エピペン注射の仕方は日米で違う!

BLS横浜では American Heart Association公式のファーストエイド講習 の中で、2008年頃よりエピペン注射の指導を行ってきました。

日本でエピペン(アドレナリン自己注射器)が薬事承認を得たのが2003年、当初はハチ刺されによるアナフィラキシーのみが適応でしたが、2006年から食物アレルギーにも適応範囲が広がり、今に至っています。去年あたりから事故が相次ぎ、今ではよく知られるようになりました。

エピペンってなに? という時代から、その指導を行なってきたので、日本の中では古参に入るかと思いますが、私たちはずっと米国の法定講習の中で教えてきたため、気づきませんでした。

どうやら、日本と米国ではエピペン注射の指導の仕方が若干違うようなのです。

この写真は、練習用エピペンの英語版と日本語版を並べて撮ったものです。

エピペン・トレーナー日米の違い

お気づきでしょうか? 注射の打ち方と、注射後に押し付けておく秒数が明らかに表現が違っています。

(米国)
・振りかぶって強く押し付ける(Swing and firmly push)
・10秒間保持(Hold on thigh 10 seconds)

(日本)
・強く押し付ける
・数秒間待つ

振りかぶって注射をするのは、前から危険だなと思っていて、当時、ガイドライン2005版のファーストエイド講習ビデオのデモンストレーション映像は、監修ミスかな、米国ゆえの大雑把さかな程度に考えていたのですが、新しくリリースされたガイドライン2010版ハートセイバー・ファーストエイドDVDでもみごとに振りかぶって注射をしています。

でも、このエピペン練習器の表記に気づいて、それは米国では正しいやり方だったのだと悟りました。(当時は旧タイプのトレーナーを使ってました)

また注射器を大腿に押し付けておく時間も、私たちはAHAのテキスト通り、10秒で教えていました。

しかし保育園や小児科クリニックで指導させていただく中で、痛がる子どもを制しつつの10秒は長すぎるよね、ということで、AHA講習以外では数秒間保持という言い方に変えるようにしていました。

実はこれも日本では公式なメーカー推奨のやり方だったことに後から気づいた次第です。

 

日本国内で他人に対してエピペン注射をできるとされているのは救急救命士を除けば、学校教職員と保育所職員。つまり注射を打つ相手は子どもに限定されています。

子ども故に怖がって暴れたり、太さ22G(ゲージ)、長さ1.5cmの針が刺さって痛いことを考えると、振りかぶると打ち損じたり、針が曲がったり、最悪折れる危険があります。また痛みを訴える中、10秒押し続けるのは困難。

そんなことはシミュレーション・トレーニングの中でも浮き彫りになってきます。

そういった意味では日本流の指導法は妥当と思います。

AHA公認講習(ハートセイバー・ファーストエイド)は、米国労働安全衛生局OSHAの労働ライセンスを発行する以上、米国流の注射の仕方で教える必要があり、そこは変更できません。特に注射時間の10秒というのは実技試験で問われている項目でもあるからです。

この点を注意しつつ、私たちは受講対象や講習の種類に合わせて、適正に指導を行なっていきたいと思っています。

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