蘇生現場でポケットマスクを使った後の話

人工呼吸用のポケットマスクは、一度使ったら再使用できるんですか?

そんな質問をよくいただきます。

ポケットマスクの洗浄・消毒と交換パーツ

ポケットマスクとは


家族相手ならいざしらず、職業的に救命処置にあたる人にとって、いくら救命のためとはいえ、口対口人工呼吸はありえません。(医療従事者が病院内でダイレクトなmouth to mouth人工呼吸をしてしまったら感染事故です)

感染防護機能や、医療機器承認を受けているかという点では、現実的なところで人工呼吸をしようと思ったらポケットマスクが最低ラインと考えています。

そのため、BLS横浜では、保育士や学校教職員など職業人向け心肺蘇生法研修では、ポケットマスク を基本として練習して頂いています。

ポケットマスクは洗える部分と使い捨ての部分で構成されている

結論からいいますと、マスク部分は洗浄消毒可能、フィルターと一方向弁(マウスピース部分)は交換、というのがメーカーの推奨です。

フィルターは構造上、洗浄ができないので、再生使用はできません。無理やり洗うことはできるかもしれませんが、繊維状の部分の目が潰れてしまって通気が悪くなるので現実的ではありません。

そのため、マネキン相手に練習する場合は、フィルターは外しておくことを推奨しています。BLS横浜で講習中に貸し出しているポケットマスクにフィルターがついていないのはそのためです。

一方向弁(マウスピース部分)については、マネキンでの練習の場合は、洗浄・消毒して再生することはできますが、実際の傷病者に対して使った場合は、なるべく交換する方向で考えたほうがいいかと思います。

ポケットマスクの洗浄方法


さて、マスク部分と一方向弁の洗浄についてですが、洗い方は家庭用の食器洗いと同じです。

スポンジなどに食器洗い洗剤をつけて普通にこすり洗いします。

一方向弁の内側については、哺乳瓶などの筒物を洗うときのブラシを使います。100円ショップなどで太さ違いのものがセットで手に入ります。

消毒前には洗浄が必要

外部の救命講習の手伝いに行くと、ポケットマスク使用後に洗わずに消毒液入りのバケツにボチャンと漬けているのを見ることがありますが、これは間違いです。

消毒前には、タンパク成分を落とすための洗剤での洗浄が必要です。消毒薬はタンパク成分を固着させる働きがあるからです。これは医療界の常識。

ポケットマスクの消毒方法


洗浄後は、洗剤をすすいだ後、0.5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬し、その後、水洗、自然乾燥というのが正式な消毒方法になります。

次亜塩素酸ナトリウムというのは、家庭用の漂白剤と同じ成分です。キッチンハイターを薄めて作れます。

0.5%というのは恐らく米国のEPA勧告に従ったものと思われますが、実際のところかなり濃い目で、家庭で扱う上ではすこし危ない気もします。

そこで、ノロウィルス対策などでも一般的な0.1%の溶液に少し長めに漬けるというやり方でいいかと思います。

家庭用のキッチン用漂白剤の場合、濃度は6%程度ですので、500mlの水に対してペットボトルのキャップ2杯くらいです。

この濃度でも、服に跳ねると色落ちしますので、気をつけて。

ポケットマスクの交換パーツ


本来、ポケットマスクのフィルターと一方向弁は単回使用の使い捨てですから、製品として交換パーツも販売されています。

アップデートパック ということで、フィルターと一方向弁のセットのものが販売されていますが、価格は約2千円。

ポケットマスクは新品で買っても2700円程度ですから、実際に傷病者・患者に使って汚染されたのであれば、まるごと新品に変えてしまったほうが精神衛生上もいいのではないかと思います。

