PEARS/PALS(小児救命)一覧

PEARS®プロバイダースキルは、看護師としての基礎能力(not 小児専門)

AHA-PEARSペアーズプロバイダーコースは成人患者にも使える生命危機アセスメントを学びます

アメリカ心臓協会のPEARS®プロバイダーコースの”P”は、Pediatric、つまり小児の意味ですが、そこで学ぶ内容を小児領域に限定してしまうのは、あまりにもったいない、というのがBLS横浜のスタンスです。

BLSやACLSは、看護師の世界でもそこそこ普及してきましたが、これらはあくまでの心臓が停まってからの対応。

 
ACLSプロバイダーコースでも言われているように、成人の領域でも、病院内での心停止の8割は、呼吸不全か循環不全のなれの果てであり、突発的なものではないという話が確立しています。

急変対応というと、CPRとAEDというイメージですが、病院内においては、AEDが「ショックが必要です」と判断するのはたった2割しかないという現実。

病院内の救急対応が、心原性心停止だけというのは、あまりにバランスの悪い話と言わざるを得ません。

 
 

つまり、病院職員における急変対応は心停止からでは遅いのです。

心停止の8割には予兆があると言われています。

その予兆の多くは、バイタルサインの変化として現れます。

生から死に急速に向かう場合、体の中で何が起きているのか、どんな症状として現れるのか?

それがわかれば、死の兆候に気づいて、手が打てます。

その手法を学ぶのが、PEARS®プロバイダーコース です。

 

成人領域で、そんな学習プログラムがあればいいのですが、残念ながらAHAは作らない(作れない?)と言っています。

頻度の差こそあれ、人が命を落とす原因は大人も子どもも基本は同じです。

そこで、ベットサイドにいて、患者の異変に気づける立場の看護職の皆さんには、診療科を問わず、PEARS®で、人が生きるしくみと死ぬしくみをきちんと学び、考える力、アセスメント力を鍛えることをおすすめしています。

PEARS®プロバイダーコースでどんなことを学ぶのか、興味をもってくださった皆様は、ぜひブログのPEARS®/小児救急関連の過去記事をご覧ください。

 

ブログカテゴリー
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PEARS2015日本語インストラクターマニュアル修正

日本語版DVDを使って開催するPEARSプロバイダーコースに修正がありました。

インストラクターマニュアルに修正され、症例映像の解釈が変わりました。

これに伴い、筆記試験の正誤に関しても変更がなされています。

G2015日本語版を新規に受講いただく方には、問題はありませんが、過去にG2015版を受講し、試験を受けた経験がある方が復習参加や再受講された場合は、映像は同じでも、試験問題内容と答えが前回と違っている部分がありますので、ご留意ください。

なお、英語版DVDを使うコースに関しては、今回の修正は適応されず、旧来のままです。

BLS横浜の講習に復習参加された方で、この点、疑問があればインストラクターに個別にお尋ねいただけますようお願いいたします。


新PEARS®プロバイダーコース(G2015)雑感

小児急変対応 PEARS®プロバイダーコース が刷新され、新しいG2015日本語DVDを使った講習もだいぶ浸透してきました。

DVDが英語から日本語吹き替え版になってわかりやすくなったのですが、英語だとあんなにゆっくりなのが日本語に置き換えるとひどく早口だったりして、なかなか難しいですね。

PEARS®コースの中身自体は、人が生きるしくみの根源な話なので、蘇生ガイドラインが変わっても大きく変わったことはないのですが、新コースになって、使われる症例映像が変わりましたし、説明の流れも変更されました。

また、筆記試験で問われるポイントが変わったり、受講しての印象はやや違ってきているかもしれません。

 

全体的な傾向としては、呼吸のトラブルから心拍数が落ちていって命を落とす小児に多い呼吸原性心停止のしくみをきっちり理解することが求められる点、また治療介入で使う薬剤の話も以前よりは求められるように思います。

 

映像でのケース症例は、前回のG2010英語版に比べると減ってしまっているのが残念です。

オプションとして、窒息解除や心原性ショックの話が入ってきた反面、なぜか呼吸調整機能障害については、非常に浅くなってしまいました。

呼吸調整機能障害は、ケースディスカッションでは省略されて、ちょっとした解説だけであっさり終わってしまうので、事前学習でしっかり勉強しておきたいところです。

 

また、これまでのPEARS®では、血圧や酸素飽和度など、モニター上の数値情報をあてにしすぎるなと言う点がかなり強調されていたのですが、今回のG2015版では弱くなってしまったのが残念です。

