同じ「徐脈」でも ACLS と PEARS® では大違い

PEARS® プロバイダーコース の開催が続いて、たまに ACLS プロバイダーコース をやってみると、いろいろと違和感を感じるものですね。

ACLS では、徐脈と頻拍のケースで非心停止を扱いますが、PEARS における頻脈や徐脈とは基本的に別物です。

ACLS プロバイダーマニュアル107ページに明記されていますが、ここでいう徐脈は「徐脈性不整脈」ということで、あくまでも「不整脈」のみを扱うのが ACLS の特徴です。

基本は不整脈(房室ブロック)による徐脈を前提にしていますから、介入としては心拍数を上げるためのアトロピン投与や経皮ペーシングです。

それに対して、PEARS® で出てくる徐脈は、低酸素による生理的なもの、つまり洞性徐脈ですから、徐脈に対する介入は酸素投与と人工呼吸になります。

同じ徐脈でも、意味をよく考えないと受講者は混乱するかもしれないなと思いました。

ACLS でも、呼吸停止ケースや PEA の部分では「洞性徐脈」についてもわずかに触れられているのですが、あまり印象に残る部分ではないでしょうね。

大人と子どもの違いといえば、それまでなんですが、ACLS プロバイダーマニュアルの26ページや30ページあたりに書かれているような迅速対応チーム(Rapid Response Team)に必要なスキルという点で考えると、ACLS はミスリードをするような印象も否めません。

AHA の ACLS は、その名の通り、cardiac(心臓)のライフサポートです。

汎用性のあるアドバンスド・ライフサポートではないという点に注意する必要があります。

つまり、急変対応研修として考えた場合は、癖があるというか、やや偏った内容なのが AHA-ACLS といえます。

ACLS が不要と言っているのではありません。ACLS ではカバーできない部分が大きいという認識が重要なのではないかー。

患者安全研修について考えたとき、私たちは急変対応を根本から考え直す必要があるのではないかと思います。

ちなみに、洞性徐脈も不整脈による徐脈もどちらもしっかりカバーしている唯一のプログラムが PALS です。

小児に特化したコースと思われがちですか、ゼネラルな急変を考えた時にそこから学べるものは、なにものにも代えがたいと思っています。

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