心室細動/無脈性心室頻拍の薬剤投与のタイミング

ACLSプロバイダーコースを開催していると、受講者の皆さんはどうしても薬剤投与のタイミングがどうしても引っかかるようです。

ACLSプロバイダーコースの心室細動VF/無脈性VTの練習場面では、恐らく3回の除細動をすることになります。その間のアドレナリン投与のタイミングの考え方は下記のとおりです。

「VFに対する根本的治療は除細動であるため、除細動とCPRが奏功せずにVFまたは無脈性VTが持続する場合に限り、血管収縮薬および抗不整脈薬を投与すべきである」(ACLS EPマニュアル・リソーステキスト, p.85)

除細動だけでも心室細動からROSCする

つまり、心室細動は、除細動で戻るときは1発で戻るので、その結果がわかるまでの2分間は薬剤投与は行わない、というのが原点です。余計なことはしない、というファーストエイドの基本的な考え方と同じです。

1回目の除細動から2分後に心電図解析をしたときにまだVFが続いていれば、除細動に加えて血管収縮薬(アドレナリン)を使います。ただし、行動として優先すべきは、除細動のショックとCPRを遅らせないこと。アドレナリンはあくまでも”添え物”です。

心室細動から自己心拍再開(ROSC)への機序を考えてみれば、この点は自明です。

心室細動、つまり心臓の痙攣状態を停める唯一の方法が電気ショック、除細動です。

アドレナリンはどんな役割をしているかというと、除細動により脱分極した後の心臓への作用を期待しています。

除細動で脱分極した心臓は、心静止になっているか、その後、心臓にエネルギーが残っていれば自動能で心拍が再開します。

しかし心拍が再開したとしても当初は血圧が低く、脈拍触知できるレベルではありません。つまり無脈姓電気活動(PEA)の状態です・

だからこそ、血管収縮させて心収縮力(陽性変力作用)と心拍数増大(陽性変時作用)のあるアドレナリンに期待をするわけです。

薬剤は2回目の電気ショックの後に投与する

初回の除細動の結果がわかるのは2分後の解析です。

そこでまだVFが続いていれば、難治性VFと考えて、除細動に加えて抗不整脈薬を考慮します。ただし、行動として優先すべきは、除細動のショックとCPRを遅らせないこと!

つまり、まとめると

1回目:ショック
2回目:ショック その後に血管収縮薬投与
3回目:ショック その後に抗不整脈薬投与

と心室細動の難治度のレベルが上がっていく感じです。

ACLSの薬剤投与のタイミング

大事なことは、蘇生にエビデンスがあるのは早期除細動と質の高いCPRで、薬剤の優位性はずっと低いという点です。

この基本的な考え方を理解していれば、タイミングでそうひどく迷うことは少ないのではないでしょうか?

※イラストでは、リズムチェックの位置がすこし後ろにずれています。スミマセン。

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