小児救急(P-BLS/FA)一覧

エピペン注射の仕方は日米で違う!

BLS横浜では American Heart Association公式のファーストエイド講習 の中で、2008年頃よりエピペン注射の指導を行ってきました。
 
日本でエピペン(アドレナリン自己注射器)が薬事承認を得たのが2003年、当初はハチ刺されによるアナフィラキシーのみが適応でしたが、2006年から食物アレルギーにも適応範囲が広がり、今に至っています。去年あたりから事故が相次ぎ、今ではよく知られるようになりました。
 
エピペンってなに? という時代から、その指導を行なってきたので、日本の中では古参に入るかと思いますが、私たちはずっと米国の法定講習の中で教えてきたため、気づきませんでした。
 
どうやら、日本と米国ではエピペン注射の指導の仕方が若干違うようなのです。
 
この写真は、練習用エピペンの英語版と日本語版を並べて撮ったものです。
 

エピペン・トレーナー日米の違い

 
お気づきでしょうか? 注射の打ち方と、注射後に押し付けておく秒数が明らかに表現が違っています。
 
(米国)
・振りかぶって強く押し付ける(Swing and firmly push)
・10秒間保持(Hold on thigh 10 seconds)
 
(日本)
・強く押し付ける
・数秒間待つ
 
振りかぶって注射をするのは、前から危険だなと思っていて、当時、ガイドライン2005版のファーストエイド講習ビデオのデモンストレーション映像は、監修ミスかな、米国ゆえの大雑把さかな程度に考えていたのですが、新しくリリースされたガイドライン2010版ハートセイバー・ファーストエイドDVDでもみごとに振りかぶって注射をしています。
 
でも、このエピペン練習器の表記に気づいて、それは米国では正しいやり方だったのだと悟りました。(当時は旧タイプのトレーナーを使ってました)
 
また注射器を大腿に押し付けておく時間も、私たちはAHAのテキスト通り、10秒で教えていましたが、最近、保育園や小児科クリニックで指導させていただく中で、痛がる子どもを制しつつの10秒は長すぎるよね、ということで、AHA講習以外では数秒間保持という言い方に変えるようにしていましたが、実はこれも日本では公式なメーカー推奨のやり方だったことに後から気づいた次第です。
 
 
日本国内で他人に対してエピペン注射をできるとされているのは救急救命士を除けば、学校教職員と保育所職員。つまり注射を打つ相手は子どもに限定されています。
 
子ども故に怖がって暴れたり、太さ22G(ゲージ)、長さ1.5cmの針が刺さって痛いことを考えると、振りかぶると打ち損じたり、針が曲がったり、最悪折れる危険があります。また痛みを訴える中、10秒押し続けるのは困難。
 
そんなことはシミュレーション・トレーニングの中でも浮き彫りになってきます。
 
そういった意味では日本流の指導法は妥当と思います。
 
AHA公認講習(ハートセイバー・ファーストエイド)は、米国労働安全衛生局OSHAの労働ライセンスを発行する以上、米国流の注射の仕方で教える必要があり、そこは変更できません。特に注射時間の10秒というのは実技試験で問われている項目でもあるからです。
 
この点を注意しつつ、私たちは受講対象や講習の種類に合わせて、適正に指導を行なっていきたいと思っています。
 
 
 

 
 
 

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保育園に出向いて職員にエピペンを教えるということ

前回、保育園でエピペンの取り扱いを含むアナフィラキシー対応研修をさせていただいた話を書きましたが、その続きです。
 

新タイプのエピペン(成人用、小児用)

 
講習後、園長先生と専属の看護師の方と、今後の保育園としての体制や職員(保育士)への継続教育・訓練について、あれこれお話させていただきました。
 
エピペンの取り扱いを巡っては、マスコミでも話題に上っていますし、こうするべき! というスタンダードなやり方もあまり浸透していない過渡期にある微妙な問題です。
 
園に赴いて研修を行なう以上、エピペンの使い方やファーストエイド対応だけではなく、危機管理体制というシステム作りまで含めてアドバイスをするのが、インストラクターの責務かと思っています。
 