その他、フィルター だけを単体で買うと約700円。一方向弁(吹き込み口) だけだと約1600円。

いずれにしてもメーカー純正品は高いですね。

米国では練習用のサードパーティー品が多数あるので、ある程度数をまとめて購入するのであれば輸入のほうがおすすめです。


熊本であえてBLSプロバイダーコースを展開する理由

熊本県熊本市でBLSプロバイダーコースを出張開催。熊本でハワイのAHA-BLSコースを受講できます

なぜか九州地方と縁が多いBLS横浜ですが、ここ最近は熊本での BLSプロバイダーコース に力を入れています。

BLSプロバイダーコースと言えば、日本全国、どの都道府県でもいくつかの活動拠点があるくらいに、すっかりおなじみのプログラムですが、それをあえてBLS横浜が熊本で出張開催しているのには、AMR と 救急救命士 というキーワードが関係しています。。

AMRは、American Medical Response の略です。病院関係者にはあまり馴染みがないかもしれませんが、救急救命士さんの間では知られた存在。

AMRは全米最大のEMS(救急医療サービス)プロバイダーの名前です。一言で言うと、全米最大の民間救急。

民間救急というと、日本では、介護タクシーの延長みたいなイメージがありますが、アメリカの民間救急はガチな救命救急隊です。

日本と違って、米国の救急車の運行は行政の仕事だけではなく、その大半を民間が担っているからです。アメリカで救急車を呼ぶとすごい高額を請求されるよ、という話は、海外旅行の逸話としてよく聞きますが、行政サービスではないからなんです。

AMRは、民間救急とはいえ、現場や救急車内で薬剤投与を含めたACLSを展開しますし、州によってはモルヒネやニトログリセリンの投与なども行っています。そんな日本の救急救命士が憧れるような高度に専門的な医療ケアを行っているプロフェッショナル集団の代表格がAMRだったりします。

(ネット検索をすると、日本の救急救命士養成校がAMRで研修を受けてきました、みたいな記事がいくつも見つかります。)

BLS横浜が熊本でタイアップしている Child Futue熊本 は、小児救急の認定看護師と救急救命士で運営している団体で、その救命士さんの熱い要望もあり、熊本でAMRのBLSコース展開するに至りました。

消防勤務の救命士さんは、基本的に消防組織内でよく訓練されていて、BLSはまさにプロ中のプロ。

わざわざ外部講習としてスキルを磨く必要性は自覚しないくらいのプロなわけですが、聞いてみると、最新の蘇生科学の理解や、指導技法、また特に小児BLSに関しては、必ずしも得意ではない部分もあるそうで、世界標準のAHA-BLSコースから学ぶ余地はあるようです。

しかし、当事者さんたちからしたら、BLSと言われても今更感があるのは否めません。

救急救命士さんたちにもBLSに興味をもってもらうためには、米国のAMR標準の教育を、ということで、熊本でAMRトレーニグセンターのBLSを始めました。

あとは、単純に、日本にいながら、AMR-Hawaii のネームの入ったBLS資格が取れるというのは、九州熊本ではかなりレアなもので、せっかくなのでぜひ、どうぞ、という意味も含めて。

(実は九州では、鹿児島でもAMRのインストラクターさんが複数活動しているのですが、今は、あまり公募では講習開催してくれていないので)

実際問題、アメリカ心臓協会AHAの講習は米国文化のもとで作られていますから、米国の医療事情とか医療関係法規や文化を知らないと正しく伝えることはできません。

特に、小児BLSやファーストエイドでは、日米でかなり顕著な違いありますので、米国で資格を取ってきたインストラクターが開催するコースというのは文化の橋渡しとして意味ある存在かも知れません。

