蘇生ガイドライン2010(旧)情報一覧

AHAは乳児へのAEDを市民救助者には推奨していない

昨晩からTwitter上で話題になっている乳児(1歳未満)へのAED使用について情報提供です。
 
ご存知のとおり、日本でAEDの市民使用が解禁されたときは、AHA(アメリカ心臓協会)のハートセイバーAEDコースプログラムを模倣して日本のAED講習のあり方が規定されました。
 
そんな日本のAED教育のベースとなったAHA Heartsaver AEDプログラムの最新版テキスト(AHA Guideline 2010準拠)では、乳児に対するAED使用は一切触れられていません。
 
G2010版AHA-Heartsaver AEDテキストより
AHA Heartsaver Fist Aid CPR AEDコーステキストより
 
日本の救命講習や救急法講習では、ガイドライン2010ということで、「乳児への使用が解禁された」と浮き足立っていますが、それとは裏腹に本家のAHAでは、依然と変わらず1歳未満の乳児へのAED使用は市民には推奨されていないのです。
 
医療従事者向けのスタンスとしては、乳児に対しては手動式除細動器で体重1キロあたり2J(ジュール)のエネルギーでの除細動が推奨され、その準備がなければ小児用パッドとAEDを使用、それもなければ成人用パッドでのAED使用が推奨されています。
 
この勧告を日本では市民にも適応しているようですが、米国では市民には不採用。その理由は、ということでAHA Guideline 2010の原著を見ても、「市民に対しては乳児のAEDを教えない」という明確な記載は見当たりません。
 
考えるに、乳児への除細動は手動式除細動器が第一選択ということは、心電図モニターが装着されて心室細動であることが確認された場合、というのが前提条件にあると考えられます。
 
医療機関で心電図モニターはどこにでもあります。そのような監視下の状態で心室細動が発生した場合は、除細動は必須です。そこで手動式除細動器がない場合は、例え出力が調整できず、強すぎるAEDであっても、早期に電気ショックをしなければ助かりません。なのでAEDが推奨されているわけです。
 
もう一度書きます。
 
乳児にAED使用が推奨されているのは、あくまでも心室細動が発生した、と確認された場合だけです。心室細動発生の有無をAEDに解析するのは期待されていません。
 
とすると、当然、心電図モニターがない状態でのAEDのルーチン使用は想定されていない=市民には教えない、ということになります。
 
実際のところ、子ども、ましてや乳児が突然の心室細動を起こすことは稀です。
 
ご存知のように小児の心停止の原因は、呼吸のトラブルやショック(循環不良)によるものです。
 
死に至る過程も、徐脈を経て心停止というパターンが多く、心室細動でショックが適応という可能性は低いです。
 
そう考えると、AED装着を急ぐあまりにCPRがおろそかになるリスク、さらには前胸部全体がパッドに覆われることによる胸骨圧迫の効率低下を考えると、乳児にはルーチンにAEDを装着することは、害になることの方が多そうです。
 
このような事情から、BLS横浜では、乳児のAED使用に関しては、AHAに準拠して市民向け講習の中では、これまでどおり「教えない」方向で指導を行なっていくつもりです。
 
 

 
 

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AED練習は技術トレーニングではない!

私たちはAEDの教え方を間違っていたのかもしれません。
 
AEDは練習しなくても使えます。
 
そう設計されています。
 
だからこそ、街中のいたるところに、誰もが手の届くところに置かれているわけです。誰でもいいからその場にいる人が使ってください、と。
 
そんな誰でも使えるAEDを私たちはどのように教えてきたでしょうか?
 
丁寧に教えすぎていませんでしたか?
 
難しく教えていませんでしたか?
 