もしかすると、保育園としては、エピペンの使い方を職員に教えてもらう、という以上に、こうしたコンサルティングを望んでいるのでは? というくらいに質問や意見が行きかう濃密な時間でした。
 
保育園でも、ある程度の規模のところには看護師が常駐している場合があります。
 
私が訪問した園もそうでしたが、保育園ナースの方が中心となってアレルギー対策を考え、保育士向け教育を行なっているのが現状ですが、たいてい看護師は一人。
 
相談するところもなく、手探りで苦労されている様子がよくわかりました。
 
保育士に対しては、厚生労働省が出している資料にあるアナフィラキシー症状の「グレード」をベースにした教育体制を考えていたようですが、たぶん、難しすぎます。そこは保育園ナースの方も悩んでいたようでした。
 
そこで、緊急度の判断ということで、AHAのPEARSやPALSの迅速評価の考え方をベースにすることを提案してみたら、手ごたえを感じてくれたようで、次回(3回に分けて全職員に研修をすることになってます)はもう少し詳しくお話させてもらおうと思いました。
 
そこで思ったのは、私も含め、エピペンも含めたファーストエイド講習展開をしているインストラクターのもとにはそれなりに情報が集まってきます。
 
公募講習に参加される養護教諭や同じく保育園ナース、保育士からの相談や現状。親御さんからの意見など。
 
私は保育の現場にいる人間ではありませんが、そうした中にいると見えてくることがあります。
 
知らず知らずのうちに貯まった、そんなノウハウや情報をお話させていただくことで、園としての対策が具体的に見えてきたようです。
 
このようにエピペン講習とその後のコンサルティングなどを含めて、エピペンという器具としては単純な道具について教えることの周辺事情と奥深さを実感した次第です。
 
そしてなにより、こうした相談への対応は私どもインストラクターにとっても、大きな勉強となり、またそれがノウハウの蓄積となり、次につながっていきます。
 
私たちも日々、学ばせてもらっています。
 
 
 

 
 

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エピペン講習のあり方、現場に必要なこと

とある公立保育園からの依頼で、エピペン使用法を含むアナフィラキシー対応研修を行なってきました。
 

エピペン(アドレナリン自己注射器)

 
エピペンの使用法自体はとても簡単です。使い方を教えるだけなら10分もあれば十分です。
 
通常はそこにアレルギーの仕組みや、症状の「グレード」の説明などを加えるのだと思いますが、現場で求めているのは、難しい理屈ではなく、使うにあたっての実際。
 
そこで、インストラクターが模擬患者となって、苦しがっているところに、どのような対応をするか、シミュレーションをしてもらいました。
 
床に倒れている状態で、大腿外側に90度に注射をするのはなかなか難しいです。エピペンは握り方が大事なポイントですが、安全キャップをはずした後についつい持ち替えたくなってしまいます。そこが危険な落とし穴。
 
注射後、数秒、針を押し付けたまま保持しますが、痛がって苦しがって動いている子どもに針を刺し続けるのは難しいです。そこで誰か足を押える人が必要になってきます。
 
注射をしたらおしまいではありません。注射時間の記録、記憶に頼るといかに忘れてしまうか、また症状の観察。救急隊への引継ぎも行なってもらいました。そこで実際なにを観察したらいいのかという問題に直面します。さらには看護という視点で、苦しがっている子どもにどう声を掛けるか? 家族への連絡、119番通報。
 
さらには周りの不安がっている子どもたちをどうするのか? 救急隊がすぐに入ってこられるように門を開ける係など、現場でやるならではのいろんな問題点が見えてきます。
 
いわゆるエピペン講習の目的は何か?
 
講習会場内でエピペン注射ができるようになることが目的ではないはずです。
 
保育や学校現場で、アナフィラキシーショックへのファーストエイドが行なえること。エピペンはその手段のひとつに過ぎず、テクニカル・スキルとしてエピペンが使えればいいという話ではないのです。
 
1時間という講習時間は決して十分な時間とはいえません。しかし、今後、職員がアナフィラキシーという緊急事態に適切な行動ができるようになるためには、どんな要素に対してどんな訓練を続けていけばいいのか、そんな示唆を感じ取ってもらえるような講習展開を心がけました。
 
