ACLS(二次救命処置)一覧

15秒前のプレ充電とは・・・最新 ACLS-2020 解説

確立されたサイエンスとしては、大きな変更がなかった ACLS の 2020 年度改定。

しかし、ACLSプロバイダーコースの教材が出揃ってみると、講習内容としてはややクリティカルな変更というか、方向性が示されていました。

G2020版 ACLS プロバイダーコースの最大の特徴ともいえるのは、

 

「除細動器の事前充電」 です。

 

ACLS-G2020最新情報:心電図解析15秒前の除細動器事前充電

 

これは ACLS プロバイダーマニュアル G2020 日本語版 では、p.92 に重要な概念として記載されています。

概略を示しますと、

 

  1. 2分ごとの心リズム解析の15秒前に、除細動器の事前充電しておく
  2. 事前充電中(つまり胸骨圧迫中)に脈拍をチェックしておく
  3. 解析のタイミングになったら、胸骨圧迫をやめ、心電図波形を確認しつつ脈がないこと手早く確認し、除細動適応ならすぐにショックをし、直ちに胸骨圧迫を再開する
  4. ショック不要な波形、もしくは 脈あり心室頻拍 だった場合は内部放電し、直ちに胸骨圧迫を開始する

 

これ、わかるでしょうか?

これでもテキストの記載をだいぶ補足して書いているのですが、いまいちイメージしづらいと思います。

つまりは、圧迫の中断を最小限にする究極の工夫

一言で言えば、胸骨圧迫の中断時間を極限まで短くするために、心電図を解析する前に「ショック適応」であるという想定で、あらかじめ充電をしちゃってください、という話です。

前回の胸骨圧迫開始から2分経ったら、圧迫を中断し、瞬時に心電図波形を見て、ショック適応だったらすかさず除細動をして、すぐに胸骨圧迫を開始する。

これによって、充電と解析による胸骨圧迫中断時間を最短にしようという工夫。

ショックが不要だった場合

これは心室細動もしくは、無脈性心室頻拍(pVT)であることを前提にした場合の行動と言えます。

もしそうじゃなかったらどうするか?

それは内部放電すればいいじゃん、ということです。

胸骨圧迫中に脈拍チェックをする理由

ただ判断が難しいのが、心室頻拍(VT)波形が出た場合。

この場合、脈があるかないかで、ショック適応かどうかが変わってきてしまいます。そこで充電中(つまり胸骨圧迫中)から脈拍を触れておくように、というのです。

この場面は、文字だけでは明らかに説明不足で、ACLS 講習中に視聴する動画を見ると納得できます。

映像教材【高い能力を持つチーム:院内】の中では、当該場面が実例として示されています。

 

解析の15秒前であることを、タイマー係が告げると、リーダーの指示で除細動係が波形を見ずに充電を開始します。

その間に(薬剤係に)脈が触れるか尋ねています。

「大腿動脈でなら弱く触れています」との答え。(胸骨圧迫によって得られている拍動)

脈が触れる部位を確認した上で2分が経過。

胸骨圧迫をやめると弱く触れていたはずの大腿動脈の拍動が消えています。

このとき、仮にVT波形が出ていても、脈なしVTということになるので、除細動適応であることが瞬時に判断できる。

 

そんな場面が描かれています。

この場面、テロップがついてきちんと説明してくれているのですが、1回見ただけだとなかなか飲み込みづらく、インストラクターによる補足説明が必要な場面かと思います。

心電図解析前の事前充電、日本の実臨床でどうするか?

今回の ACLS では、蘇生率を改善するための実現可能な具体策として、CCF(Chest Compression Fraction:蘇生中の胸骨圧迫の時間割合)を測定し、80%以上を目指すことを今までになく強く強調しています。

その CCF 改善のための具体策の目玉がプレ充電というわけです。(BLSプロバイダーコースの映像教材の中でも紹介されているほどです。)

ただ、ふつうに考えてみれば、「危なくない?」とは誰もが思うところでしょう。

除細動が必要ないのに、つい反射的にショックボタンを押してしまうリスクや、急ぐあまりに安全確認がおろそかになって、誰かが患者に触れている状態でショックをしてしまったり、急いで胸骨圧迫を再開しようとして、除細動のタイミングとニアミスをしたり、、、