 
説明しすぎて、使い方を覚え込ませてしまうと、人は判断しなくなります。
 
AED操作に必要な暗記事項はふたつだけです。
 
1.電源スイッチを入れる
2.音声指示に従う
 
機種によりメッセージも操作も違うわけですし、特定のAED練習機で遣い方を覚え込ませるのはナンセンスです。
 
私たちが受講者さんに伝えるべきもっとも大切なことは、「音声指示をよく聞いて、それに従う」、という「態度」であるはずです。
 
そのためにはインストラクターが先回りして、クドクドと使い方を説明してはいけないと思います。
 
音声指示を聞く、というメインメッセージを伝えるためには、説明なしでAEDを操作してもらうのがいちばん効果的かもしれません。
 
AED練習は技術トレーニングではなく、「態度スキル」のトレーニングです。
 
インストラクターは、心肺蘇生法スキルを3つのフェーズに分解して、それぞれ指導法を変える必要があるでしょう。
 
胸骨圧迫と人工呼吸はテクニカル・スキル。練習あるのみ。
 
安全確認から心停止の認識、通報、CPR開始までの判断は認知スキル。シミュレーションが必要。
 
AED操作は認知スキルと態度スキルのミックス。シミュレーションとディスカッション。
 
私たちはこれまですべてをテクニカル・スキルと捉えて、レクチャーと「練習」で習得させようと、間違った指導法をしてきた気がします。
 

 
 

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日本赤十字社、G2010準拠心肺蘇生法ビデオを公開

日本赤十字社が、最新のガイドライン2010に基づく心肺蘇生法の説明ビデオを作製したようです。
 
Youtubeにアップされていました。
 

 
約14分間のビデオです。胸骨圧迫30回行った後で、口対口人工呼吸を行う流れで説明されています。
 
 
 
 
 
参考まで、アメリカ赤十字(American Red Cross)が作成したG2010心肺蘇生法のビデオは約2分。
英語ですが、とてもわかりやすいです。誰でも実施できるように難しい説明は抜きに、強く早く胸を押すことが強調されています。人工呼吸は行わないHands Only CPRです。
 

 
ぜひこちらもご覧ください。
 

 
 

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蘇生ガイドライン2010の最大のポイント『実行性』向上-その1

CPR/ファーストエイド講習のあり方を考える」ワークショップ、第二講は「G2010の最大のポイント『実行性』」というテーマでお話させていただきました。
 
ガイドライン2005から2010になって何がいちばん変わったんでしょう?
 
まず皆さんに考えてもらったのは、こんな状況です。
 
slide_1.jpg
 
ガイドライン2005の時代だったら、皆さんはこのシチュエーションで何ができますか?
 
心肺蘇生法の手順からすれば、成人なので、反応がないからまず通報。119番とAEDを周りの人にお願いした後、次に確認したいのは呼吸です。
 
ガイドライン2005の呼吸確認法は、頭部後屈-あご先挙上法で気道確保した上で「見て聞いて感じて」でしたね。
 
ですが、この状況ですんなりと呼吸確認できますか? 気道確保のために手をかけた額とアゴのあたりは血と唾液で汚れています。
 
触れますか?
 
講習会場のキレイなマネキンと違い、実際の傷病者、口から泡を吹いていることはよくあります。倒れたときに頭を打って血を流していたり、脂汗でびっしょりだったり、、、
 
自分の身の安全確保が最優先という救急・災害の大原則を考えると、そのような感染の可能性がある状況で素手で傷病者に触れるべきではありません。
 
つまり、感染防護の手袋でも持っていないかぎり、心停止の判断の決め手となる呼吸確認すらできない、というのがガイドライン2005の心肺蘇生法だったのです。
 
 
新しいガイドライン2010では、呼吸確認法が変わりました。
 
気道確保は不要。胸から腹の動きを目で見て呼吸の動きがあるかを10秒以内で確認する、つまり手はまったく触れずに、ただ見るだけで呼吸確認をしましょう、に変わりました。
 
これでしたら、傷病者の顔が血まみれであろうと、心肺蘇生法(CPR)の必要性の判断はできます。そして必要な胸骨圧迫をすぐに始められます。
 
 
これはとても大きな違いだと思いませんか?
 
 
ガイドライン2005の教育では、何もできずに放置されていた状況が、呼吸確認法を変えるだけで心停止の判断ができて蘇生に着手できるようになったのです。
 
結論を言います。
 
ガイドライン2010の最大のコンセプトの変更はこういうことです。
 
CPRの入り口のバリアを外す!
 
