PEARSで学ぶ二次救命処置 医師が前提のACLS/PALSとの違い

AHAの患者急変対応講習、PEARSプロバイダーコースでも、G2010までは除細動や薬剤投与を含めた心停止対応、いわゆるALSが含まれていました。

PEARSプロバイダーコースで学ぶ二次救命処置ACLS

しかし、それがACLSやPALSと決定的に違うのは、蘇生チームのリーダー役割を期待されていないという点です。

PEARSコースでは、リーダーはインストラクターが行い、受講者はチームメンバーとしての蘇生に参加します。

この図式、日本の看護師の現状どおりだと思いませんか?

ACLSやPALSの教育プログラムが日本にマッチしていないのは、看護職や救命士であっても、コース中は医師の役を演じ、診断や薬剤投与指示などを出すことを強いられるという点にあります。

もちろん、そこから医師の思考パターンや思い、重圧感を学ぶことで、現場での潤滑なチームワークに反映されるという利点もあるのですが、大方のナースにとっては、受講にあたっての心的な負担になっているのも事実です。

このことを考えると、PEARSコースで学ぶ二次救命処置は、看護師にとって等身大、現実にありうる想定の中ですべてが進んでいくのが特徴的といえます。

最終決定の指示は、医師役を演じるインストラクターが出しますが、その医師役に対して、適切に状況を報告し、指示を取り付けるという日頃の業務を強化する訓練がPEARSでの心停止ケースです。

インストラクター役の医師は、慌てて間違った指示を出すかもしれません。初期研修医で、判断しかねてなかなか決断してくれないかもしれません。

そんなときにいかに、コースで学ぶチームダイナミクスの要素を活かして、建設的に介入するか?

また、PEARSコースのおもしろいところは、講習器材としてモニター付除細動器を使用しても、しなくてもかまわないという点にあります。

ACLSやPALSでは、手動式の除細動器の使用が前提となり、場合によっては現場の看護師にとっては使い慣れない非現実的なこともあります。

しかしPEARSでは、AEDを使用した二次救命処置という形で進めていけますので、これも大方の看護師にとってはきわめて日常的です。

そこに電話連絡として医師の指示が入れば、血管収縮薬(アドレナリン)や、抗不整脈薬(アミオダロン等)の投与も可能であり、ACLSやPALSとは違って、現実に起こりうるようなシチュエーションで、看護師による二次救命処置を体験することができます。

蘇生中は、どうしても心電図波形が気になってしまいますが、AEDが判断するのはVFか否か、ただそれだけ。そのシンプルさが、本来の蘇生アルゴリズムにも即していて、このあたりは、ACLSなどに造詣が深い方にとってもいい刺激になるようです。

PEARSコースは、非心停止対応、アセスメントを学ぶコース、という位置づけを強調してきましたが、AHAとしての分類は二次救命処置(ALS)の範疇に含められています。

このようにPEARSのALS部分に注目しても、まさに日本の看護職にとってうってつけのコースといえます。

心停止前の予兆の段階からの介入、心停止に至った後のBLSからALS。

ナースにとっての急変対応を総合的カバーした等身大の教育プログラムといえるでしょう。

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