小児救急(P-BLS/FA)一覧

保育士さんがポケットマスクと初遭遇するとき

今日は、山梨県にある子育て支援センターからの依頼で、親御さん向けの1時間半のファーストエイド講習と、保育士・保健師向けの健康管理ワークショップで登壇させていただきました。

今回いただいた小児専門家向けワークショップのテーマは「子どもの日常的な健康チェック」だったのですが、なにをもって「この子は元気」と判断するのか? という点で、「生命危機の兆候が見られない」ことを日々観察するという流れでお話させていただきました。

子どもですから様子がおかしいことは、ちょくちょくあると思います。それが生命危機につながるものなのかどうかがある程度判断できれば、いざというときは迅速に対応できますし、そうでない場合は安心できます。

観察するというと異常を探すという視点になりがちですが、危険な兆候が見られない、だから大丈夫という判断も意味ある重要な考え方です。

生命危機状態の成れの果て、最悪の事態とも言えるのが心肺停止です。

ご参加頂いた皆様は基本的な心肺蘇生法は習得済みでしたが、子どもが命を落とす原因と絡めての話は新鮮な気持ちで聞いていただいたようです。

大人とは違う子どもに特化した蘇生法では、人工呼吸は必須です。決して積極的に省略して良いものではありません。

今日は、おまけの話として、小児BLSでは人工呼吸が大切という話をしたのですが、皆さんが「初耳!」ということで注目されたのが、ポケットマスクでした。

ポケットマスクは小児蘇生では欠かせません

口対口人工呼吸は、フェイスシールドを使って練習したことがあっても、日頃、フェイスシールドなんて持っていないし、あったとしても(気持ち的に)できる自信がないというのが正直なところだったようです。

それが、今回初めてポケットマスクの存在を知り、「これならできる!」と感じていただけたようです。今回は心肺蘇生法講習ではなかったので、デモ用のマネキン1体しか持ってきていませんでしたが、念のためということで参加者人数分の一方向弁(マウスピース)を持ってきていて良かったです。

参加者のほとんど人が講習後も残ってポケットマスク人工呼吸を体験して行かれました。

「これならできる気がします。施設で買ってもらえるようにします」

そんな声が聞かれました。

蘇生ガイドライン2010で、心肺蘇生法の手順が人工呼吸優先のA-B-Cから、胸骨圧迫優先のC-A-Bに変更されたのは、人工呼吸の心的抵抗を考慮した教育心理的な方策でした。

「息をして酸素を取り込んで、血液循環に乗せて体の各細胞に酸素を届ける」という人が生きる根源的なしくみを考えたら、A(気道)-B(呼吸)-C(循環)という流れは絶対的な真理なのですが、あえてそれを崩したのは、蘇生法を絵に描いた餅にしないため、心理的な障壁を下げるためでした。

しかし、子どもの心停止や溺水では必須とされる人工呼吸についてはビニールシート1枚で勇気を奮ってやるように、という教育がいまだ続いていて、呼吸原性心停止が多いとされる子どもの緊急事態に一定の対応義務が課されるチャイルドケア・プロフェッショナルに対しても自己犠牲的な勇気が求められるのは、あまりに非現実的なことです。

気がすすまないこと、でもイヤとは言えないし、どうしよう。

そんなもやもや感が、ポケットマスクという道具ひとつで解消されるのですから、なんでそれを知らなかったのだろう、という感想もいただきました。

古来からの救命教育は、「人間愛と根性」に支えられていたような気がします。

しかし、仕事の上で救命しなければならないのであれば、それは業務です。

もっとビジネスライクに、道具やシステムの改善でどうにかなる部分は、どんどんそっちに任せて、個人の負担は減らすべきなのです。

たかだか2−3千円のポケットマスク。

それで保育者も傷病者も助かるのなら、、、と思います。


幼稚園での「小児BLS&エピペン」研修

先日、幼稚園で「小児BLS&エピペン」研修を担当させていただきました。園の教職員ほぼすべての20名が参加してくださり、小児マネキンとポケットマスクを使った子どもの蘇生法とエピペンで2時間半で。
 

