BLS(心肺蘇生法)一覧

服を切るトレーニング【AEDパッド装着】

今日は病院からの依頼でBLSプロバイダーコースを開催しています。

10分間のチーム蘇生では、いつもマネキンの服を3重くらいに着せて、一番内側は前開きできないシャツにしています。

いつもだと、皆さんは、なんとかシャツの裾をたくし上げてAEDパッドを貼ることが多いのですが、今日は、戸惑っているのAED担当を見た胸骨圧迫役の方が「ハサミを探して!」と建設的な介入。AEDのケースの中にあったハサミを見つけて、サクッと服をカット。

襟元から少し切れ目を入れた後は、手で引き裂くという時短ワザ、すばらしかったです。

実際の現場を想定した練習、大切ですね。

胸骨圧迫中断の時間を短くし、CCF(胸骨圧迫比)を上げようと思ったら、着衣の人に対して服をはだけるか、ハサミで切るかの判断をさせて、実際にやってもらうトレーニングをしておかないと、実際の現場でハサミで服を切るという発想、ふつうの人にはありませんし、無理です。

今日のケースでは、ハサミを使うという判断はたいへんすばらしかったのですが、服の正中を切ったため圧迫の中断が生じてしまいました。

胸骨圧迫を続けながら、服を着るならどこにハサミをいれたらいいか?

この部分は、シミュレーション後のデブリーフィングで皆さんで考えていただきました。

こういう体験をすると、忘れませんし、次回は実際に「できる」可能性も高まります。


心肺蘇生CPR/BLS 傷病者の服をはだけるタイミング

ここ数日、女性に対してAEDの使用率が低いという話題が飛び交っています。

女性に対してはAED装着をためらう傾向がデータ的にはっきりしたわけですが、心停止に対する救命処置では、どうしても服をはだける、脱がす、はさみで切るなどの処置が必要となります。

さて、その服をはだけるタイミングですが、日米では少し違っています。

米国 胸骨圧迫を始めるとき
日本 AEDパッド装着のとき

もともと心肺蘇生法は米国から入ってきましたので、日本でも以前は胸骨圧迫の手の位置を乳頭間線としており、服をはだけて手の位置を確認すると教えていた時代もありましたが、いつしか「想像上の乳頭間線」ということで服の上から胸骨圧迫を行う方向にシフトしていきました。

日本国内でもメジャーなプログラムであるアメリカ心臓協会のBLSプロバイダーコースやハートセイバーCPR AEDコースでは、最新ガイドライン準拠の講習でも引き続き、服をはだけてから胸骨圧迫を行うようになっています。

蘇生ガイドラインは5年毎に改定されてきましたが、その歴史的推移をみると、AHA2010ガイドラインからは医学的な正しさより現実社会で実行できること(implementation)に重きを置く方向にシフトし、さらに最新のAHA-G2015では、実行性を高めるためには、講習の進め方にもreal life situationを重視する現実主義の方向性がより強化されるようになっています。

この流れの中で、呼吸確認のための気道確保を求めないことや、人工呼吸よりは胸骨圧迫を先に開始するC-A-B手順が導入されたりしました。

この機運からすれば、CPR開始のハードルを下げるという意味でAHA-G2010で胸骨圧迫のために服をはだけるという手順が是正されるかと考えていましたが、その他の大胆な改定とは裏腹に、いまも変わらず、胸骨圧迫のまえに胸をはだけるような手順が残ったままとなっています。

BLS横浜では、主に米国のAHAガイドライン準拠の講習を多く開催していますが、その指導の中では、胸骨圧迫のために服をはだけるようにという指導は行っていません。

DVD教材では、そのように言及していますので、ときどき受講者さんからは質問されます。

そんなときは、こんなふうに答えています。

「マネキンと違って、実際の人は服を1枚しか着ていないことはないし、前開きとも限りません。現実問題、できそうですか? 重要な概念として、心停止を認識したら10秒以内に胸骨圧迫を開始することが強調されていますが、10秒以内にできますか?」

地面に倒れた人の服をまくりあげて胸骨圧迫の部位を露出させるのを10秒以内に行うことは、どう考えても現実的ではありません。

それに、もともと「胸骨圧迫前に服をはだける」というのは指導マニュアル上の話であり、ガイドラインによって明確に規定されているようなものでもありません。もちろん、医学的根拠(エビデンス)もありません。

ですから、BLS横浜での講習指導の上では重視はしていません。

強いて言えば、傷害を防ぐために正しい手の位置を確認するという意味合いがあるものと思われますが、服の上から胸骨圧迫した場合と服をはだけた場合での誤差の違いや、胸骨圧迫開始までの時間の違い、そしてそれが患者アウトカムにどう影響するか、という点が研究されているわけでもありませんし、それほどこだわる理由もないというのが現実ではないでしょうか?

