アメリカ心臓協会の講習を受講し、合格すると発行されるプロバイダーカード。
これがなくなるという話題です。
実はこれは数年前から打ち出されていた方針で、米国ではすでにe-Cardというものに移行が始まっており、今年に入ってからはすべてのUSトレーニングセンターでe-Cardへの対応が義務付けられました。
▲ e-CardをLetterサイズに印字したバージョン
e-Cardとは何かというと、インターネットを使った電子上での資格認証制度です。
紙のカードだと紛失という問題がつきまとい、日本でも専門医申請シーズンになると、トレーニングセンターにカードの再発行依頼がかなりの数、舞い込みます。
こういったことを防ぐために、受講者はインターネット上のAHA専用サーバー内に自分の情報を登録し、そこに持っているAHAプロバイダー資格の情報が保管されるようにするのです。資格が有効期限内であれば、そのサーバーから、修了証がPDFファイルとしていつでも発行でき、それをスマートフォンの画面で提示することもできますし、プリンターで印字して、証明書として提出することも可能です。
そんな新しい資格証明システムの総称がAHAのe-Cardです。
▲ カードの形での印字も可能
このシステムのおもしろいところは、資格認証の有無と有効期限を確認できるのは、受講者本人だけではなく、病院の管理部門など、雇用者もAHAの専用サーバーにアクセスして従業員の資格をチェックできる点です。
米国の病院では、日本の医療従事者免許と同じような感じで、BLSやACLSプロバイダー資格の有無と有効期限情報を管理しています。
更新は2年毎ですから、何百人、何千人といる病院の職員の情報を更新し続けるのは、無視できないほどの煩雑さです。
そこで、このe-Cardシステムが考案されました。
従業員は事業所に対して、自分のe-Cardの固有番号(e-Card code)さえ伝えておけば、病院側はAHA専用ページから検索、確認ができますから、手間いらず、というわけです。
BLSやACLS、PALS、さらには非医療従事者であれば、CPR AEDやファーストエイドの資格取得と更新が業務上の責務となっている米国ならではの制度と言えるかと思います。
さて、日本においてですが、日本のITCに関しては、まだこの制度に移行しているところはないようです。
AHAの方針として、米国内においては紙のカードは廃止したいようですが、世界各国のITCについてはどうなるのかは未知数です。
日本においては、医療者にしても教職員や警備員などにしても、BLSやACLSなどの資格習得と更新義務は存在しません。ゆえに事業者が資格の更新を確認し続けるというタスクも存在しません。
つまり、日本ではe-Cardのメリットは、ほとんどない、というのが現状です。
受講者の立場からすると、カード紛失のリスクがなくなるというのはメリットかもしれませんが、何気にモノとしての修了カードを手にする喜びとか達成感というのが、大きいんじゃないかと思います。
それがなくなって、自分のパソコンから印刷して自分でパウチしてね、というのでは、受講のモチベーションに大きな影響を与えるのではないかと思います。(それは本来の意味からするとおかしな話ですけど)
BLS横浜は、日本医療教授システム学会AHA国際トレーニングセンターの活動拠点であると同時に、米国のナショナルトレーニングセンター American Medical Response(AMR-TC) の活動拠点でもあります。
USトレーニングセンター所轄としては、すでにe-Cardには対応しているのですが、上記のような理由からe-Cardではなく、紙媒体のプロバイダーカードを今も発行しています。
米国では紙のプロバイダーカードの発売がやがては中止されるものと聞いていますが、可能なかぎり、紙媒体のプロバイダーカード発行で対応していくつもりでいます。