小児マネキンとポケットマスク

 
施設内の研修ですから、現実に即して日頃AEDが置いてある場所まで走って取りに行ってもらいました。ポケットマスクも現実的には日頃持ち歩くものではないので、まずは胸骨圧迫でCPRを開始して、AEDが到着したらポケットマスクで人工呼吸を開始、という流れで練習をしていきました。
 
講習会場で行う公募講習と違って、施設への出張講習では、シチュエーションを具体的に限定したトレーニングを行えるのが強みです。
 
エピペン研修では、BLS横浜得意のシミュレーション訓練で、119番通報の具体的なやり取りや、救急車の侵入経路の検討など、園としての救急対応全般について、全職員で同じ認識を持つことができました。
 
幼稚園や保育園、学校での救急法は個人技能ではありません。
 
システムとしての対応という視点が必要です。
 
救急法トレーニングは園を上げて行う防災訓練。
 
そんなメッセージが伝わったと確信を持てる感想を園長先生からいただけたのは、救命法インストラクターとしての喜びでした。
 
 
 

 
 

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保育士が書いた保育安全ガイドブック-「保育救命」

今日紹介するのは、「保育士が書いた応急手当の本」です。
 

 
珍しいかもしれません。
 
ふつう、救命法とか応急手当の解説書というと、医学的な内容なことから医師などの医療従事者が書くことが多い印象です。そのため、どうしても医療者目線の内容、どれも似通った切り口で書かれがち。
 
応急手当や救命への意識や目線が、医療従事者と一般の方では相当違いますので、市民向け本としてはすこしピントがずれているということもあります。
 
その点、保育士が保育士目線で書いた保育園での安全を考えた本ということで、現場の方にはドンピシャな内容なのではないでしょうか?
 
 
 
本屋で見かけたらぜひ手にとってほしいのですが、保育救命はただの応急手当のマニュアル本ではありません。応急手当という限局された視点ではなく、もっと広い範囲で上から見下ろすような、保育の現場での安全を俯瞰したガイドブックです。
 
 
 第1章 ハザードマップを作ろう
 第2章 保育現場で重大事故になりやすいトップ3
 第3章 保育現場で起こりやすいケガ・症状
 第4章 保護者対応と研修の大切さ
 
 
特に大切なのが第1章です。
 
筆者の遠藤登さんは、事故事例や、危ない!と思った「ひやりはっと」を書き留めて、職員で共有することを提唱しています。
 
室内で、園庭で、そしてお散歩の時など、どんなキケンがありそうかを地図に書き入れて、ハザードマップを作ることで、危険性を可視化していくのです。
 
その地図を職員に目立つところに貼っておいて、日々、情報を更新し、朝のミーティングなどで積極的に情報共有していくことが、事故を未然に防ぐ対策につながり、個々の意識づけになります。
 
応急手当というのは、起こってしまった後の対応であり、いわば最終手段であるという点を忘れてはいけません。
 
応急処置の勉強にのめり込んでしまうと、ケガした後どうしようという部分に視点が行きがちですが、一歩目線を引いいて考えれば、事故が起きてからの対応を学ぶよりも、事故を起こさないことを学ぶのが先、ということは熱心な人ほど意外な盲点になりがちです。
 
ちょっとした工夫で防げる事故も多いわけですから、まず取り組むべきは園全体の意識づけと共有で「防ぐ」取り組みなのです。
 
小児の救命の連鎖の最初の輪は、昔から「予防」です。
 
そんなことを思い出させてくれて、具体的に何をしたらいいかを提案してくれているという点でも、やはり現場の方が書かれた本なんだなと強く感じます。
 
 
まえがきで書かれていますが、筆者の遠藤登さんは、ご自身が保育園の園長をしていたときに、午睡中に子どもの心停止事案に直面したことがきっかけで、保育の救命救急や安全管理に関わる仕事をするようになったそうです。
 
その後、いろんなことと向き合い、考え、活動してきた中で辿り着いた、すべてのキケンを排除するのではなく、リスクと向き合いつつ学びを最大にしていく、という遠藤さんの理念が詰まったのがこの1冊です。
 