その保育園では、職員全員に受講させたいということで、あと2回、お邪魔する予定になっています。
 
その後は、保育園の看護師さんが中心となって、定期的に実践的なシミュレーション訓練を続けてくれるのではないかと期待しています。ある意味、インストラクターは救命教育コンサルタント的な役割も意識すべきと思います。
 
エピペン講習の開催希望は、今後、AHAファーストエイド・インストラクターを中心に依頼が増えるのではないかと思います。
 
そんなとき、現場で求められていることは何か? また一回の講習で終わらせるのではなく、今後につなげていく提案が必要な点、ぜひこの機会に伝えたいと思い、記載させていただきました。
 
 


エピペン注射をする優先順位

保育園で園児がアナフィラキシーショックを起こしました。その子はエピペン(アドレナリン自己注射器)を携帯しています。
 
今、救急車が到着し、現場には保育士と救急救命士がいますが、まだエピペン注射をしていません。
 
さて、そんな状況では誰がエピペン注射をすべきでしょうか?
 
救急救命士?
 
それとも保育士?
 

アドレナリン自己注射器エピペンepipen

 
恐らく保育士は救急救命士が注射をしてくれると期待していることでしょう。
 
しかし、実は救急救命士は保育士が注射をするもの、と考えているかもしれません。
 
エピペン注射をする場合の優先順位。
 
実は、
 
本人 → 家族 → 保育所職員(学校教職員) → 救急救命士
 
という順番が妥当と考えられます。
 
保育士からすると、救急救命士は医療の専門家だから、注射は専門家に任せるべきと考えますが、救命士の視点からすると、患児からみて救命士は赤の他人でいちばん遠い存在。
 
保育士は親の代わりとして、どういう症状のときどんなタイミングで注射をするか、親から信託を受けた立場なわけですから、保育士や学校教職員の方が優先度が上といえます。
 
現場に到着したばかりの救急救命士からしたら、そのエピペンが本当にその子のモノなのかも確認しようがないわけで、あまりに情報が無さすぎ。そんなところで保育士に言われるままに注射という医行為を責任ある立場で行うのは怖いと感じることもあるでしょう。
 
現場の保育士さん、学校教職員は救命士に頼りがちですが、救命士からは「あなたが打ってください」と言われる可能性があります。
 
ぜひ、エピペン代行注射を行う可能性のある立ち場の方は、そんなことも考えてみてください。
 
 


保育士が医療者向けBLS講習を受ける意義

BLS-AED.net横浜は、心肺蘇生法や救急法の普及推進に興味を持つ個人の集合体です。インストラクターも本職としてさまざまな仕事をしている人たちが集まっています。
 
医師・看護師だけではありません。
 
今日は、保育士さんで、AHA-BLSインストラクターとして活躍している仲間のブログ記事を紹介します。
 
 
『保育士がお医者さんや看護師さんと
 同じ土俵で学ぶ気概をもったら生まれ変われること』

 http://ameblo.jp/lsfachild/entry-10868681967.html

 
保育するってことは子どもの明日をつくること
 
 
保育士の視点で心肺蘇生法講習を考えて、見えてきたこと。
 
技術習得だけがBLS講習の目的ではない、という視点、斬新でした。
 
 
皆さん、ぜひ目を通してみてください。
 
 
最近方針が示されたエピペン(アドレナリン自己注射器)の話題や、保育業界の安全対策など、過去ログにも、興味深い記事がめじろ押し!
 
必見です。
 
 
 

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「養護教諭、保育士、学校教員のための小児救急法フルコース」終了しました

12月26日の「養護教諭、保育士、学校教員のための小児救急法フルコース」は、好評のうち、無事に終了しました。
 
内容としては、アメリカ心臓協会(AHA)の、
 
ハートセイバーAED (乳児オプションを含むフルコース)
 
