指導員養成と教育工学一覧

2013年、AHAインストラクター認証制度改訂

2013年、AHAインストラクター認証制度の大改訂がありました。
 

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2006年から採用されていたibstpi (international board of standards for
training, performance and instruction)のインストラクター・コンピテンシーから脱却して、AHAコースをそれぞれの特性に合わせたインストラクション指導教材をe-learningで作成したのが最大の変更点です。
 
その結果、各科共通だったCore Instructorコースが廃止され、各科ごとのInstructor Essentialsというオンライン教材が開発されました。
 
話をはしょって、末端のみを見れば、コア・インストラクターコースがインストラクターエッセンシャルに取って代わった、といえるかもしれません。
 
しかし、その背後にある、「教材設計そのものとインストラクターに求められる役割が新たに定義された」という点に、既存のインストラクターは着目すべきです。
 
 
 


看護職のためのBLSインストラクター資格活用法セミナー

看護師のためのAHAインストラクター資格活用法講座

 
4月27日(日)、横浜でAHA-BLSインストラクターのための資格活かし方講座を企画しました。
 
当初、夢をもってインストラクターになった方たち、その夢はかないましたか?
 
またそこに向かって進めていますか?
 
日本でAHAインストラクターとして活動していくというのはどういうことなのか?
 
資格の意味や制度といった原点を振り返りつつ、世界に誇るAHAインストラクターである看護職としてできることを一緒に考える2時間半。
 
所属トレーニングセンターは問いません。
 
また、看護職以外でもAHAインストラクター制度に興味がある方もご参加いただけます。
 
詳しくは下記ホームページをご参照ください。
 
 
 

 
 
 


救命講習 教える方法を考える

心肺蘇生法講習もファーストエイド講習も、やっていることは「教育」です。

大学に教育学部があるように、人にものを教えるには理論・理屈があります。

よりよいインストラクター、指導員でありたいなら、教育理論を学ぶのが近道といえるのではないでしょうか?

そこで、この業界で注目されているのが、教授システム学インストラクショナル・デザインです。

ふつうの心肺蘇生法講習では技術の積み上げで教えていくのが一般的かと思います。

しかし、まったく逆のやり方もあります。BLS横浜でもファーストエイド講習ではよく取り入れていますが、細かいやり方を教える前にシミュレーションとして、いきなり傷病者対応を体験してもらう、というやり方です。

当然、うまくはできません。しかし、なぜうまく行かなかったのか? を振り返ってもらいます。

どういう知識や技術があればその状況をうまく裁けただろうか?

そんなふうに問題点に直面してもらい、解決策を一緒に考えて行くのです。

これは成人学習の基本である学びたい! という大きな動機付けになりますし、学んだことが記憶に深くきざれるためにも重要です。

この思考パターンは「問題解決型」といえ、私たちが日常的に経験から学ぶことそのものです。

本当に問題に直面して失敗すると損失が大きいので、シミュレーションという模擬体験を設定し、学びの場を作り上げているともいえます。

こんなふうに考えてみると、当たり前と思っていた「教え方」にも、いろいろなアプローチがあり、幅があるような気がしてきませんか?


BLS横浜の講習はてきとーです。

BLS横浜のBLS講習を体験されたから、「適当さ」が良かったとコメントを頂くことがよくあります。
 
熱心に蘇生法を学んでいる方から言われることが多いように思います。
 
確かに適当です。
 
「反応確認のとき、両手で肩を叩くのと、額に手をあてて片手で肩を叩くの、どっちがいいんですか?」
 
消防系の講習でがっちり身につけてきた人からはよく質問されます。
 
私達の答えは「どちらでも、やり慣れた方でどうぞ」。
 
「胸骨圧迫の手の組み方はどっちがいいんですか?」
「自分にとってやりやすいやり方でいいと思いますよ」
 
こんな具合に、CPRにきっちりした型を求めることはしません。
 
なぜなら、「型」や、やり方に医学的根拠がないからです。
 
BLS横浜の講習、というより、BLS横浜のベースとなっているAHA(アメリカ心臓協会)の講習がそうなのですが、医学的根拠(エビデンス)があることにはとことんこだわりますが、エビデンスがないことにはうるさくありません。
 
