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心停止の原因は不整脈だけじゃない・・循環不良、呼吸不全

病院内で急変対応研修と思われているBLSやACLSですが、実はこれらは「急変対応」というよりは、むしろ限定的な「心停止対応」です。
 
患者の様態が変化して命に関わる事態が起きたときの介入が「急変対応」ですが、数ある急変の中でBLS/ACLSは心臓が停まってからの10分間の対応がテーマ。
 
逆に言うと、心臓が停まってからしか使えない「奥の手」ともいうべき最終手段です。
 
成人に多い心臓突然死の原因となる心室細動(VF)は、前触れもなくいきなり発生することもあります。そのようなときには絶大な力を発揮するBLS/ACLSですが、必ずしも突然に心停止になるケースばかりではありません。
 
たとえば、AHA-ACLSプロバイダーマニュアルには次のように書かれています。

 

「一般に院内心停止には生理的変化の前兆がある。ある研究によると、入院患者の心肺停止では全体の80%近くで実際の心停止8時間前までに異常なバイタルサインが記録された。これらの変化の多くはバイタルサインをルーチンにモニタリングすることで見つけることができる。臨床状態の悪化や素因停止が起こる前に対処できるかもしれない」(ACLSプロバイダーマニュアルG2010版、p.17)

 
 
8割は、心臓が停まってしまう前に気づけるはず、予防できるはず!
 
ご存知のように一度心臓が停まってしまうと、予後はよくありません。
 
であるなら、心停止以前に介入するべきなのは、自然な流れです。
 
 
これまでは、基本中の基本であるはずのBLS/ACLS自体が医療現場に浸透していなかったため、まずはこの標準化から始まりました。
 
日本に本格的なBLS/ACLSが公式に始まって十年弱。
 
ACLSという言葉を聞いたことがない医療者は、もうさすがにいなくなりました。。
 
そろそろ次のステップへ、という時代に入ってきています。
 
心停止の対応は、ある意味簡単です。アルゴリズムにしたがって機械的に行動すればいいレベルまで精錬されています。
 
しかしそれ以前の急変対応というと、幅が広く、どこまでをどんな視点で含めるか、が、一本化されていないところはありますが、まず抑えておきたいのは次のような図式です。
 

心停止にいたる原因:呼吸・循環・不整脈

 
いちばん右の心原性心停止。これはいわゆるBLS→ACLSの流れです。突然起こる不整脈による心停止。
 
これに加えて、新たに考えたい心停止にいたる要因は、呼吸不全と循環不全(ショック)。
 
このふたつは予兆があり、悪化の段階があります。
 
それを早期に気づけば、心停止になるまえに食い止めることができる。
 
そのために必要なのは、循環不全であるショックと、呼吸不全の兆候と分類、重傷度の鑑別・評価を知っていることと、それぞれの段階での適切な介入=安定化を知っていること。
 
これは、本来は医療者すべてが知っているべきこと、特にベッドサイドで患者の近くにいる看護師は抑えておくべき基礎的な項目ともいえます。
 
ここを学ぶのが、AHA-PALSプロバイダーコースなのです。
 
 
PALSは Pediatric Advanced Life Support の略で、小児二次救命処置と訳されます。しかし成人のACLSとちがって、心停止に限定しない急変対応全般を扱っている点で、単なる二次救命処置に終わらない幅広さと奥深さがあります。
 

PALS-Gainen.jpg

 
小児にフォーカスされていますが、その内容は成人でも使える急変アセスメントと安定化。
 
小児は自ら症状を訴えることができない場合がありますので、その分、問診に頼らず視診、触診、聴診、バイタルサインなど、フィジカルなアセスメントが必要という点で、成人に特化したコースより観察力は鍛えられるかもしれません。
 
成人の急変アセスメントを学べる講習プログラムもあるにはあるのですが、残念ながら日本全国でくまなく受講チャンスがあるというものではありません。
 
そのため、医療者が体系だった急変対応アセスメントを学ぼうとしたら、AHA-PALSに頼るしかないというのが現状なのです。
 
小児、ということで、小児科関係の人以外はPALSに目を向けることは少ないかもしれませんが、非常にもったいない、と思います。成人しか関わらない人でもPALSから学ぶところは絶大です。新しい視野が拓ける、といっても過言ではないかもしれません。
 
これらのコースを運営している立場からすると、PALSのP(Pediatric:小児)さえついてなければ、もっと門戸が広がって、日本の医療急変対応がワンステップ先に進むチャンスなのに、と常々感じています。
 
 
ということで、心停止になってからではなく、その前での介入の重要さに気づいた方は、ぜひ小児急変対応コースから学んでみてください。
 
当会では、AHA公式講習としてPEARSとPALSを開催しています。
 
PALS
Pediatric Advanced Life Support
アセスメントから安定化、治療までをトータルで学ぶ2日コース(詳細はこちら
 
PEARS
Pediatric Emergency Assessment, Recognition, and Stabilization
気づきからアセスメントの部分をじっくり掘り下げたコース。主にナース向け。医師に引き継ぐまでの安定化までを習得する1日コース(詳細はこちら
 
 
9月中の募集はまだ若干の残席があります。ご希望の方はお早めにどうぞ。
 
 


ガイドライン2010心肺蘇生法、本日解禁

いよいよ本日、心肺蘇生法ガイドライン2010が情報解禁、発表になります。
 
少なくともヨーロッパ蘇生協会ERCは解禁時間の2010年10月18日 日本時間14:30きっかりにERC版ガイドライン2010を無料ダウンロード開始することを明言しています。
 
前回のガイドライン改定と同じパターンだと、機関誌 Resuscitation に掲載される全文がカラー版PDFでダウンロードできるようになるはずです。
 
AHA版ガイドライン2010もAHAウェブサイトで公開されると思いますが、全文公開なのかサマリーなのかはまだ不明。
 
どちらの情報も下記、本サイト内に情報をまとめてあります。
 
 
 


BLSインストラクターコース

本日は、とある大学病院でBLSインストラクターコースを開催してきました。
 
AHA BLSインストラクターコースは、アメリカ心臓協会の公認BLSインストラクター資格を取りたい人が受講するステップのひとつです。
 
アメリカ心臓協会 American Heart Association はおそらく世界でいちばん蘇生技術の普及と教育に力を入れている団体だと思います。
 
世界で事業を展開している巨大な組織ですから、インストラクター育成のためのプログラムも力が入っています。
 
インストラクター向けの教材も考え抜かれていて、世界中のどこで誰が教えても同じ質が保てるように工夫がされています。
 
そうしたインストラクター向けの教材の設計理念を理解して、その意図通りに使う方法を学ぶのがBLSインストラクターコースです。教え方の粋が詰まった方法が最大限の効率を生みます。
 
医学と教育学のバランスが絶妙で、コースで使うビデオ教材の構成のカラクリ、例えばなんで「もしもし大丈夫ですか?」からではなく、胸骨圧迫の練習からはじめるの? など、教材設計の理屈などを織り交ぜながら解説させていただきました。
 
受講された方たちが、今後AHAのインストラクターとして活動する上だけでなく、そこで身につけた「教える技術」のヒントをなにか他のことにも活かしてもらえたらなと思っています。

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