日本で ACLS 2020 講習が始まったのが2021年7月からです。1月半ほど経ちますが、このコロナ渦で、ACLS 講習はあまり開催されていないのが現状。

このプレ充電が日本の医療者の間で認知されているとは言い難い状況です。

 

シミュレーションベースでやっていると、最初のうちはチーム連携という点でぎこちなく、事故に近いことも多発しますが、講習の中盤以降になってくると、スムーズな連携で、胸骨圧迫の中断時間短縮に大きく寄与することも見えてきます。

 

日頃、チーム蘇生になれた集団であれば、非常に効果的。

しかしコード・ブルーで集まったような即席チームで実践するには危ないんじゃないか、そんな印象です。

蘇生効率を上げることと、患者と医療スタッフの安全性の担保。

このバランスをどう取っていくのかは、組織としての危機管理の考え方と、経験もしくはトレーニングによって変わっていくのでしょう。

日本でこの G2020 版 ACLS が普及してきたときに、日本での傾向とスタンスが見えてくるのではないかと考えています。


病院内の救急対応を学ぶなら、ACLS より PALS

 
病院内の救急対応を学ぶなら、ACLS より PALS。
 

そんな新しい常識がだいぶ広まってきていますね。

昔は PALS プロバイダーコースを受講に来るのは小児科医か PICU の看護師ばかりでしたが、最近は小児を受け持たない一般病棟の看護師や、ほとんど子どもは受けていないけど、という ER の看護師の受講が増えてきています。

 

ACLS = 標準的な二次救命処置

PALS = ACLS の小児版

 

そんなイメージ・空気感がありますが、中身を考えるとまったく逆であることに気づきます。

むしろ PALS が標準の二次救命処置であって、ACLS が全般的な救急対応の一部を切り取った限定版であるという点。

守備範囲で言ったら PALS のほうが断然広いです。ACLS は成人の二次救命処置と言ってしまうのがはばかれるほどの視野の狭さ。

結局のところ、ACLSは不整脈を前提とした心原性二次救命処置 に過ぎない、ということが日本国内でもだいぶ知られるようになってきたのでしょう。

意識改革のきっかけは PEARS®

日本の医療者、特に看護師の間での意識変容は、おそらく、というか間違いなく PEARS の普及によるものだと考えます。

急変対応というと、今までは BLS → ACLS だった中に、2008年に私たち(AMR AHA US-Cardグループ)が日本に持ち込んだ PEARS® プロバイダーコースが、「急変は急じゃない。防げる」という概念を日本に定着させました。

今では、看護師にとっての急変対応は BLS からでは遅い、というはすっかり定説になりましたが、その始まりは間違いなく PEARS® です。(患者急変対応コース for Nurses もINARS もどちらも PEARS® にインスパイアされてできた教育コースです)

命を落とす原因は組織細胞への酸素化障害

病院内の心停止は、成人であってもVF(心室細動)は2割程度に過ぎない、ということはACLSプロバイダーマニュアルにも書かれています。

防ぎ得る心停止で人が命を落とす原因は、突き詰めれば、組織細胞への酸素化の障害です。

その酸素不足、が呼吸器で起きるのか、循環器で起きるのか?

循環器由来で発生する組織細胞の酸素不足をショックと呼んでいますが、ショックの原因の1つが不整脈による循環不全です。致死性不整脈の他、心拍が遅すぎたり、速すぎたりして、血圧を保てなくなっている状態。

ACLS が扱っているのは、この不整脈による循環障害と心筋梗塞だけ、です。いうなれば心原性ショックだけ。

PALS の守備範囲の広さ

しかし、PALSでは、心原性ショック以外に、病院内で圧倒的に多い血液分布異常性ショックと循環血液量減少性ショックをがっつり扱いますし、さらには限定的ながら閉塞性ショックも含まれます。