ということで、チームシミュレーション・トレーニングの中では、あえて何重にも服を着せて、簡単には脱がすことができないようにして、服をはだけるタイミングについては、受講の皆さんで考えてもらうようにしています。

現実的には、AEDが届いてパッドを貼るタイミングで、はさみで切るというのが確実な気がします。

答えがないことは、経験学習とデブリーフィングで学んでもらうのがいちばんです。


日本の医療従事者はBLSの半分しか知らない

最近では、医療従事者の養成校でBLS教育がきちんと行われるようになり、病院に就職時の新人研修でもBLSがあたりまえになって、「BLS、知ってます。できます」という人が増えてきました。

お蔭で BLSプロバイダーコース の指導も、皆さんの技術を補強する程度で済み、1からしっかり教えるということは少なくなってきました。

しかし、それでもやはり感じるのは、「日本の医療従事者はBLSの半分しか知らない」という点です。

医療者が基礎教育で教わっているBLSは、BLSではない

医療従事者が、その教育課程で教わっているBLSは、Basic Life Support(一次救命処置)というよりは、実は「AED講習」ではないでしょうか?

  • 胸骨圧迫
  • AED
  • (人工呼吸)

AEDの心リズム解析結果は常に「ショックが必要です」であり、除細動をすれば助かるという前提の研修ではありませんでしたか?

また人工呼吸の練習はきちんと行われていたでしょうか?

医療現場での業務対応ですから、口対口人工呼吸とかフェイスシールド人工呼吸は論外です。ポケットマスクも医療従事者の通常業務では考えにくいので、バッグマスク換気のトレーニングが必要です。

こう考えたときに、医療従事者が基礎教育や新人研修で習得する「BLS」なるものは、心臓突然死(心室細動)に焦点化した「AED講習」であって、心停止全般を見据えた Basic Life Support とはいい難いのが現状です。

看護師はBLSの半分しか知らない。教わっていない。

心停止には4種類ある

ご存知のとおり、心停止には4種類あって、AED(除細動)が有効な心停止と、除細動が無効な心停止の2種類に大別されます。

この両方の概念を内包して「心停止対応」といえるわけですが、AEDありきの対応しか知らないとなると、BLSの半分しか知らないのでは? というのが記事タイトルの意味です。

心臓突然死(突発性の心室細動)は、発生頻度が高く、適切な処置により救い得る可能性が高い病態なので、優先的に習得するべきものであるのは事実です。

ですから、市民向けの救命講習が実質的にAED講習であることに異論を唱えるつもりはありません。

しかし医療従事者が習得すべきBLSとしては、アンダースペックであると考えます。

電気ショック(除細動)不適応の心停止が多い

というのは、医療に従事している方はご存知の通り、病院内でも病院外でも、AEDが「ショックが必要です」というケースはあまり多くはありません。「ショックは不要です」と言われるケースが大半です。

つまり、4種類の心停止のうち、心静止/無脈性電気活動(PEA)が現実的に多いわけですから、AEDで救命できない場合のこれらの理解と対応を含めたフルサイズの救命処置を学ぶ必要があります。

PEA/心静止の対応というと、二次救命処置ACLSの範疇になってしまいますが、BLSであっても小児のBLSをきちんと学んでいれば、それが除細動が無効なタイプの心停止として、心停止の総合理解に繋がります。

 

AHAの小児の救命の連鎖には、AEDが含まれません。

また、成人の救命の連鎖とは違って、通報よりもCPRが優先されます。

 

これらの違いを正しく理解することは、すなわちPEA/心静止というAEDでは救えないタイプの心停止への対応とつながるわけです。

BLSプロバイダーコースは、あくまでも Basic なので、心静止とか無脈性電気活動(PEA)というキーワードは出てきませんが、AEDではなく人工呼吸を含めたCPRを優先するべき場合があることを明示しているのは非常に大きいと言えます。

BLS総合理解のセルフチェック

BLSについて、正しく理解しているかどうかのセルフチェックとして、下記のクイズを考えてみてください。
 

  1. 人工呼吸を省略できるのはどのような場合ですか? 生理学的観点から説明してください。
  2. 呼吸不全から心停止に陥った人にAEDを装着したら、どんな判定になるでしょうか? それはなぜ?
  3. 除細動の2分後のパルスチェックで、AEDがショック不要と言ったとき、傷病者の状態としてどんな可能性が考えられますか? 2つないしは3つ挙げてください。

 

日本の医療者の大半は小児BLSを知らない ≒ BLSの半分しか知らない

医療従事者教育の中で、小児のBLSを学ぶ機会は十分とは言えません。医師や救急救命士教育の中では小児領域の学習も含まれますが、その他の医療専門職教育では、ほぼ皆無でしょう。

医療従事者の中で最大人口を誇る看護師の教育カリキュラムにも小児BLSは入っていません。ましてや二次救命処置レベルで、PEAや心静止について学ぶ機会もありません。

そう考えると、医療者の大半はBLSの半分しか知らないと言わざるを得ないのが、いまの日本の教育現状です。

BLSは知っている。

そう自認している医療者であっても、心停止の概念を正しく理解している人は多くはないのが現状ですし、医療者であっても人工呼吸はしなくても良いと単純理解している人も少なくありません。