そんなキャンペーン効果もあって、熊本でのBLSは、救急救命士さんからの申込みが非常に多いです。

2月は残席1名、3月もあと4名で締め切りとなります。

興味がある方は、この機会にぜひどうぞ。

2月25日(月)熊本BLSプロバイダーコース詳細

3月27日(水)熊本BLSプロバイダーコース詳細


ACLSとモニター心電図の基礎理解Seminar【2月19日(火)18:30-】

ACLSとモニター心電図の基礎理解イブニングセミナー

横浜では久々の開講となる「ACLSとモニター心電図の基礎理解」イブニングセミナー。

最近では、熊本や岡山、香川などで開催、またBLSコースを定期開催している千葉の病院では毎月開催していて、好評頂いている心電図と二次救命処置の勉強会です。

ACLSは、病院勤務の看護師にとっては常識的に知っておいてほしいものなのですが、どうしても医師のためのものというイメージが強いのと、「難しい!」という先入観から敬遠されがちなのが残念。

苦手、、、と言って避けていられればいいのですが、業務対応では知らないでは済まされない部分もあるやもしれません。

 

そこで、二次救命処置ACLSのエッセンスと、ナースが苦手意識を持っている心電図について、わかりやすくまとめたのが本セミナーです。

皆さんに伝えたいメッセージは次の2点。

 

1.ACLSは、BLSに毛が生えた程度のもの
2.心電図から循環動態がイメージできたらめっけもの

 

難しいものを無理やり理解してもらおうとは思っていません。

思ったより簡単じゃん! ということに気づいてもらうための90分です。

 

ACLSとモニター心電図の基礎理解

2019年2月19日(火)18:30~20:00

詳細・申込みは BLS横浜web

 


新PEARS®プロバイダーコース(G2015)雑感

小児急変対応 PEARS®プロバイダーコース が刷新され、新しいG2015日本語DVDを使った講習もだいぶ浸透してきました。

DVDが英語から日本語吹き替え版になってわかりやすくなったのですが、英語だとあんなにゆっくりなのが日本語に置き換えるとひどく早口だったりして、なかなか難しいですね。

PEARS®コースの中身自体は、人が生きるしくみの根源な話なので、蘇生ガイドラインが変わっても大きく変わったことはないのですが、新コースになって、使われる症例映像が変わりましたし、説明の流れも変更されました。

また、筆記試験で問われるポイントが変わったり、受講しての印象はやや違ってきているかもしれません。

 

全体的な傾向としては、呼吸のトラブルから心拍数が落ちていって命を落とす小児に多い呼吸原性心停止のしくみをきっちり理解することが求められる点、また治療介入で使う薬剤の話も以前よりは求められるように思います。

 

映像でのケース症例は、前回のG2010英語版に比べると減ってしまっているのが残念です。

オプションとして、窒息解除や心原性ショックの話が入ってきた反面、なぜか呼吸調整機能障害については、非常に浅くなってしまいました。

呼吸調整機能障害は、ケースディスカッションでは省略されて、ちょっとした解説だけであっさり終わってしまうので、事前学習でしっかり勉強しておきたいところです。

 

また、これまでのPEARS®では、血圧や酸素飽和度など、モニター上の数値情報をあてにしすぎるなと言う点がかなり強調されていたのですが、今回のG2015版では弱くなってしまったのが残念です。

酸素飽和度の理解については、以前のブログ記事でも解説しているので、これからPEARS®を学ばれる方は、ぜひ目を通してみてください。

パルスオキシメーターは、いざというときは、あてにならない
https://blog.bls.yokohama/archives/4189.html


2月16日(土)新宿でAHA-BLSと【無料】小児 / 乳児CPR講習を開催!

東京新宿・高田馬場で開催AHAファミリー&フレンズCPR講習小児・乳児編 at ゆみのハートクリニック

東京新宿の高田馬場にある ゆみのハートクリニック との共催で、都内でAHA-BLSプロバイダーコースと、ファミリー&フレンズCPR講習【乳児・小児編】を開催することになりました。

ファミリー&フレンズ小児・乳児CPR無料講習

午前中は、主に親御さんを対象とした 無料の子ども救命法 を開催します。地域への貢献活動として無料で提供します。

BLSプロバイダーコース

午後からは医療従事者や救護義務のある職業人のための BLSプロバイダーコース を開催。成人・小児・乳児への心肺蘇生法を医療従事者レベルで習得する5時間半コースです。

