ファーストエイド一覧

心停止になってからじゃ遅い! 院内急変対応に本当に必要なスキルとは?

病院内で急変対応研修と思われているBLSやACLSですが、実はこれらは「急変対応」というよりは、むしろ限定的な「心停止対応」です。

患者の様態が変化して命に関わる事態が起きたときの介入が「急変対応」ですが、数ある急変の中でBLS/ACLSは心臓が停まってからの10分間の対応がテーマ。

逆に言うと、心臓が停まってからしか使えない「奥の手」ともいうべき最終手段です。

成人に多い心臓突然死の原因となる心室細動(VF)は、前触れもなくいきなり発生することもあります。そのようなときには絶大な力を発揮するBLS/ACLSですが、必ずしも突然に心停止になるケースばかりではありません。

たとえば、AHA-ACLSプロバイダーマニュアルには次のように書かれています。

「一般に院内心停止には生理的変化の前兆がある。ある研究によると、入院患者の心肺停止では全体の80%近くで実際の心停止8時間前までに異常なバイタルサインが記録された。これらの変化の多くはバイタルサインをルーチンにモニタリングすることで見つけることができる。臨床状態の悪化や素因停止が起こる前に対処できるかもしれない」(ACLSプロバイダーマニュアルG2005版、p.17)

8割は、心臓が停まってしまう前に気づけるはず、予防できるはず!

ご存知のように一度心臓が停まってしまうと、予後はよくありません。

であるなら、心停止以前に介入するべきなのは、自然な流れです。

これまでは、基本中の基本であるはずのBLS/ACLS自体が医療現場に浸透していなかったため、まずはこの標準化から始まりました。

日本に本格的なBLS/ACLSが公式に始まって約十年。

ACLSという言葉を聞いたことがない医療者は、もうさすがにいなくなりました。。

そろそろ次のステップへ、という時代に入ってきています。

心停止の対応は、ある意味簡単です。アルゴリズムにしたがって機械的に行動すればいいレベルまで精錬されています。

しかしそれ以前の急変対応というと、幅が広く、どこまでをどんな視点で含めるか、が、一本化されていないところはありますが、まず抑えておきたいのは次のような図式です。

心停止にいたる原因:呼吸・循環・不整脈

いちばん右の心原性心停止。これはいわゆるBLS→ACLSの流れです。突然起こる不整脈による心停止。

これに加えて、新たに考えたい心停止にいたる要因は、呼吸不全と循環不全(ショック)。

このふたつは予兆があり、悪化の段階があります。

それを早期に気づけば、心停止になるまえに食い止めることができる。

そのために必要なのは、循環不全であるショックと、呼吸不全の兆候と分類、重傷度の鑑別・評価を知っていることと、それぞれの段階での適切な介入=安定化を知っていること。

これは、本来は医療者すべてが知っているべきこと、特にベッドサイドで患者の近くにいる看護師は抑えておくべき基礎的な項目ともいえます。

ここを学ぶのが、患者急変対応コース for Nursesなのです。

実はこのブログエントリーは2011年に書いたものの焼き直し。記憶に残っている方もいたかもしれません。

当時のブログ記事では、非心停止のアセスメントを学べるコースとしてAHAのPEARSプロバイダーコースとPALSプロバイダーコースを紹介しました。特にこの領域で全国的に学べるコースといえばAHA PALSしかなかったということもありまして。

今回、BLS横浜では成人の心停止予防を学ぶ患者急変対応コース for Nursesを開催する運びとなり、今回この記事にとまとめ直しているところです。

患者急変対応コース for Nursesは、実はAHA PEARSを参考にして、大人の急変アセスメントにリメイクしたもの。いわゆる急変状態にある患者の映像を見てもらい、そこから、「なにかおかしい!」という気付きをピックアップ、それを、呼吸、循環、意識レベルに分類して考えていくことで、「なにかヘン!」という直感の中身を分類して、明文化された問題意識につなげる訓練を行います。

患者急変対応コース for Nursesは、病院内を想定したナースのためのファーストエイドコースといっても良いかもしれません。受講条件は基本的なBLSを習得していること。市民向けファーストエイドでもそうですが、いつでも奥の手はCPRができること。これがなくして救急対応はできません。