ただの応急手当のマニュアル本ではないところの所以です。
 
その他、特筆すべき点をあげるとすると、
 
・保育の現場では、「注意義務」があるという視点
・記録の大切さ
・手袋の使用や下痢・嘔吐の処理などの感染対策
・保護者対応
・ワークショップの開き方
 
などが、他にはない視点で非常に勉強になると思います。
 
保育士はもちろん、幼稚園や小学校の教職員にとっても参考になる情報源といえるでしょう。
 
保育園・学校現場の安全は、養護教諭や保育所ナースの個人的な力量に左右されるようなものではなく、全職員を含めた施設としてのシステムの問題です。誰か1人が意識が高いだけでは有効なパフォーマンスは発揮できません。
 
職員全体で共通認識を持つためにも、「保育救命」を施設の休憩所にいつでも読めるように置いておくというのもいいかもしれません。
 
 
 

 

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水辺の事故、人工呼吸の準備はOKですか?

梅雨明けもして、夏に突入した今日この頃。

夏のレジャーの話題とともに、水難事故のニュースも目立つようになってきましたね。

そこで気をつけたいのが、心肺蘇生法トレーニングの内容と準備についてです。

 
人工呼吸、できますか?
 

昨今、心肺蘇生法では人工呼吸は不要になったという、やや不正確な情報が広まっていますが、水辺の事故を想定した心肺蘇生法としては、人工呼吸は必要です。

直感的にイメージしてもわかると思いますが、溺れて心停止になったら、呼吸ができないことで酸素不足が原因となっている可能性が高いです。

血液中に溶け込んだ「酸素」を使いきってしまったために起きた心停止ですから、胸を押して血流を生み出すだけでは十分とは言えません。

血液中に酸素を供給するための「呼吸」を、人工的にしてやる必要があるのです。

善意での救命では胸骨圧迫だけでもOK

とはいえ、知らない人に口をつけて、人工呼吸をするのは抵抗あると思います。

ですから、通りすがりの立場であれば、胸を押すだけの蘇生法でも、何もしないよりは遥かにマシということは間違いありません。

なんの責任もない立場であれば、できるかぎりのことをすれば、それで十分です。

責任ある立場の人はきちんと人工呼吸の準備と練習を!


しかし、あえて水辺での緊急事態に備えるのであれば、人工呼吸の訓練と、実行を容易にするための準備をしておきたいところです。

例えば、幼稚園や小学校のプール授業の前の心肺蘇生法講習で人工呼吸練習を省略するのはあり得ません。

さらに言えば、人工呼吸の技術を身につけるだけではなく、「実際にできる」状態に高めるための準備も必要です。

それはずばり感染防護具の準備です。

職業人が人工呼吸をする以上、感染防具を使うのは必須です。それがないからできない、という状況は通りすがりの素人ならいざしらず、プールの授業の安全管理を行う立場であれば許されないことでしょう。

AEDと一緒に人工呼吸の感染防護具が入っているか、確認しておく必要があります。

できれば人工呼吸は、より安全で、より使いやすいフェイスマスク(通称ポケットマスク)の準備が望まれます。フェイスシールでは、どうしても相手の口の周囲に自分の唇が触れる感触がありますので、気持ち的な抵抗が強いからです。

人工呼吸を本気で行うことを考えたら、フェイスマスクの準備をし、使用が望ましいでしょう。

 

このように救命法は講習を受ければいいというものではなく、安全管理システムの一部として講習の受講があり、さらにはAEDや感染防具の準備があり、さらには防災訓練のような実地でのシミュレーションが必要なのです。

 
 


たった2%だから、子どもの蘇生法は不要?

心停止者の年齢区分
心肺機能停止傷病者の救命率等の状況」総務省消防庁救急企画室より

 
先日の日本蘇生科学シンポジウムでは、小児の心停止は2%未満で、ごくほんの一部にすぎないため、日本のガイドラインでは、大人の手順に吸収させたと言っていました。この点は前回のガイドラインから見直しはされませんでした。
 
最後に少し座長からのフォローが入りましたが、たった2%であっても、平均余命を掛けたら見過ごせない数字です。
 
公衆衛生として考えたら、最大公約数である大人の救命法を優先すべきというのはわかります。しかしCPRを学ぼうとする人は、日本国民の寿命統計を上げたいから学ぶわけではありません。目の前にいる人を救いたいのです。
 