誰もが知っている A-B-C から C-A-B に、というのも同じことです。
 
赤の他人に対して、口対口人工呼吸、しますか?
 
他人の顔に触れる行為、吐息を感じるくらいに他人の顔に自分の顔を近づける行為。
 
ふつうの人に、そんなことはできません。
 
でも、やれと言っていた。それがガイドライン2005です。
 
実際にできるかどうかという現実問題を無視して、やれ、と医学的無情を突きつけられていた、といったら大げさでしょうか?
 
これまでの気道確保-人工呼吸-胸骨圧迫という流れで教えているかぎり、もっとも大事な胸骨圧迫にたどり着く前にあまりに高い壁が立ちはだかっていて、蘇生そのものに着手してもらえなかった、そんな反省がC-A-Bには込められています。
 
私たちは、ガイドライン2010での変更を考えるとき、末端の手技上の変更だけでなく、根本を貫くその精神を学び取らなければなりません。
 
 
 
余談ですが、ワークショップに参加してくださった方たちに、「日ごろ感染防護の手袋を持ち歩いていますか? 今もっている人!」と聞いたところ、半分以上の人が手を上げていたのは、さすが! でした。
 
 
 


理屈なきCPRでいいのか!?

先日開催した「CPR/ファーストエイド講習のあり方を考える」ワークショップでお話しした内容を少しご紹介しようと思います。
 
まず最初の単元のテーマは、
 
理屈なきCPRでいいのか!?
 
です。
 
蘇生ガイドラインは5年ごとに改定され、その度に心肺蘇生法講習の在り方も変わってきています。特に顕著なのが内容のシンプル化。手順が単純化されるのと同時にテキストもどんどんシェイプアップされて、薄くなってきました。
 
それは市民向け講習でもそうですし、医療従事者向けのBLSにおいても同じです。
 
気づけば、心肺蘇生法のテキストは、蘇生のやり方、技術しか書かれておらず、心停止やCPRの仕組みや背景については、ほとんど説明がなくなってしまいました。
 
西暦2000年頃までは、とかく小難しく教えていたことの反省と、CPRは運動スキルなので理屈より練習を! ということなのですが、果たして、本当にそれでいいのでしょうか? というのが第一講のテーマです。
 
 
まずは、参加者の皆さんに今となってはほとんど教えられない心停止と心肺蘇生法の仕組みを説明しました。
 
心停止には4つの種類があること、そして電気ショック(AED)が必要な場合とそうでない場合があること。自己心拍再開のためには強く速く胸を押すだけではなく、しっかり胸壁を元の高さまで戻すことが重要である点、人工呼吸で息を入れすぎるとかえって蘇生率が下がる仕組み、など。
 
そうした蘇生の理屈を知っているのと知らないのとでは、実施するCPRになにか違いがあるだろうか? というのがみんなで考えるディスカッションテーマ。
 
がむしゃらに胸を押すのではなく、強く速く押したときに脳に血を送っていて、手を緩めて胸壁を元の位置にまで戻したときに心臓に血を送っているという意識を持って胸骨圧迫することの意義。
 
ショックは不要です、とAEDがアナウンスしたときの次の行動は、理屈を知っているのと知らないのとではなにか違うだろうか?
 
また指導の任に当たる人として知っていたほうがいい背景。
 
詳しい蘇生原理を知らなくても蘇生はできます。また理屈を教えることでの時間の浪費、難しい印象を与えてしまうというデメリット。
 
理屈なしに手技だけを教えてひたすら練習していただく方がいい場合もあるでしょうし、理解して考えながら行動してもらうことが必要な立場もあるかもしれません。
 
講習会場と同じような理想的な環境で傷病者を発見し、評価、通報、CPR開始と、練習どおりにスムーズに着手ができれば理屈は要りません。しかし応用ともいうべき判断を迫られたときに、理屈を知っているのと知っていないのとでは雲泥の差、になるやもしれません。
 