また逆の言い方をすれば、いくらBLSを習得しても、それだけでは使えないということに気づいたナース向けの実践急変対応講習といってもいいかもしれません。

患者急変対応コース for Nursesで学ぶ内容は、病院の避難訓練のような万が一の備えではなく、日々の看護業務で使える実践技術です。急変のときのみならず、患者の状態を把握する視点を養うプログラムだからです。また、異常事態に気づき、ドクターコースを含め、周りのスタッフに適切に緊急度を伝える能力も養います。

そういった意味で、ベナーの看護論でいうところの、ベテランナースに近づくための能力開発プログラムといっていいかもしれません。

3月30日(土)、BLS横浜としては初めての患者急変対応コース for Nurses公募コースを開催します。

http://bls.yokohama/for_nurese.html

このモニターコースでの結果をもって、今後、BLS横浜のレギュラーコースに加えていくか検討したいと思っています。

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アドバンスド・ファーストエイド講習、リアルな環境で学ぶことの違い

新規企画として開催したAdvanced First Aidコース、盛況のうちに終わりました。
 
これまでBLS横浜では、ファーストエイドを学ぶ階層構造として、次のようなモデルを提唱していました。
 
基礎編:傷病者対応コース for バイスタンダーズ
各論編:ハートセイバー・ファーストエイド or ファミリー&フレンズ・ファーストエイドforチルドレン
応用編:ウィルダネス・ファーストエイド
 
この応用編に新たに加わったのがAdvanced First Aidです。ウィルダネス・ファーストエイド、つまり野外救急法に対してAdvanced First Aidは都市部での救急対応を前提としたシミュレーションプログラムです。
 
これまで実践シミュレーションは野外救急に限定していたのは、場所がなかったから。実践シミュレーションは講習会場の中だけでは無理。その点、野外救急であれば、鎌倉のハイキングコースをちょっと外れたところなど、工夫次第ではフィールドに困りません。
 
しかし、都市部でのファーストエイドとなると、その辺の道路で模擬患者を倒れさせて救助訓練というわけにもいかず、どうしても講習会場内となってしまい、臨場感に欠けることから、開催に踏みきれませんでした。
 
そこで今回は、日本救急救命士協会さんの研修センターをお借りできることになり、屋上や階段でのシミュレーションが可能となり、実現しました。
 
メディカルラリーのような凝ったシナリオではなく、比較的ベーシックのものばかりでしたが、それでも「階段で人が倒れてます」「ビルの屋上で人が倒れてます」というのを実際の状況下で再現して、シミュレーションしてみると全然違います。
 
スカイツリーの見えるビル屋上で隣ビルからの墜落者発見!
↑工事中の隣のビルから屋上に転落者発見!
 
特に2月のこの時期、寒いんですよね。
 
ケガや病気だけではなく、屋外で地面に倒れているということだけでリアルな寒さに傷病者役は晒されます。救助者にもその寒さや風の危険性は否が応でもわかります。となると、傷病に対する処置だけではなく寒さ対策をしなければいけないという現実問題に突き当たるわけです。
 
今回は、銀色のアルミホイルを薄くしたみたいなエマージェンシー・ブランケットを装備として用意しておきました。日頃、室内の講習では適当に掛けるだけで済ましてしまうことが多い中、屋外でやると演技の傷病者役を寒さから守るためには真剣にラッピングしてあげなくちゃいけません。実際にやってみると、意外と風に煽られて扱いにくいことに気づいたり。
 
風に弱いエマージェンシーブランケット
↑風と寒さも大きな問題です
 
傷病者役として学ぶことも多々あり、きっちりと包んでくれると暖かさが違ったという感想や、いくら包んでもらっても地面と接触している部分から熱を奪われて寒かったという意見も。これらの体験は実際に路上に倒れた人に安楽な状態をサポートする上で貴重な体験となります。
 
逆に夏場にやったら、天日で60度近くまで熱くなったアスファルトには倒れた状態が続くだけで別の傷害が発生する、ということにも気づけるはず。
 
つまらないことでも、なるべくリアルな状況で再現することで見えてくるものがあるのです。
 
なかなか開催場所は限られますが、こうした実践能力を高めるプログラムを今後も開催して行きたいと思っています。
 
 

