BLSヘルスケアプロバイダーコースで、よく質問されます。
「呼吸確認には何秒かけたらいいんですか?」
以前のガイドライン2005の時は、呼吸確認も脈拍確認も5秒以上10秒以内ときっちりされていたので、当然の疑問です。
ガイドライン2010になって、ヘルスケアプロバイダー向けのBLSの手順では、反応確認と呼吸確認を「ほぼ同時」に行なうことになったため、呼吸確認に要する時間がわかりにくくなっています。
結論から申しますと、呼吸確認だけに要する時間はG2010-HCPでは明示されていません。
示されているのは、反応確認と呼吸確認に要する時間が5秒以上10秒以内、ということだけです。
つまり、「大丈夫ですか?」と呼びかけてから、「誰か来て下さい!」までを10秒以内に行ないましょう、ということです。
この間に、傷病者の顔を見て反応の有無を確認し、胸から腹の動きを見て、呼吸の確認を行ないます。
反応確認に数秒は要するでしょうから、実際のところ呼吸確認の時間は5-6秒といったところでしょうか?
参考まで、テキストには書かれていませんが、2011年11月にシカゴで開かれたAHAのナショナル・ファカルティ・オリエンテーションでは、脈拍確認時にも重ねて呼吸確認を行なうことが示されていました。脈拍確認時、首もとを見つめている必要はありませんので、胸~腹を見て、改めて呼吸をしていないか見ましょう、ということです。
ということで、AHAにおいては、市民向け講習(ハートセイバーAED、ファミリー&フレンズCPR)と、プロフェッショナル向け(ヘルスケアプロバイダーコース)では、呼吸確認法と呼吸確認に要する時間の目安が異なっているため、複数コースを受講される方は、ご注意ください。
大雑把にいって、市民にとっては「反応・意識がない」というだけで一大事ですから、その時点で119番通報して、心停止の認識は、呼吸をしていない/死戦期呼吸で判断しますので、呼吸確認に専念ししっかり10秒かけて、ということだと思います。
それに対して、救命のプロや医療従事者にとっては、反応がないというだけで緊急コールをかけるのは、やや大げさというか情報不足。呼吸がない/死戦期呼吸という情報まで伝えて初めて緊急度が伝わる、ということで、反応と呼吸を併せて確認しています。
呼吸確認に要する時間はやや短めになりますが、その後、脈拍確認と併せて呼吸の再確認を行なうことで精度を補完しているとも考えられます。
実際のところ、どれくらいの秒数をかければ呼吸確認はできるのでしょうか?
講習会のときに、インストラクターが床に寝て、正常な呼吸の確認を皆さんに体験してもらうことがありますが、服の上からでも皆さんおおむね3秒~5秒くらいの間には呼吸しているのを確認できています。
速ければ1秒程度で手が上がる人もいます。
マネキンは呼吸をしていなくて当たり前。
呼吸確認は人間の実際の呼吸を見る体験をしてもらうことも重要です。
ないものをないと確信するのは難しいことです。疑心暗鬼になってしまうからです。そういった意味で10秒を越えないこと、という方が大切です。