ファミリー&フレンズ・ファーストエイドforチルドレン

 
ですが、子どもを相手にする専門職の方にフォーカスを当てた特別企画。
 
同じ志を持った方達にターゲットを絞ることで、濃密な意見交換を含め、大きな学びの機会となりました。
 
 
今回受講いただいた方が、その様子をブログにしたためてくださいました。
 
『12月26日講習会』
http://blog.skatelovers.com/yuko/index.cgi/01823
 
『講習会続きファーストエイド』
http://blog.skatelovers.com/yuko/index.cgi/01824
 
 
講習会の雰囲気が伝わると嬉しいです。
 
 
今後もこのような特別企画を計画していきたいと思っています。
 
少人数制のアットホームな勉強会です。ぜひいらしてください。


養護教諭向けの学校応急処置 参考書

養護教諭のための学校救急法参考書
 
注文していた2冊の本が届きました。
 
どちらも小中高校の保健室の先生(養護教諭)向けの応急処置(救急法)の参考書です。
 
 
BLS-AED.net横浜では、ここ最近、子どものファーストエイド講習に力を入れています。
 
受講される養護教諭の方たちのお話を聞いていると、何が正しいのかわからない、間違った情報、古い情報・慣習が多い、といった色々な問題点が見えてきて、ファーストエイドを普及する立場の者としては、驚くと同時にどうにかしなくてはという思いに駆られます。
 
そこで、養護教諭の皆さんや、学校の先生といった責任ある立場の人たちが日頃どのような思いを持ってお仕事をしているのか、またどのような勉強をしてきているのか、など、感心を持って勉強するようにしています。
 
学校現場にあった救急法はどのようなものなのか?
 
それを模索するために購入したのがこの2冊の本です。
 
 
今度、また機会を見つけてレビューしたいと思いますが、「先生大変です、救急車を呼びますか?」
はとてもわかりやすい本です。
 
養護教諭ではない普通の先生にぜひお薦めしたい本です。
 
看護師免許、保健師免許を持っている養護の先生にはちょっともの足りない感じかも知れません。
 
 
もう一冊の「初心者のためのフィジカルアセスメント-救急保健管理と保健指導-」は、完全に看護職向けの本です。
 
一通りのことは書かれていますが、それがわかりやすいかどうかはもうちょっと読み込んでみないとわかりません。お勧めかどうかはまた今度コメントしたいと思います。
 
 

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乳児・小児・成人/心肺蘇生法の年齢区分

「子どもへの心肺蘇生法を勉強したいんですけど・・・」
 
そんなご相談を受けることがよくあります。
 
2004年のAEDの市民使用が解禁されて依頼、日本でもAED講習が広く開催されるようになっていますが、そこで学ぶ心肺蘇生法のほとんど大人(成人)を対象としたものです。
 
ところで、ここでいう大人(成人)というのは、何歳以上のことを指しているか、ご存じでしょうか?
 
実は、市民向け救急法でいう大人(成人)とは、8歳以上を意味します。
 
8歳というと、小学校2年生で、まだまだ子どもですが、大人と同じやり方でOKなのです。
 
 
8歳未満の場合は、救急法では「小児」に区分されます。
 
小児は1歳以上8歳未満。
 
この場合、少しだけ大人(成人)と違う所があります。
 
1.AEDより人工呼吸を含んだCPRが優先される(2分間のCPR後にAEDを使う)
2.片手法胸骨圧迫
 
詳しくは、講習を受けていただきたいのですが、まあ、細かな違いなので、難しく感じるようでしたら、大人とまったく同じやり方でも構いません。
 
 
1歳未満は「乳児」に区分されて、成人・小児に比べてもうちょっとやり方が違ってきます。
 
赤ちゃんは体が小さいので両手の手のひらを使って胸骨圧迫するのは無理があります。そこで二本指を使って行います。
 
また「大丈夫?」と方を叩きながら反応を確かめるのも、赤ちゃんは首が据わっていませんから、足の裏を刺激して反応をチェックします。
 
後は口対口人工呼吸では、鼻をつままず、鼻と口をいっぺんに覆って呼気を吹き込みます。
 
さらには、喉に物が詰まったときの解除方法も、大人とはずいぶんと違います。
 
このあたりは講習会に来ていただければ、赤ちゃんの蘇生練習用マネキンを使って練習し、体で覚えていただきます。
 
 
 
このように、心肺蘇生法は、成人、小児、乳児に分れています。
 
アメリカ心臓協会のDVD教材を使った心肺蘇生法講習は、医療者向けのBLSヘルスケアプロバイダーコースでは乳児まで含めた蘇生法をカバーしていますが、ハートセイバーAEDコースやファミリー&フレンズCPRコースでは、乳児はオプション扱いになっています。
 