いちおうAHA流の「型」はDVD教材のデモ映像で示されていますが、別にそれじゃなくちゃいけないというわけではなく、実技試験で問われているのは、医学的根拠がはっきりしている「質の高い蘇生」を行えているかということだけです。
 
肘が曲がって、見るからにナヨナヨした(?)胸骨圧迫でも、それが胸骨の下半分を少なくとも5センチ押せていて、ペースが100回/分を下回らず、しっかりリコイルができていれば、どんなに見た目がひどかったとしても、堂々の合格です。
 
意外に思われるかもしれませんが、G2010の時代の今でも、呼吸確認に「見て聞いて感じて」をやったとしても、反応確認、呼吸確認、「誰か来て!」までを10秒以内にやっていれば、実技試験は合格です。
 
新しい呼吸確認法に医学的な確固たる根拠があるわけではないからです。(現にBLSヘルスケアプロバイダーマニュアルでも呼吸確認法をどうしたらいいかは明記されていません)
 
とかくきっちりと型にはめようとして、遊びがないような印象で教えられることが多い心肺蘇生法。だからこそ、エビデンスベースドで、根拠がないことには鷹揚さを持つ、というスタイルが「適当」「緩い」と感じられるのかもしれません。
 
 


病院内AHAトレーニングサイト設立、成功のポイント

医療従事者向けの心肺蘇生法(BLS/ACLS)トレーニングといったら、日本でもアメリカ心臓協会(AHA:American Heart Association)の講習プログラムの独壇場みたいな感じになっています。
 
医療従事者が蘇生術を学ぼうとしたら、地域にあるトレーニングサイトに受講申し込みをして、、、というパターンが多いかと思いますが、本来、医療機関での緊急対応訓練は「業務」ですから、病院の中で行われるのが自然です。
 
今の時代、BLS訓練くらいは、病院の中で救急部の医師や救急認定看護師が中心となって自家講習をするところが増えていますが、どこも指導者育成、講習を行える人材を増やすという点で、行き詰るケースが多いようです。
 
そこで、ひそかに広がりつつあるのが、病院内の教育プログラムとしてAHA講習を採用する、というケースです。
 
アメリカ心臓協会プログラムのいいところは、プロバイダーと呼ばれる蘇生技術提供者を育てるだけではなく、そのプロバイダーを育成するインストラクターの指導プログラムも秀逸であるという点です。
 
オリジナルで教育プログラムを作ろうとしたとき、いちばん大変なのは、何を教えるかというコンテンツの整理と、どう指導するか、という指導要綱、そして教材作り。さらにはインストラクタートレーニング。
 
それらを自前でするよりは、既存のシステムに乗っかってしまおう、という考え方。ある意味、リーズナブルな考え方です。
 
そこにかける労力と質、効果を考えたときに、結果的に安上がりなのは間違いないと思います。なにより、質という点では決定的でしょう。
 
BLS横浜では、これまで6箇所の病院内トレーニングサイトの設立支援をしてきて、今でも3つの病院に直接的に継続支援を行っています。
 
そんな経験の中から感じる、成功のポイントがいくつかあります。
 
1.インストラクターの中心は看護師であること
2.医師のインストラクターを一人は置くこと(できれば常勤の部長クラスが望ましい)
3.インストラクターは特定部署に集中せず、分散していること
4.ナースのインストラクターは男性も含まれること
 
 
今日から、継続支援にいくとある病院はまさにこのケースに該当し、将来性がとても楽しみです。
 
現実問題、医師は忙しく、なかなか講習には参加できないケースが多いのが現実ですが、病院内での位置づけや許可申請などのとき、診療部から起案を出せるということは大きいです。
 
またBLSだけではなく、ACLSも自前で展開しようと思ったときは、看護部だけでは何かと難しいことが多いということも加味して、やはり医師のインストラクターの存在は要となります。
 
これから、病院としてAHAシステムを取り入れようとしている方は、どうぞ参考になさってください。
 
 
 


BLSインストラクターを目指す人へ〜BLS横浜の指導員養成スタンス

BLS横浜は、俗にいうAHAトレーニングサイトではありません。AHA BLSコースやACLS、PALS、PEARSなどの開催権限を持った個人インストラクターの集合体です。