理論とスキルのバランス。
 
そんなことを考えていただきました。
 
正解はありません。
 
ただ、今の蘇生教育は医療従事者向けのAHA-BLS講習にしても、「理屈なき蘇生」になっているのが現状です。
 
蘇生科学の基本原理はどうしたら学べるか? その場所がない、というのが問題です。
 
学びたい人や指導員相当の人はどうやって研鑽をしていったらいいのか? そんな課題を残して講を終了しました。
 
難しい説明をクドクドしない! それが昨今の蘇生教育の流れですが、そうではない部分の受け皿としてBLS横浜は機能していけたらと考えています。
 
 
 

 
 
 

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ホントに使える救命スキル習得の階層構造

これは昨日開催した「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」講習の最後に出したスライドです。
 

使える救命スキル習得の階層構造

 
「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」では、受講者同士で傷病者役と救助者役に別れてシミュレーションを行なうことで、マネキン相手のリアル感に乏しい既存救命講習の枠を越えて、本当に使える技術はなんなのか、ということを考え、行動トレーニングをしてもらいました。
 
救急車がすぐに来れる状況(街中など)で倒れている人を発見したときに、誰でも無理なくできることを極力シンプルにまとめました。
 
そこで学ぶのはガイドライン2010心肺蘇生法の基本型と、ファーストエイドの基礎概念。バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)にとっては必要最低限で十分な内容です。(既存の救命講習・AED講習・BLSで不足している部分を補ってます)
 
皆さんにはそれなりに手ごたえを持って帰途についていただけたはずですが、その後で「もっと学びたい!」という気持ちになったとき、どんな道筋があるのか、ということを上の図は示しています。
 
 
 
 
AHA講習も含めて、既存の救急法講習は大きくCPR(心肺蘇生法)系とFA(応急処置)系に分けられますが、これらはどれもパーシャル・スキル・トレーニングです。つまり各論的な部分トレーニング。
 
これらは基礎スキル・知識として不可欠なものですが、それだけを知っていても実際に使えるかというと、それは皆さん、実体験としてよくご存知のところでしょう。
 
心肺蘇生法や捻挫の手当て、骨折の処置、喘息発作への対応、アレルギーへの処置などはいわばカードのひとつであって、どんなときにどういうタイミングでこれらのカードを出して使えばいいか、という緊急事態の総合マネージメントという発想が抜けているのです。
 
複数のケガが併発している場合、例えば交通事故ではねられて頚の骨を痛めている可能性があるなか、足から出血していて、腹部をぶつけてお腹の中で内出血している可能性がある場合、優先順位を見逃すと致命的なことになります。
 
 
 
 
そんな緊急事態の総合マネージメントを養うのが、「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」であり、「ファーストエイド傷病者評価(アセスメント)の基礎」です。
 
「ファーストエイド傷病者評価の基礎」では、救急車がすぐには来れない状況を想定して、体の中で起きる心停止にいたるまでの反応を理解し簡単なアセスメントができるようにするやや上級コース。
 
これらのマネージメント訓練があった上で、各論を知ることで、本当に使えるスキルになるというのが、BLS横浜が提唱する本当に使える救命スキル習得への道です。
 
 
次回の「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」の開催は3月4日(日)を検討中です。
 
1月8日に開催した講習会の様子については、Facebookページをどうぞご参照ください。
 
 

 
 
 

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「救急蘇生法の指針2010 市民用・解説編」リリース!

10月末に開催された日本救急医学会総会で待望の「救急蘇生法の指針2010(市民用・解説編)」が発表されました。あわせて日本版「JRC蘇生ガイドライン2010」も書籍としてリリース。
 
ようやく日本の蘇生教育がガイドライン2010として動き始めました。
 
まず「JRC蘇生ガイドライン2010」と「救急蘇生法の指針2010」の関係性を説明しておきます。
 

JRC日本版蘇生ガイドライン2010      「救急蘇生法の指針2010市民用・解説編」

 
「JRC蘇生ガイドライン2010」は、日本の心肺蘇生法全般の基準を示した蘇生科学の原本です。その原本では論文ベースでのエビデンス(科学的根拠)を中心に記述されており、その内容を実践するにはどうしたらいいか、という具体的な方法を示したのが「救急蘇生法の指針2010」です。
 