酸素飽和度の理解については、以前のブログ記事でも解説しているので、これからPEARS®を学ばれる方は、ぜひ目を通してみてください。

パルスオキシメーターは、いざというときは、あてにならない
https://blog.bls.yokohama/archives/4189.html


PEARS®プロバイダーコース、G2015日本語版に移行しました

今日は「PEARS®プロバイダーコースwithシミュレーション」でした。

写真のDVD画面を見て分かる通り、AHAガイドライン2015正式日本語版です。



今月に発売されたばかりの新しい PEARS®コースDVD を使っての初公募講習になります。

ガイドライン改定によって、サイエンス的に変わったところはほとんどありませんが、コース設計としては、安定化の後の治療にも少し踏み込んできたのかなという印象があります。

また、これまでは省略が許されていたシミュレーションやスキルステーション(酸素マスクや輸液器具の使い方実習)も必須化されたので、これでようやく日本全国のPEARS®が統一されることになりそうです。

BLS横浜では、シミュレーション省略形のPEARSと区別するために、あえて「Sim-PEARS®」とか「PEARS ®withシミュレーション」という言い方をしてきましたが、今後はその必要もなくなりそうです。

今はどの団体も新コースに向けて移行作業中かと思います。AHAの慣例では、新教材が揃ってから移行期間は60日とされていますから、遅くとも年明けには、日本全国のPEARS®プロバイダーコースが完全にG2015正式版に切り替わることと思います。



これまで、BLS横浜でPEARS®を受講してくださった方は、新コース移行後も、資格の有効期限内であれば復習参加は無料です。

昨日も1名、復習参加の方が来てくださいましたが、BLSスキルステーションもシミュレーションも一般受講の方とまったく同じに、体験していただきました。(遠隔地での開催の場合は、見学のみになる場合もあります。)

新しいDVDでの学びを体感したい方は、資格有効期限内に、無料復習参加にぜひいらしてください。




PEARSから学ぶ臨床推論 – 仮説演繹法とは?

先週は、長野の松本と静岡の浜松、2箇所での出張 PEARSプロバイダーコース でした。

PEARSプロバイダーコースは、看護師のための心停止予防研修ですが、急変対応に限らず、仮説演繹法という臨床推論の考え方を体験できるという点で、論理的な思考のトレーニングとしてもおもしろいプログラムです。

臨床推論というと、一般的には医師の診断プロセスの一つです。

看護師教育の中にも、「看護過程」とか「看護診断」という形で、論理思考プロセスが入っているのですが、お作法として形骸化して現実的にはあまり科学的な思考過程という捉え方での訓練にはなっていないのが現状です。

そこでPEARSに触れることで、臨床推論という考え方を初めて知ったという看護師さんが多い気がします。

仮説演繹法とは、PEARSの場合だと、心停止に至りかねない危険な状況を、呼吸器系4パターン、循環器系2パターンのどれかであると仮定して推理を進めていきます。

例えば、異常な呼吸様式を見たとき、「呻吟がある」、「呼気延長がある」と判断したとしましょう。
この情報から、肺組織疾患(肺炎や肺水腫)か、下気道閉塞(喘息や細気管支炎)があるという仮説を立てます。

この仮説を証明していこうというのが仮説演繹法の考え方です。

PEARSの体系的アプローチではこの後に聴診をすることになるのですが、肺組織疾患があるなら、ラ音(断続性の副雑音)が聞かれるという予測が立ちます。また下気道閉塞であれば、呼気性喘鳴が聞かれるのでは? という予測が立ちます。

このように、症状などから早期に予測を立てて、もしそうであれば、こういった兆候があるはずだ、という仮説を検証していく思考プロセスが仮説演繹法と呼ばれます。

この場合、漫然と聴診器を当てるのではなく、こんな音が聞かれるはずだ、と意識をすることで、微妙な音の違いに敏感になれ、見落としを防ぐこともできるかもしれません。

経過観察をする、というと、◯◯がある、ということを探すというイメージが強いですが、臨床推論の中でも仮説演繹法に立てば、◯◯がない、ということを確認することに意味があったりします。

