酸素の流れを考えると人の生死が見えてくる-救急のアセスメント

酸素を細胞に送り続けること。

これが人が生きている根源的なしくみです。細胞に酸素が届かなくなると、人は死にます。死因はいろいろあっても、「酸素化と灌流」が原点。よく覚えておいてください。

大気に21%含まれる酸素が、体内の細胞までどういう経路で届くでしょうか? その経路が阻害される事態が生命危機であり、心停止に次いで急を要する緊急事態です。

1.呼吸障害(4種類)

酸素が細胞まで届くための入口は口と鼻。そこから喉を通って肺に届きます。

この過程で、もし喉に食べ物が詰まっていたら? 火事で熱風を吸い込んだり、アレルギー反応で喉の粘膜が腫れて空気の通り道がふさがってしまったら?

これが上気道閉塞です。呼吸障害で最も怖い事態。喉の奥から気管分岐部までの上気道は一本しかありませんから、これが詰まったらアウトです。

救急で気道 Airwayを真っ先に評価するのはこういう理由からです。酸素が体内に取り込まれるゲートが上気道なのです。これが破綻していたら、その先も機能しません。

無事に上気道を通過した酸素は、気管支を通って肺胞に届きます。しかし気管支に痰が詰まっていたり、喘息のように細く狭窄した状態だと酸素の流れが滞ります。これが下気道閉塞です。

肺胞に酸素が届いても、肺炎などで肺胞が炎症を起こしていて酸素を血液に溶け込ませる機能が障害されている場合、酸素の流れが滞ります。これが肺組織病変。

このように酸素が血液に溶け込むまでの過程に問題がある場合を、呼吸障害と呼んでいます。

上気道、下気道、肺組織病変。酸素の流れを考えると、簡単ですね。

呼吸障害にはもう一つ、呼吸調整機能障害というタイプがあります。これは呼吸筋を支配してる中枢神経の障害です。頭部外傷や薬物過量などで、呼吸抑制が起きたり、呼吸のリズムが狂った場合がこれに含まれます。

2.循環障害(2種類)

肺胞から血液に溶け込んだ酸素は、血流に乗って細胞へ運ばれて行きます。

この過程に問題があるのが循環障害で、ショックと呼ばれます。

出血や脱水などで、血液の量が少なくなっていたら必要な酸素運搬が十分に行えません。これが循環血液量減少性ショックです。人の死因としては最も多い、見逃してはいけない生命危機状況です。

血液の絶対量は問題なくても、血管が病的に拡張することで血圧が下がり、さらに血管の網目が広がって水成分が組織の隙間に漏れでてしまうことで、酸素運搬能力が下がる場合もあります。これが血液分布異常性ショックです。

血管が拡張してしまう原因は、病原菌が出す毒素による炎症反応(敗血症)や、アレルギー反応による全身性の炎症反応(アナフィラキシー)がよく知られています。

このように人が命を落とす原因を酸素の流れがどこで阻害されるか、で考えるとわかりやすいです。

原因がわかれば、その対応策見えてきます。

そこをパターン化して、認識できるようにして、対応策を考えるのが PEARSプロバイダーコース です。


 

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