2025年7月10日に日本のAHAインストラクター向けに突然の発表がありました。
2026年3月31日をもって、長年続いた 対面型のAHA-BLSプロバイダーコースが廃止 されるとのこと。
来年の4月1日以降は、オンラインと対面のハイブリッド講習、HeartCode® BLSコースに1本化されます。
HeartCode® BLS コースとは
ハートコードBLSコースは、オンライン学習と対面講習のハイブリッド型のプログラム。医療従事者などには2年毎のBLS資格更新が義務付けられている米国で主流となっている時短型講習です。
オンラインの e-Learning で座学としてのBLSを学び、オンライン上で筆記試験までを修了できます。
その筆記試験修了証を持って、インストラクターのもとに赴き、対面の実技パートを受講し、そこで技術練習&実技試験に合格すれば、完全対面型と全く同じBLSプロバイダー資格が発行されるというもの。
日本でも数年前から、通常のBLSプロバイダーコース以外に HeartCode® BLSコースも公式に日本語化されていましたが、本年度改定されるAHA蘇生ガイドライン2025教材からは、完全対面型コースが廃止され、HeartCode® BLSに1本化されることになりました。
今後のタイムスケジュール
2025年である今年は、5年毎にAHAコース教材が一新される年。
蘇生ガイドライン自体は、米国に関しては5年毎ではなく、毎年小刻みに改定がされるようになっていますが、講習教材の改定は引き続き5年毎。
通常ですと、当該年の10月後半に、それまでの改定をまとめて蘇生ガイドライン改定版が書籍として出版され、それに遅れて、翌年1月頃にBLSとACLS教材が改定されて、続いて、PALS、ハートセイバー、そして最後にPEARS®教材がリリースというのが実態でした。
今回は、10月22日のG2025発表と同時に、改定されたBLSプロバイダーコース教材も発表となり、英語版だけではなく、日本語版も同日発表とアナウンスされています。
追記:HeartCode BLS日本語版ですが、10月22日にはリリースされませんでした。遅れている模様。この点、公式アナウンスはありません。
予定通りであれば、10月22日から、BLSプロバイダーコースは G2025 の HeartCode® BLS に刷新されることになりますが、インストラクター側の準備を含めて90日の移行期間が設定されます。
つまり、2026年1月22日頃までは、旧来の教材を使った講習を開催可能で、それ以降は G2020 版のテキストや映像教材を使った BLS 講習は禁止となります。
とはいえ、毎回の傾向として、動画教材の日本語吹き替え版の完成が遅れて、当初の予定からは大幅にずれ込むのが常。
今回は、そこも見込んでか、3月31日までは、現行の G2020 教材(テキスト、映像教材)を使った講習の開催が許されている、ということになります。
受講者としてどう賢く行動するか?
すでにテキストを買っている人は急げ!
AHAコース受講するためには、公式テキストを購入・所持している必要があります。
すでにG2020版のテキストを持っていて、受講を検討していた人は、なるべく早く受講しましょう。
2026年4月以降は、お手元のテキストは無効となり、受講要件を満たさないものになります。
また4月に近づくに連れて、G2020教材に対応した講習の開催数は減っていきます。おそらく3月頃になると、HeartCode® BLSコースばかりになっていることが予想されます。
G2020テキストで受講できる講習は10月22日以降、激減していくでしょうから、確実を期すなら10月までに受講を決めることをおすすめします。
テキスト購入を含めて今後受講を検討している人は
テキスト購入を含めて、これからAHA-BLSコースの受講を考えている方は、10月22日を境に講習形態が変わる可能性を熟考し、受講時期を検討ください。
普通に考えれば、10月22日以降の最新版で受講するのが得策ですが、インターネット上の自己学習が前提になりますので「教えてもらう」つもりの方の場合は学習深度が浅くなってしまうかもしれません。
ただでさえ対面で映像教材をフル視聴しながらのBLSコースでも、インストラクターのかなり積極的な介入がないと蘇生科学を理解することはできません。
それが知識面は自宅で完了ということになると、形だけの学習で終わってしまう可能性大です。
またハートコードBLS講習には紙媒体の教科書がありません。オンライン上で参照するテキストがありますが、現行と同条件であれば、2年間で読めなくなります。ダウンロードや印刷はできませんので、2年以後は何も手元には残りません。
スマートフォンでも HeartCode® BLS オンラインパートは受講できますが、閲覧性の問題でテキストをきちんと読んで学習するのは、なかなか大変と思います。
このあたりを考えると、きちんとした対面講習で知識習得面もフォローアップがある現行のG2020教材で受講するほうがいいという方もいるかも知れません。
BLS横浜としての今後の対応
BLS横浜としては、HeartCode® BLSコースに関しては懐疑的に考えており、日本語化されて何年も経ちますが、開催するつもりはありませんでした。
というのは、AHAは知識面はオンライン講習で習得できるとしていますが、指導の肌感覚として、それはあり得ないと考えているからです。
少なくとも5cmとか、100〜120bpmと言った、暗記的な知識の習得はできるかもしれませんが、蘇生のしくみ、すなわち蘇生科学の「理解」まではビデオ教材やオンラインによる自己学習だけではカバーできる人は医療者でもほとんどいません。
理解のプロセスは複雑で、画一化は難しく、ひとりひとりの理解度に合わせたきめ細かなフォローアップを含めて納得が得られるからこその、プロのためのBLSフルサイズ講習。
そもそも時短型のハートコードBLSは、米国医療者の資格要件から要請で発展してきた時短プログラムです。
資格取得要件がない日本での受講者の多くは、資格を取る・維持するというより、本気でBLSを学びたい人がほとんど。
もともと米国事情で作られた、法令も慣習も違う異国のプログラムを日本で開催する以上、講習教材には含まれない日米のギャップを埋めるのも、日本のインストラクターの重要な役割です。
このことから、米国で主流のハートコードBLSコースは、日本の受講者ニーズ、事情にそぐわないと考えています。
BLS横浜の対応
2025年10月22日以後にBLS横浜で開催するBLSプロバイダーコースは、G2020教材(テキストとビデオ教材)を使いつつも、G2025の変更点を反映させたG2025暫定コースとして対面講習を続けます。
準備ができ次第、ハートコードBLSコースも開催していき、2026年1月頃は両コースが共存する形になる見込みです。その後、ハートコードBLSの割合が増えていき、3月31日までにはG2025暫定コースは完全終了となります。
BLS横浜の HeartCode® BLS 展開・・・時短を売りにはしません!
2026年4月以降は、従来型のBLSコースは開催できない。
これは不本意ながら抗えません。
まだ検討中ではありますが、BLS横浜としては規定通り2時間半でハートコードBLSを終了させて、その後、オプションを追加する形を考えています。
「理解」定着のためのディスカッション中心の補講、さらに追加シミュレーションの時間を設けて、現在のBLS横浜講習のクオリティを保つというやり方。
他の団体はBLSコースで時短を宣伝するかもしれませんが、BLS横浜では、ハートコードなのに講習時間が長い、ということを売りにできればと考えています。
BLS横浜は、講習の「質」にこだわり続けます。