さらには、循環器以前の酸素の取り込みを問題とする呼吸障害も、

・上気道閉塞
・下気道閉塞
・肺組織疾患
・呼吸調整機能障害

に細分してメカニズムと対応をしっかりカバーしています。

PALS の限界

そんなPALSではありますが、やはり限界はあります。その1つがやはり「子ども」が前提ということで、心筋梗塞と脳卒中が含まれていないという点。

さらに言えば生活習慣病や加齢が想定されていないので、臨床症状が基本に忠実すぎるというか、高齢者にありがちな動脈硬化の影響や、基礎疾患、内服薬の影響などがまったく言及されていないという点。言い換えれば、生理学的な原則をきっちり学べるということではありますが。

もちろん、子ども、特有の臨床症状のクセ、みたいなものはあります。

ただ、今現在、日本で展開されている教育プログラムの中で、これだけ幅広く包括的に救急を扱ったものは PALS をおいて他にありません。(強いて言えば AMLS や概念としての JMECC でしょうか?)

小児という癖を加味しても、小児に限定しない価値はあると考えています。

PALS の前の基礎固めとして PEARS® と ACLS

近年、BLS横浜の講習に参加してくださる方の動向・傾向を見ると、看護師、救急救命士の場合、BLS から始まって、PEARS® へ、そして ACLS を 学び、最後は PALS へ、という流れができつつあるのを感じています。

総合的に救急を学べるのは PALS である、というのは間違いないとしても、いきなり PALS 受講となると、看護師、救急救命士の場合は、2日コースであってもかなり学習負荷が大きいのは否めません。

最後は PALS としても、その前に PEARS® と ACLS を知っておくのは意味があると考えます。

PEARS® で学ぶ体系的アプローチと非心停止対応、そして ACLS の心停止と不整脈のアルゴリズム対応を知った上で、PALS に臨めば、 PALS 本来の総合救急対応というツールの使い分けという PALS 固有の部分を最大限に学べるはずです。


PALS 受講にBLS【資格】は不要です

ACLS プロバイダーコース の受講条件として、アメリカ心臓協会(AHA)としては、BLS プロバイダー資格は求めていない という点は、これまでに何度も説明してきました。

 

これは PALS プロバイダーコース でも同じです。

PALS プロバイダーマニュアルにちゃんと書かれています

先日、発売開始になった、最新の蘇生ガイドライン2020準拠の PALS プロバイダーマニュアル【英語版】の3ページにはこのように書かれています。(日本語版はまだ発売されていません。日本語訳はBLS横浜独自のものです)

PALSプロバイダーマニュアルAHA蘇生ガイドライン2020準拠英語版

 

【英語原文】
The PALS Provider Course does not include detailed instructions on how to perform basic CPR or how to use an automated external defibrillator (AED), so you must know this in advance. Consider taking a BLS course to prepare, if necessary.

【BLS横浜による日本語訳】
PALSプロバイダーコースには、基本的なCPRの実施方法やAEDの使用法に関する詳細な説明は含まれていないため、事前にこれを知っておく必要があります。 必要に応じて、準備のためにBLSコースを受講することを検討してください。

 

「必要に応じて」「検討」

この部分は、以前の G2015版に比べて、より突っ込んだ表記に変わっていることにお気づきでしょうか?

 
必要に応じて受講を検討してください。
 

求めているのは技術を習得していることであって、その手段の1つとして BLS プロバイダーコースの受講がある、という点が明確に表現されています。少なくとも資格の有無の問題ではないのです。

これまでは、やもすると AHA-BLS が唯一の手段であり、その資格が受講要件と勘違いさせるような表記だったかもしれません。

それが完全に是正されました。

講習の実際

医療者であれば病院内で BLS 研修はやっていると思います。ただ、小児専門病院であっても小児・乳児 BLS 研修がきちんと行われているかというと、実際のところあやしく、一般病院であれば、小児 BLS はほとんどノータッチです。

そんな日本の現状を考えれば、成人蘇生と小児蘇生を対比して学べる AHA-BLS プロバイダーコースが必須とも言えます。

ただ、PALS/PEARS/ACLS コースを年間70回開催しているインストラクターとしての肌感覚では、有効期限内の AHA-BLS 資格を持っている人でも、PALS コース内のBLS実技試験に1発で合格する人は多くはありません。

通報を忘れる、呼吸・脈拍確認の不備、圧迫が速すぎる、人工呼吸が入らない、など。

逆に AHA-BLS の受講経験がなく、小児蘇生は練習したこともないという人でも、テキストを読み、AHA の事前学習ビデオを見てくれば、20分~30分程度で合格まで達します。