 
 
 

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傷病者対応コース at サイクルショップ

今日は、東京の国立駅ちかくのサイクルショップからの依頼で「傷病者対応コース」を開催してきました。
 
こちらのお店は自転車販売だけではなく、ロードバイクやマウンテンバイクの初心者向け講習会やツアーを開催していて、お客さんがもしもの時のために、ということで、BLS横浜オリジナル講習「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」をご指名いただき、お邪魔したという次第です。
 

傷病者対応コースforバイスタンダーズ

 
 
傷病者対応コースは、私たちが勝手に「Neo普通救命講習」とも位置づけている新しいコンセプトの救命講習です。
 
お作法ではない「使える技術」を実践的に身につけてもらうにはどうしたらいいか? をテーマに、いわゆる心肺蘇生法講習をブラッシュアップして、より現実的な対応を追加したもの。
 
具体的には、心臓が止まっていなかった場合の対処の仕方、つまりファーストエイドのエッセンスを盛り込みつつ、3時間半程度に抑えた点が、これまでにない新しさです。
 
さらに、簡単な傷病者アセスメントから、命に関わる優先順位を考えて処置していくこと、医学的処置だけではなく看護の大切さ、緊急通報の実際、安全確保の実際などをシミュレーションベースで考え、身に付ける3時間半のプログラムです。
 
もちろん内容はすべてにおいてガイドライン2010の意思をくみ、implementation、つまり実際にできる現時的なことだけに絞り込んでいます。理想論だけの講習からの脱却を目指して。
 

傷病者対応コース、最初は基本のCPR練習   傷病者対応コース:うつ伏せだったらどうしますか?

 
みなさん、自転車と野外活動の専門家。トラブルに遭遇した経験も多々あり、ファーストエイドの必要性を身にしみて知っています。シミュレーションでも自転車事故を想定することで、臨場感を持って救急対応を考えていただけたようです。
 
自転車全般に言えることかもしれませんが、特に山道を走るようなマウンテン・トレイルでの自転車事故といえば、やはり気になるのは背骨(脊椎)。
 
ということで、質問や実体験も多く、脊椎損傷の可能性に関する部分で盛り上がりました。普段はあまりやっていないのですが、うつぶせ状態から、脊柱をひねらないように仰向けにするログロールも体験してもらいました。
 

傷病者対応コース:119番通報練習も大切!        傷病者対応コース:頚椎保護とログロール

 
日頃は公募講習で、Bystander(バイスタンダー=その場に居合わせた人)という共通項で進めていくことが多いのですが、このような場面・目的がはっきりした集団からの依頼講習だと、目的を絞って、よりリアルに実践的な学びの場を作ることができます。
 
一般的な心肺蘇生法や救急法の公募講習に参加しても、そこから実りの多い実践的な学びを得ることは難しかったでしょう。
 
このように目的に合わせて講習をアレンジすることは、インストラクターにとっても貴重な体験となり、今日も新たな発見がたくさんありました。
 
 
 
スポーツインストラクターやアウトドア・ガイドのような職種は、本来は心肺蘇生法や応急手当に関してきちんと研修を受けて、技術を維持していく必要があります。米国ではきちんと法制化されていて、2年ごとに救命講習を受けてライセンスを更新しなければ、就業できないことになっています。
 
日本ではそのような基準がないため、業界ではとかくインストラクター個人として自己研鑽するに任せられているのが現状のようです。
 
その点、今回のサイクルショップさんのように、お店として、きちんとスタッフに講習を受けさせて、危機管理体制をとっているというのは、極めて意識が高く、すばらしいと感じました。
 
私たちも、引き続き、そんな安全・安心な社会作りのお手伝いとして、この傷病者対応コースを広めていきたいと思っています。
 


エピペン注射をする優先順位

保育園で園児がアナフィラキシーショックを起こしました。その子はエピペン(アドレナリン自己注射器)を携帯しています。
 
今、救急車が到着し、現場には保育士と救急救命士がいますが、まだエピペン注射をしていません。
 
さて、そんな状況では誰がエピペン注射をすべきでしょうか?
 
