ショックへのボーラス輸液で糖質液を使ってはいけない理由

AHA-PEARSプロバイダーコース におけるショック(循環不全)への介入は、輸液のボーラス投与です。

その際の注意点として、糖質液はダメ、というものがあります。

ブドウ糖を使って浸透圧を調整してある糖質液は、体内に入るとすぐにブドウ糖が代謝されて、ただの水(自由水)になってしまうからです。

そうなると、通常の水と同じ体内分布で、細胞外液としては1/3の量しか寄与しません。

その1/3のうち、血管内に留まるのは1/4と言われていますから、結果的には1000ml輸液しても、血管内に残るのはわずか83mlあまり。

 

これが糖質液が推奨されない理由です。糖質液は循環血液量を増やすには有効ではないということです。

一方、PEARSでも推奨されている等張晶質液(生理食塩水や乳酸リンゲル液など)では、電解質による浸透圧が維持されますので、細胞外液補充液として働きます。ですから全量の1/4が血管内に留まる、つまり、250mlの循環血液量上昇が望めます。

同じ総量を輸液しても、晶質液か糖質液かによって、これだけ差が出てしまうんですね。

ということで、ショックに対する初期輸液は生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)かラクテック(乳酸リンゲル液)です。

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