正直なところ、BLS受講経験の違いというのは、ほとんど感じないのが現状。

そこでBLS横浜では、特に AHA-BLS 受講を PALS/ACLS/PEARS の受講要件とはしていません。

PALS 受講要件とするならば、むしろ PEARS®

強いてPALS 受講の要件を考えるとすれば、むしろ PEARS®プロバイダーコース の事前受講をおすすめします。

PALS も PEARS® の内容を含んでいると思われがちですが、むしろ PEARS® の内容は習得済みで、その上に PALS が構築されているイメージです。 

異常な呼吸様式(陥没呼吸、鼻翼呼吸、シーソー呼吸など)や、ショックの基本などは理解しているのが前提で展開するのがPALS。

そこをきちんと教えているが PEARS® プロバイダーコースです。

更にいうと、PALS 受講前に ACLS を履修していると、本来の PALS の学習テーマに専念できるのでおすすめです。


ACLS事前学習:よくある質問 1

今度 ACLSプロバイダーコース を受講予定の方からご質問を頂きました。無脈性電気活動(PEA)についてです。

PEA はなかなか飲み込みが難しいところなので、質問とその回答を皆様にもシェアします。

ACLSプロバイダーコース事前勉強の解説

 

Q1.無脈性電気活動(PEA)は心肺蘇生に加えて、根本的な原因治療を同時並行しないと救命は難しいのか?

テキスト38ページからの、ACLS一次サーベイと二次サーベイのあたりをよく考えていただくとわかるかもしれません。

結論から言うと、PEAの原因によります。例えば心停止の原因が低酸素なら、一次サーベイ(もしくはその手前のBLS)の時点で、 CPR によって酸素化されれば自己心拍再開 ROSC する可能性が考えられますよね?

また原因が循環血液量減少なら、BLSでは無理でも、ACLS一次サーベイで、アドレナリン投与により血圧が上がって ROSC が見られるかもしれません。

しかし、例えば、原因が気胸なら、脱気しないとたぶん無理です。

このように、「生理学的安定を図る一次サーベイをきっちりやる。それでも ROSC の兆しがなければ
二次サーベイで CPR を続けならが原因を探る。原因が特定できて対処を打てれば助かるかも」と理解してはどうでしょうか?

Q2.原因検索は、胸骨圧迫しながらエコーやX-Pを撮るということでしょうか? 救命の現場で実際行えるのでしょうか?

ここが、G2015の改定でACLSを一次と二次に明確に切り分けたポイントかなと思います。

一次介入をせずに、二次介入で原因検索に注力するのは本末転倒です。質の高い CPR を中断してまで原因検索の検査を実施する価値があるかどうか吟味する必要があります。

例えば、胸部不快感から心停止になった人に、胸骨圧迫を停めてまで12誘導心電図をとって梗塞部位がわかったとして、メリットがあるかどうか? 梗塞部位がわかったとしても ROSC しなければ、その後の治療には繋がりません。

胸骨圧迫を停めずにできる検査ということになります。

この原因検索の実際については、ACLSプロバイダーマニュアルにはほとんど記載がありませんが、実は学習範囲外であるという点もご承知おきください。原因検索の詳細と実際は、ACLS-EPコースという上級コースで学ぶことになっています。

ACLSプロバイダーコースの合否に関して言えば、原因を特定する必要はなく、いつまでも CPR とアドレナリン投与を続けるのではなく、原因を探る方向に意識が向いて、その言及があれば OK となっています。

Q3.PEA のアルゴリズムを行っているだけで自己心拍の再開はないのでしょうか?