そう考えると、心停止初期対応の全体像を学べる機会は、残念ながらAHA-BLSプロバイダーコースしかないというのが、今の日本の現実と言わざるを得ないのが残念です。

医療従事者レベルのBLSとしては、下記の項目もぜひ知っておきたいところです。
 

  • 呼吸停止時の対応(補助呼吸+2分毎の再評価)
  • バッグバルブマスク
  • ポケットマスク(町中のAEDに付属している場合があるため)
  • 小児・乳児へのCPR
  • 呼吸原生心停止の機序と人工呼吸の意義
  • 気道異物による窒息解除のメカニズム(特に反応がなくなった場合)
  • 2人法BLSの意義とチーム蘇生

まとめ

小児のBLSをきちんと学びましょう。フルサイズの一次救命処置の理解に繋がります。


九州にBLS横浜の新サテライトが誕生「EMS熊本」

九州・熊本に新しいAHA-BLSトレーニングサイトができました。

九州熊本でAHA-BLSプロバイダーコース、ハートセイバー・ファーストエイドCPR AEDコース受講ならEMS熊本

EMS熊本
https://ems-kumamoto.com/
 

EMSという言葉は病院関係者には少し馴染みが薄いかもしれませんが、Emargency Medical Service(救急医療サービス)の略。

米国においては救急車運行業務を意味することが多いですが、広義で言えば、業務対応として健康面における緊急事態に対応するファーストレスポンダーから救急隊、そして病院での初療までを意味します。

プレホスピタルであるバイスタンダー救護から、救急隊員、さらには病院における救命処置や治療まで、救急全般に関した教育・トレーニング展開を行っていく組織として設立されました。

いまのところ5月31日(金)に プレホスピタル版のAHA-BLSプロバイダーコース が予定されていますが、今後は学校教職員や業務対応プロバイダーとしての市民救助者向けのAHAハートセイバー・ファーストエイドや、ハートセイバーCPR AEDコース の展開も予定しています。

九州地区はPEARSプロバイダーコースの盛り上がりなど、救急に対する熱量が多い地域な印象がありますが、市民向けの教育に関しては意外と未開発な気がします。

特にファーストエイドに関しては、九州での展開はほとんど見かけません。(わざわざ横浜まで受講にいらっしゃる方がときどきいます)

実際に使う頻度で言ったら、心肺蘇生法よりもファーストエイドなわけですし、医療従事者教育だけではなく、地域から病院までの救命の連鎖を幅広く扱う教育組織というのは、あるようで、実はほとんど見かけません。

救命法の指導・普及団体は公的機関・民間団体を含めて多くありますが、市民向け教育から医療従事者教育までを一貫して実施している組織は多くはありませんが、でも、その連携が、実際には重要な部分です。

その点でも、EMS熊本の九州地区での存在意義は大きいと思います。

BLS横浜では、地域の要請や、時代や世相からニーズを読み取り、ファーストエイドの日本国内定着やPEARSの普及、エピペン講習の在り方、最近では止血教育や血液感染教育、さらには implementation を意識した救命法指導員養成や、教育工学の応用など、独自の取り組みをしてきました。

それらを評価いただき、毎回驚くような遠方からも受講に来てくださっていますが、今後は九州地区でも同種の講習が受けられる場となりそうです。

既存の概念にとらわれない、地域に合わせた実のある教育の新たな風を起こしてくれる組織として【EMS熊本】に大いに期待しています。


「大丈夫ですか?」 傷病者への声かけの仕方を考える

「大丈夫ですか?」

救命法講習ではおなじみの第一声ですが、この意味について少し取り上げてみようと思います。

 

意識ではなく、反応の確認

心停止を想定したBLS系の講習では「反応の有無」を見るために、肩を叩くなどの刺激をしながら、「大丈夫ですか?」などと声を掛けるように教えています。

これは「反応の有無」の確認であり、「意識」の確認ではありません。

このケースでは、意識はなくても、反応があれば「よし」と考えるからです。つまり生きている最低限の証拠があればいい、ということです。

意識という言葉の定義にこだわるとややこしくなりますが、簡単に言えば、呼びかけに返事がなく、意識がないと判断される状況でも、刺激に対して顔をしかめるとか、口を開こうとするとか、なんかしらのリアクションが返ってくれば、死んではいない、と判断できる、と考えます。

心停止が想定される状況の中で、反応の有無を確認するのであれば、呼びかけの内容はなんでもいいと思います。

 
「大丈夫ですか?」
「わかりますか?」
「どうしましたか?」
 

反応(リアクション)を誘発するような文言と刺激であればなんでもいいわけです。(両肩を叩くとか、片方だけでかまわないとか、額に手を当ててとか、そのあたりはエビデンスはなにもないです)

ファーストエイド対応における声掛けは?

呼びかけの仕方はなんでもいい。

心肺停止状態が想起されるような状態であれば、そう言えますが、明らかに生きている状態、特に会話やリアクションが得られそうな状況における声掛けになると、もう少し考えた方がいいかもしれません。

よく言われることは、

「大丈夫ですか?」

という声かけは良くないのではないか? という点。

大丈夫です、という根拠のない拒絶を誘発しないために

皆さんが、もし繁華街で転んでしまった場合を想像してみてください。足をくじいて痛い。そこに知らない人から「大丈夫ですか?」と声をかけられたら、反射的に「大丈夫です」と答えませんか?

