「大丈夫ですか?」 傷病者への声かけの仕方を考える

「大丈夫ですか?」

救命法講習ではおなじみの第一声ですが、この意味について少し取り上げてみようと思います。

意識ではなく、反応の確認

心停止を想定したBLS系の講習では「反応の有無」を見るために、肩を叩くなどの刺激をしながら、「大丈夫ですか?」などと声を掛けるように教えています。

これは「反応の有無」の確認であり、「意識」の確認ではありません。

このケースでは、意識はなくても、反応があれば「よし」と考えるからです。つまり生きている最低限の証拠があればいい、ということです。

意識という言葉の定義にこだわるとややこしくなりますが、簡単に言えば、呼びかけに返事がなく、意識がないと判断される状況でも、刺激に対して顔をしかめるとか、口を開こうとするとか、なんかしらのリアクションが返ってくれば、死んではいない、と判断できる、と考えます。

心停止が想定される状況の中で、反応の有無を確認するのであれば、呼びかけの内容はなんでもいいと思います。

 
「大丈夫ですか?」
「わかりますか?」
「どうしましたか?」
 

反応(リアクション)を誘発するような文言と刺激であればなんでもいいわけです。(両肩を叩くとか、片方だけでかまわないとか、額に手を当ててとか、そのあたりはエビデンスはなにもないです)

ファーストエイド対応における声掛けは?

「呼びかけの仕方はなんでもいい。」

心肺停止状態が想起されるような状態であれば、そう言えますが、明らかに生きている状態、特に会話やリアクションが得られそうな状況における声掛けになると、もう少し考えた方がいいかもしれません。

よく言われることは、

「大丈夫ですか?」

という声かけは良くないのではないか? という点。

大丈夫です、という根拠のない拒絶を誘発しないために

皆さんが、もし繁華街で転んでしまった場合を想像してみてください。足をくじいて痛い。そこに知らない人から「大丈夫ですか?」と声をかけられたら、反射的に「大丈夫です」と答えませんか?

本当に大丈夫かどうかは別として、ある程度意識がある一般的な日本人なら、他人に迷惑をかけたくない、もしくは恥ずかしい、という思いから、大丈夫と答えるケースが圧倒的かと思います。

大丈夫、という言葉には、軽く拒絶の意味があります。それを誘発するような声掛けは、救助者側の本意からするとあまりよくないのでは、ということです。

じゃ、なんて言う?

「大丈夫ですか?」と声をかける側は、大丈夫じゃないと思って声をかけるわけですから、言い方は工夫したほうがいいかもしれません。

この点、英語での言い回しはよくできているなと思います。

 
May I help you?
 

直訳すると、お手伝いをしていいですか? といった感じでしょうか?

手助けする許可を得るという態度。これは応急救護の基本マインドとして、大事な点だと思います。

押し付けではなく、あくまでも一人の人間としての傷病者の意思を尊重するというスタンスです。

日本語でいうなら、「どうしましたか? 手を貸しましょうか?」といった感じでしょうか?

相手の状況によるでしょうけど、

「お困りのようですが、なにかできることはありますか?」

など、普通の会話としてケースバイケースで変わっていくはずです。

自己紹介は大事!

ただ、やっぱりいきなり知らない人に声を掛けられれば、遠慮が生じるのが日本人ですから、そのハードルを下げるために必要なのが、自己紹介かなと思います。

医療従事者であることを名乗れば、安心して頼ってくれるケースが多いですし、AHAハートセイバー・ファーストエイドコース では、ファーストエイドプロバイダーであることを名乗るように教えています。

英語圏では、ファーストエイド・プロバイダーと言えば通じますが、日本だと、しっくりくる言い回しがないのが残念なところです。

 

「ファーストエイドの訓練を受けています」
 
「応急手当の心得があります」

 

日本語としては、いまいちですが、なにかしらの自己紹介はしたほうがいいでしょう。

せめて、名前を名乗ることで、怪しいものではない、というPRは必須かと思います。

 
ということで、傷病者へのファーストタッチである声掛けについて、BLS(心停止)前提とファーストエイド前提の違いで考えてみました。

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