 

 

BLS横浜としては、東京での公募講習は5-6年ぶりかも知れません。

この機会に、東京新宿周辺の方は、ぜひご参加ください。


AHAプロバイダーカードは手作りする時代に 米国eCard事情

AHA-ACLSやBLSコースを受講したことの証、プロバイダーカードですが、米国ではすでに廃止されて電子認証のeCardに切り替わっています。

アメリカ国内トレーニングセンターの直轄で活動しているBLS横浜でも、今年の10月からeCardに移行して、2ヶ月で約100枚のeCardを発行してきました。

eCardは電子資格ですので、インターネット上でその資格の有効性を確認・証明するものです。水戸黄門の印籠のごとく、スマートフォンに My eCard page を表示して提示するようなものなのですが、このスタイルは日本ではなじまないだろうなというのは目に見えています。

米国でのBLS/ACLSプロバイダー資格の意義と使われ方

そもそも米国ではBLSプロバイダーやACLSプロバイダー資格は、病院職員の就業条件として病院が管理するものです。全職員のBLS資格の有無と有効期限を把握、チェックしているのです。

有効期限は2年ですから、職員が数百人、千人といれば、毎日のように資格が失効する人がいて、それをカバーするために米国の病院では専属のAHAインストラクターがいて、職員の資格維持のために毎日講習を開催していたりするわけですが、、、

そんな米国事情を考えれば、電子認証に移行したわけも納得です。

紙媒体のカードのコピーの提出を求めて、その有効期限を書き出してリストアップして、という病院管理部の手間はたいへんなものになります。それを解消するために導入されたeCard、その真骨頂は12桁の eCard Code にあります。

eCard Code は受講者の持つ資格に固有の番号です。この番号をAHAの専用ウェブサイトに入力すると、その資格の有効性が1瞬で確認できるのです。もちろん、複数件の一括照会ができます。

ですから、実は電子認証は紙の代わりにパソコンやスマホの画面表示というよりは、この一括して資格の有効性を確認できるようになる、ということに意味があるのです。

そういった医療従事者の資格認証を第一義としたときに、紙のプロバイダーカードがいかに不合理なものであったかということがわかるかと思います。

日本では資格証明より、達成感?


一方、日本では、JCI認証を取る病院とか、循環器や麻酔科の専門医資格取得以外では、資格証明を求められることはないのが現状。

日本の受講者の大半は、自分自身のスキルアップのためだったり、勉強の目標として資格を取得するという意味合いが大きく、確実な資格証明というよりは、病院の職員証の裏に入れておけるような紙のプロバイダーカードを欲しているというのが現状だと思います。

だからこそ日本では、eCardはなじまない、と考えています。

日本国内でもeCard移行が決まっています


今は、両手で数える程度の日本で活動する米国トレーニングセンター所属(提携)のAHAインストラクターが、ほそぼそとeCardを発行しているだけで、メインストリームはITCが発行する紙媒体のプロバイダーカードです。

しかし、来年の1月以降、日本のITCでもeCardへの移行が始まっていきます。

さて、組織だって日本の国際トレーニングセンターがeCardに移行したとき、本当に電子認証だけで終わらせるのか、それともいまBLS横浜が行っているようなカード印刷サービスを行っていくのか、それが大いに気になるところです。

日本のユーザーの大半は、物理的に手にとることができるカード状の資格認証を求めるでしょう。

eCardは印刷可能 誰が印刷加工する?


eCardは、PDFデータとしてダウンロードして自分で印刷してカードを作ることは可能です。

A4用紙に印刷して、ハサミで切って二つ折りにすれば、いちおうカード状にはなりますが、コピー用紙に印刷するのではカードと呼べるほどの質感は得られません。厚手の光沢紙を使うか、ラミネート加工をするなどの工夫が必要です。