本当に大丈夫かどうかは別として、ある程度意識がある一般的な日本人なら、他人に迷惑をかけたくない、もしくは恥ずかしい、という思いから、大丈夫と答えるケースが圧倒的かと思います。

大丈夫、という言葉には、軽く拒絶の意味があります。それを誘発するような声掛けは、救助者側の本位からするとあまり良くないのでは、ということです。

じゃ、なんて言う?

「大丈夫ですか?」と声をかける側は、大丈夫じゃないと思って声をかけるわけですから、言い方は工夫したほうがいいかもしれません。

この点、英語での言い回しはよくできているなと思います。

 
May I help you?
 

直訳すると、お手伝いをしていいですか? といった感じでしょうか?

手助けする許可を得るという態度。これは応急救護の基本マインドとして、大事な点だと思います。

押し付けではなく、あくまでも一人の人間としての傷病者の意思を尊重するというスタンスです。

日本語でいうなら、「どうしましたか? 手を貸しましょうか?」といった感じでしょうか?

相手の状況によるでしょうけど、

「お困りのようですが、なにか出来ることはありますか?」

など、普通の会話としてケースバイケースで変わっていくはずです。

自己紹介は大事!


ただ、やっぱりいきなり知らない人に声を掛けられれば、遠慮が生じるのが日本人ですから、そのハードルを下げるために必要なのが、自己紹介かなと思います。

医療従事者であることを名乗れば、安心して頼ってくれるケースが多いですし、AHAハートセイバー・ファーストエイドコース では、ファーストエイドプロバイダーであることを名乗るように教えています。

英語では、ファーストエイド・プロバイダーと言えば通じますが、日本だと、しっくりくる言い回しがないのが残念なところです。

 

「ファーストエイドの訓練を受けています」
 
「応急手当の心得があります」

 

日本語としては、いまいちですが、なんかしらの自己紹介はしたほうがいいでしょう。

せめて、名前を名乗ることで、怪しいものではない、というPRは必須かと思います。

 
ということで、傷病者へのファーストタッチである声掛けについて、BLS前提とファーストエイド前提の違いで考えてみました。


救急隊員にとってのAHA-BLSプロバイダーコース

先日は熊本でAMRとして初開催のBLSプロバイダーコースでした。

PEARSではおなじみの Child Future熊本(CFK)との共催での公募開催だったのですが、もともと救急救命士から評判の高い CFK ということで、今回は受講者6名が全員、消防職員というメンバー編成でした。

横浜で10年以上、講習展開をしていますが、BLSコースに関しては救急救命士や消防職員の参加はあまり多くはありません。むしろ珍しいくらい。PEARSやファーストエイドコースへの参加はそこそこありますので、救急隊員にとってはBLSなんかは常識過ぎて今更感があるんだろうなと思っていました。

そんな思いがありつつも、今回、消防職員のためのBLS講習を展開してきて見えたものを書き留めておきたいと思います。

BLS for Prehospital Provider(PHP)コース、アメリカンなインパクト

ご存知の通り、今のG2015版のAHA-BLSコースは病院内設定と病院外(Pre-hospital)設定にシナリオ動画が別れています。

横浜では1-2ヶ月に1度程度、プレホスピタル版もレギュラー開催していますが、全国的に見ると公募開催は珍しいようです。

さて、今回、救急隊員の方たちとPHP版の映像を見ていると、食いつき方が違うというか、米国の救急隊や救命士が活動する場面に対するインパクトがまったく違う点が、正直な驚きでした。まさにPHPコースは消防職員向けにあるんだなと。

病院の中の人間としてはまったく気に留めない部分、例えばPA連携で先着した消防隊員と、後着の救急隊との連携の仕方などが、日本の現場を知っている人からするとすごい展開なんですね。

シナリオ動画の場面に引き込まれるといえば、病院内設定(IFP)でも、病棟のベッドの上で展開されるBLSの場面は、ベッドのギャッジアップを戻すとか背板を入れるとか、目を引く場面も確かにありますが、救急隊員がPHP版を見るときの比ではなさそうな印象でした。

救急隊員がAHA-BLSコースから学ぶこと

救急隊員にとってはBLSは基本中でしょうし、日頃からよく訓練されていて、応急手当指導員として地域住民に対しては教えている内容かもしれません。

それでも、受講後の感想としては、救命士にとっても必須と思います、という声も上がりました。

これは医療者全般の教育に言えることですが、BLSはできて当たり前という建前上、さらっと流されてしまう傾向があるのかなとも思いました。

ことにBLSとなると、運動スキルとしての側面が強く「技術的にできること」に終始してしまう傾向があるのではないでしょうか。

受講いただいた皆様からの声をピックアップすると下記のようなポイントが上がりました。

成人と小児の蘇生法の違いを並べて学ぶことで蘇生の全体像が見えるという点、チーム力に関するサジェスチョンとシミュレーション体験、窒息解除や補助呼吸などの蘇生科学の理解など。

