ファーストエイド一覧

「BLSから始まるファーストエイド傷病者評価の基礎」勉強会

9月23日に開催した「BLSから始まるファーストエイド傷病者評価の基礎」勉強会の報告です。
 
BLS-AED.net横浜オリジナルの勉強会でしたが、あっという間に受講枠が埋まり、キャンセル待ちも出るほどでした。Twitter経由で広まったようで、不思議と看護学生さんの参加が多い活気ある勉強会になりました。
 
私どもはBLSの普及とともにファーストエイドの重要性も伝えることが使命と考えていますが、その取っ掛かりが難しいと感じています。
 
そこで考えたのが今回の「BLSから始まるファーストエイド」という考え方です。
 
2004年のAED市民解禁以来、BLS、つまり心肺蘇生法に興味関心がある人はとても増えています。
 
その人たちが心肺蘇生法で学んだことを入口にして、発展・延長することで、ファーストエイドにも興味を持ってもらえれば、と考えました。
 
それを示したが、下の概念図です。
 
ファーストエイド・アルゴリズム
 
傷病者に接する入り口はBLSです。
 
「大丈夫ですか?」の反応確認と、呼吸確認。
 
ここまでは心肺蘇生法を知っている人なら、誰もが知っています。
 
心肺蘇生法講習では、心停止を前提としていますから、線形に下に下りていってCPRの実施、となります。しかし途中の2箇所の枝分かれで線形から外れた場合、これがファーストエイドの入り口になるわけです。
 
つまり、「反応あり」「呼吸あり」。
 
ここは心肺蘇生法講習ではあまり教わりませんが、心肺蘇生法を受講した人からすれば、素朴な疑問として知りたいところではないでしょうか?
 
現実問題として、心停止に遭遇するより、意識があったり息をしている人の方が多いはずです。
 
そんなところを入り口として、心停止以外の対応を学ぶ道筋を示す、というのが「BLSから始まるファーストエイド傷病者評価の基礎」勉強会でした。
 
 
 
参加者は12名。
 
要救助者とファーストエイド・プロバイダーのペアに分かれて、救助場面のシミュレーションを行い、そこから既存の知識の確認と、知識と実施の乖離の実感、傷病者アプローチの基礎的な考え方を体感してもらいました。
 
 
「意識がなし」「呼吸あり」の場合は、すでに救急車を呼んでいるはずなので、救急車が車での間、呼吸が停まらないように観察をしながら待てばOK。これが基本です。場合によっては、気道確保や回復体位といった手技がでてきます。さらに待っている間に、どんな視点で観察・アセスメントをしたらいいのか?
 
「意識があり」の場合、自己紹介をして傷病者を安心させる声かけ。「応急手当の心得があるものです。なにかお手伝いできるますか?」これに尽きます。本人が望む手伝いをしつつ、問題が何かを観察・アセスメントしていきます。
 
シミュレーションとは言え、実際に倒れている人を目の前に体を動かし、対応してみると、頭はフル回転に動き、いろいろな気づきがあります。
 
こういう場合、どうしたらいいんだろう? そこをスモール・グループディスカッションで検討。
 
基本は難しいことはありません。街中で救急車が来る限りは、心停止でなければ落ち着いて救急車を待てばOKですが、もしそこでもう一歩踏み込んで状況判断してできることがないかと考えたときに、出てくるのが傷病者評価(アセスメント)。
 
これに関しては、日本のファーストエイドではほとんど触れられない概念なので、北米のAdvanced First Aidの傷病者アセスメントシステムを紹介することで、今後、ファーストエイド・プロバイダーとして自信をもって行動できるための道筋を示しました。
 
詳細は、ぜひ受講していただきたいのですが、簡単にいうと、、、
 
 1.状況評価(安全、傷病者人数、リソース、原因推察)
 2.初期評価(命に関わる問題をざっと評価:呼吸・循環・神経系)
 3.二次評価(ABCDEアプローチで精査)
 
初期評価の段階で命に関わる問題があれば、その処置にあたり、それがクリアされるまでは、先には進まない、といった優先順位の考え方です。
 
このことからすると、高エネルギー外傷の交通事故で足が変な方向に曲がっていようと、リソース(救助者)が一人なら、骨折の処置を行うということはありえません。そんな、何が問題かわからないときや、複数の問題があるときの考え方を学びました。
 