救急救命士?
 
それとも保育士?
 

アドレナリン自己注射器エピペンepipen

 
恐らく保育士は救急救命士が注射をしてくれると期待していることでしょう。
 
しかし、実は救急救命士は保育士が注射をするもの、と考えているかもしれません。
 
エピペン注射をする場合の優先順位。
 
実は、
 
本人 → 家族 → 保育所職員(学校教職員) → 救急救命士
 
という順番が妥当と考えられます。
 
保育士からすると、救急救命士は医療の専門家だから、注射は専門家に任せるべきと考えますが、救命士の視点からすると、患児からみて救命士は赤の他人でいちばん遠い存在。
 
保育士は親の代わりとして、どういう症状のときどんなタイミングで注射をするか、親から信託を受けた立場なわけですから、保育士や学校教職員の方が優先度が上といえます。
 
現場に到着したばかりの救急救命士からしたら、そのエピペンが本当にその子のモノなのかも確認しようがないわけで、あまりに情報が無さすぎ。そんなところで保育士に言われるままに注射という医行為を責任ある立場で行うのは怖いと感じることもあるでしょう。
 
現場の保育士さん、学校教職員は救命士に頼りがちですが、救命士からは「あなたが打ってください」と言われる可能性があります。
 
ぜひ、エピペン代行注射を行う可能性のある立ち場の方は、そんなことも考えてみてください。
 
 


ノロウィルス対策【感染性胃腸炎の予防と対応】

横浜市では12月6日付で「ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の警報」が発令されました。
 
ノロウィルスは経口感染する非常に伝染力の強い病原体。100個以下の少ない量であっても感染が成立します。
 
ノロウィルスによる腸炎の症状は激しい下痢と嘔吐ですが、飛び跳ねた目に見えない吐瀉物の一部や、トイレから出てきた手に付着したウィルスが、ドアノブや水道の蛇口などを媒介して、爆発的に広まっていきます。
 
今流行のアルコール手指消毒剤はノロウィルスには無効と言われていますからやっかい。予防は、流水で手を洗って物理的にウィルスを洗い流す方法しかありません。
 
手洗いは最大の感染防御
 
公共のトイレを利用した場合は、誰がそこを利用したかわからないので特に注意をしましょう。トイレのドアノブや鍵の金具、水道の蛇口にはノロウィルスがついていると考えて警戒したほうが無難です。
 
最近は、自動水栓、温風乾燥機の公衆トイレが増えています。そうでない場合は、ペーパータオルを活用しましょう。蛇口を閉めるときもペーパータオル越しで行う、また最後に手でトイレ出口の扉を開けなくては行けない場合も、ペーパータオルを使って開ける。(それをどこに捨てるのかが問題ですが、、、)
 
吊り下げてあるような使い回しのハンドタオルは絶対使っちゃダメ!
 
やむを得ない場合に備えて、ウェットティッシュや、ファミリーレストランにおいてあるような単包パックになったおしぼりを常備しておくのも手です。ウィルスはアルコールで殺せないので、拭きとって物理的にウィルス数を減らそうという作戦。(流水がベストなのは言うまでもありません。あくまでも気休めですが)
 
 
 
さて、不幸にしてノロウィルスに感染してしまった場合はどうするか?
 
家族にうつさないように、消毒剤を用意して、家のトイレの便座やドアノブを使用後に消毒します。嘔吐した場合は、処置には必ず手袋を使って、素手では触らない! また飛び散った部分を拭きとった後、消毒をします。思いのほか広く飛び散っています。こんなところまでは大丈夫だろう、というところまでしっかり念入りに拭いてください。
 
消毒薬の作り方は簡単。漂白剤を薄めるだけです。
 
500ccペットボトル1杯の水に、ペットボトルのキャップ2杯の台所用漂白剤を入れる
 
家庭内の誤飲の可能性を考えると、本当はペットボトルで作ることはお勧めしません。ラベルをはがして「毒!」とマジックで大書きするなどの安全対策を忘れずに。
 
漂白剤の成分は次亜塩素酸ナトリウムといって、思いのほか強力な消毒剤です。抗菌スペクトルが広いのが特徴。ただし、漂白剤として使われるくらいに漂白作用がありますので、絨毯や生地に使うと色が落ちます。また金属を腐食する作用がありますので、ドアノブなど金属部分を拭いたときは、しばらくして水拭きした方がいいかもしれません。また作りおきすると効果が落ちますので、1日毎に新しく作ってください。
 