トレーニングサイトとして、所属インストラクターを増やして、組織を大きくしていくという発想は根本的にありません。

そもそもBLS横浜は”組織”でもありません。BLS横浜は、個人インストラクターと、救命スキルを学びたい人を結びつけるチャンネル、窓口です。

私たちはインディペンデント・インストラクターとして個人活動するインストラクターを育成し、あちこちで救命講習が独自開催される環境を作ることを最大の目的としています。インストラクターになって最初のうちは経験を積む場所を提供していきますが、最終的には独立して巣立っていくことを願っています。

そんな意味では、他のAHA講習開催活動拠点とはまったく考え方が違っているかもしれません。

これまで横浜市内で数カ所、東京、千葉、大阪や北海道での活動拠点新設のお手伝いをしてきました。

インストラクターを一箇所に囲い込んで、組織の強化、発展を図るのではなく、価値ある技術を身につけた人を拡散させていく。

そんな救命の連鎖の強化が私たちの使命と考えています。


心肺蘇生法インストラクターになりたい方へ

たまに「インストラクターになりたいんです」という問合せを頂きます。
 
BLS横浜で発行できる公式なインストラクター資格はAmerican Heart Association(AHA)のBLSインストラクター、ハートセイバー・インストラクター、そしてACLSインストラクターの3つですが、あまり積極的には案内をしていません。
 
というのは、これらの資格を取得しても活かせる人が少ないという現状があるからです。
 
「インストラクターになりたい!」と思う人は、なぜインストラクターになりたいのでしょうか? またインストラクターになって何をしたいのでしょうか?
 
AHAのインストラクター資格を取得することで、目的が達成できるかどうか、そこが心配な場合が多々あります。
 
皆さん、あまりご存じないのはAHAインストラクターは、職業インストラクターだということです。
 
ダイビングのインストラクターが、ボランティアでダイビングを教えてライセンスを発行するわけではないのと同じで、AHAインストラクターも対価を取って技術指導をし、ライセンスを発行します。
 
つまりAHAインストラクターとして公式に活動する以上、金銭授受が関わってくるのです。
 
インストラクター希望の動機に「職場で心肺蘇生を教えたい」という方がいらっしゃいます。病院勤務の看護師さんが多いのですが、しかしその目的を達成できた人は数えるほどしか知りません。
 
いくら医療の世界では定評のあるAmerican Heart Associationの公認インストラクターといっても、病院の中でお金を取っての講習活動を認めてくれる病院施設はあまりありません。公立病院勤務の方などは公務員の兼業禁止規定にも抵触することになるでしょう。
 
教える技術を身に着けたい! そんな動機もあるかもしれません。しかし、そのために公認インストラクターになることは必須でしょうか? 費用もかかります。時間もかかります。
 
ファミリー&フレンズCPRという、資格が無い人でも堂々と開催できるAHAコースが日本語化された今、あえて公認AHAインストラクター資格を取る必要がある人は、相当少ないはず、と思っています。
 
BLS横浜では、CPRを教える技術を持った人を増やすことも、自分たちのミッションと考えています。
 
ですから資格を活かせる立場にある人には、AHAインストラクターになる道も提供します。
 
しかしそれ以上に、公認資格はないものの、AHAインストラクター並みに、もしくはそれ以上にCPRをやファーストエイドを指導できる人を育てていきたいと考えています。
 
公認資格をとるばかりが、インストラクターになる道ではない。そんな本来はあたりまえのことを当たり前に体現できるBLS横浜でありたいと思います。
 
 
ということで、たまに開催している指導者養成の無料ワークショップ。
 
現在は、「心肺蘇生法の仕組みを理解する」セミナーの参加者を募集しています。
 
BLSヘルスケアプロバイダーコースでもほとんど教えなくなってしまったCPRの理屈を理解しようというコンセプト。座学中心になってしまいますが、インストラクターレベルで知っておきたい、蘇生の本質と周辺事情を理解していただく内容です。
 
AHA公認インストラクターになるには、ある程度のコストが掛かりますが、ボランティアベースでの蘇生インストラクターを目指す人のために、AHAインストラクターと同等以上の学びの場をできる限り無償で提供していくスタンスでいます。
 
 


