PEARSプロバイダーコース、シミュレーション・シナリオの進め方

PEARSインストラクターマニュアルには、ケースごとの詳細なシナリオシートが載っています。

AHA-PEARS(ペアーズ)プロバイダーコースのシナリオシート

顔色や呼吸様式、呼吸音、毛細血管再充満時間、バイタルサインなどは、DVDの中で動画で示されますが、血糖値や瞳孔径などの情報は、このシナリオに基づいてインストラクターが提示していきます。

シナリオにはケースの導入として、「あなたは4ヶ月の乳児の評価をしています。母親によると3日前から嘔吐を繰り返しており…」というような状況が示されるのですが、BLS横浜では、あえてこの状況提示を行わずにケースを始めることがあります。

なぜかというと、シナリオによっては、「あ、これは敗血症性ショックだな!」などと原因がミエミエなものも少なくないからです。

現実の臨床ではある程度情報があった上で、患者さんに接するのがふつうですから、私たちは常に「情報」による先入観、バイアスを持って診療にあたっています。

場合によっては、先入観ゆえに別の問題を見落とすという可能性も否定できません。

 

PEARSは臨床所見からフィジカルアセスメントをする力を鍛えるプログラムです。体系的アプローチという見落としを防ぐための標準的な評価方法を身につけるのが目的です。

そのため、臨床からすると不自然ではありますが、あえて、情報は一切提示せず、0の状態から患者を見て、臨床症状だけで体系的に判断していく練習をしてもらっています。

 

シミュレーション・トレーニングの中では、あとから家族や目撃者が駆けつけて、ようやく話が聞ける、という形で、傷病者の背景や既往などを提示しています。

ここで臨床所見からの判定と、患者背景が一致すればより方向性に確信を持てますし、場合によってはより精度を上げることができるかもしれません。

シナリオトレーニングの中では、受講者の方は「家族を呼んで!」とか「ドクター報告を!」とすぐに助けを求めますが、あえて情報は出さない。

すこし意地悪かもしれませんが、こうして、目の前の患者さんの状態だけである程度判断するという思考を身につけると、どんな場合でも強いのではないでしょうか?

バイスタンダーとしてのファーストエイドの現場は、まさにこれです。

なにが起きたのか、傷病者の状態、既往もまったくわからない。

こんなときにひるまず対峙できるのが、PEARSプロバイダーの強みだと思います。

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