 
さて、ノロウィルスによる腸炎に対するファーストエイドですが、ポイントは呼吸状態の確認と、水分補給
 
小さな子どもやお年寄り、体の弱った人は、ノロウィルスによる腸炎で命を落とすこともあります。原因はいろいろありますが、相重なる嘔吐で、吐いたものが気管に入ってしまって窒息する場合や、誤嚥性肺炎を引き起こすもの、そして脱水によるショック死。
 
吐いた場合は、救急の原則に則って、ABCの評価を。
 
Airway、Breathing、つまり気道が開通していて、呼吸は安定しているか、です。
 
ついでC、つまりCirculation、循環です。
 
嘔吐や脱水で体の水分が足りなくなると、身体を巡る血液の量も減ります。すると生きるのに必要な細胞でのガス交換が困難になってきます。これが発展すると「ショック」という循環不良の状態となり、最悪、死に至ります。
 
脱水のわかりやすい目安としては、おしっこの回数が減る、おしっこの色が濃いなどで、循環血液量がある程度判断できます。唇の乾きなどもわかりやすいかも。
 
脱水は命に関わる問題に発展します。
 
なので水分補給が大事。ただの水を飲み過ぎるとかえって脱水を増強することがあるので、電解質を含めた水分補給が大切。簡単にいうと塩分です。
 
脱水になるとスポーツドリンクでは塩分が少なすぎるために、ORSと呼ばれる経口補水液の出番です。OS-1とかアクアライトといった商品名で薬店で売られているものです。小さなお子さんがいるうちでは、日頃から常備しておいてもいいと思います。
 
なければ手作りも可能。
 
 水:1リットル + 塩:3 g + 砂糖:40 g
 
 水:1リットル + 塩:小さじ1/2杯 + 砂糖:大さじ4と1/2杯

 
少しずつ飲むのがポイント。
 
それでもどうしても吐いてしまうこともあります。
 
場合によっては時は病院に行って点滴をしてもらう必要もありますので、過信して自己治療で済まさない勇気と決断も重要です。
 
 

 
 

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失神発作のファーストエイド

日常生活でもよく見られる失神。そのファーストエイドをご存知ですか?
 
失神発作への対応は、米国職業衛生局OSHAのファーストエイド基準にも含まれている基本的なもので、
 
「横になるのを助ける、気分がよくなるまで付きそう、転倒した場合はケガがないかをチェックする」
 
といった程度のことで十分なのですが、目の前で人が急にうずくまる、倒れるといったことが見られるため、周囲の人はしばしば驚いてパニックになりがちです。
 
確かに失神は、痙攣発作と紛らわしい場合もありますし、心原性失神のように重篤な不整脈が原因の危険な場合もあるので侮れません。
 
しかし失神の大半は神経調節性失神、中でも血管迷走神経反射によるものが多いと言われています。これは悪い知らせを聞いた場合、恐れ、痛み、感情的なストレスなどによっても引き起こされます。そうした原因によって迷走神経が刺激されると、脈拍が遅くなります。その結果、脳に行く血液が一過性に少なくなって、目の前が真っ暗になって気を失うという現象が起きるという仕組み。
 
また日常的によく起こるのは、起立性低血圧による失神です。これは漢字を見れば想像できるとおり、いわゆる立ちくらみ。寝た状態から立ち上がると足や下腹部の静脈に血液が鬱滞して、全身を回る血液量が700cc程度減少するといわれています。ふつうの状態ならうまく体が調整してくれるので問題ないのですが、脱水だったり調整器官がうまく働かないと失神を起こします。
 
いずれにして失神というのは、「一過性で急速に発症し、短時間で自然に元の状態に戻る」ものです。一時的に脳への血流が低下するのが原因ですから、座るか横になるかして体を低くして休めば自然に良くなります。
 