「森のサバイバル実験室」〜考えてもらうCPR講習

財団法人「みんなの森」さん主催の「森のサバイバル実験室」にスタッフとして参加してきました。
 
火おこし、竹で食器を作る、ハンモックを作って森で泊まる、など小学校高学年の子どもたちを対象としたシリーズ物のアウトドアイベント。
 

森のサバイバル実験室:焚き火でパンを焼く  森のサバイバル実験室:手作りハンモックで森に揺られる  森のサバイバル実験室:キャンプファイヤー

 
その一環として、野外救急法を担当しました。
 
昨今の救急法といったら、心肺蘇生法がメインですが、場所が野外ともなると心肺蘇生法だけでは心もとないものです。
 
そこで最初から心停止のCPRだけではなく、ファーストエイドを中心に据えた講習展開を考えました。
 
対象は小学校高学年の子どもたち。普段大人にやっているように教えても無理があります。また、キャンプしながらの屋外講習ということで、パワーポイントなどの映像教材はもちろん、プリント資料も一切使わず、どこまで教えられるかという、ある意味挑戦的な内容でした。
 
今回強調したのは、命に関わる優先順位をしっかり理解してもらうこと。そして、子どもたちとの対話で講習を進めていきました。
 
「ケガした人や急に具合が悪くなった人がいた時、最悪の状態ってなんだと思う?」
 
そんな話をして考えてもらっているうちに、スタッフの一人が突然、胸を抑えて倒れこんで動かなくなってしまう。
 
「さあ、この人、いまどんな状態? 生きてる? 死んでる? 生きてるんだったらどうしたら生きてるってわかる? 生きてるってどういう状態なんだろう?」
 
そんな子どもたちとのやり取りの中から、反応がある、息をしている、体が温かい、脈がある、などの生命徴候のついて目を向けてもらいました。
 
「体温も心臓が止まった直後はまだ温かいから、あんまり当てにならないよね? 脈ってすぐ見つけられる? 隣の友達の脈を探してみて? そう、難しいよね。これは看護師さんがやっても意外とあてにならないって言われてるんだよ」
 
つついてみる、くすぐってみる、なんていう子どもならではの意見もありましたが、それはある意味「刺激を与えての反応確認」ってこと。否定はせずにちゃんと拾い上げます。
 
息をしているかしていないかってどうしたらわかるだろう?
 
ここも子どもたちに考えてもらいます。口元に手をかざす子、顔を近づける子、いろいろいます。全部正解。「でも風が吹いてたらわかりにくいよね? 川の音がうるさかったら聞こえないじゃん。いちばん簡単な方法はなーんだ?」
 
ということで蘇生ガイドライン2010で推奨されている「胸から腹にかけての動きを見る」方法の妥当性を納得してもらいました。
 
結論だけを教えるのは簡単です。時間もかかりません。でも受講者の中にどれだけ残るかということを考えると、こんな方法もありです。自分たちで考えて見出したものはまず忘れません。
 
呼びかけに反応がなくて、呼吸もしていない。これが最悪の状態。
 
そんな時は「胸を押す!」
 
こうして、CPR練習に突入しました。
 
 


オリジナル心肺蘇生法講習の組み立て方 その2 [G2010の胸骨圧迫]

連載宣言をした「G2010時代の救急法講習の進め方~指導者ワークショップ」に関するフォローアップ記事第二段。

今回は、皆様の関心が高いと思われる蘇生ガイドライン2010の手技の指導方法について考えてみたいと思います。

手技に関する変更点は主に次の3つ。

1.胸骨圧迫の深さ(成人) 4-5センチ程度 → 少なくとも5センチ
2.胸骨圧迫の速さ 100回/分程度 → 少なくとも100回/分
3.「見て聞いて感じて」の廃止 → 気道確保なしで胸の動きの目視のみ

まず、胸骨圧迫(心臓マッサージ)からいきましょうか。

この変更点をどう救命講習に反映させますか?

変更というにしてはあまりに些細です。特に圧迫の深さの変更は、深さが記録できる高級マネキンを使っていない限り、評価できるものでもありません。

ましてや言葉で、「少なくとも5センチに変わりました!」と言ってもピンとくるわけでもないし、、、、

企業から依頼されたAED講習を組み立てるというグループワークの中で、そんな具体的な指導方法をディスカッションしてもらえたらというのが主催者側の意図でした。

5センチ以上と数字を連呼したところで、受講者の行動には結びつきません。

どうしても数字に目が奪われがちですが、少なくとも5センチに変更されたというメッセージの本質はなんでしょうか?