その時々の会場確保時間の関係から、乳児オプションを行う場合と行わない場合があるので、子どもの救急法を勉強したいと考えている方はお申し込みの時、注意していただけたらと思います。
 
 
余談ですが、1歳未満の乳児の中でも産まれた直後の新生児はまったく別の特別な蘇生法が行われます。
 
新生児は、母親の体から地上に生まれ出て、そこで初めて呼吸を開始します。
 
新生児に蘇生が必要になる場合というのは、ほとんどがこの未熟な呼吸機能の問題なので、人工呼吸の必要性が特別に高いのです。
 
そのため、通常の胸骨圧迫と人工呼吸の比率である30:2ではなく、3:1という特殊な比率で蘇生が行われます。
 
これは産まれた直後に分娩室や手術室(帝王切開時)で行われる蘇生法なので、医療従事者の中でも産科医や助産師、麻酔科医、手術室看護師などの限られた人にだけ必要とされる特殊技術です。そのため市民向けには教えていません。
 
アメリカではこの新生児蘇生法を教えるNRPというプログラムが、また日本でも日本周産期・新生児医学会主催の新生児蘇生法(NCPR)講習会というのがあります。
 
後者のNCPR講習に関しては、今後、BLS-AED.net横浜でも開催(医療従事者向け)していきたいと考えています。

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学校教職員のエピペン緊急注射訓練

先日、小学校でアドレナリン自己注射器(エピペン)の取り扱いを巡るニュースをお伝えしましたが、その後、関連情報が入ってきました。

読売新聞の調べによると、エピペンの使用法について教職員に研修を行っていたのは、北海道、埼玉、東京、石川、高知などの12の教育委員会だけだったとか。

エピペンの使用法自体はぜんぜん難しいものではありませんが、それを教えられる人は日本にはあまりいません。

エピペンを処方している医師か、販売元の社員くらいでしょう。

実は、日本にも一万人前後はいると思われるアメリカ心臓協会AHA公認のBLSインストラクターは、その資格上、エピペンの指導ができることになっています。(アメリカ労働安全衛生基準(OSHA)規格のファーストエイドを指導できることが条件になっていますので)

しかし、実際はエピペン練習機にすら触ったことがないというBLSインストラクターが大半なのが現状です。

もし、これで本当に全国のBLSインストラクターがエピペン指導を行えたら、全国の学校教職員への実技指導もスムーズに行くと思うのですが、残念ながらそのような状況にはありません。

非常に残念なこと、と思っています。

今度、アメリカ心臓協会のハートセイバー・ファーストエイドコースとは別に、独自のエピペン講習を開催して行くことも検討していきます。

[追記]

2010年4月25日 エピペン勉強会を横浜で開催します 参加者募集中

急性アレルギー処置、「緊急注射」訓練都道府県12教委だけ…本社調査

兵庫県姫路市内の小学校で、食物アレルギーの男児が給食で急性反応・アナフィラキシーショックを起こした際、学校側が預かっていた緊急用の自己注射薬を打たなかった問題を受け、読売新聞社が全国47都道府県教委に尋ねたところ、教職員が薬の使用法を学ぶ研修を実施しているのは、12教委にとどまっていることがわかった。文部科学省は2008年以降、救命のために教職員が注射をしても医師法違反にはならないとして、各教委に適切な対応を促しているが、現場の準備は十分でない実態が浮き彫りになった。

姫路市の市立小は今年1月、ショックを起こした男児に、保護者から預かっていた症状を和らげる注射をせず、119番。男児は救急車に乗ったところで、駆けつけた母親から注射を受け、2日間の入院で済んだ。学校側は「注射する取り決めを保護者と交わしていなかった」と説明している。

自己注射薬は、太ももに強く押しつけると針が出て薬剤が体内に入る=マイラン製薬提供

調査は3月上旬、都道府県教委の担当者に聞き取りし、文科省が09年7月に「ショック状態の児童生徒が自ら注射を打てない場合は適切な対応を行うこと」とした通知に対する認識や、発作を起こした場合に備えた研修の有無などを尋ねた。