ましてやそれが自分の子どもだったら……
 
子どもの特性を考慮した小児BLSは重要です。しかし、それを日本で学べる機会は減りました。
 
だからこそ、市民教育レベルでも、子どもの蘇生を大人の蘇生と明確に切り分けている米国蘇生ガイドラインの講習プログラムが注目されています。
 
 
 


「エピペン使用だけにとどまらない緊急時に備えた救命講習の必要性について」

小児保健の専門誌「チャイルドヘルス」にエピペン関連の記事を書かせていただきました。

エピペン使用だけにとどまらない緊急時に備えた救命講習の必要について

いちはやく2007年頃からエピペン研修に取り組んできたBLS横浜ならではの視点で、エピペン研修のあり方と、心肺蘇生法と有機的に関連付ける必要性、またシミュレーション・トレーニングを取り入れることの意義を4ページに渡って書かせていただきました。

「エピペン使用だけにとどまらない緊急時に備えた救命講習の必要性について」
チャイルドヘルス2014年10月号 vol.17 No.10, p.51-54

エピペン注射を行うからには、心肺蘇生法を心得ていることがその前提条件です。
そして、できればエピペン注射というファーストエイド処置と、心肺蘇生法は深く関連した一連のものとして心得ていることが望ましいと言えます。

さらに、エピペン研修や救命講習は、外部での一般講習に参加するだけでは不十分で、施設内でシミュレーション訓練を行うことが実行性への大きなステップになります。

そんなことを実例を踏まえて解説してあります。

保育園ナースや養護教諭の皆さんにぜひ読んでいただければと思います。

なお、記事の中で紹介したエピペン&小児BLS講習は次回12月7日(日)、横浜での開催となります。
現在、参加者募集中です。

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エピペン講習のデブリーフィング

昨日のアナフィラキシー対応(エピペン)&小児BLS講習の参加者は全員看護師さんでした。
 
保育園勤務の方がいましたので、園を想定したシミュレーションを行いました。ACLSを履修している方や、小児アレルギーエデュケーターの方もいて、非常にスムーズ。
 
子どもたちの誘導や119番通報、注射後の管理と観察など、チームワークもばっちりでした。
 
後の振り返りで、「今日はわかっている人たちばかりだったのでうまくいったけど、これが保育園で同じようにできるか不安」という声が上がりました。
 
これはACLSでもPALSでも同じかもしれません。
 
そこで参加者に尋ねました。「なぜうまく行ったのだと思いますか? もうすこし具体的に良かった要因を挙げてみましょう」
 
シミュレーション後のでデブリーフィングの目的は、できなかった点、うまく行かなかった点を見つけて改善するだけではありません。
 
うまくいったのなら、その要因を明らかにして、たまたまではなく、意図的に同じようにうまくいくように経験を”一般化”していくことも大切です。リアルな事象でも再現できるような経験知に変えていくのです。
 
このように振り返っていくと、公募講習のシミュレーションでできるけど、現場でできないということのギャップが、保育園等の施設のシステム的な部分や、事前準備や教育に大きく関係していることが見えてきます。
 
今回うまくいったのがみんながやるべきことをわかっていたからだ、というのなら、それを再現するには、保育園職員全員が同じ教育を受けることで解決できるのではないか? など。
 
講習が終わる頃には、施設全体のシステムという俯瞰した視点で考えるようになって帰っていきます。
 
施設ごとの個々の問題に、私達インストラクターは個別に対応はできません。ですから、答えを提示するのではなく、考え方と視点と方向性を示すことで、その後の可能性の広がりに期待したいと思っています。
 
シミュレーションベースのエピペン講習に答えはありません。
 
ファシリテーター(インストラクター)にとっても、受講者の皆さんとの情報交換、ディスカッションから毎回新たな学びがあります。
 
 
 


普通救命講習III 子どもの救命講習を依頼するときのポイント

ガイドライン2010で、日本の蘇生ガイドラインでは、”ユニバーサル化”されて、子どもの特性を踏まえた蘇生法は、大人の蘇生法に吸収されてしまいました。

これにより、旧来あった子どもの蘇生法は一般市民には教えないことになったのが現実です。

しかし、子どもの救命法を必要としている人達、例えば保育士、小学校教諭、児童施設の職員、思春期未満の子どもを持つ親御さんたちはどうしたらいいのか? ということで、日本版JRC蘇生ガイドライン2010では次のように勧告しています。