評価の流れは理屈がわかっていても、実際にやってみるとぜんぜん違います。シミュレーションが効果を発揮するところです。
 
具合が悪そうな人にどのように声をかけて、どう励まして、どう情報を取っていくか。
 
これは実際にやってみないとなかなかうまくいきません。
 
またなにもできる処置がなくても、そばに寄り添うことだけでも十分にしてもしかしたら最大のファーストエイドなのかもしれません。
 
今回参加してくれた看護の学生さんたちの、傷病者への接し方を見て、気づかされた部分もたくさんありました。
 
 

 
 

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「養護教諭、保育士、学校教員のための小児救急法フルコース」終了しました

12月26日の「養護教諭、保育士、学校教員のための小児救急法フルコース」は、好評のうち、無事に終了しました。
 
内容としては、アメリカ心臓協会(AHA)の、
 
ハートセイバーAED (乳児オプションを含むフルコース)
 
ファミリー&フレンズ・ファーストエイドforチルドレン

 
ですが、子どもを相手にする専門職の方にフォーカスを当てた特別企画。
 
同じ志を持った方達にターゲットを絞ることで、濃密な意見交換を含め、大きな学びの機会となりました。
 
 
今回受講いただいた方が、その様子をブログにしたためてくださいました。
 
『12月26日講習会』
http://blog.skatelovers.com/yuko/index.cgi/01823
 
『講習会続きファーストエイド』
http://blog.skatelovers.com/yuko/index.cgi/01824
 
 
講習会の雰囲気が伝わると嬉しいです。
 
 
今後もこのような特別企画を計画していきたいと思っています。
 
少人数制のアットホームな勉強会です。ぜひいらしてください。


普遍的な救急医療の原点ウィルダネス・ファーストエイド

今日は看護学生さんのグループのために特別企画した講習会でした。
 
BLSヘルスケアプロバイダーコースatBLS-AED.net横浜
 
医療従事者としての心肺蘇生技術を身につけるBLSヘルスケアプロバイダーコースと、ファーストエイドの基礎を学ぶファミリー&フレンズ・ファーストエイドforチルドレン・プログラムの二本立て。
 
特に、ウィルダネス・ファーストエイド(米国の野外救急法)に興味があるとリクエストをいただいていたので、今回は特別にかなり上級向けの内容まで踏み込んだコース展開となりました。
 
これから看護師になろうとしている人たちが、ウィルダネス・ファーストエイドに興味を持ってくれるのはとても嬉しいことです。
 
今日の講習でもお話させていただいた点ですが、ウィルダネス・ファーストエイドには救急医療の本質と原点が詰まっています。
 
医療器具がまったくない野外環境下で、どこまでの診断(アセスメント)と処置が行えるのか?
 
それがウィルダネス・ファーストエイドです。
 
ウィルダネス・ファーストエイドで学ぶことは、地球上のどこに行っても自分の身ひとつで使える根源的な技術といえます。
 
 
 
医療が高度になればなるほど、医療者は器械に依存します。
 
そしていつしか、器械・器具がなければ何もできないという状況に陥りかねません。
 
 
 
文明の発達は、大きな貢献がありつつも、人間の持っている能力を奪っていくという側面も併せ持っています。
 
いつしか人は火を扱うことを忘れ、今ではライターやマッチを使っても満足に焚き火を起こせる人は少なくなりました。
 
ナイフで鉛筆を削れる人はどれだけいるのでしょう?
 