また家庭で一般的なインクジェットプリンターで印刷した場合、どうしても発色や印字精度という点では、満足のいく仕上がりにはなりにくいです。

そこでBLS横浜では、旧来のプロバイダーカードに劣らないクォリティで、印刷とラミネート加工をする無料サービスを提供することで、日本で先行してeCardに切り替えましたが、実際のところ、かなりの手間と時間を要しますので、大手ITCが同様のサービスを提供するとは考えられません。

日本国内のITCがeCardに移行し、カード印刷は受講者自身が自分で行うもの、ということが日本国内で周知されるようになった暁には、BLS横浜でも、印刷サービスは廃止ないしは完全有償サービスに切り替える予定でいます。

以上、AHAインストラクターでもあまり知られていない最新のeCard事情について書かせていただきました。


BLS横浜のACLS1日コースは、循環器専門医受講要件を満たします

BLS横浜のACLSプロバイダー1日コースは、循環器専門医の受験要件を満たすのか? というご質問をいただきました。

答えは「もちろんです」。

ACLSプロバイダー資格が国内ではなくハワイから発行されるという点が他と違いますが、これまで問題なく循環器専門医申請に使っていただいています。

 

ACLS資格を1日で取得可能、BLS資格不要という点を不安に思う方が多いようです。

確かに専門医認定を行う日本循環器学会ITCが主催するACLSプロバイダーコースは2日間であり、有効期限内のBLSプロバイダーカードの提示が求められています。

しかし、この点はAHAルールではなく、トレーニングセンター単位の独自ルールである点は、ACLSインストラクターマニュアルに規定されているとおりです。

(こちらをご参照ください。→ ACLS受講にBLS資格は不要です【アメリカ心臓協会】

 

今回、改めて 日本循環器学会認定循環器専門医制度規則(PDF)を確認しましたが、そこで求められているのは、

「AHA ACLSプロバイダーコース」「AHA ACLS-EPコース」「AHA ACLSインストラクターコース」「AHA ACLS-EPインストラクターコース」のいずれかを受講し、受験年度の4月1日現在有効な認定を受けていること。

であり、BLSプロバイダー資格の提示は求められていません。また、日本循環器学会ITCが発行するACLSプロバイダー資格に限定するという要件もありません。

ということで、BLS資格不要の1日コースであっても、AHA公式ACLSプロバイダーカードが取得できる講習であれば、なんら問題はありません。


BLSの質を測るフィードバック装置の活用法

成人BLS/ACLS講習用に「フィードバック装置」を導入しました。

マネキンに対してCPRをすると、その深さや戻り(リコイル)、人工呼吸の胸郭挙上の有無と、胸骨圧迫の中断時間を計測し、画面表示してくれるという装置です。

外付けキットで旧タイプのリトルアンにも対応

もともと所有していたレールダル社の旧タイプのリトルアンに、オプションとして QCPR Upgrade kit を取り付けることで実現できました。

マネキンの肋骨部分と顎のパーツを交換するだけの簡単作業で、最新のQCPR対応マネキンに早変わり。

写真のように視覚的にCPRの質を確認しながらの練習ができるようになります。

仕組みとすると、おそらくBluetooth接続なのでしょうか? マネキンから無線で信号を飛ばし、Android や iPad / iPhone のアプリ で表示できます。冒頭の写真はiPadの画面をスクリーン投影している様子です。

AHA-BLS/ACLS講習では2019年2月以降、フィードバック装置の使用が義務化


アメリカ心臓協会のBLSプロバイダーコースでは、ビデオを見ながらのPWW手法で練習しますので、あまりこれを使う場面はないのですが、実技試験前の自由練習の場面では、スクリーン表示して、受講者が自分で技術を確認できるようにしています。

10分間のチーム蘇生の場面でも提示したことがありましたが、CPRの質の評価をする人が、眼の前の手技ではなく、画面ばかり見るようになるので、あまり臨床的ではないかなと思い、今は画面表示はせず、インストラクターの確認用だけに留めています。