「JRC蘇生ガイドライン2010」は、以前からインターネットで無料公開されていましたが、今回「救急蘇生法の指針2010」が出たことで、ようやく日本国内基準に則ってガイドライン2010講習が開けるようになりました。
 
いま、各消防本部や日本赤十字社などが「救急蘇生法の指針2010」に基づいた新しいテキストや講習プログラムを作成中で、日本赤十字社に関しては12月1日からガイドライン2010講習に切り替えるそうです。
 
 
さて、その「救急蘇生法の指針2010 市民用・解説編」で示されている日本版ガイドライン2010に基づいた新しい心肺蘇生法についてかいつまんでご紹介します。
 
・A-B-CからC-A-B
・強く速くの強調 少なくとも5センチ、少なくとも100回/分
・「見て聞いて感じて」の廃止
・反応確認→緊急通報→呼吸確認→胸骨圧迫→人工呼吸
 
など、基本的な部分はAHAガイドライン2010と同じです。
 
しかし、小児の扱いに関しては、AHAガイドラインと大きく違っています。
 
消防の普通救命講習や日本赤十字社の救急法基礎講習に相当するAHAプログラムは、ファミリー&フレンズCPRです。それと比較した場合ですが、、、
 
AHAは市民向けの簡略化された講習であっても、子どもの心停止の原因を意識した子どもに最適化された内容を教えています。それに対して、日本版ガイドライン講習では、「子ども」という区分けが基本的になくなりました。
 
つまり日本版の心肺蘇生法は大人も子どもも手順は同じ。呼吸原性心停止であっても、先にCPRをしてから通報、と教えるのではなく、成人の基本である心原性心停止と同じで、まずは通報で統一されることになりました。
 
これは日本独自の実行性(implementation)を上げるための方策と言えそうです。
 
圧迫の深さに関しては、いちおう子どもは「胸の厚さの約1/3沈み込む程度」という形で記載されています。
 
またAEDの小児機能(小児パッド)の適応を未就学児としている点も日本独自の部分です。AHAではG2005のまま8歳を目安にしています。
 
これは従来のように8歳で区切った場合、小学校が1-2年生は小児用パッドで、3年生以上は成人用ということになり、運用上ややこしいという点を配慮した模様。
 
乳児に関しては、呼吸原性であるから胸骨圧迫30回の完了を待たずに、できるだけ早く人工呼吸2回を行う、と微妙な形で、成人との違いが示されています。
 
 
今回、日本版心肺蘇生法では、大人の心原性心停止(突然の心室細動)に合わせて子どもの特性には目をつぶった形になっています。
 
そこで最初から子どもを相手にすることが前提の立場の人(保育士・幼稚園/学校教諭)、保護者に関しては、「子どもに最適化した一次救命処置の習得が望まれる」とあり、消防に関して言えば、これは新設される普通救命講習IIIといった形で具現化されていく模様です。
 
また水難事故も通報のタイミングなどが今回のユニバーサルアルゴリズムでは不適切ですので、ライフセイバーなどは医療従事と同等の内容の心肺蘇生法を実施してもらうのが理想という記載がありました。
 
 
実際の講習展開に関しては、日本のフラグシップ講習である日本赤十字社の動向が大きく注目されるところです。
 
また追加情報が入ったらお知らせします。
 
 


総務省消防庁の救命講習カリキュラムが変わりました

心肺蘇生法の国際コンセンサス2010ならびに新しいガイドラインが発表されてから、11ヶ月。日本国内での普及はまだかまだかと待ちわびる方が多い中、朗報です。
 
2011年8月31日、総務省消防庁より、新蘇生ガイドライン切り替えに伴う新しい教育カリキュラムが発表になりました。
 
応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正
(総務省消防庁ウェブサイトよりPDF資料)

 
 
今回の改訂のポイントを整理しますと、主に次の3点です。
 
1.「普通救命講習 III」の新設・・・小児・乳児・新生児の蘇生法180分
2.「救命入門コース」の新設・・・胸骨圧迫及びAEDの取扱いのみの90分
3. e-ラーニングを活用した講習や普及時間を分割した講習が可能に