 
人間が持てる最大の財産は知識と技術。
 
その知識と技術が文明に依存したものであったら、その文明を外れたときに、その財産は無価値なものになります。
 
最新のエコー装置の使い方を熟知していても、エコーの器械そのものがなければ、その知識は無意味です。
 
しかし聴診で体の中で起きていることを知る術を持っていれば、聴診器自体は工夫次第で作りだすことができるかもしれません。おなかや胸に耳を直接押し当てればわかることがあるかも知れない。
 
そんな人類として普遍的なところにウィルダネス・ファーストエイドの価値と本質があると思うのです。
 
ウィルダネス・ファーストエイドは、もともと野外で活動する市民のために開発された教育プログラムです。医療者のためのものではありません。高度なことは含まれませんし、限界もあります。
 
しかし市民向けだからこそ、高度な器具は使わず、身ひとつで緊急事態に対処する術を学び、体の5感を使って傷病者を評価する方法を学びます。
 
もしかしたら医療器具・器械の発達と共に医療従事者はすでに捨ててしまったかも知れない、古典的な医療のテクニックが残っているのがウィルダネス・ファーストエイドといえるのではないでしょうか。
 
医療の原点として、医療従事者の人にもぜひ学んでほしい内容です。
 
僻地医療に携わるとか、海外の途上国支援にいくといった特別なことがなくても、身ひとつでできることをきちんと見つめることは、文明社会で働く医療者としての本質的な身の立て方にも影響を与えるはず、そう思っています。
 
 
 
【参考】ウィルダネス・ファーストエイドを独習するなら:
 
ウィルダネス・ファーストエイドのテキスト
 
The Outward Bound Wilderness First-Aid Handbook
 
米国系のWilderness Medical Associates (WMA) という団体が開催しているウィルダネス・ファーストエイドコースのテキストです。米国では類書は沢山ありますが、いくつか見た中でいちばんわかりやすく、かつ詳しく書いてあります。文字ばかりの本ですが、ウィルダネス・ファーストエイドの考え方と特殊性が深く学べます。


養護教諭向けの学校応急処置 参考書

養護教諭のための学校救急法参考書
 
注文していた2冊の本が届きました。
 
どちらも小中高校の保健室の先生(養護教諭)向けの応急処置(救急法)の参考書です。
 
 
BLS-AED.net横浜では、ここ最近、子どものファーストエイド講習に力を入れています。
 
受講される養護教諭の方たちのお話を聞いていると、何が正しいのかわからない、間違った情報、古い情報・慣習が多い、といった色々な問題点が見えてきて、ファーストエイドを普及する立場の者としては、驚くと同時にどうにかしなくてはという思いに駆られます。
 
そこで、養護教諭の皆さんや、学校の先生といった責任ある立場の人たちが日頃どのような思いを持ってお仕事をしているのか、またどのような勉強をしてきているのか、など、感心を持って勉強するようにしています。
 
学校現場にあった救急法はどのようなものなのか?
 
それを模索するために購入したのがこの2冊の本です。
 
 
今度、また機会を見つけてレビューしたいと思いますが、「先生大変です、救急車を呼びますか?」
はとてもわかりやすい本です。
 
養護教諭ではない普通の先生にぜひお薦めしたい本です。
 
看護師免許、保健師免許を持っている養護の先生にはちょっともの足りない感じかも知れません。
 
 
もう一冊の「初心者のためのフィジカルアセスメント-救急保健管理と保健指導-」は、完全に看護職向けの本です。
 
一通りのことは書かれていますが、それがわかりやすいかどうかはもうちょっと読み込んでみないとわかりません。お勧めかどうかはまた今度コメントしたいと思います。
 
 

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心肺蘇生法の先を行くファーストエイド

BLS-AED.net横浜では、CPR/AED(心肺蘇生法)講習講習以外に、ファーストエイド(応急処置)講習講習も積極的に開催しています。
 
今日は、CPRとファーストエイドの違いについて、少し説明したいと思います。
 
 
 
 
心肺蘇生法(CPR/AED)は突然人が倒れたときや、倒れている人を発見したときに行う「救命処置」です。
 
2004年7月に、医師以外でもAED(自動体外式除細動器)を使っても構わない、という厚生労働省通達が出て以来、日本でも広く救命講習/AED講習が開催されるようになりました。
 
これによって、いわゆる心肺蘇生法(CPR/AED)はかなり一般的なものになりました。
 
倒れている人の心臓が動いているか(=呼吸をしているか)確認して、必要なら119番して、胸骨圧迫心臓マッサージと人工呼吸を行い、AEDが届いたら電気ショックをかけるための一連の流れが心肺蘇生法です。
 
その訓練では、意識がないこと、正常な呼吸がないことを確認して、それから蘇生(CPR)を始めます。
 
心肺蘇生講習では必ずといっていいほど、「反応なし!」「呼吸なし!」という流れで練習が進みます。
 
マネキンを使って練習をするから当然なのですが、しかし、実際に町中で倒れている人を見つけたときは、意識があったり、呼吸をしている場合の方が多いのではないでしょうか?
 