「市民のうち小児にかかわることが多い人、すなわち保護者、保育士、幼稚園・小学校・中学校教職員、ライフセーバー、スポーツ指導者などは、小児BLS(Pediatric Basic LifeSupport:PBLS)ガイドラインを学ぶことを奨励する。医療従事者が小児を救助する場合はPBLSに従う」

わかりにくい表現ですが、簡単にいえば、子どもの救命法を必要としている人は、医療従事者と同じ「子どもに特化した蘇生法」を学ぶことが勧められている、ということです。

そのPBLSを学ぶ機会として提供されたのが、総務省消防庁のプログラム「普通救命講習III」です。(ちなみに消防の講習で、一般に開催されているのが普通救命講習Iです)

全国的に、小学校や保育園が地元の消防本部にお願いして、職員向け救命講習を開催しているところは多いと思いますが、その場合、必ず「普通救命講習IIIをお願いします」と伝えることが大切です。

ここをはっきりさせておかないと、普通救命講習Iを開催されてしまいます。

蘇生ガイドラインに書かれている通り、学校教職員・保育士向けとしては適切ではありません。本当はこのあたりは依頼を受ける側(消防側)が、きちんと判断してコンサルとしてほしいところですが、現実、そういう動きはあまりないようなので、発注する側がきちんと確認をしましょう。

普通救命講習IIIは、消防職員(応急手当指導員)も教え慣れていないことが多いため、内容をきちんと把握していないこともあるようです。

そこで、依頼段階で下記の点を確認しておくことといいかもしれません。

・成人マネキンではなく、小児マネキンで練習がしたい
・乳児マネキンを使って乳児の蘇生法も学びたい(保育園の場合)
・大人の蘇生法との違い(人工呼吸の大切さ)を強調してほしい

依頼する際には、学校、園側としても、JRC蘇生ガイドラインの勧告を一読して、内容をある程度把握しておくことをおすすめします。

JRC(日本版) ガイドライン2010(確定版)のダウンロード
http://www.qqzaidan.jp/jrc2010_kakutei.html

上記ページからPDFでダウンロードできる「小児の蘇生(PBLS、PALS)」の6ページです。

場合によってはこの部分をプリントアウトして、打ち合わせの時に提示してもいいかもしれません。


エピペンを巡る新展開

日本災害救護推進協議会 -JAEA-のホームページで、「反復継続の意思がない」市民救助者であれば誰でもエピペン注射ができる、とする厚生労働省の見解が示されました。
 
このことに驚かれた方も多いかもしれませんが、BLS横浜のファーストエイド講習に参加したことある方は、「ついに来たか!」と思われたことと思います。
 
そもそも医師免許を持った人と、診療の補助が認められた看護師以外には原則認められていない注射という医療行為。
 
それを医療者免許を持たない学校教職員と保育所職員が「できる」とされた法的根拠をご存知でしょうか?
 
それはひとえに「反復継続の意図がない」と厚生労働省が認めたからです。
 
医師免許を持っていない人が勝手に人に注射をすると、医師法違反が問われます。その医師法は医業を禁止する法律です。そしてその医業の定義は「医行為を反復継続の意思を持って行うこと」とされています。
 
つまり、「反復継続の意思がない」と認められる医行為は医師法違反にならないのです。
 
故に学校教職員がエピペン注射をしていいかと文科省が厚労省に聞いたら問題ないという回答を得たというわけです。
 

エピペン注射の法的根拠

 
 
子どもからエピペンを預かって、いざとなれば何度であっても注射をしようと備えている学校教員や保育士ですら、反復継続の意思がないと判断されるとしたら、、、、たまたまアナフィラキシー・ショックの現場に遭遇したレストラン従業員や通りすがりの人にこそ、反復継続の意思があるとは考えられません。
 
ですから、法律の仕組みを考えれば、学校教職員や保育所職員にエピペン注射がOKとされた時点で、すでに医療資格を持たない一般市民の立場の人が使えるというのは自明な話。
 