同省通知については、45教委が「教職員は積極的に打つべきだと理解している」などと回答。しかし、実際の打ち方の研修を都道府県単位で行っていたのは、北海道、埼玉、東京、石川、愛媛など12教委で、〈東高西低〉の傾向にあった。

神奈川県教委は09年度に12回、養護教諭や一般の教職員を対象に、針のない訓練用キットを使って太ももなどへの打ち方を学んでもらった。東京都、千葉県の教委も、専門家を講師に、注射を使うかどうかの判断や打ち方の研修をした。

兵庫県教委は、姫路の児童が発症した1月以前に研修をしていなかったが、今月3日、希望する教諭を対象に使い方の研修を行った。

一方、実技研修未実施の教委の多くは、「通知が届いてからの時間が短いから」などと理由を挙げた。

姫路市の学校の対応については、多くの教委の担当者が「薬を預かる段階で、教職員の使用について協議すべきだった」(青森)などと指摘。一方で、「取り決めがないまま先生に打てと言うのは酷」(北海道)との声もあった。

教育評論家の尾木直樹・法政大教授は「文科省のお墨付きがあっても、注射する医療行為は、教師にはハードルが高い。ためらわずに対応できるよう、全教職員が実技などの研修を受けるべきだ」と話している。

アナフィラキシーショック 体に入った異物に過剰に反応するアレルギー症状。ハチ刺されや、牛乳、卵、小麦などの食品、医薬品が原因となる。呼吸困難や血圧低下で意識を失うことがあり、死に至るおそれもある。文科省によると、児童生徒の有病者は約2万人とされる。学校給食が原因の死亡例は近年はない。自己注射薬について、NPO法人・アレルギーを考える母の会(横浜市)は、1万本以上が児童生徒に処方されているとみている。


自己注射器エピペン講習と学校教職員:子どものアレルギー

学校で食物アレルギーを起こした子どもに対して、学校側が救命処置としてのアドレナリン自己注射器を使わなかったことが問題になっています。
 

アドレナリン自己注射器エピペンの実物
重度なアレルギーへの救命処置:アドレナリン自己注射器エピペン

 
 
あまり知られていませんが、いま学校の先生たちは児童に対して「注射」をしていいということになっています。
 
最近の子どもたちにありがちな食物アレルギー、たとえばソバやピーナッツなど、体質によってはアレルギー反応を起こして、重篤な場合、顔や首が腫れ上がって呼吸ができず血圧が下がって命を落とすこともあります。
 
本当に重篤なアレルギー反応が起きた場合、発症から30分以内にアドレナリンという薬を注射しなければ助からない場合があります。
 
そのため、アレルギー体質を持った人は医師からエピペンという自己注射器を処方してもらい、いざというときのために持ち歩いている場合があります。
 
エピペンは決して難しい道具ではなく、キャップを外して自分の太ももに強く押し当てると針が飛び出して必要量の薬液が自動的に筋肉注射される仕組みになっています。
 
自己注射器というくらいですから、ひどいアレルギーが起きたと思ったら自分で打つのが原則ですが、子どもの場合難しいのが現実です。
 
そのため、学校教職員は自己注射器の使用を手伝ったり、場合によっては子どもに変わって自己注射器の使って注射をすることが、文部科学省の通達・ガイドラインで示されています。
 
今回のケースの場合、学校側がアドレナリン自己注射器「エピペン」を親から預かっていたにもかかわらず適正に使用できず、あわや、という事態になったというもの。
 
新聞記事にはいろいろ理由が触れられていましたが、それとは別の視点で、これはある意味やむを得ない部分もあるかと思いました。
 
 
というのは、「学校の教職員たちはエピペン使用の訓練を受けていない」からです。
 
文部科学省の通達は、医師・看護師という免許をもった人間以外が注射をしても良いという衝撃的な内容にもかかわらず、突然発表され、その後のアフターフォローもないまま今日まで来ているからです。
 
