ハートセイバーAEDとBLSヘルスケアプロバイダーコースの違い

私どもが開催しているアメリカ心臓協会AHA公認の心肺蘇生法講習会について質問をいただきましたので、この場でも共有させていただきたいと思います。

ご質問内容は、

「BLSヘルスケアプロバイダーコースを受講すれば、ハートセイバーAED講習を受ける意味はないか?」

というものです。

一言でYes/Noで答えるのは難しく、結論としては、ご自身の必要にあったコースを選んでほしい、また医療従事者であってもハートセイバーAEDコースを受けるだけの価値はある、となるのですが、以下に、もう少し詳しく書きたいと思います。

BLSヘルスケアプロバイダーコースは、数あるAHAの一次救命処置コースの中でも俗に「AHAのBLSコース」と言われるくらいにポピュラーな代名詞的なコースです。

赤ちゃんから大人まで、あらゆる年齢層を対象とした心肺蘇生法と窒息の解除法を主に病院内を想定して、医療従事者レベルで習得します。

片やハートセイバーAEDコースは、赤ちゃんから大人まで、あらゆる年齢層を対象とした心肺蘇生法と窒息の解除法を、職場や日常生活を想定して非医療従事者レベルで習得します。

これだけ聞くと、ヘルスケアプロバイダーコースの方が高度な内容で、これさえマスターすればすべてOKという印象かも知れませんが、必ずしもそうではありません。

実のことをいうと、心肺蘇生法の基本的な実技練習量に関しては、ヘルスケアプロバイダーコース(HCP)よりハートセイバーAED(HS-AED)コースの方が多いのです。

ハートセイバーAEDコースでは、救急現場の状況が映像教材の中で沢山例示され、その中で、現場は安全か?どのように通報をするか?など、具体的に考えて練習するようになっています。

これがHCPにはない大きなポイントです。

急変現場に慣れていない人には、言葉で状況を提示するだけでは不十分で、映像教材を通してイマジネーションを膨らませて、シミュレーションをすることが大切です。それがいざというときに実戦可能な力につながっていくのです。

アメリカ心臓協会AHAのDVD教材は、その受講対象に合わせて、必要性を考慮し、また学ぶモチベーションを高めるような教育工学に基づいた教材設計になっているのです。

また、HCPは医療現場を想定していますので、バイスタンダーCPRの基本となる安全確認に関しては触れられていませんし、小児のCPRの練習はほとんど含まれていという点も大きな違いです。

そもそも受講対象が明確に違っていて、その教材設計も違っていますので、ハートセイバーAEDとヘルスケアプロバイダーコースはまったく別物と考えていただいた方がいいかもしれません。

医療従事者であっても、職場ではなく、町中でバイスタンダーとして動くためにはヘルスケアプロバイダーコースよりハートセイバーAEDコースでのトレーニングの方が実践的と言えます。

ヘルスケアプロバイダーコースはバッグバルブマスクという医療現場で使われる特殊な人工呼吸器具の使い方や、気管挿管された場合のCPR、二人法CPRなどを含むため、基本手技の練習に関してはHS-AEDの方がじっくりと練習できます。

実はどちらのコースも所要時間はほとんど変わりません。

そんなわけで、ぜひ皆さんの目的にあったコースを選んでいただけたらと思います。

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