基礎教育的なものは、教育課程の最初のうちに習得し、そのまま「あたりまえ」感に変わっていってしまうものかもしれません。

それを改めて学ぶ意義。

それはテクニカルな日々修練を積むトレーニングとは別に、現場での経験を積んだ後だからこそ、腑に落ちるというところもありそうです。

基本ではあるBLSですが、フルサイズで中身をじっくり学んでみることの意義。それを感じた1日でした。


人工呼吸のコツは「空気を入れすぎない」こと

昨今、市民向け救命講習では省略して教えるケースが増えているために、すっかり日陰者なイメージの人工呼吸。

しかし、家族を救う場合や、子どもの救命、水辺の事故、また医療従事者などにとっては、依然、重要な技術であることに変わりはありません。

心肺蘇生法BLSにおける人工呼吸は、空気を入れすぎると蘇生率が低下します。

質の高いCPR 人工呼吸の質とは?

質の高いCPRと言ったときに、

  • 強く
  • 速く
  • 絶え間なく
  • しっかり戻す

という胸骨圧迫の質については、皆さんよくご存知と思いますが、「質の高い人工呼吸のポイントはなんですか?」と尋ねると、はて? と考え込んでしまう人が多いようです。

そこで、今日は人工呼吸のクォリティ(質)について再確認しようと思います。

人工呼吸のコツといえば、ずばり、

 

過剰な換気を避ける

 

ことです。

空気の入れ過ぎはNG。

そこで、

  • 胸が上がる程度の送気
  • 1回1秒かける

と指導されます。

胸が上がる程度

胸が上がる程度というとすこし言葉足らずというか、少々かわかりにくいかもしれません。

これは胸が上って見えるギリギリくらいの量でいいですよ、というニュアンスが込められています。

胸ががっつり上がるまで吹き込め、というわけではない点、注意をしてください。

1回の吹き込みに1秒かける

この1秒というのも言葉だけではニュアンスがまったく伝わらない、やや罪作りな言葉です。

この1秒というのは、「勢いをつけずに吹き込む。ただし時間はかけすぎるな」ということを意味しています。

短く吹き込もうとすると、どうしても勢いよく吹き込んでしまい、気道内圧を上げてしまいます。そうすると気管ではなく食道の方に空気が入り込んでしまい、最終的には胃内容の逆流に繋がります。

それを避けるために優しく吹き込む、ただし胸骨圧迫の中断時間を短くするためには時間を掛けすぎるな、という意味での1秒です。

もともと英文では、これが “over 1 second” と書かれているため、日本語訳するときに「1秒以上かけて」吹き込むと誤訳されたこともあり、それが未だ誤解として残っている節も見られます。

この場合の over というのは、1秒間に渡って息を吹き込むという意味になります。

息を吹き込みすぎてはいけない理由

人工呼吸の質という点は、一般的な心肺蘇生法講習やBLS講習の中でもあまり強調されず、練習のときもほとんど言及されない部分なので、なぜ? という点は知らない人が多いのではないでしょうか?

人工呼吸の過剰な換気は血流低下を招き、救命率を下げる

理由1:胃膨満から嘔吐のリスク

人工呼吸の空気を入れすぎてはいけない理由のひとつめは、すでに言及しましたが、肺ではなく胃の方に空気が入り込み嘔吐してしまうリスクが増すからです。

思いっきり息を吹き込んで、肺の容量以上の空気が入ると、肺から溢れ出た空気が食道の方に入り込む、というのは想像できると思います。また、勢いよく思いっきり吹けば、普段はピタッと閉じている食道が開いて空気がいってしまうのもイメージできると思います。

蘇生中、腹部が膨らんでくるのが目で見てわかることもあります。胃がパンパンにふくらんで限界に達すれば、胃の内容物を伴って口の方に逆流。人工呼吸の継続は困難になってしまいます。

理由2:胸腔内圧の上昇から血流低下を招く

もう一つの理由は、空気を吹き込みすぎると、血流を妨げることになる、というものがあります。

これは少し機序が複雑ですが、簡単に言えば、肺がパンパンに膨らむと、心臓のあたりを圧縮する力が働いてしまい、静脈から戻ってくる血液が心臓に溜まりにくくなります。心臓に貯まる血液が少なければ、駆出する血液量も減ります。つまり血流低下を招いて、冠動脈に有効な血液がいかず、心拍再開の可能性が下がるということです。

過剰な換気は、理性で抑える

以上の理由から、人工呼吸の吹込みの量は、目で見て上がる程度に少なめでいい、ということはご理解いただけると思います。

しかし、実際の現場のバッグマスク換気を見ていると、かなり強めに、頻回に送気している様子が目に付きます。どうしても力が入ってしまったり、たくさん空気を送ったほうが助かるようなイメージが何となくあるのかもしれません。