ただそれが本当にただの失神なのか、そうでないかの判断は難しいかもしれません。そんな時はBLSやファーストエイドの基本に立ち返って、
 
反応確認 → 呼吸確認
 
で命にかかわる緊急事態を除外していきましょう。
 
原因はなんであれ、反応がなく10秒以内に正常呼吸が確認できない場合は胸骨圧迫開始です。
 
呼吸がしにくそうなら呼吸の補助、いわゆる気道確保ですね。それも必要ないくらいだったらとりあえず処置として特別なことは必須ではありません。様子を見て、目を覚ます気配がなければ119番。
 
こう考えると、実は失神発作だから、という特別なファーストエイドの技術・知識は必要ないことに気づきます。
 
傷病者アセスメントの基本だけで十分対応できるのです。
 
 

 
 

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熱中症対策~水の飲み過ぎに注意!

熱中症が大きな社会問題になって数年が立ちますが、今年の目立った傾向として「水の飲み過ぎ」という問題が出てきているそうです。
 
熱中症予防として、こまめに水を飲む、ということは十分社会啓蒙されました。しかしそれがあまりに強く印象づけられたせいか、今度は逆に水を飲み過ぎて「低ナトリウム血症」という症状を来す例が増えてきているそうです。
 
低ナトリウム血症は、別名「水中毒」とも呼ばれていて、水を飲むすぎるあまりに血液が薄まってしまって、体に必要なナトリウム(簡単にいうと塩です)が相対的に不足することで起きる症状。体の怠さや吐き気、ひどくなると意識障害や昏睡、痙攣を起こすこともあります。ふつうの人にはめったに起きる症状ではないのですが、近年、増えているそうです。
 
熱中症を警戒するあまりに、汗や不感蒸泄(体から自然に蒸発していく水分)として出ていく水以上にたくさんの水を飲み過ぎてしまっているということと、水分補給として飲むものに電解質(ナトリウム等)が足りないという2つの問題が関係しています。
 
これを防ぐための一つの方法は、大量の水を一気に飲まないこと。予防的に飲み過ぎるというのも考えもので、普通の生活をしているのであれば、1回あたりせいぜいコップ一杯、そして喉が乾いたら更に飲むという程度で十分です。
 
そしてもうひとつはスポーツドリンクを過信しないこと。真水に比べるとナトリウムなどの電解質が入っているため、体にとってはいいのですが、実はそれでも電解質の量が少なすぎ。
 
軽い発汗にはいいのですが、大量に飲む場合や、脱水状態の補正として飲む飲料水としては塩分濃度が薄すぎるのです。この事実があまり知られていません。
 
そこで登場するのが経口補水液(ORS)。「飲む点滴」とも言われている電解質バランスに優れた飲み物です。
 
これは水1リットルに食塩3gと砂糖40gを溶かすことで簡単につくれますが、飲んでみるとスポーツドリンクよりはるかにしょっぱいのがわかります。発展途上国でコレラで脱水になった子どもたちを救うために開発されたWHO推奨の飲み物で、同じ配合で作られた市販品もあるのでご存知の方も多いかもしれません。(最近、テレビCMでもやってますよね)
 
熱中症を恐れるあまり、二次被害ともいうべき低ナトリウム血症という引き起こすのはナンセンス。
 
ただし、この経口補水液も本来は脱水の補正に使うもので、予防的に飲むものではありません。塩分が濃いため、血圧が高い人や心臓が悪い人には多い摂取は良くないこともあるので、ご注意を。
 
なにごともほどほどに、ということですね。
 

 

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人間の持つ恒常性(ホメオスタシス)とバイタルサイン

「走ると心臓がドキドキして、息があがるのはなぜ?」
 
こんなことの理解がファーストエイドにも、とても大切だったりします。
 
激しい運動をすると、筋肉など体の細胞がエネルギーをたくさん燃やすため酸素が足りなくなります。それを補うために体は自然と呼吸回数を増やして、そして血液に溶け込んだ酸素を体各部の細胞に送るため心臓の動きも強めます。
 
