「ウィルダネス・ファーストエイド勉強会」

先日開催したBLS横浜オリジナル企画「ウィルダネス・ファーストエイド勉強会」のご報告です。
 
公募のオープンセミナーに、本格的な救急法を学びたいという沢山の人たちが集まってくれました。
 
バッググランドも多彩で、自動車教習所の教官、マウンテンバイクのインストラクター、元自衛隊員、元フランス外人部隊員、大学の先生、山岳ライター、救急救命士、臨床工学技士、看護学生、etc.
 
 
ウィルダネス・ファーストエイド Wilderness First Aid (WFA)とは、北米で発達した主に山岳レスキュー隊やアウトドア・ガイドなど向けの特殊な救急法のことをいいます。
 
救急車を呼んでも来ないような僻地、また医療機関にかかるまで時間がかかる場所では、いわゆる普通の救急法では対応できません。
 
町中の市民レベルの救急法と救急隊員が行う応急処置の中間あたりといったらいいでしょうか。
 
日本では医療従事者にしか教えないような、やや高度な応急処置の手順と技術を学びます。
 
しかし、それだけではありません。
 
ウィルダネス・ファーストエイドの最大の特徴は、人が生きる仕組みと死に至るメカニズムを学び、死に至る過程を食い止める方法を考えられるようにトレーニングするところにあると思います。
 
病気やケガの症状とその処置法を暗記する、というものではありません。
 
おそらく日本で知られている救急法教育の大半は「暗記もの」です。
 
そこから脱却し、みずから考え、判断できるような思考パターンに切り替える、それが今回の勉強会の最大の目標でした。
 
 
人が生きる基本原理を知り、体温、脈拍、呼吸数、呼吸パターン、皮膚の質感などから体の中で起きていることをイメージし、問題点を見つける。
 
とても半日程度で身につけられるものではありませんが、少しでも手応えを感じて貰えればと思い、企画をしました。
 
 
 
今回行ったシミュレーション・トレーニングのシナリオをひとつだけご紹介しようと思います。
 
標高3000メートルクラスの稜線上にある無人の避難小屋で雷をやり過ごしている最中、近くで落雷。直後に雷に打たれた人が小屋に運び込まれてきた。さあ、どうしますか? というもの。
 
落雷の危険ということで、まずは状況評価が問題。
 
次いでうつぶせで倒れている傷病者の評価を開始。
 
このときのポイントはうつぶせ状態の傷病者の呼吸確認をどうするか?
もし仰向けにするとしたらどうするか?
 
初期評価の段階で呼吸停止(心停止)を確認。ここで傷病者役の受講者さんからマネキンにチェンジ。CPRを開始してもらいました。
 
そしてこのシナリオ最大の問題。
 
・緊急通報をどうするか?
 
・CPRをいつまで続けるか?
 
 
結論から言ってしまいますと、この場合、ハッピーエンドには終わりません。
 
携帯電話や無線で緊急通報してもAED到着はまず間に合いません。
 
CPRを続けても、心室細動の持続時間が多少延びるだけで、根本解決にはなりません。
 
町中なら、力尽きるまで精魂込めてCPRを! というかもしれませんが、ここは山の中。救助者の体力消耗は、場合によっては救助者自身の命取りになりかねません。
 
ですからウィルダネス・ファーストエイドとして、ここで考えるべきなのは、CPRをいつやめるか、また場合によってはそもそもCPRを開始しない、という選択なのです。
 
 
このあたりは、いわゆるふつうの心肺蘇生法を学んでいる人たちにはショッキングな内容かもしれませんが、実はウィルダネスでは、心肺蘇生法はあまり意味がありません。
 
外傷性の心停止はそもそもCPRの適応外ですし、心停止後30分経過したらCPRは行わない、もしくは中止するという指標もあったりします。
 
心停止にまで行ってしまったらアウト。その前に兆候に気づいて介入するというのが基本スタンスです。
 
 
このケースからもわかるように、場所を都市部から僻地に変えただけで、前提条件ががらっと変り、救急法はまったく別のものになります。
 
既成概念を崩し、状況に合わせ自分で判断できる力を養うのがウィルダネス・ファーストエイドを学ぶ本質的な意味。
 
受講者の皆さんには、やや後味の悪い思いをさせてしまったかも知れませんが、考えるきっかけとなればと思っています。
 
 
さて、今後の展望ですが、ウィルダネス・ファーストエイドに代表される Advanced First Aid 勉強会は、今後も続けていきたいと思っています。
 
理想的には、1日ないし2日かけて、室内で基礎理論と基本手技を身につけ、最後は実際に野外に出て実践的なシミュレーション・トレーニングを行うというもの。
 
屋内講習は土日に横浜で、翌週の土曜日に葉山あたりで屋外シミュレーション、といった感じでしょうか。
 
 
 
興味がある方達は、どうぞ今後の展開にご期待ください。

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