できる場合もあります。先ほど循環血液量減少を例に上げましたが、たいていの場合の PEA は、循環不全 → ショック → 血圧低下 → PEA → 心静止という流れになります。

発見時、血圧がゼロではなく、低すぎて触知できないだけのこともありますので、そこにアドレナリンを投与すれば血圧が上がって脈が感じられる可能性があります。


気管挿管を優先-COVID-19患者のACLS【AHA新アルゴリズム解説】

ここのところ連日、新型コロナウイルス感染症患者への蘇生法を解説していますが、最後は二次救命処置 ACLS です。

情報ソースは2020年4月9日付で、アメリカ心臓協会のジャーナル Circulation に掲載された Interim Guidance for Basic and Advanced Life Support in Adults, Children, and Neonates With Suspected or Confirmed COVID-19 になります。

新型コロナウイルス感染症患者へのACLSの変更点

COVID-19患者ならびに疑い者向けに改定されたACLS心停止アルゴリズムは下記のとおりです。

新型コロナウイルス感染症患者用に改定されたAHA-ACLSアルゴリズム

黄色いボックスが追加された他、太字で下線がついた箇所が変更された部分です。

日本語はBLS横浜の独自翻訳です。AHA公式のものではありませんが、AHA公式日本語版がでるまでは、高解像度で印刷可能なPDFファイルもダウンロードできるようにしておきます。

気管挿管の優先度が上がった

Prioritize oxygenation and ventilation strategies with lower aerosolization risk.

新型コロナウイルス感染症対策として、ACLS変更の最大のポイントは、気管挿管を優先するようになった、という点でしょう。

もともとACLSにおいては、バッグマスク換気が有効に行えていれば、気管挿管は急がないというスタンスでしたが、準備でき次第、カフ付きの気管チューブで気道を密封することを推奨しています。

なるべく早く閉鎖回路内での呼吸にすることで飛沫リスクを減らそうということです。

これまでは、蘇生中に挿管するとしてできるだけ胸骨圧迫を中断しないようにという点が強調されていましたが、今回は逆に「挿管のために胸骨圧迫を止める」ことが明示されています。

胸骨圧迫を続けたら、圧迫によって口から呼気が吐き出されて飛沫感染のリスクが高いというのは想像に難くありません。

気道のシール性でいったら、カフ付きの気管チューブが望ましいわけですが、挿管困難が予想される場合などは、声門上器具(ラリンジアルマスク等)も含めて、1発で決まるような器材を選ぶようにと書かれている点も興味深いです。

その他、HEPAフィルターをつける等、回路の閉鎖性とフィルタリングについても注意喚起されています。

蘇生に関わる人数を制限する

COVID-19患者の蘇生に携わる人は感染リスクにさらされているわけですから、その人数は少ないに越したことはありません。

そこで Lucas や AutoPulse のような機械的胸郭圧迫装置(MCCD:mechanical chest compression device)の積極的な使用を考慮するように書かれています。

機械的胸骨圧迫装置LUCASルーカス

本当に蘇生を開始するのか? 続けるのか?

Consider the appropriateness of starting and continuing

ということで、蘇生の開始と継続の適切性を検討するようにと言われています。

ステートメントの中で言われているのは、

  • 蘇生活動によって他の患者へのケアが手薄となる
  • COVID-19患者の心停止の転帰はまだ不明であるが、重症のCOVID-19患者の死亡率は高く、年齢や基礎疾患、特に心血管疾患の増加に伴って死亡率は増加する

そこで、COVID-19患者の蘇生の適切性を判断する際には、患者の状態だけではなく、他の患者へのリソース配分も考えるようにと記されています。

その他

上記の新しいアルゴリズムを見ると、抗不整脈薬としてアミオダロン以外にリドカインが載っている点も、皆さんのお手元にあるACLSプロバイダーマニュアルG2015とは違っている部分です。

ただ、これは COVID-19 患者だから、というわけではなく、2018年のACLSガイドラインアップデートで変更された部分です。

G2015以降は、AHA と ILCOR は5年毎の改定をやめて、その都度の小改定を繰り返す方針に転換しました。(日本のJRCガイドラインは従来どおり5年毎の改定としています)

2018年のACLSガイドライン変更については、下記のブログ記事をご参照ください。

→ AHA ACLS/PALSガイドライン2018アップデート

その他、COVID-19対策としてのBLSアルゴリズムと市民向け Hands only CPR に関する変更点の解説は下記記事をご参照ください。

→ コロナ感染疑い成人患者へのBLS 変更点の解説

→ 傷病者の口と鼻を覆ってから胸骨圧迫する【コロナ対策のCPR】


「質の高いCPR」の評価指標 BLSとACLSの違い

今日は横浜で BLSプロバイダーコース でした。

受講者さんから質問があったのは、胸骨圧迫の深さについて。

BLSプロバイダーコースでは、基本的には成人傷病者の胸骨圧迫は「少なくとも5cm」と教えています。

大人であっても体格差はあるし、実際のところどうなのか? というのが質問の趣旨。

体格差があっても5cmでいいの?

