ラーメンとか、しょっぱいものを食べると喉が渇くのはなぜでしょう?
考えたことありますか?
体の中の塩分濃度が高くなりすぎたのを検知し、血液を薄めるための人体の自然の働きとして、喉が乾いて水分摂取を促す。
このように、人間の体は体内環境を一定に保つ力を持っています。これをホメオスタシス(恒常性)といいます。
人間の体は、バランスが崩れると、それを補正するような自然の回復力を持っている。この理解が医療でもファーストエイドでも大切です。
それでは例題です。
おもいっきり走ると、胸がドキドキして、息がハァハァするのはなぜ?
走ると、筋肉の酸素消費量が増えて、体全体で酸素不足になる。それを補正するために、酸素を沢山取り込んで体中に送る循環機能を強化するように脳が指令をだす。ゆえに呼吸回数が速くなり、心拍数が上がる。
というわけです。
これを逆に考えてみましょう。
激しい運動をしたわけでもないに、呼吸数が速くなって、心拍数が上がっていたら?
体の中で、なんらかの原因で酸素不足が発生しているかもしれない。
なんで酸素不足? 酸素を取り込む肺とか気道(呼吸器系)に問題がある?
血液に溶け込んだ酸素を運搬する心臓や血液(循環器系)に問題がある?
そんなふうに考えていくわけです。
呼吸はやや速いけど、がんばって息を吸っているようではないし、ゼイゼイするような異常音もない。呼吸の問題ではないのかな? 2日前から下痢が続いていて、すぐに吐いてしまって食べ物、水もほとんど取れていないってことは、、、
やっぱり酸素を運搬する血液の量が足りなくなっていると考えていいのかな? 体の水不足、いわゆる脱水?
このように人間の根本的な仕組みを理解していると、病気やケガのときに体で起こる反応の意味と程度を理解できる場合があります。
ただ、実際はそんな単純なものではなく、心拍数があがるような原因はたくさんあります。例えば、緊張やびっくりしても心拍数は上がりますし、熱があって体温が上がっても心拍数が高くなることがあります。
そんな呼吸数と心拍数に関わるファクターをチェックしていって、いろんな可能性を除外し、最後に残る原因はなにかなと考えていく。
これが、PEARS や PALS、Advanced First Aid で学ぶ体系的評価、ないしは傷病者評価の考え方です。
BLS や ACLS と違って、PEARS やファーストエイドは、手順(アルゴリズム)を覚える、というようなものではありません。
考え方を理解する、それが肝要です。
一次救命処置、二次救命処置の勉強の流れで、PEARSやPALS、ファーストエイドに入ってくると、このギャップに戸惑う方が多いように感じます。
答えを求めてしまうんですね。
PEARS やファーストエイドでは、明確な答えはありません。どうしてもモヤモヤ感は残ります。
答えを求めるのではなく、答えに近づくための考え方を訓練するプログラムと考えていただけたらと思います。
現実、人間の体って、そんなすっきり割り切れるものではありませんから。