米軍基地内、憲兵隊(警察)のファーストエイド訓練

米軍基地内で行なわれた憲兵隊のCPR/First Aidトレーニングにお邪魔してきました。
 

米軍憲兵隊のファーストエイド訓練   米軍MPのFirst Aidトレーニング

 
在日米軍基地の中は米国です。
 
軍人はもちろん、基地内で働く従業員は米国内の法律や基準が適応されます。
 
それは心肺蘇生法教育などの職場安全対策も、、、
 
空軍、海軍、陸軍によっても多少の違いはあるようですが、軍人にはヘルスケアプロバイダーレベルの心肺蘇生法スキルが求められています。
 
また基地内のカスタマーサービスや技術系職員には、対応義務のある市民救助者としてHeatsaver CPR AEDライセンスの取得と2年ごとの更新が義務付けられています。
 
半年ほど前には米空軍横田基地で行なわれた電気技士さん向けのHeartsaver CPR AEDコースの手伝いに行かせてもらいましたが、横田基地ではカード自体は2年間有効でも、実務を考えて1年毎の更新にしているそうです。
 

AHA military Training NetworkのハートセイバーCPR AEDコース修了カード
▲AHA MTNの修了カードは独自デザイン。通常のAHAカードと互換性は保障されてます

 
日本国内と違って、教える方も教わる方もどちらも正式な業務のひとつとしてAHA講習が開催されています。
 
意識の高い人が自費で外部講習を受けに行くのではなく、職業義務なのです。米軍基地内では病院や、消防、憲兵隊など、セクションごとに職員にAHAインストラクター資格を取らせて、部署内のCPR教育をしています。
 
 
さて、今回は基地内で働く憲兵隊の定期訓練として行なわれたHeartsaver First Aid CPR AEDコースでした。憲兵隊というのは軍の中の警察官。基地のゲートで警備に当たっている人たちはたいてい憲兵隊員です。
 
ユニフォームが一般兵士と同じなので、パット見ではわかりませんが、胸元の徽章をみると、Policeという文字が。
 
憲兵隊は元々は軍人と同じヘルスケアプロバイダーコースを受講させていたそうですが、パトカーにはバッグマスクを積んでいないことや、病院外での安全的に不安定な場所での活動が中心ということで、ハートセイバーコースに切り替えたという経緯があったそうです。
 
 
 
ハートセイバー・ファーストエイドコースは、G2010版から公式日本語化されて、日本国内でもチラホラと開催されるようになっていますが、コースの中身は米国職業安全衛生局OSHAの法定講習。
 
日本の救急法とは基本概念も基準も違います。それゆえに日本国内で開催する上では、法律の問題とか注意が必要なのですが、米軍基地内はまさにアメリカ。
 
注釈なしにビデオを流すだけで済むのかと思いきや、、、
 
実際のところ、米軍基地内での講習の方が複雑で、さまざまな追加説明を加えないといけないことが判明。意外な驚きでした。
 
どういうことかというと、基地内で米国人に対して救護をするときは、講習内容どおりでいいのですが、基地内にはかなりの数の日本人従業員が働いています。傷病者が日本人の場合は扱いが違ってくるようなのです。
 
例えば救急車を呼ぶ場合でも、米国人なら基地内の病院へ救急要請を行います。しかし日本人の場合は、基地の外から日本の救急車を呼ぶことになるとのこと。しかし日本人であっても軍人の配偶者の場合は、119番ではなく、基地内の病院へ。
 
さらにゲートを一歩出ればそこは日本。プライベートで基地の外にいるときに、どこまでやってよくて、どれはしたらいけないのか、などふたつの基準を学ばなくてはいけない。そんな複雑さがあるようでした。
 
受講者からの質問もそんなところに集中していました。
 
「自分たちは基地の中ではエピペンを使えるけど、ゲートを出たらダメなのか?」とか。
 
日米の細かい法律の違いや、エピペンの扱い方などを含めて説明するには、インストラクターにも普通以上の勉強が求められる、そんなことを感じました。
 

米軍パトカー内に配備された個人用感染防護具PPEキット  日本ではあまり見ないCPR練習マネキン

 
 
ハートセイバーコースは、職業上、蘇生や応急救護を行なう必要がある人向けのプログラム。
 
憲兵隊、つまり警察官はもちろんそれに該当します。
 
講習の最初に、救助者の責任や血液感染への理解や、安全確保についての単元があるのですが、このあたりは日本の講習ではあまり見られない真剣で現実的なやり取りが見られました。
 
「制服を着た憲兵隊である皆さんには、手を出さないという選択肢はありません。そして一定の責任が生じるのです」
 
そんな前置きに大きくうなづく隊員たち。
 
本来のハートセイバーコースはこういうものなんだよなという点に感動でした。
 
 
話は飛びますが、数ヶ月前に、日本の警察官が不適切な応急手当をした結果、低酸素脳症で命を落としたという事件の判決がでました。1億2千万円の賠償金の支払を求める最高裁判決でした。
 
日本の警察官も救急法を勉強していないわけではありません。少なくとも就職直後の警察学校時代にはなんかしらの教育は受けているはずです。
 
しかし、心肺蘇生法は運動スキルですから、使わなければ、もしくは練習をしなければ半年もしたら完全に忘れてしまいます。また救急法の知識もしかり。しかも心肺蘇生法もファーストエイドも5年ごとに見直しが行なわれて、変わっていきます。特にファーストエイドはもともと医学的根拠が少ない分野ですから、5年ごとにころころと変わります。
 
つまり、救急法訓練は定期的にアップデートしなければ使えないのです。
 
もしかしたら、昔の救急法では、けいれん発作を起こした人には口に何かを入れて舌を噛まないようにと教えていたかもしれません。しかし、いま、それは完全に否定されています。
 
昔の知識、今となっては間違った情報を信じて、その通り行なって招いた不慮の事態。加害者にとっても被害者にとっても残念な事態としかいえません。
 
だから、救急法訓練は常に最新のものを受講し、更新し続けなければいけないのです。
 
今回、米国の警察官(憲兵隊)の訓練に立ち会わせてもらって、日本に足りない救命意識、特に職業上の責務としての救護の法制化の意義を改めて考えさせられました。
 
 

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