しかし、いわゆる心肺蘇生法の講習では、「声をかけたら目を開けた」とか、「意識はないけど呼吸はしていた」、という場合の対応法はほとんど教わりません。
 
最悪の事態である心肺停止状態の場合だけに特化した講習だからです。
 
 
じゃあ、心肺停止ではない緊急事態にはどう対応したらいいの?
 
 
誰もが知りたいところではないでしょうか?
 
 
それを学ぶのが、ファーストエイド講習なのです。
 
 
広義のファーストエイドには心肺停止状態へのCPRも含みます。それに加えてあらゆる健康上の緊急事態への対応がファーストエイドの守備範囲。
 
だからこそ、単純化された心肺蘇生法と違って、やや上級者向けといえるかも知れません。
 
1分1秒のとっさの行動で命に直結する心肺蘇生法(CPR/AED)は、社会を生きる人間として誰もが知っていなければならない「常識」ですが、ファーストエイドはそこまで急を要しません。
 
でも、心停止と違ってケガや急病は誰もが年に数回は遭遇する日常生活の延長。
 
だからこそ、もしかしたらCPRよりも役立つことが多い知識・技術と言えるかも知れません。
 
 
心肺蘇生法は国際ガイドラインによってかなり単純化されていて、その指導方法も国際的に確立しています。
 
それに対してファーストエイドは守備範囲が広いのと、医学的なバッググラウンドが確定してないことが多くて、その指導内容・指導法がまだ確立していません。
 
そのため、ファーストエイドを指導できる人材(インストラクター)が少ないのが現状。
 
 
CPR教育がだいぶ普及してきた現在、その一歩先行くファーストエイドに対する需要と期待が高まってきています。
 
2010年の救急蘇生国際コンセンサス(合意事項)には、初めてファーストエイド部門が登場することになるようです。
 
これによって、心肺蘇生法だけではなく、ファーストエイドへの注目度がぐっと上がるのは間違いないでしょう。
 
 
これまでも、心肺蘇生法に限定しないファーストエイド普及に力を入れてきたBLS-AED.net横浜では、今後ますます救急法の普及啓蒙に力を入れていくつもりです。
 
 

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AHAハートセイバー・ファーストエイド講習

久しぶりのアメリカ心臓協会ハートセイバー・ファーストエイドコースでした。
 
ちょっとしたケガから急病まで幅広く扱いますので、受講された皆さん、それぞれに何かしらのファーストエイドに関する実戦経験をお持ちです。
 
それだけに、BLS/CPRコースと違って実体験からの質問が多く、一方通行にならない相互性のある盛り上がった講習会でした。
 
受講者の方たちの実際の体験や、意見など、インストラクター側としても大いに参考になる点があり、スタッフも楽しく、また勉強させていただきました。
 
今回は、実習時間を多く取るため、時間を通常より長めに設定してみたのですが、それでも目一杯でした。
 
もしかしたら、ハートセイバー・ファーストエイドだけでも丸一日とるようにした方がいいのかなとも考えています。
 
本来であれば、ハートセイバーAEDとハートセイバーファーストエイド(モジュールA+B)で7-8時間というのがAHAの教材設計ですが、このフルコースを満足行くように開催するとなると2日コースとなりそう。
 
ハートセイバーコースは、ただの市民向け講習ではなく、職業義務的に応急処置を行うことを期待された人たち向けですので、日本国内ではある意味、市民の中でも上級講習に相当します。
 
じっくり学びたい人にいいのかもしれません。
 
AHAハートセイバーファーストエイド:ショックの管理
 ↑ 講習風景:ショックへの対応
 
今回のファーストエイド講習は、AHAカリキュラムに則っていったん終了した後、希望者だけ残って、より高度なアドバンス・ファーストエイドの一端を体験してもらいました。
 