 
 

1.「普通救命講習 III」の新設

これまでは消防庁のプログラムとして、子どもの蘇生をきちんと教える講習プログラムはありませんでした。
 
一定頻度者を対象とした普通救命講習 IIや、上級救命講習では、必要に応じて乳児・小児の蘇生も教えることになっていますが、東京消防庁や横浜市安全管理局(横浜消防)などでは、私どもの知る限り、インストラクターがデモンストレーションを見せる程度で、乳児マネキンに触れてきちんと練習する機会はほとんどありません。
 
しかし、小さな子どもを持つ親御さんや、保育士さんなど、子どもの蘇生法の需要が高いことは、当会の小児コースの人気の高さからもうかがい知れます。
 
子どもの心停止は、大人の場合と原因が違うケースが多いことから、ちまたのAED講習で知られているような「胸骨圧迫だけしていればいい」というのとは話が少し違います。
 
小児特有の問題を含めてきちんと教えてくれる場がなかったというのは、これまでの大きな問題でしたが、ここに来て普通救命講習 IIIが新設されたのはとても意義のあることです。
 
 

2.「救命入門コース」の新設

これは以前からいわれていた人工呼吸を省略した胸骨圧迫のみの蘇生法(Compression only CPR)と、AEDの使い方に特化した短時間の講習プログラム。標準である普通救命講習 Iが180分のところを、90分に縮めたバイスタンダーCPR増加を狙った講習プログラムです。
 
3時間の講習でも長いといわれ、企業からの依頼講習では渋られることが多かったことは私どもも経験しています。企業からの依頼では、1時間から1時間半と指定されることが多く、受講のしやすさという点では、この救急入門コースは非常に現実的な講習になると思います。
 
いちおう消防庁としては、従来からの普通救命講習 Iを標準とする考えは捨てていないようで、
 
「これまでの、住民に対する標準的な普及講習に変わるものではなく、時間的な制約や年齢などのため、従来型の講習への参加が難しい市民を対象とする。あわせて普通救命講習受講へつなげるための講習とする」
 
としています。小学生高学年(おおむね10歳)以上から受講できるそうです。(逆に普通救命講習は中学生以上という規定があったそうで、すこし驚きました)
 
 

3.e-ラーニング/分割講習

アメリカでは、インストラクター主導型の心肺蘇生法講習は少なくなってきています。
 
インターネットやCD-ROMを使ったコンピュータでの自己学習と、数千円で買える家庭用簡易マネキンとビデオ教材での使った自己トレーニングがメジャーです。(資格認定が必要な場合は実技試験を受けるためだけにインストラクターの元へ出向きます)
 
そうした先進国のやり方に倣ったと思われる今回の施策。
 
具体的には、60分の e-learnig を自宅パソコン等で修了し、1ヶ月以内に実技のみの救命講習(120分)を受講すれば、普通救命講習I(規定時間180分)の修了証を発行するというシステムのようです。
 
 
 

[ 所感 ]

いずれの新方針も、これまでの問題点を真っ向から見直す優れた内容だと思いました。ガイドライン2010では、「教育・実施・普及の方策」という章が新設され、手技的なことより、いかに広めるかという方策の重要性に関心事がシフトしています。
 
それをくみ上げた抜本的な改革、すばらしいです。
 
ただ、問題はこれらを実施するだけの現場の力があるのか、ということです。
 
現在、消防では、
 
 ・普通救命講習 I
 ・普通救命講習 II
 ・上級救命講習
 
という3つの普及カリキュラムを抱えていますが、これらすべてを定期開催できている自治体は非常に限られています。
 
特に普通救命講習 IIや上級救命講習は公募開催していない自治体も少なくないのではないでしょうか?
 