仮説を否定する作業。否定できた先には安心が待っています。

このような臨床推論の考え方を実践し、その意義を体感できるという点で、PEARSはすべての看護職にとって意義のあるプログラムだと考えています。

BLS横浜では、小児とか急変対応とか、末端的なことに限らず、考え方を鍛えるトレーニングとしてPEARSを位置づけています。


小児の人工呼吸比率、15:2 を深掘りする

今から書く話は、主に医療従事者向けのBLSプロトコルです。市民向け救命法とは別の話なので、ご注意下さい。

さて、ヘルスケアプロバイダー(医療従事者や救命のプロ)向けの心肺蘇生法の中では、小児に関しては、30:2 ではなく、15:2 という胸骨圧迫と人工呼吸の比率がでてきます。

これはAHAガイドラインでは、思春期未満の子どもに対する二人法CPRの場合の圧迫対換気比です。

今日は、この 15:2 に着目して、掘り下げていってみようと思います。

小児の心停止の原因と、代謝による酸素消費量

まず、そもそも 30:2 に較べて、15:2 という胸骨圧迫と人工呼吸比率のメリットはなんでしょうか?

肺に送り込まれる空気の量が多い。

ということですよね。

そして、この比率が適応されるのは小児・乳児の場合だけです。

なぜ、子どもの場合は、人工呼吸の送気が多いのか?

理由は、皆さん、わかりますよね?

BLSコースのDVDでも言っているように、子どもの心停止の原因として呼吸のトラブルが多いからです。

BLSプロバイダーマニュアルG2015では、52ページに、「乳児や小児が心停止を起こした場合は、呼吸不全またはショックが認められ、心停止に至る前から血中の酸素濃度が低下していることが多い」と書かれているとおりです。

その他の理由としては、PALSプロバイダーマニュアルにヒントがあります。

その114ページには次のように書かれています。

 

「小児は代謝率が高いため、体重1kgあたりの酸素需要量が多い。乳児の酸素消費量は6~8ml/kg/分であり、成人の3~4ml/kg/分よりも多い。」

 

子どもは大人に較べて、酸素の消費量が多いから、人工呼吸の比率が成人より高い、ということです。

このような理由から、子どもは酸素の供給量を上げてあげようということで、15:2 という比率が採用されています。

15:2 のメリット、デメリット

ここまでは納得いただけるかと思いますが、よく考えると、さらなる疑問が湧いてきます。

子どもの場合であっても、救助者が一人のときは大人と同じ 30:2 とされている。酸素の消費量が多いのが理由であれば、救助者人数で違ってくるのはおかしいのでは?

この点は、皆さんはどう考えるでしょうか?

 

ここは単純な小児の生理学だけの問題ではなさそうですね。

そこで、30:2 と 15:2 で何が違うのかを改めて考えてみると、、、

15:2 の方が胸骨圧迫の中断時間が長い、という見方もできませんか?

そうなんです。15:2 のデメリットは、胸骨圧迫の中断時間が多いため、累積で考えると、圧迫によって生まれる血流量が少ないとも言えます。

換気回数は多いため、肺胞に到達する空気(酸素)の量は多いですが、その後の組織への酸素運搬を司る血流量が少なければ、結局、心筋細胞や脳細胞へ到達する酸素量で考えたらマイナスになってしまう。これが 15:2 のデメリットです。

ましてや、一人法ですから、胸骨圧迫を終えたら、感染防護具を手にして、頭部後屈顎先挙上をし直してからの送気です。これには 10 秒弱がかかってしまいます。

一人法では胸骨圧迫の中断が長くなる

しかし、二人法の場合を考えてみて下さい。

胸骨圧迫の間、バッグマスクを顔に密着させて気道確保して構えているわけですから、15回の圧迫が終わったらすかさず送気。そうすれば中断時間 3-4 秒程度ですぐに血流を再開することができます。

つまり、一人法で 15:2 で実施した場合は、血液の酸素化までは良くても、その後の血流が低下するために組織への酸素化を考えたら効率が悪い。救助者二人で、圧迫と換気を分担した場合に限り、血液の酸素化と組織への酸素化が有効に行える、というわけです。

この点は、BLSプロバイダーコースのDVDにも、テキストにも書かれてはいませんが、組織の酸素化の理屈を考えてみると、導き出されるひとつの理解です。

漫然と 15:2 と覚えるのではなく、理由を考えてみると、記憶に残りやすいのではないでしょうか?