以前にも開催したことがあるファーストエイドの初期評価を掘り下げて行うシミュレーショントレーニングで、こちらも皆さん、ときに目が点となり、ときに大いにうなずき、、、納得してお帰りいただけたものと思っています。
 
日本では未開なファーストエイド分野に関しては、BLS-AED.net横浜として新たな取り組みを続けていきたいと思っています。
 
 
 

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学校教職員のエピペン緊急注射訓練

先日、小学校でアドレナリン自己注射器(エピペン)の取り扱いを巡るニュースをお伝えしましたが、その後、関連情報が入ってきました。

読売新聞の調べによると、エピペンの使用法について教職員に研修を行っていたのは、北海道、埼玉、東京、石川、高知などの12の教育委員会だけだったとか。

エピペンの使用法自体はぜんぜん難しいものではありませんが、それを教えられる人は日本にはあまりいません。

エピペンを処方している医師か、販売元の社員くらいでしょう。

実は、日本にも一万人前後はいると思われるアメリカ心臓協会AHA公認のBLSインストラクターは、その資格上、エピペンの指導ができることになっています。(アメリカ労働安全衛生基準(OSHA)規格のファーストエイドを指導できることが条件になっていますので)

しかし、実際はエピペン練習機にすら触ったことがないというBLSインストラクターが大半なのが現状です。

もし、これで本当に全国のBLSインストラクターがエピペン指導を行えたら、全国の学校教職員への実技指導もスムーズに行くと思うのですが、残念ながらそのような状況にはありません。

非常に残念なこと、と思っています。

今度、アメリカ心臓協会のハートセイバー・ファーストエイドコースとは別に、独自のエピペン講習を開催して行くことも検討していきます。

[追記]

2010年4月25日 エピペン勉強会を横浜で開催します 参加者募集中

急性アレルギー処置、「緊急注射」訓練都道府県12教委だけ…本社調査

兵庫県姫路市内の小学校で、食物アレルギーの男児が給食で急性反応・アナフィラキシーショックを起こした際、学校側が預かっていた緊急用の自己注射薬を打たなかった問題を受け、読売新聞社が全国47都道府県教委に尋ねたところ、教職員が薬の使用法を学ぶ研修を実施しているのは、12教委にとどまっていることがわかった。文部科学省は2008年以降、救命のために教職員が注射をしても医師法違反にはならないとして、各教委に適切な対応を促しているが、現場の準備は十分でない実態が浮き彫りになった。

姫路市の市立小は今年1月、ショックを起こした男児に、保護者から預かっていた症状を和らげる注射をせず、119番。男児は救急車に乗ったところで、駆けつけた母親から注射を受け、2日間の入院で済んだ。学校側は「注射する取り決めを保護者と交わしていなかった」と説明している。

自己注射薬は、太ももに強く押しつけると針が出て薬剤が体内に入る=マイラン製薬提供

調査は3月上旬、都道府県教委の担当者に聞き取りし、文科省が09年7月に「ショック状態の児童生徒が自ら注射を打てない場合は適切な対応を行うこと」とした通知に対する認識や、発作を起こした場合に備えた研修の有無などを尋ねた。

同省通知については、45教委が「教職員は積極的に打つべきだと理解している」などと回答。しかし、実際の打ち方の研修を都道府県単位で行っていたのは、北海道、埼玉、東京、石川、愛媛など12教委で、〈東高西低〉の傾向にあった。

神奈川県教委は09年度に12回、養護教諭や一般の教職員を対象に、針のない訓練用キットを使って太ももなどへの打ち方を学んでもらった。東京都、千葉県の教委も、専門家を講師に、注射を使うかどうかの判断や打ち方の研修をした。

兵庫県教委は、姫路の児童が発症した1月以前に研修をしていなかったが、今月3日、希望する教諭を対象に使い方の研修を行った。

一方、実技研修未実施の教委の多くは、「通知が届いてからの時間が短いから」などと理由を挙げた。

姫路市の学校の対応については、多くの教委の担当者が「薬を預かる段階で、教職員の使用について協議すべきだった」(青森)などと指摘。一方で、「取り決めがないまま先生に打てと言うのは酷」(北海道)との声もあった。