そんな中、さらにカリキュラムが3つ増えるわけです。
 
おそらく、これまで普通救命講習 Iにかろうじて費やされていた時間が「救命入門コース」に取って代わられる、というのが、さしあたっての現実ではないかと思います。
 
消防庁とすれば、普通救命講習 Iにつなげるにすぎないものかもしれませんが、現実的には、これが今後のメイン講習となっていくのではないかなと予想しています。
 
 
小児・乳児・新生児の蘇生を教える普通救命講習 IIIは、大きく期待したいところですが、子どもの特性を踏まえた蘇生を教えることができる指導者がどれだけいるのか、また指導者を育成できる人材がどれだけあるのかは、これからの課題でしょう。
 
消防の応急手当指導員/普及員に限らず全国には、各団体あわせておそらく数万人以上の心肺蘇生法インストラクターがいると思いますが、その中で日常的に子どもの蘇生法を教えている人がどれだけいるか、、、、
 
また普通救命講習 IIIでは、小児・乳児だけではなく、新生児の蘇生も教えると規定されています。
 
ここが疑問です。
 
乳児と新生児、似ているようですが、蘇生法はまったく違います。
 
新生児の蘇生法では、心臓が停まっていても、まずは人工呼吸のみを行います。30秒後の評価の後で、必要なら胸骨圧迫も開始しますが、その比率は胸骨圧迫3回、人工呼吸1回、そんな特殊な蘇生法になります。
 
特殊すぎて、医療従事者もほとんどは知りません。
 
知っているのは、産科医と小児科医、助産師くらいです。
 
そんな特殊な新生児の蘇生を市民向けである普通救命講習に入れるのか?
 
おそらく言葉の定義のあやというか、なにかの間違いかと思いますが、今回の通達を見ての最大限の疑問でした。
 
 
最後にe-learningについてです。忙しい現代人のために、多様性が増えるのはいいことですが、実際にそんなシステムが稼動するのかなという疑問はぬぐえません。
 
総務省消防庁の救命講習は、教育カリキュラムやテキスト作成、実施まですべて地方自治体に任されています。
 
東京のように大手で、外郭団体を作っているようなところなら、不可能ではないかもしれませんが、小さな地方自治体の消防本部では到底無理です。
 
総務省消防庁自体が率先してシステムを作り上げてくれるというなら、非常に画期的だとは思うのですが。
 
 
これらの大綱が、全国の消防組織の総元締めである総務省消防庁から出されたのが2011年8月31日。
 
これを元に各自治体単位の消防本部が実際の運営カリキュラムを作っていきます。
 
その切り替わり時期は、各自治体に任せるので一本化はしないと書かれています。
 
私どもは、東京消防庁と横浜消防の普通救命講習開催ライセンスを持っていますが、横浜市からはまだなんのアナウンスも出ていません。
 
東京消防庁に関しては、今週末、新ガイドライン2010アップデート講習があり、私どもも参加してきます。追加情報がありましたら、またご報告します。
 
 
 

 
 

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BLS/CPR「反応あり」「呼吸あり」から始まるファーストエイド

ファーストエイドのアセスメントというと、難しそうな感じがするかもしれませんが、実は皆さんが知っているBLS/CPRの手順の延長にあるもので、基本はシンプル。
 
それを図式化してみました。
 

BLS~ファーストエイド・アルゴリズム

 
傷病者へのアプローチはBLSもファーストエイドもまったく同じです。(当然ですが)
 
まず見るべきなのは反応、つまり意識です。
 
次に見るのが呼吸。市民救助者は呼吸の有無/性状(死戦期呼吸)をもって、心停止を判断することになっています。
 
BLS/CPR講習では、お約束のように「反応なし、呼吸なし」ですから、上の図でいうと線形に真下にさがっていって、C-A-Bからはじまる心肺蘇生法(CPR)に突入します。
 