つまり呼吸回数が増えて、脈拍数も増える。
 
体が酸素不足になると、このような自動調整能(恒常性=ホメオスタシスといいます)が働いて、体の中の状態を一定に保とうとするのが人間の体です。
 
実は、ケガしたときも同じ機能が働きます。
 
例えば車にはねられてわき腹を強くぶつけて、お腹の中で大出血していた場合。体の中の出血は目に見えません。
 
しかし大量の出血をすれば、血液の酸素運搬量は減りますから、体は酸素が欠乏します。するとそれを補おうとする自然の力が働きます。つまり、激しい運動をしたのと同じように、呼吸数が早くなって心拍数も上がるのです。
 
体の中の出血は見えない。でも、脈拍数、呼吸数でその兆候を知ることができる。
 
これら体の中で起きていること、状態を外から知ることができる指標のことを生命兆候(バイタルサイン)といいます。
 
バイタルサインには、脈拍数、呼吸数のほか、意識の状態、皮膚の色、体温、血圧、発汗の状態などいろいろあります。
 
体の中で起きていることは目に見えない。でもそれを知る手がかりは実はたくさんあるのです。
 
 

 
 

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RICE…打撲、骨折、脱臼、捻挫への応急処置

打撲、骨折、脱臼、捻挫に対するファーストエイドの基本は、RICE
 
Rest(安静)
 
Immobilize(固定)
 
Cold(冷却)
 
Elevation(挙上)

 
です。
 
腫れてくるので冷やすことで血管を収縮させて内出血を抑えます。挙上というのも同じで、高くすると血の巡りが減りますので、内出血を抑えることができます。
 
患部を上げるとズキズキする感じが和らぎます。そんな経験をした人も多いんじゃないでしょうか。
 
骨折にせよ捻挫にせよ、患部が揺れ動くと痛いので固定。そして安静に。
 
このRICEの解釈が少し変わったことに気付いた方はお目が高い!(以前も取り上げたことがありますが、、、)
 
Compression(圧迫)がなくなったんです。
 
救急隊員や医療従事者の皆さん、打撲、骨折、脱臼、捻挫への処置として圧迫ってしてますか?
 
むしろ締め付け過ぎに注意するのではないでしょうか? 固定のために包帯を巻く場合でも、患部は腫れてきますから、だんだんきつくなってきます。きつくなると血の巡りが悪くなって、先が冷たくなったりしびれてきたり、、、
 
ということで、四肢のケガの時は、怪我した直後と処置した後は継続的に観察を行なうことが大切です。
 
そのときのアセスメントのポイントとしてCSMを覚えておくといいと思います。Circulation(循環)、Sensation(感覚)、Motion(動き)です。
 
四肢のケガの場合、それが原因で死ぬことはあまりありませんが、例えば骨折の場合、骨がずれて神経や血管を傷害したり圧迫して、その先の知覚が失われたり血の巡りが滞ることが問題。
 
そこで怪我した部位から先の血液循環があるかチェックします。具体的には脈を取ったり、触って温度を確かめたり、指で押して血色の戻りをみたり。
 
感覚というのはわかりますね? あと自分で動かせるかどうか。
 
このCSMのチェックは、四肢のケガの直後だけではなく、包帯を巻いた後、それがきつすぎて問題を起こしていないかのチェックにも重要です。特に腫れてくるとどんどんきつくなってきますので、こまめなCSMチェックが必要。
 

 
 
 

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BLS評価からファーストエイド・アセスメントへ

BLSにおける「大丈夫ですか?」「反応なし!」「呼吸なし!」という評価手順は、一般的に心停止を判断するためのものと思われています。確かにそのとおりで、最悪の事態である心停止をできるだけ早く認識する、逆の言い方をすると「心停止でない」ことを確認するために、最低限にシンプルな内容になっています。
 
しかし、実際に一般の立場で救急対応する場合、心停止であるケースはきわめて稀なはずです。
 
で、あるなら最初から心停止以外の想定も踏まえて傷病者評価をしていくという視点は、きわめて現実的だとは思いませんか?
 
