心停止の判断に迷う必要はない

心臓が動いているときに胸骨圧迫(心臓マッサージ)をしてはいけない、そんなイメージがあるかもしれません。

しかしそんなことはありません。

実際のところ、動いている心臓に対しての胸骨圧迫は割とふつうに行われています。

胸骨圧迫心臓マッサージ開始と心停止判断

脈なし=心停止、ではなく低血圧

医療者向けのプロトコルで言えば、胸骨圧迫を始める基準は、

1.反応なし
2.呼吸なし or 死戦期呼吸
3.脈なし

です。

脈なし、というのは頸動脈触知で10秒以内に確実な脈拍を確認できない場合をいいます。

よく聴く話で、撓骨動脈を触知できれば収縮期血圧80mmHg以上、頸動脈で脈拍を触れれば60mmHgはある、なんていいます。

ということは、血圧50mmHgだと頸動脈が触れない、つまり「心停止」ということになります。

心停止の中でも無脈性電気活動(PEA)の人は、実際のところ、心停止というよりは脈が触れるほどの血圧がない(超低血圧)場合が多いことでしょう。

このことを理解しておけば、胸骨圧迫をしていいかどうか不必要に迷う必要はなくなるのではないでしょうか?

「本当の心停止じゃなかったらどうしよう?」

そんなことで迷うのはナンセンス。10秒で確かな脈拍が触知できなかったのであれば、少なくともかなり血圧が低いわけで、循環の補助という意味で胸骨圧迫をするべきなのです。

停まった心臓を動かす、というよりは、低灌流を是正するために補助循環をする、と理解するといいと思います。

市民向けプロトコルではなおさら

市民向けの手順の場合、胸骨圧迫の開始は「反応なし+普段どおりの呼吸ではない」となります。

脈拍触知が入っていませんから、呼吸停止ケース(心臓は動いている)でも胸骨圧迫開始となります。

つまり、胸骨圧迫を始めるのに、本当に心停止しているかどうかはあまり問題ではないのです。

迷ったら胸を押せ、が正解です。

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