教育評論家の尾木直樹・法政大教授は「文科省のお墨付きがあっても、注射する医療行為は、教師にはハードルが高い。ためらわずに対応できるよう、全教職員が実技などの研修を受けるべきだ」と話している。

アナフィラキシーショック 体に入った異物に過剰に反応するアレルギー症状。ハチ刺されや、牛乳、卵、小麦などの食品、医薬品が原因となる。呼吸困難や血圧低下で意識を失うことがあり、死に至るおそれもある。文科省によると、児童生徒の有病者は約2万人とされる。学校給食が原因の死亡例は近年はない。自己注射薬について、NPO法人・アレルギーを考える母の会(横浜市)は、1万本以上が児童生徒に処方されているとみている。


自己注射器エピペン講習と学校教職員:子どものアレルギー

学校で食物アレルギーを起こした子どもに対して、学校側が救命処置としてのアドレナリン自己注射器を使わなかったことが問題になっています。
 

アドレナリン自己注射器エピペンの実物
重度なアレルギーへの救命処置:アドレナリン自己注射器エピペン

 
 
あまり知られていませんが、いま学校の先生たちは児童に対して「注射」をしていいということになっています。
 
最近の子どもたちにありがちな食物アレルギー、たとえばソバやピーナッツなど、体質によってはアレルギー反応を起こして、重篤な場合、顔や首が腫れ上がって呼吸ができず血圧が下がって命を落とすこともあります。
 
本当に重篤なアレルギー反応が起きた場合、発症から30分以内にアドレナリンという薬を注射しなければ助からない場合があります。
 
そのため、アレルギー体質を持った人は医師からエピペンという自己注射器を処方してもらい、いざというときのために持ち歩いている場合があります。
 
エピペンは決して難しい道具ではなく、キャップを外して自分の太ももに強く押し当てると針が飛び出して必要量の薬液が自動的に筋肉注射される仕組みになっています。
 
自己注射器というくらいですから、ひどいアレルギーが起きたと思ったら自分で打つのが原則ですが、子どもの場合難しいのが現実です。
 
そのため、学校教職員は自己注射器の使用を手伝ったり、場合によっては子どもに変わって自己注射器の使って注射をすることが、文部科学省の通達・ガイドラインで示されています。
 
今回のケースの場合、学校側がアドレナリン自己注射器「エピペン」を親から預かっていたにもかかわらず適正に使用できず、あわや、という事態になったというもの。
 
新聞記事にはいろいろ理由が触れられていましたが、それとは別の視点で、これはある意味やむを得ない部分もあるかと思いました。
 
 
というのは、「学校の教職員たちはエピペン使用の訓練を受けていない」からです。
 
文部科学省の通達は、医師・看護師という免許をもった人間以外が注射をしても良いという衝撃的な内容にもかかわらず、突然発表され、その後のアフターフォローもないまま今日まで来ているからです。
 
おそらく一番戸惑ったのは学校の先生たちでしょう。
 
使い方は難しくはないとは言え、いきなり「明日から必要があれば子どもに注射をしなさい」と言われて、できるわけがありません。
 
実はこの文部科学省の通達が出るまでの間、日本でエピペンの自己注射器を使えるのは、処方された本人とその家族、そして医師だけでした。現場に駆けつけた救急救命士でさえ、本人がエピペンを持っていたとしてもそれを替わって打つことは認められていませんでした。(現在は解禁になっています)
 
ましてや救急法の一環としてエピペンの使い方を指導する文化も日本にはまったくなく、医師を含め医療従事者であってもエピペンをはじめて手に取ったら、どう扱ったらいいかわからないというのが日本の現状です。
 
ですからこの事案も起こるべくして起こったと私はとらえています。
 
使っていい、使うべき、と定めておきながら、その具体的な指導やトレーニングを行わなかった文部科学省側の責任は大きいでしょう。
 
現在、日本で開講されている救急法・ファーストエイド講習の中で、エピペンの使い方実習が含まれるのは、実はアメリカ心臓協会のハートセイバーファーストエイド・コースだけです。
 
