G2015一覧

「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップin久留米

昨日、九州久留米で開催した「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップは盛況のうちに終了しました。
 
昨日のワークショップでも話題になりましたが、G2015ではBLSにもデブリーフィングという概念が入ってきました。
 
ここで言うデブリーフィングは、インストラクターの指導法というだけではなく、学習者たちにデブリーフィングという自己学習・自己発展法を提示するという、より高次な概念まで含まれています。
 
この点は、G2010のACLSプロバイダーコースDVDの中でも示されていましたが、実臨床での救命処置の後で、チームで自らデブリーフィングを行うことでチームのパフォーマンスを向上させることが期待できます。
 
またシステム的な欠陥を明らかにするという効果もあります。
 
講習会場での研修と、real-life situationsをつなげるための手段としてのデブリーフィング。
 
教育工学上、有名なカークパトリックのレベル3以上を目指すことが正式に盛り込まれてきたG2015教材。これまでは講習会場でのパフォーマンス(レベル2)で良しとしてきたことからは、大きな飛躍です。
 
 

 
 

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JRC蘇生ガイドライン2015-「ファーストエイド」策定の内情

今日、博多で開かれた日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)に参加してきました。
 
ガイドライン2015発表後、最初のJ-ReSSだけに、ガイドライン2015の解説というのがメインテーマ。JRC2015の各章の共同座長の方たちが、ガイドライン改訂のポイントを説明してくれました。
 
中でも注目したのは、最後のファーストエイドについてです。
 

J-ReSS 日本蘇生科学シンポジウム in 博多

 
ファーストエイドという項目は、JRCガイドラインとしては今回初めて登場した章立てです。
 
すこし事情は複雑なのですが、AHA&ARCガイドラインとしては以前からファーストエイドがありましたが、今回の2015からCoSTR(国際コンセンサス)に格上げとなり、それにともない、日本版ガイドラインにも入ってきた内容です。
 
BLS横浜としては、日本語化されるまえにG2005時代からAHAのファーストエイドコースを手がけていますので、すっかりお馴染みの内容ではあるのですが、日本の応急手当の常識からするとかなり過激な内容となっています。
 
エピペン注射、アスピリン投与、止血帯、薬剤剤配合の止血包帯など、医療資格を持っていない人に求めるにはあまりに高度な内容。
 
日本版ガイドラインになるときには、CoSTRの内容がどれだけ日本国内事情に合わせてアレンジされているのかと注目していましたが、そのほとんどは、CoSTRやAHAガイドラインと同じで、ホントにこれで大丈夫なの??? と、クェスチョンマークが3つ4つ並んでもおかしくないくらいの内容でした。
 
なにかの間違いじゃないかと思っていたのですが、今日、ファーストエイド担当者の話を聞いて大いに納得。
 
結論からいうと、日本版のファーストエイドガイドラインとしては、「整備する時間がなかったから、CoSTERの忠実な翻訳に徹した」というのが真相とのこと。
 
詳しい事情はわかりませんが、CoSTERのファーストエイドの内容をもとに、日本版ファーストエイドガイドラインを策定するための時間が4ヶ月しかなかったそうです。
 
まったく新しい内容でもあり、作成者もファーストエイド教育への造詣があったわけではないようで、今回は「CoSTRをできるだけ忠実に翻訳することを目標とした」(発表スライドより)という点が明かされました。
 
内容を練ることが出来なかったため、明らかに不適切な部分は削除し、日本の事情に合わない部分は注釈を加えることで、どうにか発表日に間に合わせた、というのが今回のJRCガイドライン2015のファーストエイドです。
 
そう言われれば、なんとか納得できるかもしれません。
 
前回のJRCガイドライン2010のドラフト版もそんな感じだったなと思い出す方も多いかもしれません。
 
BLSやALSとは違って、今回からスタートしたJRCファーストエイドガイドライン。次回、5年後には日本らしさも入った本当のファーストエイド元年になることを願います。
 
 


満足と自信につなげるBLS指導のポイント

G2015における「質の高いCPR」とは、下記のとおりです。
 
・強く押す(成人:少なくとも5cm、小児・乳児:少なくとも胸郭の1/3)
・速く押す(100~120回/分)
・リコイル(もたれない)
・圧迫中断は最小限に(10秒以内)
・胸の上がりが見える人工呼吸を行う(1回1秒)
・過換気を避ける
 