人工呼吸の練習をちゃんと受けた人は、大抵の場合、こんな少なくていいんですか? と意外そうな顔をします。

このギャップがまた、過剰な換気につながってしまうのでしょう。

そこでBLS横浜の講習では、人工呼吸の吹き込み量がこんなに少なくていいという理由を説明しています。

胸骨圧迫で生じる血流量は普段の1/3しかない

CPRの目的は、大気中の酸素を人体の中の細胞まで届けることにあります。特に心臓の心筋細胞に酸素を届けるのが最優先です。

そのための前半ステップが人工呼吸であり、後半ステップが胸骨圧迫です。

最終的には血液中のヘモグロビンにくっついた酸素が細胞に届いてほしいわけで、その量は胸骨圧迫によって生じる血流に依存することになります。

その血流が、普段の1/3しかないわけですから、人工呼吸で普段の肺活量と同じだけの空気を送り込んでも、余りますよね、ということ。

だから、人工呼吸の量も普段の呼吸量の1/3程度で十分なわけです。

だからこそ、こうした理屈を理解して、理性で質の高い人工呼吸をコントロールすることが必要ですね。


日本で混在する2つの蘇生ガイドライン(JRC/AHA)の謎

先日、2月18日に実施された第108回看護師国家試験のBLSに関する出題を巡って話題になっているようですね。

呼びかけに反応のない人に対するBLSはとして医療従事者として優先度の高いものはどれか?、ということで、気道確保、胸骨圧迫、人工呼吸、除細動が選択肢として挙げられています。
 
これを心停止ケースと仮定するか、現段階は意識障害と捉えるかで意見が別れているようです。
 
正解は開示されていないので予想の域を超えませんが、AHAガイドラインとJRCガイドラインの違いをついた絶妙な出題だったとの見方もあるようです。

出題者の意図はわかりかねますが、この件で、2つの蘇生ガイドラインの混在、という日本国内に潜んでいた問題が浮き彫りになったのは間違いないようです。

そこで今日は蘇生ガイドラインの成り立ちについて解説します。

「国際ガイドライン」というものは存在しない

蘇生ガイドラインは国際的なものと思われている節がありますが、実はそうではありません。蘇生ガイドラインは国ごとに違います。

日本の蘇生ガイドラインはJRCガイドラインと呼ばれています。日本蘇生協議会(Japan Resuscitation Council)のホームページ から PDF で無料閲覧できるほか、JRC蘇生ガイドライン2015 として書籍 でも出版されています。

一方、BLS横浜でも開催しているAHA講習は、American Heart Association が作ったアメリカ合衆国の蘇生ガイドラインに準拠した講習プログラムです。

アメリカ心臓協会AHA救急心血管治療とCPRのためのガイドライン2015アップデート   日本蘇生協議会JRC蘇生ガイドライン2015

日本の医療者の大半はアメリカの蘇生ガイドラインで学んでいる

現実問題として、日本国内で公募講習として開催されている医療従事者向けの救急対応トレーニングのほとんどは、アメリカ心臓協会 AHA の BLS と ACLS です。

つまり、日本の医療者の多くが、自国のJRCガイドラインではなく、外国のAHAガイドラインで学んでいるというのが現状です。

日本国内では、自国と他国の2つのガイドラインが共存しているという不思議な現象がおきています。

国際コンセンサスと各国ガイドラインの成り立ち

国際ガイドラインなるものは存在しないと書きましたが、国際コンセンサス CoSTR と呼ばれるものはあります。

これは、国際蘇生連絡協議会という、各国の蘇生委員会が集まる国際会議で決められる合意事項、ガイドラインの骨子となるエビデンスに基づいた勧告です。

この国際会議で5年毎に国際コンセンサスが改定され、それに基づいて各国が自国用の蘇生ガイドラインを作るのです。

日本のJRCの場合、国際コンセンサスとガイドラインがほとんど同じ部分もあったりするのですが、基本的には国際コンセンサスとガイドラインは別ものです。

コンセンサスはエビデンスに基づいた国際合意ですので、基本的にはエビデンスがないことに関しては記載がありません。

しかし、エビデンスがないといっても対応ルールは作らないと臨床では動けない。

そこでエビデンスがない、もしくは弱い、などでコンセンサスにない部分は各国が自国の事情に合わせて穴埋めする必要があります。

そうしてできたのが国ごとの事情が加味された各国ガイドラインです。

ですから、エビデンスが強い部分については、国が違っても大きく変わることがない場合が多いのですが、エビデンスが低い部分ほど差異ができやすいともいえます。

日本においては、JRC蘇生ガイドラインとAHAガイドラインが共存しており、内容は大筋では変わらないのですが、例えば呼吸確認の方法のようなエビデンスデータがないことに関しては、ちょっとした違いが出ています。

こうした違いがあると、どっちが正しいの? という議論になりがちですが、医学的な視点で言えばどっちでもいいというのが答えでしょうし、国の基準という点で考えれば、日本国内ではJRCガイドラインを優先すべきなのは言うまでもありません。