このことを考える上で大切なのは、BLSはあくまでもBasicなレベルであるという点です。標準化されている、つまりなるべく幅広く適応できるように平均化されたものであるという点を理解しておく必要があります。最大公約数的にこうしておけばいいんじゃない? という程度にまとめられています。

体重何キロ以上だと深さ何センチで、何キロ未満だったらどれくらい、という区分もできるのかもしれませんが、あえてそのようにはしていません。

BLSレベルでは、そのような細かなカスタマイズは期待されていない、とも言えます。

とりあえずは細かいことは考えずに、言われたとおりにやってくれればいい、というのが本質的なコンセプトです。とにかく単純化しています。

胸骨圧迫の目的は冠動脈灌流圧を15mmHg以上に保つこと


しかし、体格差などの個別性に着目するのも大事です。ACLSプロバイダーコース では、そこも含めて学びます。

そもそも胸骨圧迫の目的は何なんでしょうか?

血流を生み出すため、です。特に冠動脈灌流圧が心拍再開と相関していますので、第一義的には、冠動脈灌流圧を15mmHgより高いレベルに保つのが、質の高いCPRの要件となります。

そのための平均的な指標が、


  • 少なくとも5cm
  • 100〜120回/分
  • リコイル
  • 中断を最小限に

 
というわけですが、上記は絶対的なものではなく、あくまでも平均的な指標です。

いま目の前でCPRを受けている傷病者にとって、本当にそれでいいのかどうかは、結局のところ蘇生中に冠動脈灌流圧を測ってみなければわかりません。

しかし、現実問題、冠動脈の血圧なんて測れない! そこで、ACLSの中では、冠動脈灌流圧が15mmHgに達していることを類推するための代理指標という考え方が出てきます。

冠動脈灌流圧15mmHgの代理指標


  • 大動脈拡張期圧 20mmHg
  • 呼気終末二酸化炭素分圧 10mmHg

 

血圧のうち、拡張期圧が冠動脈灌流圧と相関することがわかっています。そこでA-Lineの拡張期圧が20mmHgあれば、冠動脈灌流圧も15mmHgはあるだろうと考えられます。

また蘇生中の二酸化炭素排出量は循環に依存しています。そこで呼気中のCO2の値が10mmHgを超えていれば十分な灌流があると考えられるのではないか?

このように質の高い胸骨圧迫を、5センチとか100〜120回とかで判断するだけではなく、きちんと定量的にコントロールしていこうというのが二次救命処置の考え方です。

BLSインストラクターなら知っておきたいACLS


このあたりのことは、二次救命処置に関わる人以外であっても、BLSインストラクターは知っておいてもいいかもしれません。

一般にACLSプロバイダーコースは医師・看護師・救急救命士など、二次救命処置に携わる人以外は受講対象となっていませんが、BLSを教える立場の人であれば、学ぶ価値・意味はあるのではないかと考えています。


ACLSとモニター心電図の基礎理解Seminar【2月19日(火)18:30-】

ACLSとモニター心電図の基礎理解イブニングセミナー

横浜では久々の開講となる「ACLSとモニター心電図の基礎理解」イブニングセミナー。

最近では、熊本や岡山、香川などで開催、またBLSコースを定期開催している千葉の病院では毎月開催していて、好評頂いている心電図と二次救命処置の勉強会です。

ACLSは、病院勤務の看護師にとっては常識的に知っておいてほしいものなのですが、どうしても医師のためのものというイメージが強いのと、「難しい!」という先入観から敬遠されがちなのが残念。

苦手、、、と言って避けていられればいいのですが、業務対応では知らないでは済まされない部分もあるやもしれません。

 

そこで、二次救命処置ACLSのエッセンスと、ナースが苦手意識を持っている心電図について、わかりやすくまとめたのが本セミナーです。

皆さんに伝えたいメッセージは次の2点。

 