これを技術として身につけさせるのがBLS講習の目標です。そして、コース中のどの場面で、どのポイントを指導するか、という教材設計がしっかりなされているのがAHA BLSコースです。
 
日頃インストラクターコースでお話している内容をすこしご紹介します。
 
 
 
AHA-BLSヘルスケアプロバイダーコース(G2010ならびにG2015暫定版)では、練習場面は下記のように進んでいきます。
 
1.胸骨圧迫(30回の圧迫を5サイクル)
2.気道確保+人工呼吸(ポケットマスクを使った換気2回を5セット)
3.胸骨圧迫+人工呼吸(30:2を5セット)
4.評価(反応確認・呼吸確認・脈拍確認を映像に合わせて練習)
 
それぞれの練習の前には、上記の質の高いCPRのポイントがすべてテロップで映しだされます。
 
しかし、まず最初の胸骨圧迫の練習で強調すべきは、3点だけです。
 
「強く、速く、しっかり戻す」
 
これだけに的を絞って指導を行います。
 
余計なことは言わないで、ポイントにフォーカスさせます、
 
 
 
次いで、人工呼吸の練習。ゴールとしてのポイントは3つありますが、順番が重要です。
 
1.胸が挙がる
2.入れ過ぎない(過換気を避ける)
3.1回1秒で、速すぎず遅すぎず
 
最初から過換気を避けることを強調してしまうと、手技に問題があって胸が上がらないのか、吹き込みの量が足りないのか、わからなくなってしまいます。
 
だから最初は、まずは胸が目で見て挙がることに重きをおいた指導を行います。

明らかに吹き込み過ぎであっても、まずは胸が上がったことを認めて、褒めるべきです。そうして安定してできるようになってから、次のステップとして、過換気を避けることや1回1秒ということを追加指導していくとうまくいきます。
 
 
 
胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた30:2の練習の時に強調すべきポイントはなんだと思いますか?
 
もちろん、強く、速く、を引き続き強調してもいいのですが、それはすでに前の練習で習得済みです。この胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせで初めて出てくるのが、「圧迫の中断を最小限に」という項目。
 
ここに着目させてから練習を行うべきです。
 
AHAコースの場合は、ビデオに合わせて練習しますので、ビデオのデモンストレーターが人工呼吸が終わって胸骨圧迫に戻ったら、あなたも途中でも圧迫に戻ってください、という点を伝えます。最初はうまく行かなくても5サイクルもやっていれば、自然と10秒以内で2回の人工呼吸ができるようになります。
 
もちろん、複合練習になっていますから、流れの中できちんと人工呼吸ができるのか、とか、質の高い胸骨圧迫ができているか、というところもポイントですが、そこに拘泥してしまうと、肝心の中断時間を10秒以内に留める練習ができなくなってしまいます。
 
 
 
このように、AHAの講習は、簡単な手技から段階的に習得していって、その組み合わせで自然とできるようになる、ということを狙って作られています。ですから、各ステップの学習目標を理解して、きちんとゴールに到達させてから先に進むことが肝要です。
 
AHAのBLSインストラクターは、その教材の意図を理解して、仕様のとおりに使うことによって最大のパフォーマンスが発揮できるようになっているのです。
 
 
成人学習の動機付けでARCSモデルというのがあります。受講者の注意を引き、関連性や学ぶことの妥当性を提示して、それから満足と自信を得られるように支援するというのがポイントです。
 
いきなりCPRの全体の流れをやらせても、あちこちで引っかかってうまくいくわけはありません。そこを一歩ずつ階段を登るように段階的に指導して、自信を持たせて、最後には、「できた!」という達成感に到達させるような指導方法。
 
それを私たちはAHA教材、特にコースDVDから学ぶことができます。
 
 


「G2015時代のBLSインストを目指す」

本日、横浜で開催した「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップには、4つのITCから15名の方がご参加いただき、終了しました。
 
