BLS横浜が開催している「PEARS with シミュレーション」での心停止ケースシミュレーションでは、AEDを使った二次救命処置(ALS)を経験してもらっています。
病棟での心停止にAEDとバッグマスクで挑んでもらうのですが、BLSプロバイダーコースと違うのはチームメンバーの看護師が6人いるということ。そして途中から医師と電話連絡がつき、薬剤投与の口頭指示が出るという点。
PEARSでは、PALSと違って、リーダーはインストラクターが行うということになっていますので、このような体裁をとっているわけですが、ここでも重要なのは報告です。チームダイナミクスでいえば情報共有でしょうか。
ナースだけでAEDを使っているシチュエーションであれば、医師としては、AEDの解析結果が気になるところです。
つまり、除細動のショックをしたのか、それともショックは不要と言われたのか?
これによって、アルゴリズムが違ってくるからです。
AEDがショックが必要と判断したのであれば、心停止としてはおそらく心室細動(もしくは無脈性心室頻拍)です。
そして、AEDがショック不要と判断したのであれば、心停止のタイプは、無脈性電気活動もしくは心静止です。(通常はモニター波形を見て判断するところを、AEDでの蘇生ではAEDの挙動から判断する、ということです。)
ACLSにしてもPALSにしても、両者ではアルゴリズムが別です。
質の高いCPRが必要という点では同じですが、薬剤投与が違ってきますし、優先すべきもの(除細動/原因検索)も違ってきます。
ここを認識しているかどうか、というのが、この心停止シナリオでは試されるところです。
医師に対して「AEDを使いました!」という報告では不十分だというのはわかるでしょうか?
AEDを使ったというのが、パッドを装着したという動作を意味しているのか、除細動のショックをしたという意味なのか明確ではないからです。
AEDがショック判定をして除細動をしました、もしくは、ショック不要でした、をはっきり伝える必要があります。
この点を認識してもらうために、「ショック不要」設定にしたAEDトレーナーを使ってシミュレーションを行っています。
BLSはとりあえず早期除細動と質の高いCPRができればいいと思われがちですが、病院の中でのBLSはBLSでは終わりません。
そして小児に関して言えば、ショック不要と言われる無脈性電気活動のケースが多いはず。
AEDときたら、必ずショックをするものだという昨今のBLS訓練ゆえの先入観を脱却するという点でも、印象深い学習体験になるようです。