BLS-AED.net横浜も、もちろんハートセイバーファーストエイドコースを開講しています。
 
横浜や東京で開催するハートセイバー・ファーストエイド講習は、遠くから新幹線や飛行機で受講にいらっしゃる方も多く、皆さん、このエピペンの使い方を学びたかったとおっしゃる方が多いです。
 
通常は、針が付いていない練習用のエピペン・トレーナーで、実習をしてもらっていますが、必要があれば、薬液の入った本物のエピペンを手に取ってみてもらっています。(冒頭の写真です)
 
こうした報道があると、エピペン使用練習を含んだハートセイバー・ファーストエイドコースにも注目されそうですが、残念ながら、次回4月4日開催予定はすでに定員に達しており、キャンセル待ちの方が何名も控えている状況です。
 
5月の連休あたりに次回を計画しようかと考え中です。
 
 

ショック症状の児童、学校が自己注射薬使わず



 
 兵庫県姫路市の市立小学校で1月、食物アレルギーの男児が給食を食べて急性反応・アナフィラキシーショックを起こした際、学校が保護者から預かっていた緊急用の注射薬を使わずに119番、搬送直前に駆けつけた母親の注射で回復していたことがわかった。
 
 
 文部科学省は昨年、ショック状態の児童生徒には教職員が注射をしても医師法に触れない、との通知を出していたが、学校側には正しく伝わっていなかった。専門家は「学校の危機管理の問題。症状が重い場合は、ためらわずに教職員が注射を」と呼びかけている。
 
 市教委によると、男児は1月15日の給食で脱脂粉乳入りのすいとんを食べた後、目の周りが赤くなる症状や頭痛、嘔吐(おうと)などを訴えた。学校は、症状を和らげる自己注射薬を保管していたが、「注射する取り決めを保護者と交わしていない」などとして使わず、119番。連絡で駆けつけた男児の母親が、学校を出る直前の救急車に乗って注射を打つと男児の症状は軽快し、2日間の入院で回復した。
 
 自己注射薬は、円筒形容器の先端を太ももに強く押しつけると針が出て、薬剤が体内に入る仕組み。服の上からでも打てる。男児については、食育担当教諭と保護者が給食の献立表でアレルギー食材の有無を確認していたが、この日は脱脂粉乳が入っているのに気付かなかったという。
 
 文科省は、アナフィラキシーショックで危険な児童生徒に対しては、教職員が自己注射薬を打っても医師法に触れない、として適切な対応を取るよう求める通知を出している。しかし、市教委は「通知は認識し、各校にも伝えていたが、注射は児童本人や保護者、搬送先の病院の医師らが使うものと考えていた」と説明。今後は研修会などで教職員に周知する。
 
 同省によると、埼玉県内の小学校で2008年12月、発症した男児に養護教諭が注射をして回復している。また、東京都教委は教員向け手引に「児童生徒が自ら注射できない場合は、ためらわず注射して命を救う必要がある」と記している。
 
 ◆アナフィラキシーショック=体に入った異物に過剰に反応するアレルギー症状。ハチ刺されや食品、医薬品が原因となり、呼吸困難や血圧低下で意識を失うことがあり、死に至るおそれもある。文科省によると、児童生徒の有病者数は全国で約2万人とされる。

 


携帯用アルコール手指消毒剤・・・ファーストエイド

最近、BLS-AED.net横浜でも開講をはじめたハートセイバー血液媒介病原体コース(Heartsaver Bloodborne Pathogens)コースでは、手袋越しに血液に触れた場合、手袋を外した後で、水道水と石けんできれいに洗いましょうという点を強調しています。
 
医療現場では「一処置一手洗い」が常識になっていて、手をこまめに洗うことが汚染(病原体)を周りに広げないための大事なテクニックとなっています。
 
 
ただ、医療現場では特にそうなのですが、手を洗いたいと思っても水道が近くになくて、「一処置一手洗い」が実践できないというのが悩みの種。
 
 
 