ガイドライン改訂だけを見ると、AHA-BLSには大きな変更がないように見えます。しかし、プロバイダーコース教材を見ると、驚くほどの激変を遂げています。
 
キーワードは、Life is Why。
 
Life is why の謎を解け、という謎解き風(?)な展開での3時間でした。
 
結論から言ってしまうと、AHAガイドライン2015の Education の章にも書かれているように、今回のガイドラインでは、インストラクショナル・デザインが全面に打ち出されており、カークパトリックのレベル3以上を目指す方向に転換されたということが大きいです。
 
learn and live では世の中、変わらなかった。
 
それはカークパトリックのレベル2の世界に限局した教育展開だったから。
 
ゆえに、シンプルさと教えやすさを犠牲にしてでも、リアルな世界とのつながりを作る必要があったわけです。それがLife is whyです。
 
技術習得のドメインでいうなら、認知スキルと運動スキルはAHAコースの十八番。
 
足りなかったのは態度スキルへのアプローチ。
 
それがリアルの追求と相まって、Life is why に集約されたものと考えられます。
 
結論を書くと、こんなシンプルな話なのですが、それをG2015のBLSコース教材の映像を通して、またガイドライン変遷をたどりながら、考えていきました。
 
これだけ読んでも、いまいちピンとこないかもしれませんが、興味を持ってくださった方がいましたら、次回、5月29日(日)久留米での「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップへの参加をご検討いただけますと幸いです。
 
 
 


心停止認識の評価-意識ではなく反応の確認

昨日、Twitter の上ですこし書いた点ですが、こちらにもシェアしておきます。
 
BLS手順において、「大丈夫ですか?」と尋ねながら確認するのはなんでしょうか?
 
それは「反応」の有無です。「意識」ではありません。
 
英語でいうなら、Responsive であって、consciousness ではありません。
 
英語では、昔から、この単語が明確に使い分けられていますが、日本語になったときには、Responsive(反応)が意識と訳されてしまったり、成書では、反応と書かれているのに、指導員レベルで意識と言い換えられてしまうケースが散見します。
 
 
医療者レベルの理解でいけば、それほど大きな問題はないのかもしれませんが、市民向けのBLS指導ではこの違いをしっかり区別をした方がいいと思います。
 
医療の素養がない一般の人に、意識がないとはどういう状況か、と尋ねてみたら、どんな返事が返ってくるかを考えてみるとわかりやすいかもしれません。
 
例えば、「大丈夫ですか?」と呼びかけた時に、「うーん、、、」とかすかなうめき声をあげただけで、目を開かず、動かなかった、という場合、どうでしょうか? 意識なし、と判断する人が多いのではないでしょうか?

しかし、この状況はBLS手順で言った場合、「反応あり」であって、CPRは適応ではありません。
 
これが、反応でとらえた場合と、意識でとらえた場合の違いです。
 
医療者的に言ったら、JCS300以外はCPR適応外と判断できるかもしれませんが、そういうレベルの話ではなく、救命講習で教わった一般の方たちがどのように理解して、何をどうみて判断して、どう行動するか? という実質的な中身で考えるべきです。
 
ということで、絶対的な間違いとはいいませんが、CPR手順の中で「意識の確認」という言葉を使うのは不適切と考えます。
 
そこで、どのように指導すればよいのかという話になると、私たち指導員が「反応確認」という言葉を正しく使うことと、最初に、「反応」という言葉の概念を定義することが重要です。
 
先日、4月26日にリリースされた最新版の Heartsaver CPR AED Student Workbook の中では、その冒頭の3ページで下記のように定義されています。
 
You should know that during an emergency, it’s possible that someone might become unresponsive. Here is how to decide if someone is responsive or unresponsive.
 
Responsive : Someone who is responsive will move, speak, blink, or otherwise react to you when you tap him and ask if he’s OK.
 
Unresponsive : Someone who does not move, speak, blink, or otherwise react is unresponsive.
 
傷病者を軽く叩きつつ、大丈夫ですか? と声をかけたことに対する「反応」に着目します。その刺激に呼応して、動きや、発語、瞬きなどの目元の動き、その他の反応が見られた場合、「反応あり」つまり、心停止の兆候ではない、と考えます。
 
これを簡略化して「動きの有無」としてしまうと、正しくはありません。あくまでもこちらからの刺激に対する反応として動きがあるかどうか、です。
 
反応とは関係のない痙攣や死戦期呼吸のような「目的のない動き」を除外するためです。
 
疑わしければ胸を押せ、という原則からすれば、先ほど上げたようなケースで胸を押すということは間違いではありませんが、指導指針の中で、きちんと意識と反応を区別して、弁別の閾値が設定されているわけですから、少なくとも指導員レベルでは、この点はきちんと認識したいところですね。