ただ、それが公式見解として確認されていないことが問題でした。
 
そこを厚生労働省に正式に問い合わせを行なったのが、NPO法人 日本災害救護推進協議会さん。
 
詳しくは、ホームページをご覧ください。
 
 
ここでくれぐれも勘違いしないでほしいのは、誰でも気軽にエピペン注射をしていい、という話ではないということ。
 
学校教職員や保育所職員の場合は、親からの信託を得て、ある意味契約を交わして、代理注射を行うという図式になっています。
 
バイスタンダー的に注射を行うのとはわけが違うという点です。
 
例えば、サマーキャンプに引率する自然観察指導員などは「学校教職員」ではないとしても、学校と同じように親御さんとの信頼関係のもとにエピペン注射を行うことはありえるでしょう。ただ、いずれにしてもリスクを伴う医療行為なので、エピペンを預かって打つかどうかは組織判断ならびに自己判断、自己責任です。
 
学校教職員や保育所職員ほど守られていないのは、れっきとした事実です。実際に起きたあとで、裁判になってみないとわからない部分もあります。
 
また少なくとも、人に針を突き刺すという傷害行為と紙一重の筋肉注射という行為。
 
普通はありえない話です。

正当性が認められなければ、暴行罪、傷害罪、もしくは殺人未遂を問われてもおかしくない事態です。
 
そこは再確認しておきたいところです。
 
 
 


養護教諭/保育所ナースのためのエピペン&小児BLS講習

BLS横浜オリジナル企画「養護教諭・保育所ナースのための小児BLS&エピペン講習」が終了しました。
 
ガイドライン2010になって、日本の一般的な救命講習からは小児の蘇生が消え去ってしまいました。JRC蘇生ガイドライン2010では、学校教職員や小さな子どものいる親などは、小児BLSを学ぶように推奨されているものの、どこでそれが学べるのかと言ったら、ほとんど絶望的な現状。
 
ということで、BLS横浜では子どもの救命法普及に力を入れていく方針なのですが、その第一弾として企画したのが「養護教諭・保育所ナースのための小児BLS&エピペン講習」です。
 
いまや学校の先生に求められる救命スキルは心肺蘇生法だけではありません。
 
心肺蘇生法というより、むしろエピペンがクローズアップされる今日この頃。
 
両方合わせて、学校の先生、中でも救命処置に関して専門職である養護教諭・保育所看護師にフォーカスした講習を組み立ててみました。
 
養護教諭・保育所看護師に求められる救命スキルは、自身がCPRができてエピペン注射ができる、ということだけではありません。
 
現場で唯一の医療・保健職。
 
そこに求められるのは、現場マネージメント能力であり、現場での他職員への指導力です。
 
心肺蘇生法は養護教諭が行うべきではないかもしれません。特に胸骨圧迫など、自身が行なっていたら、現場全体を見ることはできませんし、指示を出すこともできません。
 
つまり、養護教諭・保育所看護師は自分自身がCPRができることに加えて、他の人、場合によってはほとんど訓練を受けていない人をその場で即興で指導して、CPRを実践してもらう「蘇生インストラクター的なスキル」が求められるのではないかと思うのです。
 
また、子どもであっても人工呼吸はする必要がないと言い切る、適切とは言いがたい指導が巷で行われている現状を考えると、子どもの心停止の仕組みを理解して、何が正しいやり方なのかを、受け売りではなく、人に説明できる力も求められていると言えます。
 
子どもの心停止の仕組みを理解し、子どもに最適化された蘇生法が実践でき、そしてそれを人に指導できるスキル。さらにいうと、ACLSのチームダイナミクス的な現場で人を動かす力。
 
そんなところに主眼をおいて、CPRを約3時間、エピペン部分で約1時間の講習を行いました。
 
もうちょっと心肺蘇生部分とエピペン部分を関連付けて伝えられれればよかったなとか、詰めが甘かったり、焦点がぼやけてしまった部分もありますが、参加された方たちにとっては、これまでにない学習体験となったようです。
 
今、世の中が求めている講習プログラム。それは申し込みの多さや見学希望の多さからも見て取れます。
 
今回いただいた感想などから、さらなるチューンナップをはかり、可能なら11月にまた開催したいと思っています。今回、キャンセル待ちいただいていた方たちも、次回、ぜひご参加いただけたらと思います。