医療従事者国家試験においてはJRCガイドライン

医学的にはどっちでもいいところなので、治療方針に関して裁量権を持った立場である医師は自由に判断します。

その他の医療スタッフに関しては、ガイドラインの更に先にある病院内の対応マニュアルや方針に従った行動を取るべきでしょう。病院としてAHAガイドラインを採用しているであればAHAでいけばいいし、JRC準拠ならJRCといった具合です。

 

さて、今回の話の発端は看護師国家試験でした。

日本国の国家試験ですが、この場合、JRCガイドライン準拠で考えるべきでしょう。いくら巷でAHAガイドラインが優勢であったとしても日本がアメリカのガイドラインに従ういわれはこれぽっちもないわけですから、頭をJRCに切り替えないといけません。

今回の国家試験問題で医療関係者がざわついているのは、AHAガイドラインで考える故に迷路にはまり込んでいたり、そもそもガイドラインが複数あって自分が知っているものと国試で求めているものが違っていたという衝撃のようです。

ここは後で論じますが、日本の蘇生教育を考える上では、大きな落とし穴であり、学校教員や救命法のインストラクターの指導姿勢にも課題があることが露呈したのではないでしょうか?

臨床的には、つまり医学的にはどちらでもいいわけですが、医療系学生の国家試験対策としては、JRCとAHAの違いを認識して、学校の授業などはJRC準拠でいかないといけない、というなのでしょう。

なぜ日本では2つの蘇生ガイドラインが混在しているのか?

さて、今回の看護師国家試験で露呈した日本における蘇生ガイドライン混在の問題ですが、なぜこんなことになってしまったのでしょうか?

歴史的な推移を見ると仕方ない部分はあるのかもしれませんが、現状として、日本の蘇生ガイドライン準拠の講習が展開されていない、というのが問題の根源です。

日本には日本独自のガイドラインがあるのに、それに基づいた医療者向け講習会となると極めて限定的なのが現状です。

日本救急医学界のICLSが、JRCガイドライン準拠の医療従事者向け救命処置研修ですが、公開講座としてはあまり開講されず、ディレクター資格を持ったドクターが院内研修としてやっていることが多く、つてのない一般医療者が救命処置を学ぼうと思ったら、地域でオープンコースを開催しているAHAトレーニングサイトに頼るしかないのが現状です。

本稿ではこれ以上は言及しませんが、ガイドラインだけがあっても、それを普及するための媒体や手段がセットで用意されていないと、現実的な運用は難しいようです。

一方、市民向けの救命法教育で言えば、消防も日本赤十字社といった組織だった普及団体があるため、ほぼ完全にJRCガイドライン準拠で固まっているわけで、組織立った教育普及の重要性は明らかです。

せっかく立派なガイドラインがあるのに、それが広まらず、国家試験にも影響している現実、大きな課題です。


「質の高いCPR」の評価指標 BLSとACLSの違い

今日は横浜で BLSプロバイダーコース でした。

受講者さんから質問があったのは、胸骨圧迫の深さについて。

BLSプロバイダーコースでは、基本的には成人傷病者の胸骨圧迫は「少なくとも5cm」と教えています。

大人であっても体格差はあるし、実際のところどうなのか? というのが質問の趣旨。

体格差があっても5cmでいいの?

このことを考える上で大切なのは、BLSはあくまでもBasicなレベルであるという点です。標準化されている、つまりなるべく幅広く適応できるように平均化されたものであるという点を理解しておく必要があります。最大公約数的にこうしておけばいいんじゃない? という程度にまとめられています。

体重何キロ以上だと深さ何センチで、何キロ未満だったらどれくらい、という区分もできるのかもしれませんが、あえてそのようにはしていません。

BLSレベルでは、そのような細かなカスタマイズは期待されていない、とも言えます。

とりあえずは細かいことは考えずに、言われたとおりにやってくれればいい、というのが本質的なコンセプトです。とにかく単純化しています。

胸骨圧迫の目的は冠動脈灌流圧を15mmHg以上に保つこと


しかし、体格差などの個別性に着目するのも大事です。ACLSプロバイダーコース では、そこも含めて学びます。

そもそも胸骨圧迫の目的は何なんでしょうか?

血流を生み出すため、です。特に冠動脈灌流圧が心拍再開と相関していますので、第一義的には、冠動脈灌流圧を15mmHgより高いレベルに保つのが、質の高いCPRの要件となります。

そのための平均的な指標が、


  • 少なくとも5cm
  • 100〜120回/分
  • リコイル
  • 中断を最小限に

 
というわけですが、上記は絶対的なものではなく、あくまでも平均的な指標です。

いま目の前でCPRを受けている傷病者にとって、本当にそれでいいのかどうかは、結局のところ蘇生中に冠動脈灌流圧を測ってみなければわかりません。

しかし、現実問題、冠動脈の血圧なんて測れない! そこで、ACLSの中では、冠動脈灌流圧が15mmHgに達していることを類推するための代理指標という考え方が出てきます。

冠動脈灌流圧15mmHgの代理指標


  • 大動脈拡張期圧 20mmHg
  • 呼気終末二酸化炭素分圧 10mmHg

 

血圧のうち、拡張期圧が冠動脈灌流圧と相関することがわかっています。そこでA-Lineの拡張期圧が20mmHgあれば、冠動脈灌流圧も15mmHgはあるだろうと考えられます。

また蘇生中の二酸化炭素排出量は循環に依存しています。そこで呼気中のCO2の値が10mmHgを超えていれば十分な灌流があると考えられるのではないか?