些細な変更? G2015のBLSプロバイダーコース

日本国内事情を見ると、この4月からG2015暫定版のBLSヘルスケアプロバイダーコースに切り替わった、もしくは移行開始というところが多いようです。
 
G2015暫定(Interim)コースというのは、日本語化されているG2010(1つ前のガイドライン準拠)のDVDとテキストを使いつつ、最新のG2015の内容を変更点としてお伝えしていく開催方式のことを言います。
 
これもAHA公式の措置で、暫定コース用の新しいスキルチェックシート、筆記試験問題、補助資料がAHAから公式に日本語でリリースされています。
 
日本では、ようやく講習としてG2015が始まったところですが、米国では2016年2月16日に暫定版ではない正式なG2015 BLS Providerコースの教材が発売され、それから約2ヶ月半。
 
AHA BLSコースといえば、G2015が正式版があたりまえになっています。(少なくとも私たちが所属しているハワイ州のAmerican Medical Response TCでは)
 

AHAガイドライン2015版BLSプロバイダーコース筆記試験問題とDVD教材

 
日本国内で、G2015正式版BLSプロバイダーコースが開催されるのは、早くて夏過ぎだろうと思われます。
 
日本語教材が発売になるのは6月~7月とアナウンスされていますが、受講者マニュアルもインストラクターマニュアルも同時に出ますので、日本のインストラクターが新教材を入手して、新しい指導方法を習得して公募講習に反映されるのは、おそらく夏はすぎるだろうという憶測です。
 
意識が高いインストラクターたちは、英語版を発売と同時に入手して、内容はすでにチェック済みかと思いますが、今回、あまりに変更のインパクトが大きく、これを正しく理解して、講習に反映させるのはなかなか大変だと感じているはずです。
 
ガイドラインのBLSに関する変更点は、
 
1.評価手順の見直し
2.胸骨圧迫のテンポの変更
3.挿管時のCPRの換気ペースの変更
 
くらいで、特段新しいことはなく、インストラクターのアップデートも簡単に見えます。
 
しかし、BLSの蘇生科学ではなく、教育面での大幅な見直しがなされ、講習の在り方の根源から変更になっているというのが、英語版新教材を見てわかったことです。
 
ガイドラインのBLSの章を見るだけでは気づかない、大胆なコース設計の変更がされたのが、今回の改訂の目玉だと思います。
 
これは、おそらく蘇生ガイドライン2015の変更点というよりは、AHAのG2015教材の変更と言ったほうがいいかと思います。国際コンセンサスCoSTRでも、教育・普及・実行に関する検討がなされて、各国ガイドラインにも反映されてはいますが、エビデンスという意味では、まだ不十分で国際コンセンサスにはなりきれないことが多くあります。
 
蘇生教育という点で、たくさんの知見を持っているのは、蘇生教育を世界展開しているAHA。
 
それらの知見をも加味して、先進的な視点で作られたのが、G2015のAHA教材なのではないでしょうか?
 
 
これらの教育面での違いがいちばんわかりやすいのはコースDVDでしょう。
 
ここから直感的に、コースが根本的に変わった、という点が見て取れます。
 
その上で、インストラクターマニュアルを丹念に見ていくことで、変更の詳細や、その理由などが見えてきます。
 
・実技試験では、傷病者の評価手順(反応・呼吸・脈の確認、通報のタイミング等)は問われない
・実技試験で使用する感染防護具は受講者のバックグラウンドに合わせて選択可(BVMでも!)
・筆記試験はテキスト持ち込み可
 
ゴール・オリエンテッド(Goal oriented)なAHAコースで、講習のゴールがここまで変わった以上、大きな幹が変わったと考えて過言ではありません。
 
今回、この変更があまりに大きいため、新コースの開催準備にはかなり時間がかかるのではないかと思われます。
 
結論から言うと、今回の改訂で、AHA-BLSコースは非常に魅力的になりました。
 
またその意図通りに展開できれば、BLSの実施率の大幅な上昇が望めるのではないかと思います。
 
だからこそ、インストラクターとしては一日も早いG2015正式コースへの移行を目指したいところです。
 
移行時期についてはトレーニングセンターなど、所属の判断決定に依存しますが、個人としてのスキルアップが早いに越したことはありません。
 
 
そんな意図から、
 
「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップ
 
を企画しました。
 
新しい英語版DVDを一緒に見ながら、インストラクターマニュアルの記載を紐解き、インストラクターとしてのG2015への完全移行を目指します。
 

5月8日(日) 横浜開催・・・詳細はこちら
 
5月29日(日) 久留米開催・・・詳細はこちら

 
どちらも参加者募集中です。
 
全国のインストラクターの皆さん、誰よりも速く、G2015コース移行準備を始めませんか?
 