1.ACLSは、BLSに毛が生えた程度のもの
2.心電図から循環動態がイメージできたらめっけもの

 

難しいものを無理やり理解してもらおうとは思っていません。

思ったより簡単じゃん! ということに気づいてもらうための90分です。

 

ACLSとモニター心電図の基礎理解

2019年2月19日(火)18:30~20:00

詳細・申込みは BLS横浜web


BLS横浜のACLS1日コースは、循環器専門医受講要件を満たします

BLS横浜のACLSプロバイダー1日コースは、循環器専門医の受験要件を満たすのか? というご質問をいただきました。

答えは「もちろんです」。

ACLSプロバイダー資格が国内ではなくハワイから発行されるという点が他と違いますが、これまで問題なく循環器専門医申請に使っていただいています。

 

ACLS資格を1日で取得可能、BLS資格不要という点を不安に思う方が多いようです。

確かに専門医認定を行う日本循環器学会ITCが主催するACLSプロバイダーコースは2日間であり、有効期限内のBLSプロバイダーカードの提示が求められています。

しかし、この点はAHAルールではなく、トレーニングセンター単位の独自ルールである点は、ACLSインストラクターマニュアルに規定されているとおりです。

(こちらをご参照ください。→ ACLS受講にBLS資格は不要です【アメリカ心臓協会】

 

今回、改めて 日本循環器学会認定循環器専門医制度規則(PDF)を確認しましたが、そこで求められているのは、

「AHA ACLSプロバイダーコース」「AHA ACLS-EPコース」「AHA ACLSインストラクターコース」「AHA ACLS-EPインストラクターコース」のいずれかを受講し、受験年度の4月1日現在有効な認定を受けていること。

であり、BLSプロバイダー資格の提示は求められていません。また、日本循環器学会ITCが発行するACLSプロバイダー資格に限定するという要件もありません。

ということで、BLS資格不要の1日コースであっても、AHA公式ACLSプロバイダーカードが取得できる講習であれば、なんら問題はありません。


AHA ACLS/PALSガイドライン2018アップデート

先日、アメリカ心臓協会のACLSとPALSのガイドラインがアップデートされました。

あれ? ガイドラインって5年毎の改定じゃなかったっけ?

という方がいるかも知れませんが、2015年の改定以後は、5年毎ではなく、改定事項がまとまれば、その都度、こまめにアップデートする方針に転換しました。(参考まで、日本のJRCガイドラインは引き続き5年毎に改定するというスタンスを取っています。)

今回のガイドラインで変わったこととといえば、抗不整脈薬としてリドカインが復活したことです。

除細動が必要な心停止のアルゴリズムでは、2回目の電気ショックでもVFかpVTが続いた場合は、抗不整脈薬としてアミオダロン300mgの投与が推奨されていました。

これに対して2018 updateではリドカイン1~1.5mg/kgでも構わないとする記載が、アルゴリズム図上に追加されました。

まあ、なんてことはありません。表記上、G2005時代に戻っただけです。

もともとはガイドライン2005時代には、抗不整脈薬は何種類かの選択肢があったんです。それが、ガイドライン2010の改定で、アミオダロンの推奨レベルが上がって、アルゴリズム上の記載からはリドカインが消えました。

しかし、日本ではアミオダロン(アンカロン)がそこまで一般的な薬ではなかったので、G2010以降も臨床的には引き続きリドカインを使用していたケースも多かったと思います。

実際のところ、ガイドライン2015になっても、引き続きアミオダロンの代わりにリドカインの考慮してもよいという点も記載されていました。ですから、今回のアップデートがあっても、臨床的にはなんら変わるところはないのではないでしょうか?

 

今回、大規模試験により、リドカインのROSC率と生存入院率を向上させることが確認されたため、正式な推奨表記にリバイバルしてきたという次第です。

 

 

その他、今回のアップデートで、マグネシウムやROSC後の抗不整脈薬の使用についても記載がありましたが、結論としては従来からの変更はありませんので、ここでは触れません。

 

 

さて、皆さんが気になるのは、ACLSのテキストが改定されるの? いま、買って大丈夫? 待ったほうがいい?

