カプノグラムで表示される呼気終末二酸化炭素濃度(EtCO2)の基準値は一般に35-45mmHg。
日頃、人工呼吸器管理の患者さんの換気量はこのあたりを基準に調整しているかと思います。

循環が正常な場合の呼気終末二酸化炭素濃度 EtCO2
しかし、心停止中に気管挿管した場合のEtCO2基準値は「10mmHg以上」となります。
しかも、心停止中の二酸化炭素濃度は、換気ではなく循環の指標となる点に注意が必要です。
蘇生中に気管挿管してカプノグラムをつけたとき、EtCO2の値が 10 mmHg に満たない場合は胸骨圧迫の質の改善が必要です。例えば「もっと強く押して!」というように。

CPR中のEtCO2が10mmHg未満の場合は胸骨圧迫が有効ではない
なぜCO2排出量で胸骨圧迫の質が評価できるの?
体内でCO2が発生するのはどこか? そしてそれが呼気として吐き出されるまでの流れをイメージしてみてください。
CO2が発生するのは細胞。各組織細胞でエネルギー産生の副産物として生成された二酸化炭素は血流に乗って肺に運ばれていきます。そして呼気として排出されます。
つまり、血流が悪いと二酸化炭素の排出量が少なくなる、というのはご理解いただけるかと思います。
生きているときは心臓の動き(循環)が固定因子となるため、換気量が変動因子となります。だから、人工呼吸器管理の患者さんのCO2が逸脱した場合は換気量を調整するわけです。
しかし、心停止中は胸骨圧迫で血流を生み出している状態で不安定、かつCO2排出の影響力としては換気量より循環による部分の方が大きい。
そのため心停止中にはCO2は循環(胸骨圧迫)の指標として使えるとされています。
基準値がなぜ違うのか?
生きているとき:35−45mmHg
心停止(蘇生中):10−15mmHg(PALSの場合)
蘇生科学で言われている点として、心停止のときの血流は通常の1/4〜1/3程度とされています。
胸骨圧迫によって発生する血流量は通常の1/4であるならば、排出されるCO2の値も正常時の1/4で良しとされていると考えれば納得できるのではないでしょうか?
ACLSプロバイダーコースではCO2の基準値が2つ出てきて、その評価結果の行動も違ってきます。
ROSC後など呼吸停止ケース:CO2値が低ければバッグマスクのもみ加減を弱める
心停止中:CO2値が低ければ胸骨圧迫の力を強くする
シミュレーションでも、このふたつをよく混同した動きになりがちなのでご注意ください。