しかし、「声をかけたらうめき声を上げたり反応があった」とか「反応はないけど、胸は正しく呼吸運動をしている」というときは、心停止ではありません。CPRは不要。
 
そこで出てくるのがファーストエイドです。
 
呼吸があった場合の回復体位のことくらいは聞いたことがあるかも知れませんが、この領域の話は心肺蘇生法講習やBLS講習ではではあまり教わりません。
 
しかし、現実問題、心臓が停まった人に遭遇するより、意識があったり、呼吸があったりする傷病者に出会うほうが多いはず。
 
心肺停止は刻一刻を争う超緊急事態。
 
逆にいえば、「反応・意識がある」、「呼吸がある」という場合は、それほどの緊急事態ではありません。
 
反応があるなら、自己紹介して何が起きたのかを聞いて、本人が望む「お手伝い」をすればOKですし、反応がなく呼吸があるなら、息が止まらないように観察を続けながら、すでに呼んでいるはずの救急車を待つ。呼吸状態が怪しくなってきたら、気道確保。もし呼吸が止まってしまったらCPRを開始。
 
これがファーストエイドの基本です。
 
もちろん、内容を掘り下げていけば、シンプルにまとまったBLS/CPRとは程遠い、とても広い深い領域の話になります。
 
アセスメントということで、傷病者の体の中でおきていることを探るための診察法も、上級ファーストエイド講習では扱います。
 
しかし、基本はBLSの線形アルゴリズムを一歩外れたところにあって、決して難しい話ではありません。
 
心肺蘇生法をマスターした人は、ぜひ、見慣れたBLSアルゴリズムからちょっと足を伸ばして、「反応あり」「呼吸あり」から始まるファーストエイドの世界もぜひ垣間見てほしいなと思っています。
 
Basic First Aidを学べる AHAハートセイバー・ファーストエイド講習 の次回開催は9月3日(土)です。
 
この機会にぜひどうぞ。
 
 
 
 


オリジナル心肺蘇生法講習の組み立て方 その3 [G2010の呼吸確認法]

前回の続き、ガイドライン2010の呼吸確認の変更をどう教えるか、という話です。
 
 
G2005: 気道確保+「見て聞いて感じて」
 
   ↓
 
G2010: 気道確保なし、胸から腹の動きを「見る」

 
 
 
まず、これを大きな変更ととらえるか、ちょっとした変更ととらえるか、また改善されたと考えるのか、ある意味改悪と考えるのか?
 
まずはインストラクター自身の、理解・意識が重要です。
 
これまで自信をもって、気道確保の重要性を説いていた指導員からしてみれば、あっさりと廃止されてしまって、これまで教えていたことを全否定されたような印象を受ける方もいるかもしれません。
 
舌根沈下があるから、気道確保しなくては呼吸の有無はわかるわけがないと考える人もいるでしょう。
 
まずは、インストラクターが自信を持って新しい呼吸確認法を人に推奨できるか、そこが問題かと思います。
 
こんなあたりを、指導に当たる皆さんで考えてもらえたらと考えていました。
 
 
考える上でのヒントは、「死戦期呼吸」そして「実行性 implementation」。それを踏まえたうえで、
 
・「見て聞いて感じて」のデメリットは?
 
・呼吸確認の前に気道確保を教えた場合のデメリットは?
 
を考えると、自信をもって指導ができるようになるのではないでしょうか?
 
 
 
 
さて、指導の実際ですが、ただ見るだけ、5秒~10秒かけて、というのは、やっている人の気持ちとしては落ち着かないものです。
 
もともとマネキンの胸が動くわけがないと思っているものですから、この練習時間に耐えられない。それをいみじくもカバーしていたのが「見て聞いて感じて」というお作法でした。
 
「見て、聞いて、感じて、4、5、6、7、、、、」
 
と声に出していうことで、空虚の溝を埋めていた、といったら皮肉が過ぎるでしょうか?
 
 
ガイドライン2010になって、手を出さず、ただ胸を見るだけの10秒間。
 
これを納得してもらうには、マネキン相手の練習だけでは不十分かもしれません。
 
私たちは、この場面には生体を使った練習を取り入れています。
 
インストラクターが床に寝て、呼吸あり、呼吸なしをランダムに繰り出して、それを判断してもらう練習。
 
これから日本国内の他団体もガイドライン2010に移行するにつれて、このあたりの指導ノウハウは色々でてくると思います。
 
それに先駆けて、グループディスカッションの中から、いろいろな思案が出てきたら面白いなと思っていました。
 
 
 

 
 

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