AHA-BLSインストラクターであれば、所属は関係なくどなたでもご参加いただけます。日頃なかなかない、他の活動拠点のインストラクターとの交流、情報交換の場となればと思います。
 
 
 


BLSコースにおける真正性の課題

ガイドライン2015版のBLSプロバイダーコースDVDを見て感じる点ですが、現場での判断力を養うためには、講習の中でも「
真正性」を追求していくことが重要と思います。
 
例えば、BLSマネキンや模擬患者相手に練習をしているときに、「大丈夫ですか?」と受講者が反応確認をした際に、インストラクターは「意識はありません」と言ってしまう場合があります。

この場面で教育すべきは、反応があるかないかを弁別して、それぞれのときにどう行動するかを決定する能力を養うことです。
 
「意識がありません」とインストラクターが言ってしまうと、受講者から、自分で反応の有無を判断するのだという思考回路を閉じてしまうことになります。
 
BLSマネキンは、単純な人形ですから、反応がないに決まっています。だから、単純なマネキン相手に反応確認を練習させるのは、基本的に無理です。1千万円近くするような、反応を示すというパターンを再現できる高規格のマネキンを使う必要が出てきます。
 
こう考えると、BLS講習のハードルは上がりますが、そこまでしなくてもイマジネーションに働きかけるような講習展開である程度はカバーできるかもしれません。それが今回のG2015版BLSプロバイダーコースDVDに出てくる数々のリアルなシチュエーションのデモ映像なのでしょう。
 
さらに言えば、そういった映像に頼らなくても、受講者が自身の経験の中から想起できるようなストーリーを語り、イメージをもってもらってから練習を行うというやり方もあります。
 
または、もっとシンプルにはインストラクターが模擬患者として演技をすればいいのです。顔色や心拍のコントロールはできませんが、反応の有無や呼吸の有無に関して言えば、パーシャルタスクにはなってしまいますが、マネキンよりはマシなトレーニングができるのではないでしょうか?
 
BLSマネキンには限界がありますが、それをどう認識して、別の方法でカバーしていくか?
 
それがG2015時代のインストラクターに求められる工夫ではないかと思います。
 
 


AHAガイドライン2015-BLS講習 受講者用補助資料配布を始めました

AHAガイドライン2015準拠の成人・小児(乳児含む)のアルゴリズム図を含む「オリジナル講習補助資料」を作成しました。高画質で印刷できるPDF形式でダウンロードできます。
 

AHAガイドライン2015の小児・乳児複数BLSアルゴリズム図【BLS横浜オリジナル】
 
AHAガイドライン2015の小児・乳児救助者1人BLSアルゴリズム図【BLS横浜オリジナル】
 
AHAガイドライン2015の成人BLSアルゴリズム図【BLS横浜オリジナル】

G2015のアルゴリズムは、公式日本語化されたものが、AHAガイドライン2015ハイライトの中身として米国AHAウェブサイトで公開されていますが、文化背景を考慮しない直訳ということもあり、講習の中で参照してもらうには使い勝手が良くありません。
 
そこで、英文のガイドライン原本を参考に、BLS横浜で独自でアルゴリズムを整理して、講習会資料として作成した資料です。
 
これは、AHA公式版ではない点にご注意ください。
 
またBLS横浜での講習展開のために作成したものですので、院外心停止のアルゴリズムの概念は掲載していないなど、汎用性のあるものではありません。
 
下記のコースに対応しています。
 
・BLSヘルスケアプロバイダーコース
・PEARSプロバイダーコース
・PALSプロバイダーコース
・ACLSプロバイダーコース
3枚構成で、BLSヘルスケアプロバイダーコースでは3枚すべて、PEARS/PALSコースでは2枚目と3枚目を使用します。
 
ACLSプロバイダーコースやACLS-EPコースの補助資料として使う場合は1枚目だけで十分なはずです。
 
受講者の皆さんの事前学習にお役立てください。
 
 

ダウンロード
(PDF:約800KB)

 

