アメリカ心臓協会AHAの小児急変対応コース、PEARS Providerコースが終了しました。
日本では数ヶ所でしか開催されていない希少なコースに、京都、秋田、愛知と全国から受講生が集まってくれました。
PALSインストラクターの他、日本ではたった2人しかいないPEARSを専門とするインストラクターも集まり、盛況のうちに終了しました。
アメリカ心臓協会の講習会といえば、BLSやACLSのように体を動かして勢いで乗り切るようなイメージがありますが、このPEARSコースはとても静的。
DVD教材で敗血症性ショックや、呼吸不全に陥った具合の悪そうな子どもたちの動画を見て、その呼吸状態や皮膚の色などから病態を判断して、分類し、安定化の方法を考えるという訓練を繰り返します。
映像で出てくる患者さんは子どもばかりで、病態も子どもにありがちな呼吸系のトラブルが多かったりしますが、このコースで学ぶ本質は小児救急・小児看護に限ったことではありません。
具合を悪そうな人を見たときに、まず何を観察して、どう緊急度を判断していくか、というのはすべての医療従事者に必要な基本スキルです。
しかし日本の医療教育の中では、それを体系的に学ぶ機会がありません。
そういった意味で、このAHA-PEARSプロバイダーコースは、日本では足りない医療者基礎教育の一端を担うといって過言ではないと思います。
BLSとACLSで患者急変対応は万事OKという雰囲気が日本にはありますが、なにより大切なのは心停止になってしまう前にいかに早く急変に気づき、心停止の手前で食い止めることにあります。
病院で発生する心停止の多くは、その8時間まえには何らかの兆候がでていると言われています。
「なにかおかしいぞ!」という気づきをいかに活かすか、それを学ぶのがPEARSプロバイダーコースで、もしかしたらBLSやACLS以前の、医療者の日常業務に一番必要な教育プログラムといっていいかもしれません。
万が一のためのBLSとACLS。普段使いのPEARS、と言ったらいいでしょうか。