ということだと思いますが、この点は心配いりません。
ACLSプロバイダーコースで使用する教材(DVD、テキスト等)は変わりません。

この点は、AHA公式のFAQでもはっきり書かれていたので大丈夫です。ご安心ください。

 

今回のアップデートの要点をまとめたハイライトが、公式日本語版としてPDFでリリースされています。

心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドラインの成人/小児の二次救命処置に対する重点的アップデート2018表紙

American Heart Association
心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドラインの
成人/小児の二次救命処置に対する重点的アップデート2018

(PDF)

 

 

その他、細かい原著情報は、AHA公式の専用ホームページ からたどってみてください。

 

 

ACLS/PALSの講習内容としてはほとんど変わりはありませんが、BLS横浜としては、講習用に新しい心停止アルゴリズムのポスターを制作しようと思っています。

 

BLS横浜 ACLSプロバイダー【1日】コース 

11月29日(木) 熊本
12月20日(木) 川崎
1月16日(水) 横浜

12月3日(月)の横浜コースは締め切っていますが、復習参加やチームメンバー参加(無料)は引き続き、参加者募集中です。

詳細 → ACLSプロバイダー【1日】コース


体系的アプローチは、すなわち臨床推論

ACLSの体系的アプローチですが、論理的な思考過程を整理したものと考えると、すなわち臨床推論のアプローチ過程とも言えます。

ACLSの体系的アプローチ

 

特にACLSの2次アセスメントなどは、まさに臨床推論の考え方ですね。

 

2次アセスメントの目的は、心停止の原因を特定して、治療に向かうことにあります。

心停止の原因としてACLSでは、10個ないしは11個が列挙されています。

心停止の原因HとT

その英語の頭文字をとって、”H”s & T’s”と呼ばれていますが、これらのうち、目の前の患者の心停止の原因がどれが該当するかを探るために、SAMPLE聴取というツールを使っていきます。

この場合のSAMPLEは、「焦点を絞った患者の病歴の収集」と表現されています。

つまり、ACLSにおけるSAMPLE聴取は、一般論的な闇雲の病歴聴取ではない、ということです。

常に頭の中にHとTで表現される心停止の原因を思い浮かべていて、それを同定するという目的をもったプロセスとして情報を集めましょう、ということです。

例えば、初期情報や心電図波形から、HとTのうち、これじゃないかと仮説を立てます。

すると自ずとSAMPLEで情報を集めるときには、意図的なものになるはずです。そうして仮説に対して集めた証拠(情報、根拠)により、その仮説が肯定できるか否定できるかと推論していき、原因に迫っていくのです。

 

例を挙げて考えてみましょう。

心停止で運ばれてきた患者にモニターを接続したら、130回/分の洞性頻脈によるPEAでした。とりあえずやるべきことはBLS評価と一次評価にもとづいて、質の高いCPRを確立することです。

PEAですから、除細動は適応外で電気ショックでは救えません。2分間のCPRと心電図解析、そして3−5分毎のアドレナリン投与をしても心拍再開は得られません。

そこで出てくるのが二次評価です。

PEAで洞性頻脈ときたら、まっさきに疑うべきは循環血液量減少です。(ACLSプロバイダーマニュアルG2015 p.40-41)

となると、受傷起点や発見時の情報などから、出血の可能性、脱水の可能性などをイメージした質問が出てくるはずです。つまりSAMPLEのE(イベント)ですね。

工場内でフォークリフトにぶつかって意識不明で運ばれてきた、という情報が得られたとしたら、どこをどうぶつけたのかとか、特に胸部や腹部の内出血の可能性、大腿部の骨折の有無などに視点が行くかもしれません。

その結果によっては、エコーなどの検査の必要性が出てくるかもしれません。

このように、HとTの中から、仮説を立てて、そこに向かって情報収集を進めていくのが、ACLSにおける2次アセスメントの目指すところです。

これは近年、看護師の特定行為研修などでも話題になっている臨床推論のプロセスの中でも「仮説演繹法」と呼ばれているものと同じです。

ACLSプロバイダーコースを受講する中でも、一歩視野を広げて、臨床推論と考えると、単純な心停止対応トレーニングに留まらない臨床に役立つ視点を得ることができるかもしれません。