対象別に分れたアメリカ心臓協会BLSコース

BLS-AED.net横浜では、ハワイにあるAHAトレーニングセンターと提携して、日本ではまだ公式開催されていないものも含め、アメリカ心臓協会の各種一次救命処置トレーニングプログラムを展開しています。
 
心肺蘇生法(CPR)コースとしてのレパートリーは下記の通りです。
 
 ・BLSヘルスケアプロバイダー (BLS for Healthcare Provider)
 ・ハートセイバーAED (Heartsaver AED)
 ・ファミリー&フレンズCPR (Family & Friends CPR)
 
今日は、これらの心肺蘇生法講習の違いについてご説明いたします。
 
 
まず始めにおおざっぱにお話しますと、アメリカ合衆国では心肺蘇生法CPR技術ならびにその教育プログラムを大きく次の3つに区分しています。
 
 
 1.家族や友達等親しい人に限定した心肺蘇生法
 2.職業上の責務などを含め、他人に対して行う心肺蘇生法
 3.医療従事者レベルでの心肺蘇生法
 
日本ではこのように心肺蘇生法を区別する考え方はほとんどありませんが、実は「使える心肺蘇生技術」を普及させる上では、この区分は非常に重要です。
 
理由は二つです。
 
ひとつは受講動機とモチベーションの問題。「愛する人を救いましょう」という動機付けは悪くないのですが、例えば警備員のような職種の人は、職業上の責務から急変対応が求められているわけですから、隣人愛を説いても、そこまでウェットには受け止められません。もっとドライに必要性と責任を説く方が自然でしょう。
 
もうひとつの大事なポイントは、血液や唾液などからの感染を含めた安全管理の問題があります。家族や親しい人への心肺蘇生であれば、感染という点は気にせず口対口人工呼吸が行えますが、見ず知らずの他人に蘇生をしなければいけない立場の人がマウスtoマウスの人工呼吸というのはあり得ません。(アメリカ合衆国では法律で禁止されています)
 
反対にいえば、責務として蘇生をしなければいけない人に口対口人工呼吸しか教えないとすれば、それは職務上はまったく役に立たない技術となってしまいます。そして「見ず知らずの人に口を付けるのがイヤだ」というマイナス感情を植え付けることになり、手出しをすることを躊躇させる原因ともなります。
 
 
ほんの一例を紹介しましたが、このように心肺蘇生法を教える上では、赤の他人に対して蘇生を行うことを想定しているかどうかによって、その動機付けの仕方や手技(主に人工呼吸の取り扱い)が変わってくるのです。
 
心肺蘇生法は、ただ技術を身につければいいというものではありません。
いざというときにそれを使えることが重要なのです。
 
そのためには、立場に合わせた教え方、シミュレーショントレーニングが不可欠です。
 
 
さて、こうした点を踏まえて、アメリカ心臓協会の3種類の心肺蘇生法講習の違いについて具体的にお話ししていきます。
 
 
 

◆ BLSヘルスケアプロバイダー (BLS for Healthcare Provider)

日本ではAHA-BLSといえばこのコースを指すほど、有名なプログラムです。これまで日本には市民向け講習しかなかったところに、初めてプロフェッショナル向けBLSプログラムとして導入されて爆発的に広まりました。
 
見舞客が病院の前で倒れ、たまたま居合わせた救急隊員二人が駆け寄り救助するという場面から始まります。主に医療現場(病院内)を想定しています。バイスタンダーCPRは想定外となりますので、現場の安全確認などは含まれません。
 
人工呼吸は口対口も軽く練習はしますが、メインはフェイスマスク(ポケットマスク)とバックバルブマスクです。二人法CPRも含まれますので、医療従事者以外でもチームで活動する人、例えばライフセイバーにも最適です。
 
市民の方が受講する場合、想定される状況や動機付けが不適合ですので、まったく初めての方の場合は少し注意がいるかも知れません。他の市民向け講習などを受講済みで技術向上を求めて受講される方にはBLSの最高峰としてすばらしいコースです。
 

◆ ハートセイバーAED (Heartsaver AED)

対応義務がある市民向けの講習プログラムです。職場で同僚が倒れたという導入場面から始まります。いわゆる一般市民向けとは少しニュアンスが異なります。
 
基本技術として口対口人工呼吸も練習しますが、メインとなるのはフェイスマスク(ポケットマスク)と呼ばれる感染防護具を使ったものとなります。(ビニールシート状のフェイスシールドは感染防護の役割は期待できないと言われています)日本でも意識が高い方は持ち歩いていますが、そのほか、町中に設置されたAEDと一緒に配備されていることもあります。
 
とっさの時に動けるようにということで町中での緊急事態の状況映像が沢山使われていて、「その場にあなたがいたらどうしますか?」というイメージでシミュレーショントレーニングを行う教材設計になっています。
 
心肺蘇生法の基本技術の練習という意味では、ヘルスケアプロバイダーコースより練習量が断然多く、安全確認を含めたバイスタンダーCPRを想定するなら、医療従事者が受講しても、とてもためになるコースです。
 

◆ ファミリー&フレンズCPR (Family & Friends CPR)

家族や親しい人など、身近な人を救うという明快なコンセプトで作られた一般市民向け教育プログラムです。屋外でのホームパーティーでおじいちゃんが倒れたという導入場面から始まります。感染防護については触れられていません。口対口人工呼吸だけをシンプルに教えます。
 
DVD教材のエレメントはハートセイバーAEDと同じで、CPRに最低限必要な部分だけに的を絞った内容となっています。
 
アメリカでは公的資格となる修了カード発行がありませんので、アメリカ合衆国では市民向けボランティアコースとしても教えられています。
 
映像教材のクォリティは、ハートセイバーAEDと同レベルですので、一般市民向け無料コースといっても侮ることはできません。場合によっては医療従事者向けにも、シンプルなこのコースDVDを使って基本手技を身につけてもらった後、ポケットマスクやバッグマスクを練習を独自に追加した方が柔軟性を持ったコース展開ができるかもしれません。
 
日本語教材はありませんが、独自の日本語補助資料を使って、受講者の方にストレスなく学んでいただけるように工夫して開講しています。
 

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