おそらく一番戸惑ったのは学校の先生たちでしょう。
 
使い方は難しくはないとは言え、いきなり「明日から必要があれば子どもに注射をしなさい」と言われて、できるわけがありません。
 
実はこの文部科学省の通達が出るまでの間、日本でエピペンの自己注射器を使えるのは、処方された本人とその家族、そして医師だけでした。現場に駆けつけた救急救命士でさえ、本人がエピペンを持っていたとしてもそれを替わって打つことは認められていませんでした。(現在は解禁になっています)
 
ましてや救急法の一環としてエピペンの使い方を指導する文化も日本にはまったくなく、医師を含め医療従事者であってもエピペンをはじめて手に取ったら、どう扱ったらいいかわからないというのが日本の現状です。
 
ですからこの事案も起こるべくして起こったと私はとらえています。
 
使っていい、使うべき、と定めておきながら、その具体的な指導やトレーニングを行わなかった文部科学省側の責任は大きいでしょう。
 
現在、日本で開講されている救急法・ファーストエイド講習の中で、エピペンの使い方実習が含まれるのは、実はアメリカ心臓協会のハートセイバーファーストエイド・コースだけです。
 
BLS-AED.net横浜も、もちろんハートセイバーファーストエイドコースを開講しています。
 
横浜や東京で開催するハートセイバー・ファーストエイド講習は、遠くから新幹線や飛行機で受講にいらっしゃる方も多く、皆さん、このエピペンの使い方を学びたかったとおっしゃる方が多いです。
 
通常は、針が付いていない練習用のエピペン・トレーナーで、実習をしてもらっていますが、必要があれば、薬液の入った本物のエピペンを手に取ってみてもらっています。(冒頭の写真です)
 
こうした報道があると、エピペン使用練習を含んだハートセイバー・ファーストエイドコースにも注目されそうですが、残念ながら、次回4月4日開催予定はすでに定員に達しており、キャンセル待ちの方が何名も控えている状況です。
 
5月の連休あたりに次回を計画しようかと考え中です。
 
 

ショック症状の児童、学校が自己注射薬使わず



 
 兵庫県姫路市の市立小学校で1月、食物アレルギーの男児が給食を食べて急性反応・アナフィラキシーショックを起こした際、学校が保護者から預かっていた緊急用の注射薬を使わずに119番、搬送直前に駆けつけた母親の注射で回復していたことがわかった。
 
 
 文部科学省は昨年、ショック状態の児童生徒には教職員が注射をしても医師法に触れない、との通知を出していたが、学校側には正しく伝わっていなかった。専門家は「学校の危機管理の問題。症状が重い場合は、ためらわずに教職員が注射を」と呼びかけている。
 
 市教委によると、男児は1月15日の給食で脱脂粉乳入りのすいとんを食べた後、目の周りが赤くなる症状や頭痛、嘔吐(おうと)などを訴えた。学校は、症状を和らげる自己注射薬を保管していたが、「注射する取り決めを保護者と交わしていない」などとして使わず、119番。連絡で駆けつけた男児の母親が、学校を出る直前の救急車に乗って注射を打つと男児の症状は軽快し、2日間の入院で回復した。
 
 自己注射薬は、円筒形容器の先端を太ももに強く押しつけると針が出て、薬剤が体内に入る仕組み。服の上からでも打てる。男児については、食育担当教諭と保護者が給食の献立表でアレルギー食材の有無を確認していたが、この日は脱脂粉乳が入っているのに気付かなかったという。
 
 文科省は、アナフィラキシーショックで危険な児童生徒に対しては、教職員が自己注射薬を打っても医師法に触れない、として適切な対応を取るよう求める通知を出している。しかし、市教委は「通知は認識し、各校にも伝えていたが、注射は児童本人や保護者、搬送先の病院の医師らが使うものと考えていた」と説明。今後は研修会などで教職員に周知する。
 
 同省によると、埼玉県内の小学校で2008年12月、発症した男児に養護教諭が注射をして回復している。また、東京都教委は教員向け手引に「児童生徒が自ら注射できない場合は、ためらわず注射して命を救う必要がある」と記している。
 
 ◆アナフィラキシーショック=体に入った異物に過剰に反応するアレルギー症状。ハチ刺されや食品、医薬品が原因となり、呼吸困難や血圧低下で意識を失うことがあり、死に至るおそれもある。文科省によると、児童生徒の有病者数は全国で約2万人とされる。