このように質の高い胸骨圧迫を、5センチとか100〜120回とかで判断するだけではなく、きちんと定量的にコントロールしていこうというのが二次救命処置の考え方です。

BLSインストラクターなら知っておきたいACLS


このあたりのことは、二次救命処置に関わる人以外であっても、BLSインストラクターは知っておいてもいいかもしれません。

一般にACLSプロバイダーコースは医師・看護師・救急救命士など、二次救命処置に携わる人以外は受講対象となっていませんが、BLSを教える立場の人であれば、学ぶ価値・意味はあるのではないかと考えています。


蘇生現場でポケットマスクを使った後の洗浄・消毒

人工呼吸用のポケットマスクは、一度使ったら再使用できるんですか?

そんな質問をよくいただきます。

ポケットマスクの洗浄・消毒と交換パーツ

ポケットマスクとは


家族相手ならいざしらず、職業的に救命処置にあたる人にとって、いくら救命のためとはいえ、口対口人工呼吸はありえません。(医療従事者が病院内でダイレクトなmouth to mouth人工呼吸をしてしまったら、それは感染事故です)

感染防護機能や、医療機器承認を受けているかという点では、現実的なところで人工呼吸をしようと思ったらポケットマスクが最低ラインと考えています。

そのため、BLS横浜では、保育士や学校教職員など職業人向け心肺蘇生法研修では、ポケットマスク を基本として練習して頂いています。

ポケットマスクは洗える部分と使い捨ての部分で構成されている

結論からいいますと、マスク部分は洗浄消毒可能、フィルターと一方向弁(マウスピース部分)は交換、というのがメーカーの推奨です。

フィルターは構造上、洗浄ができないので、再生使用はできません。無理やり洗うことはできるかもしれませんが、繊維状の部分の目が潰れてしまって通気が悪くなるので現実的ではありません。

そのため、マネキン相手に練習する場合は、フィルターは外しておくことを推奨しています。BLS横浜で講習中に貸し出しているポケットマスクにフィルターがついていないのはそのためです。

一方向弁(マウスピース部分)については、マネキンでの練習の場合は、洗浄・消毒して再生使用することはできますが、実際の傷病者に対して使った場合は、なるべく交換する方向で考えたほうがいいかと思います。現実的にはフィルターをつけていれば、吐瀉物等が一方向弁まで及ぶことはないと思いますが。

ポケットマスクの洗浄方法


さて、マスク部分と一方向弁の洗浄についてですが、洗い方は家庭用の食器洗いと同じです。

スポンジなどに食器洗い洗剤をつけて普通にこすり洗いします。

一方向弁の内側については、哺乳瓶などの筒物を洗うときのブラシを使います。100円ショップなどで太さ違いのものがセットで手に入ります。

消毒前には洗浄が必要

外部の救命講習の手伝いに行くと、ポケットマスク使用後に洗わずに消毒液入りのバケツにボチャンと漬けているのを見ることがありますが、これは間違いです。

消毒前には、タンパク成分を落とすための洗剤での洗浄が必要です。消毒薬はタンパク成分を固着させる働きがあるからです。これは医療界の常識です。

ポケットマスクの消毒方法


洗剤をすすいだ後、0.5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬し、その後、水洗、自然乾燥 というのが正式な消毒方法になります。

次亜塩素酸ナトリウムというのは、家庭用の漂白剤と同じ成分です。キッチンハイターを薄めて作れます。

0.5%というのは恐らく米国のEPA勧告に従ったものと思われますが、実際のところかなり濃い目で、家庭で扱う上ではすこし危ない気もします。

そこで、ノロウィルス対策などでも一般的な0.1%の溶液に少し長めに漬けるというやり方でいいかと思います。

家庭用のキッチン用漂白剤の場合、濃度は6%程度ですので、500mlの水に対してペットボトルのキャップ2杯くらいです。

この濃度でも、服に跳ねると色落ちしますので、気をつけて。

ポケットマスクの交換パーツ


本来、ポケットマスクのフィルターと一方向弁は単回使用の使い捨てですから、製品として交換パーツも販売されています。

アップデートパック ということで、フィルターと一方向弁のセットのものが販売されていますが、価格は約2千円。

ポケットマスクは新品で買っても2700円程度ですから、実際に傷病者・患者に使って汚染されたのであれば、まるごと新品に変えてしまったほうが精神衛生上もいいのではないかと思います。

その他、フィルター だけを単体で買うと約700円。一方向弁(吹き込み口) だけだと約1600円。

いずれにしてもメーカー純正品は高いですね。

米国では練習用のサードパーティー品が多数あるので、ある程度数をまとめて購入するのであれば輸入のほうがおすすめです。