2018年2月以降のアメリカ心臓協会AHA講習では、成人のBLSについては全例においてこうしたフィードバック装置の導入が求められています。

正直なところ、こうした器具に頼りすぎる傾向を作り出すことには抵抗があります。

臨床現場でもフィードバック装置を使用している環境であればいいのですが、今の日本の現状はそうではないので、あくまでも自分の運動感覚として強さや速さをコントロールするように訓練していきたいという思いがあります。

そこで、講習の最初から最後まで、このフィードバック装置を受講者に表示するのではなく、講習の中盤あたりで中間評価的に試してもらうという程度にしています。

インストラクターの皆さんはどのように活用されているでしょうか?

医療施設内の自主練習用には最適


このフィードバック装置ですが、インストラクターがいない環境下での自主練習としてはその存在と効果は絶大だと思います。

例えば病院に1台、フィードバック装置付きのBLSマネキンを用意しておけば、職員は気が向いたときに気軽にCPR自己練習ができます。

ただマネキンをおいてあるだけだと、ちゃんとできているのかどうかわからないという点で手応えがないのが問題でした。しかし、こういったフィードバック装置が、指導してくれる人がいなくても、意味のあるトレーニングになり得ます。(これを発展させたのが米国やドバイの病院で普及しつつある RQI(Resuscitation Quality Improvement Program)システム ですね。)

ということで、この装置の病院施設での導入は諸手を挙げておすすめです。常にどこかにマネキンを置いといて、職員が気軽に立ち寄って、数分間でも練習できる環境を整えることは意味があると思います。


AHA ACLS/PALSガイドライン2018アップデート

先日、アメリカ心臓協会のACLSとPALSのガイドラインがアップデートされました。

あれ? ガイドラインって5年毎の改定じゃなかったっけ?

という方がいるかも知れませんが、2015年の改定以後は、5年毎ではなく、改定事項がまとまれば、その都度、こまめにアップデートする方針に転換しました。(参考まで、日本のJRCガイドラインは引き続き5年毎に改定するというスタンスを取っています。)

今回のガイドラインで変わったこととといえば、抗不整脈薬としてリドカインが復活したことです。

除細動が必要な心停止のアルゴリズムでは、2回目の電気ショックでもVFかpVTが続いた場合は、抗不整脈薬としてアミオダロン300mgの投与が推奨されていました。

これに対して2018 updateではリドカイン1~1.5mg/kgでも構わないとする記載が、アルゴリズム図上に追加されました。

まあ、なんてことはありません。表記上、G2005時代に戻っただけです。

もともとはガイドライン2005時代には、抗不整脈薬は何種類かの選択肢があったんです。それが、ガイドライン2010の改定で、アミオダロンの推奨レベルが上がって、アルゴリズム上の記載からはリドカインが消えました。

しかし、日本ではアミオダロン(アンカロン)がそこまで一般的な薬ではなかったので、G2010以降も臨床的には引き続きリドカインを使用していたケースも多かったと思います。

実際のところ、ガイドライン2015になっても、引き続きアミオダロンの代わりにリドカインの考慮してもよいという点も記載されていました。ですから、今回のアップデートがあっても、臨床的にはなんら変わるところはないのではないでしょうか?

 

今回、大規模試験により、リドカインのROSC率と生存入院率を向上させることが確認されたため、正式な推奨表記にリバイバルしてきたという次第です。

 

 

その他、今回のアップデートで、マグネシウムやROSC後の抗不整脈薬の使用についても記載がありましたが、結論としては従来からの変更はありませんので、ここでは触れません。

 

 

さて、皆さんが気になるのは、ACLSのテキストが改定されるの? いま、買って大丈夫? 待ったほうがいい?