そこでBLS横浜では、「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」や「傷病者アセスメントコース」という形で、心停止以外のファーストエイド評価も含めた心肺蘇生法アセスメントを提唱しています。
 
これは「大丈夫ですか?」という最初の傷病者へのアプローチの際に、呼吸、循環、神経系という命に直結する3つの視点を持って評価していく方法です。
 
まず、「大丈夫ですか?」と呼びかける段階では「反応」という中枢神経の働きを確認しています。細かく言えば意識レベルをチェックすることも含まれてきますが、この段階では肩を叩いて呼びかける刺激に反応があるかどうか、だけのチェックで構いません。
 
呼吸確認は胸から腹の動きを10秒以内で目視。AHAならびにJRCガイドライン2010の新しいやり方です。原則的に10秒以内に呼吸が確認できないか、死戦期呼吸だったら、この時点で心停止と判断します。(反応なし+呼吸なしor死戦期呼吸)
 
循環に関しては、基本的な考え方は、息をしていれば心臓も動いている、と判断します。そのためあえて脈を取ることはこの段階では必須ではありません。しかし別の視点として、全身をざっと見回しての【大出血の有無】、そして【顔色】の観察をこの項目に含めることを推奨しています。
 
大出血は命に関わるような大出血のことで、放っておけば止まるような出血は問題ではありません。
 
顔色については、もし心停止であれば、顔色が真っ白だったり、どす黒かったりと、心停止を判断する材料にもなりえます。時間をかけて確認するものでもありませんが、「大丈夫ですか?」と呼びかける反応確認時に、顔色についても少し気にしてみる、という程度で見てみることを勧めています。
 
ここまでは普通のBLSで教わることとほとんど変わりありませんが、神経系に関してもう一点、【脊椎損傷の可能性】を考慮するということが、BLSでは終わらないファーストエイドにつながる初期評価としては大切です。
 
これはもしかすると、傷病者に近づく前の【状況評価】の範疇に含まれるといったほうが正確かもしれません。
 
つまり安全確認と合わせて、傷病者の近づきながら周囲の状況を観察し、倒れている原因を考える、その中で強い外力が掛かって頸椎をいためている可能性はないか考えるということ。
 
もし、反応があったり、呼吸があればCPRは必要ではなく、呼吸が止まらないか観察しつつ救急車を待つ、もしくは気道管理を行うことが必要な応急処置になるわけですが、この段階で頸椎損傷の可能性を考慮しないと、とんでもない失敗にもつながりかねません。
 
救急法講習によっては、意識がなく、呼吸があれば回復体位(昏睡体位)にするようにと指導している場合が多いようですが、例えば交通事故で頸椎をいためている可能性がある人、呼吸が安定しているにも関わらず、救急車が来るまでの10分間に体を横向きにする必要があるでしょうか?
 
心停止の場合は、頸椎損傷の可能性が、ということは二の次でいいと思いますが、心停止でない状況が多い以上、呼吸、循環に次いで優先順位が高い脊椎保護という視点は欠かしてはいけないのではないかと考えています。
 
現時点、BLSも含め、心肺蘇生法講習は心停止という一般にはきわめて稀なシチュエーションに特化した非現実的なトレーニングになっています。そこに呼吸、循環、神経系という命に関わる項目を明確に打ち出し、特に脊椎損傷についての知識を盛り込むことで、心肺蘇生法講習はオールラウンドに対応できるファーストエイド基礎講習になり得ます。
 
さらに、心停止を否定できた後は、焦ることなく呼吸、循環、神経系という優先順位にそってさらに詳しく観察、評価していくという拡張性を持たせることができます。呼吸器系のアセスメントは気道と呼吸そのものにわけて考えていけますし、循環に関しては脈拍数や脈の性状、ショック兆候を含めた抹消循環の評価、毛細血管再充満時間、神経系では意識レベルの評価など。
 
BLSを中心とした基礎を学んだ人が、さらに本格的なファーストエイド・アセスメントという学ぶべき課題があるということを示すことは継続学習にも人間の成長のためにも意味があるかと思います。
 
せっかく心肺蘇生法が当たり前の世の中になってきたのですが、そこをほんの少し拡張して、倒れている人すべてに対応できる技術を標準に、つまり「普通救命講習」としてとらえて、さらに医療従事者のアセスメントに通じる道筋を示すこと。
 
これがBLS横浜が展開している「傷病者対応スキル」の普及活動の方向性です。
 

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