そんなこともあって、最近では流水+石けんの手洗いの代替法として速乾性手指衛生アルコール製剤を使った手指衛生が主流になってきています。
 
 
昨今のインフルエンザ対策で、デパートのトイレや出入り口でも見かけるようになったシャンプーのようなプッシュ容器に入ったアルコール消毒薬、あれです。
 
 
感染対策では世界標準的なアメリカ疾病コントロールセンター(CDC)のガイドラインでも速乾性手指衛生アルコール製剤が推奨されていて、目に見える明らかな汚れがない限り、アルコール消毒は有効とされています。
 
最近になって日本でも携帯できるようなコンパクトなケースに入った手指衛生アルコール製剤が市販されるようになって便利な世の中になってきました。
 
ジェルタイプやスプレータイプ。容器の形状の様々。時代の流れから言っても、きっとこれからもどんどん新商品が出てくるはずです。
 
個人的にいろいろ試していますが、私のもっぱらのお気に入りはアメリカン・ハートアソシエーションのロゴ入りのペンタイプの手指消毒スプレー製剤。
 
aha-hand-sanitizer-spray.jpg
 
ボールペンみたいに胸ポケットにさせるようになっているのがポイント。
 
仕事の白衣に常備。便利です。気になったらいつでもシュッシュッと。
もちろんファーストエイド備品にも入れています。
 
 
去年あたりからアメリカ国内で新発売になった商品で、販売開始当初は日本にも配送してくれていたのですが、アルコール製剤ということもあって、今ではアメリカ合衆国内のみの販売となっています。
 
 
今となっては日本では希少性の高いAHA謹製手指消毒剤スプレー(Antibacterial Hand Sanitizer Spray)ですが、BLS-AED.net横浜では現在約10本の在庫があります。
 
4月に開催予定のハートセイバー血液媒介病原体コースのときに希望者の方には実費で小分けすることも考えています。
 
AHAのロゴ入りで、ファーストエイドコースや血液感染性病原体コースのの受講記念を兼ねた実用品としてプレゼントできるような体制にできるといいのですが、なにぶんアメリカに行かないと買えないので、当面は希望者に特別に小分けするという形にしていきます。
 
 
 

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ファーストエイドの傷病者評価システム

初めての試みだった「ファーストエイド原論」「傷病者初期評価」勉強会が終了しました。
 
CPR/BLS講習のインストラクターをされている立場の方々、9名が参加してくださり、職種も多種多様。一般市民の方はもちろん、消防隊員、救急救命士、看護師、臨床工学技士などなど。
 
心停止、やけど、脳卒中など、症状・病名がわかっていた場合の対処は、既存の各種講習会で学べます。
 
しかし、実際は「何が問題か」がわからない場合がほとんどです。
 
つまり「なにが問題か」を発見しない限りは、既存の救急法講習で学んだ知識・技術は使えないのです。
 
まずは、そんな事実に気づいてもらうため、模擬患者に演技をしてもらい、傷病者発見から問題点を見つけ出すまでをやってもらいました。
 
模擬患者の最大の問題点は、腹腔内出血だったのですが、気が動転している演技と足の痛みを訴える演技をしてもらった結果、本当の問題点にたどり着くのは難しかったみたいです。
 
模擬患者とはいえ、傷病者と接するシミュレーションをすることで感じたのは、どういう視点で傷病者を観察し、何をどういう順番で確認していけばいいのかという基準・尺度があると便利だなと感じたはずです。
 
そこで、登場するのがファーストエイドの傷病者評価システム。
 
これは日本でもJPTECと呼ばれる救急隊員向けの外傷標準化プログラムでも使われている考え方で、
 
 1.状況評価
 2.初期評価
 3.身体検査
 
と優先順位で分けて3段階の評価をして、傷病者の問題を見つけ、対処をしていくという方法です。
 
この考え方は、アメリカ心臓協会(AHA)の小児二次救命処置のPALSプロバイダーコースやPEARSプロバイダーコースでも取り入れられていますが、BLSやACLSには含まれていません。
 
でも、これを知っているのと知らないのとでは、実践力が全然違うはずです。
 
 
そんなところを皆さんに感じていただけたのではないでしょうか?
 
 
今回初めての取り組みでしたが、方向性としては大成功だったと思います。
 
今後カリキュラムを練り上げて、BLS横浜のオリジナルプログラムとして正式リリースにもって行きたいと思っています。