今度 ACLSプロバイダーコース を受講予定の方からご質問を頂きました。無脈性電気活動(PEA)についてです。
PEA はなかなか飲み込みが難しいところなので、質問とその回答を皆様にもシェアします。
Q1.無脈性電気活動(PEA)は心肺蘇生に加えて、根本的な原因治療を同時並行しないと救命は難しいのか?
テキスト38ページからの、ACLS一次サーベイと二次サーベイのあたりをよく考えていただくとわかるかもしれません。
結論から言うと、PEAの原因によります。例えば心停止の原因が低酸素なら、一次サーベイ(もしくはその手前のBLS)の時点で、 CPR によって酸素化されれば自己心拍再開 ROSC する可能性が考えられますよね?
また原因が循環血液量減少なら、BLSでは無理でも、ACLS一次サーベイで、アドレナリン投与により血圧が上がって ROSC が見られるかもしれません。
しかし、例えば、原因が気胸なら、脱気しないとたぶん無理です。
このように、「生理学的安定を図る一次サーベイをきっちりやる。それでも ROSC の兆しがなければ二次サーベイで CPR を続けならが原因を探る。原因が特定できて対処を打てれば助かるかも」と理解してはどうでしょうか?
Q2.原因検索は、胸骨圧迫しながらエコーやX-Pを撮るということでしょうか? 救命の現場で実際行えるのでしょうか?
ここが、G2015の改定でACLSを一次と二次に明確に切り分けたポイントかなと思います。
一次介入をせずに、二次介入で原因検索に注力するのは本末転倒です。質の高い CPR を中断してまで原因検索の検査を実施する価値があるかどうか吟味する必要があります。
例えば、胸部不快感から心停止になった人に、胸骨圧迫を停めてまで12誘導心電図をとって梗塞部位がわかったとして、メリットがあるかどうか? 梗塞部位がわかったとしても ROSC しなければ、その後の治療には繋がりません。
胸骨圧迫を停めずにできる検査ということになります。
この原因検索の実際については、ACLSプロバイダーマニュアルにはほとんど記載がありませんが、実は学習範囲外であるという点もご承知おきください。原因検索の詳細と実際は、ACLS-EPコースという上級コースで学ぶことになっています。
ACLSプロバイダーコースの合否に関して言えば、原因を特定する必要はなく、いつまでも CPR とアドレナリン投与を続けるのではなく、原因を探る方向に意識が向いて、その言及があれば OK となっています。
Q3.PEA のアルゴリズムを行っているだけで自己心拍の再開はないのでしょうか?
できる場合もあります。先ほど循環血液量減少を例に上げましたが、たいていの場合の PEA は、循環不全 → ショック → 血圧低下 → PEA → 心静止という流れになります。
発見時、血圧がゼロではなく、低すぎて触知できないだけのこともありますので、そこにアドレナリンを投与すれば血圧が上がって脈が感じられる可能性があります。