すごく単純化していうと、弱いとダメ、ということ。

「思ったより強く押してください、自信をもって」などと伝えるのが現実的でしょうか?

たいていの人の胸骨圧迫は「弱すぎる」という点は、ガイドライン2005の時点で言われています。今回のガイドライン2010で新たに示されたのは、不要な人に胸骨圧迫をしてしまった場合でも実害(骨折等)は思ったより少ない(2%)。だから、ためらわず胸骨圧迫をすべきということ。

受講者の実行性を高めるための情報提供として、こういった受講者の不安を軽減させる話もG2010の方向性としてはありと思います。

続いて、胸骨圧迫の速さについて。

これも「少なくとも」100回/分ということで、微妙な変化です。

これに関してはいろいろな意見が出ました。

・110回/分程度のテンポの音楽を見つけて、リズムを取る
・メトロノームを105回/分に設定して、言葉上100回/分以上と説明
・100回/分で従来どおり練習して、このテンポを下回らないようにと説明

何がいいんでしょうね。

エビデンス的には、80回/分を下回ったらダメという点は譲れない

120回/分程度で速いほうがよかったというデータ

速すぎると心臓が空打ちになって効率下がる

速すぎると疲れて、質の高いCPRが継続できない

ここで、インストラクターが押さえておかなくてはいけないポイントがひとつ。

「それじゃ、速ければ速いほうがいいんですか?」

という受講者からの質問への対応。

日本版ガイドライン2010では、速さの上限に関しては十分なエビデンスがないと書かれています。

ガイドラインのとおりに答えれば間違いはありませんが、受講者の行動レベルへの働きかけとしてはちょっとそっけないですよね。

そこで頼りになるのは、まずは 国際コンセンサスCoSTR 2010

There is insufficient evidence to recommend a specific upper limit for compression rate.

ただ、残念ながら日本版ガイドラインの記載とまったく同じ。(というか日本版ガイドラインがこれを踏襲しただけなのですが)

次に、他国のガイドラインを見てみると、面白いことがわかります。

まずはヨーロッパ蘇生協議会(ERC)のガイドライン2010

at least 100min (but not exceeding 120min)

少なくとも100回/分。しかし120回/分を越えないこと

CoSTRにも書かれていますが、論文としては120回/分で効果的だったというデータはあります。しかしそれ以上に関してはデータがない。だから少なくとも120回/分までは速くて大丈夫、という判断。

この部分を採用したのがヨーロッパ。やはり上限を示さないと指導上、困ると考えたのかもしれませんね。

ちなみに オーストラリアのガイドライン2010 では、こんな風に書かれています。

approcimately 100 compressions per minute (almost two compressions/second)

約100回/分(ほぼ1秒に2回)

ここでも120回/分というテンポが登場しています。1秒に2回という言い方は、1分間に100回以上のテンポで、というよりは、わかりやすくて使えそうですね。

このあたりの話を講習会でどれだけ踏まえるかは、インストラクター次第です。日本版ガイドラインには書かれていないことだから受講者に言っちゃいけないというのも一つの考え方。

ガイドラインにないことを結論として伝えることは問題があるかもしれませんが、方向性や考え方を示す程度の引き出しをインストラクターは持っておきたいものです。

こうした情報を知っていれば、「ガイドラインに書いてあるんだから、速ければ速いほうがいいんですよ。1分間に150回を目指しましょう」なんて、おかしなことをいう人はいないはず。

スイマセン、また息が切れてきました(^^;

「見て聞いて感じて」の廃止 については、次回、書きます。


オリジナル心肺蘇生法講習の組み立て方 その1

先日、「G2010時代の救急法講習の進め方~指導者ワークショップ」を開催しました。
 
所属団体問わず心肺蘇生法普及に携わっている人たちが一同に会して学び、情報交換しようという無料のイベント。
 
連休の最終日だったにも関わらず20名近い人たちが集まってくれました。
 
最後は put it all together ということで、CPR講習のコースデザインを行うグループワーク。それを参加しなかった皆さんにも共有していただきたく、ご紹介したいと思います。
 
 
 
