皆さんの反応が大きかった部分にオピオイド過量によるナロキソン注射の話がありました。

これはガイドライン2015から登場した新しいBLSのトピックのひとつです。

オピオイドとは、一言で言えば麻薬の総称です。フェンタニル、オキシコドン、ハイドロコドンなどの鎮痛目的の医療麻薬、またヘロインのような違法薬物を過量に摂取した場合、意識障害を起こし、呼吸が停まります。

そんな状態で発見されたときは、BLSプロバイダーのプロトコルでは5−6秒(成人)に1回の補助呼吸を行うことになっていましたが、G2015からはそれに加えてオピオイド拮抗薬(簡単にいうと解毒剤)であるナロキソンの注射や経鼻投与を行うことが盛り込まれました。(ハートセイバーCPR AEDコースG2015正式版にもナロキソン投与の話は入ってきますが、いずれもレクチャーのみでエピペンのような実技練習は含まれません)

2014年から、米国ではナロキソン自己注射器が FDA(US Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)の承認を受けたことから、二次救命処置ではなく誰でも行える一次救命処置の範囲に入ってきたようです。

リンク先の記事を見てもらえば分かる通り、米国では麻薬中毒による死亡事故が見過ごせない現状。医療用麻薬としても、最近だと、トヨタ自動車の米国人役員がオキシコドンを日本に持ち込んで麻薬取締法違反で逮捕された事件が記憶に新しいところです。

同じG2015でも日本版ガイドラインではナロキソン投与は二次救命処置扱いにしていますので、このへんも日米ガイドラインの違いと言えそうですね。


↑ナロキソン自動注射器EVZIOのデモ動画

オピオイド中毒による致死的緊急事態とナロキソン自動注射器
http://blog.bls.yokohama/archives/2901.html

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