2016年3月10日:一部改定

 

 
 

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【考察】 G2015プロバイダーの通報のタイミング

昨日は、午前中の「傷病者対応コースfor bystanders」に続けて、午後はBLSヘルスケアプロバイダーコースを開催しました。
 
どちらも最新のガイドライン2015で開催したのですが、方や市民向けプロトコル、かたや医療者向けプロトコル。
 
続けてやってみると、同じガイドライン2015でも、変更の中身は随分と違うものだなと感じました。
 
市民向けCPRは、しいて言うなら、胸骨圧迫のテンポの上限の120回を示す以外は大きな変更はないように思います。ですから、旧2010の教育ビデオや教え方でもほぼそのまま通じます。
 
それに対してヘルスケアプロバイダー向け勧告はG2005、2010、2015と大きな変遷を見せています。
 
手順の一部だけをピックアップして並べますと、
 

CPR開始までの手順の推移*AHAヘルスケアプロバイダー向けアルゴリズム

 
こうして並べてみると、最新のG2015は、2つ前のG2005の手順に回帰したようにも見えます。脈と呼吸を別々に見るか、同時に見るかの違いだけで、「流れ」としては、2世代前に戻ったようにも思えます。
 
しかし、問題は、【通報】のボックスの中身にあると思います。
 
今回のガイドライン2015では、通報の仕方の中身が細かく検討されるようになり、アルゴリズム図からはなかなか計り知れない複雑さを示しています。
 
これまでのガイドラインでは、「通報」のボックスには概念としては大きくふたつ、
 
1.救急対応システムへの連絡
2.AED手配
 
が含まれていました。そしてこれは別個のアクションというよりは、ほぼひとかたまりのものとして捉えられていたように思います。
 
つまり、「通報」を依頼された人は、「119番に通報して、AEDを見つけて戻ってくる」ことが期待されていました。(細かいシュチュエーション別に見ればもっと多様性がありますが)
 
G2005と2010のアルゴリズムでも小児に関して言えば、
 
1.その場で叫び、助けを求める(周りに誰かいるかいないかに関わらず)
2.救急対応システムへの通報+AED手配
 
というように、評価や救命の手を停めてまでして通報をするか、手を停めずに叫ぶだけで応援を要請するかを分けている部分はありました。
 
(目撃のない心停止≒呼吸原性心停止であれば、叫んでも誰も来なければ通報よりCPR着手を優先する。2分間CPRしても反応が戻らず誰も来なければ、手を停めて通報+AED入手)
 
 
それが、G2015では、成人のBLSアルゴリズムも含めて、通報の中身を3つのフェーズに分ける概念が採用されているように思います。
 
1.その場で叫び、助けを求める
2.救急対応システムを発動させる
3.AEDを入手する
 
この視点にたって、G2015成人BLSのアルゴリズムを見ると、すこし解釈が変わってくるかもしれません。
 

AHAガイドライン2015成人BLSのアルゴリズム一部抜粋(AHAガイドライン2015ハイライトより)

 
 
2番目のボックスの中身をみると、傷病者に反応がなければ、
 
1.大声で周囲に助けを求める
2.携帯端末で救急対応システムに通報する(適切な場合)
3.AEDおよび救急治療資器材を持ってくる(もしくは誰かにAEDを取ってくるように依頼する)
 
という行動が示されています。
 
これを見ると、このボックスで必ず行うのは、
 
1.その場で叫ぶ
2.AEDを取るか手配する
 
の2点であり、救急対応システムへの通報は(適切な場合)とあり、絶対条件的には書かれていません。
 
そして、心停止確認後、CPR開始前に破線部分の注釈にあるように、CPRを開始する前には、
 
1.救急対応システムへの出動要請
2.AED手配
 
の2点が修了していることが求められています。
 
これらをどう解釈するか、、、、ですが、この例は成人のBLSですから、心原性心停止(すなわち心室細動)を前提とし、救命の要は早期除細動と考えます。
 
ですから、反応がない人がいた場合は、心停止を確認する以前の速いうちからAED手配を考えます。つまり、まずは叫んで近くに人がいればAEDを持ってくるように頼み、もし誰もいなければ、近くにAEDがあることを知っていれば自分で取りに行きます。
 