ということだと思いますが、この点は心配いりません。
ACLSプロバイダーコースで使用する教材(DVD、テキスト等)は変わりません。

この点は、AHA公式のFAQでもはっきり書かれていたので大丈夫です。ご安心ください。

 

今回のアップデートの要点をまとめたハイライトが、公式日本語版としてPDFでリリースされています。

心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドラインの成人/小児の二次救命処置に対する重点的アップデート2018表紙

American Heart Association
心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドラインの
成人/小児の二次救命処置に対する重点的アップデート2018

(PDF)

 

 

その他、細かい原著情報は、AHA公式の専用ホームページ からたどってみてください。

 

 

ACLS/PALSの講習内容としてはほとんど変わりはありませんが、BLS横浜としては、講習用に新しい心停止アルゴリズムのポスターを制作しようと思っています。

 

BLS横浜 ACLSプロバイダー【1日】コース 

11月29日(木) 熊本
12月20日(木) 川崎
1月16日(水) 横浜

12月3日(月)の横浜コースは締め切っていますが、復習参加やチームメンバー参加(無料)は引き続き、参加者募集中です。

詳細 → ACLSプロバイダー【1日】コース


歯科クリニックでの外来環(AED、BVM、酸素、SpO2、血圧計)対応研修

今日は東京都内の歯科クリニックからの依頼で、患者急変対応研修を行ってきました。

歯科領域では、通称、外来環(歯科外来診療環境体制加算1)と呼ばれる保険点数加算があります。

いくつもの項目があるのですが、その中に、

 

緊急時の初期対応が可能な医療機器(AED、酸素ボンベおよび酸素マスク、血圧計、パルスオキシメーター)を設置していること。

 

という要件があり、歯科医院では、AEDを始めとした救急セットをまとめて導入するケースが増えています。

 

今回の研修も、外来環関連機材導入にあたり、歯科クリニック職員に救急対応機器の使い方を教えてほしいということで、院長先生から相談を頂いて開催に至ったものです。

バッグバルブマスクとAEDを使ったBLSであれば、通常の医療従事者向けBLSと変わらないのですが、今回は酸素ボンベと血圧計、パルスオキシメーターの使用法も含めてほしいというのがご依頼の内容。

そこで、歯科領域の急変対応では欠かせない局所麻酔によるアナフィラキシー対応を想定し、BLS+アナフィラキシー対応研修で3時間としました。

 

歯科診療中の気分不良に対して、最悪の事態であるアナフィラキシーによる気道閉塞とショックを予測した場合、なにをどう観察していくか?

 ・窒息(上気道閉塞)
 ・血圧低下(血液分布異常聖ショック)

ここで、パルスオキシメーターと血圧計の出番が出てきます。血圧計とパルスオキシメーターの使い方、またその数値判断と臨床所見からのアセスメントを説明していきました。

そしてそれらの生命危機から心停止に移行するとしたら、CPR開始の前にできることはないか?

酸素ボンベについては、残量計算は今回は省略しましたが、バルブの開ける順番や閉じる順番、マスクとカニューレ、またバッグマスクのリザーバーに対する流量設定などを、実物を使って練習していただきました。

 

 

急変対応研修というと、とかく観念的な焦点がぼやけたものになりがちなのですが、今回のように具体的に使う機器が決まっていて、その現物があり、メンバーとシチュエーションも限定されると、かなり具体的な中身に踏み込んだ講習展開ができます。

もちろん最後は、復習の歯科診療スタッフでのシミュレーション訓練で総まとめ。

119番通報の実際や救急隊への引き継ぎ、記録のとり方など、デブリーフィングの中から参加者相互気づいた点、職場としての課題が明確になり、クリニック内でいつものメンバーで行う急変対応研修ということで、実りの多い3時間となったようです。

急変対応研修というと、外部のBLSプロバイダーコースに職員を派遣するなどがありがちですが、あえて休診日のクリニック内での研修を企画された院長先生、聞いてみるともともと歯科麻酔科のご出身とのこと。

講習会場でできるようになっても、実際の現場ではわかりません。

トレーニングはあくまでもトレーニングに過ぎませんが、それでもやはりいつもの現場内でのシミュレーションの効果には期待したいところです。