その課題はざっとこんな感じでした。

『とある工場から職員50名へのAED講習の依頼を受けた。時間は2時間、予算は10万円。ガイドライン2010の流れで教えるものとして、どのようにゴールを設定し、何に注意してどんな工夫をしますか? スタッフは当日集合。手短にインストラクターたちにコンセプト、注意点など伝達してください。また修了量を出す出さないの問題、またそのデザインや文面も考えてください。可能であれば「よくある質問集」も作ってください』

 

ガイドライン2010対応心肺蘇生法講習の組み立て方ワークショップ

 
 
今回、ワークショップに参加した人の大半は、AHA BLSインストラクターや、消防の応急手当普及員など、心肺蘇生法普及団体に所属している人たちでした。
 
恐らく全国的にもCPRインストラクターといえば、団体所属が普通でフリーランスの人はあまりいないはず。
 
日本の心肺蘇生法講習は厚生労働省の検討会が示した220分という時間目安のせいで3時間コースが大半。大手団体に所属するインストラクターは基本的に3時間でCPRを教えるというスタイルが事実上標準になっています。
 
ここが第一のシンキング・ポイント。日頃3時間でやっているものを2時間で終わらすにはどうすればいいか?
 
考え方は色々あります。例えば、
 
 1.マネキンと指導者の数を増やして時間短縮を図る
 2.人工呼吸は教えない
 3.工夫をした講義時間を減らす
 4.講習終了時の目標(ゴール)の設定を変える
 
こうして、普段はあたりまえと思っている講習の流れを自分で再構築する中で、いろいろ気づくことがあるんじゃないかなというのが主催者側の意図。
 
その中で自然と心肺蘇生法講習の目的・意図の見直しも行われるはずです。
 
例えば、3時間でやっている内容を全部を無理やり2時間で終わらせようと思ったらどんなことが起きるか? インストラクターとしての目標は、「心肺蘇生法講習会」という儀式をそつなく終わらせることではないはず。受講した人が技術を身につけて使えるようになること、願わくばそのスキルを長く維持すること、ですよね。
 
で、あれば受講者のゴールを設定して、講習全体をチューンナップもしくは再構築していく思考が必要となります。
 
こんなところをグループワークのディスカッションで気づいてもらえたらなと考えていました。
 
 
さて、2時間での講習の目標(ゴール)が決まった。次は講習の具体的な進め方を考えていかなくてはいけません。
 
日頃、自分たちが開催している講習に無駄なことはありませんか?
 
ありがちなパターンとして、全員の前でメイン・インストラクターが講義+デモンストレーション。そして各マネキンごとのブースに分かれた後、担当インストラクターがまた説明+デモンストレーション。受講者の練習時間は少なくなっていく、、、
 
デモンストレーションは本当に必要でしょうか?
 
余談になりますが、午後から行われた「G2010時代の救急法講習の進め方~指導者ワークショップ」の前に、同じ会場で市民向け無料AED講習を開催していました。
 
そこでの講習の進め方では、インストラクターのデモンストレーションは一切しませんでした。映像教材も使いませんでした。
 
どうしたかというと、まず受講者さんにやってもらいました。「はい、胸の真ん中に手の付け根を当ててください。そうです、そこです」といった具合に一人の受講者さんを手取り足とり教え、時に「どのようにしたらうまくいくでしょうか?」などと質問を投げかけ、考えながらCPRの流れを行っていただきました。
 
あまりに見事にさらっと流れてしまうデモンストレーションに比べれば、見劣りするかもしれませんが、やっている受講者さん本人や、見ている他の受講者さんの中に残るものはより鮮やかに印象づくのではないかなと思います。
 
ありがちな間違いや、注意点なども自然な形で盛り込んで説明が出来ます。
 
 
インストラクターによる、お手本となるデモンストレーションは絶対に必要なものなのでしょうか?
 
それも根本的に考えるべきポイントかもしれません。
 
 
 
 
 
ワークショップの課題の解説を、と思いましたが、この調子で書いていくと、かなりの分量になりそうなので、ここでいったん区切ろうと思います。
 
冒頭に書いた課題には、実にたくさんの要点・落とし穴が隠れています。
 
しばらく連載の形で紹介していこうと思います。目標は3日おきくらい更新。
 
どうぞご期待ください。