AED手配と救急対応システムの通報がこれまでは同列に扱われていたのに対して、ここからは、AED手配が優先されることが示されているように思います。
 
現実的には、AEDが近くにあることを知らなければ、119番通報することが、=AED手配ということにもなるかと思いますが、厳密には概念を分けていると考えると、理解しやすいように思います。
 
話が少し込み入ってきてしまいましたが、結論をいうと、ヘルススケアプロバイダーの通報のタイミングはフレキシブルで、明確には規定されていないということです。携帯電話や病院内PHS、トランシーバーのような携帯端末で時間を掛けずに通報できる場合は、早期に呼ぶべきだし、通報に時間が掛かりそうなら心停止を確認してCPR開始する前までには通報するように、ということです。ただし、AEDの手配は遅れることがないように配慮するように、ということになります。
 
これがガイドライン変更の概念ですが、これをどのように受講者に伝えていくのかは難しいところです。今回出てきたトピックとしては、スマートフォンのハンズフリー通話機能を活用して、手を止めずに通報を行う案も示されています。
 
教える上では煩雑さは敵ですから、おそらく一元的なシンプルな形に整理されそうな気がしますが、2月15日のヘルスケアプロバイダーコース教材(英語)がリリースされるのが楽しみです。
 
 

 
 

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蘇生ガイドライン2015 なぜ各国で違う?

先月、心肺蘇生法のガイドラインが改定されて話題となりました。
この機会に蘇生ガイドライン2015の成り立ちをおさらいしておきましょう。
 

国際コンセンサスCoSTR2015と各国蘇生ガイドライン2015の関係について

 
国際蘇生連絡協議会 ILCOR (イルコアと読みます)という組織があります。
 
これは世界の蘇生科学の研究団体が集まって構成され、5年毎に心肺蘇生法の国際合意を作成しています。
 
ざっくりというと、命題を決めて、蘇生科学の学術論文を集めて、検討し、その時点で考えられうる最適な蘇生法とその根拠性、限界(ギャップ)を提案するというのがILCOR会議の役割です。
 
そこで勧告される合意事項(国際コンセンサス)をCoSTR(コスター)といいます。
 
今回の場合は2015年10月15日にILCORからCoSTRが発表となり、それに合わせてILCOR構成員にも情報解禁されました。結果、CoSTR作成と合わせてガイドライン策定を行っていたアメリカ心臓協会(AHA)とヨーロッパ蘇生協議会(ERC)がそれぞれ独自の蘇生ガイドライン2015を発表しました。
 
日本は1日遅れて10月16日に日本蘇生協議会(JRC)から日本版蘇生ガイドライン2015オンライン版が発表されています。
 
CoSTR作成の根拠となるのは世界からの学術論文です。ですから、学術論文で取り上げられないことは、CoSTRでは取り上げられない、もしくは、限界として示されます。
 
例えば、反応確認を行うときに、両手で方を叩くのか、片手で叩くのか、などといった末端的なことなどは、CoSTRでは取り上げられません。
 
CoSTRで勧告されることは、基本的に医学的に根拠があることや研究されていることだけです。
 
しかし、それだけでは歯抜け状態すぎて、実際の指針にはなりえず、蘇生法指導は行えません。
 
そこで、国際コンセンサスでは抜けている部分を各国事情で補足して、指針としたのが各国ガイドラインです。
 
国際コンセンサスが骨格で、そこに文化や風土や社会事情を含めて盛りつけしたのがガイドラインと考えるといいかもしれません。
 
ですから、ガイドラインは国や地域の事情に合わせて違いますし、複数存在します。
 
それが有名どころではヨーロッパのERCガイドライン、米国のAHAガイドライン、日本のJRCガイドラインというわけです。
 
いずれも骨格はCoSTR2015に準拠していますから、大きくは同じですが、その解釈や優先順位の考え方などで、かなり違って見える部分もあるのは事実です。
 
 
というわけで、ガイドライン2015は絶対無二の唯一のものではないということを是非知っておいてください。
 
その昔、国際ガイドラインという言い方をしていた時代があったので、そう覚えている人もいるかもしれませんが、国際コンセンサスはあっても、国際ガイドラインは存在しないというのが、いまの蘇生科学の世界です。
 
 
ここは日本ですから、日本のJRCガイドライン2015だけ知っていればいいはずなのですが、なぜか、日本ではJRCガイドラインとAHAガイドラインが共存する形となっています。
 
このあたりのことはまた今度書きたいと思います。
 
 

 
 

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