パルスオキシメーターは、いざというときは、あてにならない

今日は、PEARS®プロバイダーコースに基づき、「パルスオキシメーターはあてにならない」という話をしたいと思います。

現代医療界においては、すっかりとバイタルサインズ(vital signs)のひとつとみなされているパルスオキシメトリ(経皮的酸素飽和度:SpO2)ですが、アメリカ心臓協会AHAのPEARS®プロバイダーコースの中では、SpO2を過信しないように! というメッセージが強く打ち出されています。

AHA-PEARSプロバイダーコースwithシミュレーションの中では、酸素飽和度はあまり重要視されていません。むしろ五感を使った観察・評価に重きを置いています。

 

パルスオキシメーターでわかること/わからないこと

末梢循環が悪いとパルスオキシメーターは正しく作動しない

ショックなどの重篤な身体状況のときにはSpO2はエラーとなって表示されないというのは医療者の皆さんはよくご存知と思います。

大抵の場合、プローベは指先につけますが、ショックのときは末梢血管が締まって末梢循環を制限しますから、血管の拍動と血液の吸光度(簡単にいうと色)をもとに計算しているパルスオキシメーターは正しく作動しません。

これは、ショックに限らず、冬場で患者さんの手が冷たくて、血行が悪くなっているときにもよく見られる現象です。

皮肉な話ですが、状態が悪ければ悪いほど、パルスオキシメーターはあてにならない可能性が高いということです。

パルスオキシメーターでわかるのは呼吸機能の半分だけ

パルスオキシメーターで測ることができるのは、脈拍数(心拍数ではなく)と経皮的酸素飽和度の2つです。

正常に動作していれば、動脈血の酸素飽和度の近似値はとれますが、これを持って「サチュレーション98%だから呼吸状態はOK」と早合点することはできません。

酸素飽和度は、動脈血中のヘモグロビン総数に対して、酸素分子と結合した酸化ヘモグロビンの割合がどの程度かを示したパーセンテージです。

大事なことは、パルスオキシメーターでは、ヘモグロビンと酸素のくっつき具合しか判断できない、という点です。

ご存知のように呼吸の働きは、体内に酸素を取り込むことと、二酸化炭素を排出することの二つの側面があります。

つまり、パルスオキシメーターでは呼吸の2大機能のうちの半分しか見れていないということです。

酸素が十分に取り込めていても、二酸化炭素が吐けずに体の中に溜まってしまうと、これはこれで問題です。

ですから、パルスオキシメトリだけで、呼吸に関しては介入の要なし、とは言い切れない点に注意が必要です。

例えば、喘息発作などの下気道閉塞は、息が吐きづらくなる病態です。この場合、酸素化だけではなく二酸化炭素排出も考慮しなければいけませんし、PEARS®で言ったら呼吸調整機能障害は「換気」の問題として、酸素飽和度が良好であってもバッグマスク換気(空気の出し入れ)が必要とされているものもあります。

SpO2が十分だから、酸素投与は不要、とは言えない

呼吸の評価という視点で見たとき、パルスオキシメーターでわかるのは呼吸機能の半分だけであるという話はしましたが、酸素化だけに着目しても、落とし穴がありますので、注意が必要です。

それは、SpO2は、組織の酸素化を示すものではない、という点です。

心臓や脳といった重要臓器の細胞に酸素が届かないと、人は命を落とします。

例えば、極度の貧血の人。

ヘモグロビンの量がふつうの半分しかない状態で、酸素飽和度が99%あったとしても、細胞への酸素運搬能力で見たら安心できる状態とは言えませんよね。

あとは出血多量などでショックを来している場合も、酸素飽和度だけをもって人体の酸素充足度をはかることはできません。

酸素飽和度が94%ないしは95%が基準値であっても、その人の生命維持の上で本当に酸素量が十分であるかどうかは判断できないのです。

サチュレーションが96%であっても、明らかに呼吸努力が見られて呼吸数も40回/分以上という人がいたら、酸素供給が十分とは言えません。当然、酸素投与を考えますよね?

考えてみればあたりまえの話なのですが、数字が出てくると、それだけでコロッと騙されることが多いので注意が必要です。

バイタルサインズは個々の値ではなく総合的に判断する

今回は、酸素飽和度を例にとりましたが、バイタルサインというものは、個々には基準値がありますが、それを一個一個照らし合わせて個々に評価するものではなく、すべてを総合的にみて、判断する必要があります。

あたりまえといえばあたりまえなのですが、このためには、人が生きるしくみである「大気中の酸素が組織の細胞に届くまでの過程」がイメージできている必要があります。

言葉としては教わっているものの、きちんと理解しているかというと、現場で働いていてもなかなか怪しい部分はないでしょうか?

そんなバイタルサイン評価の原点を、生理学に立ち返って学びなおすのが PEARS®プロバイダーコース なのです。

 

最後にまとめとして、PEARS®プロバイダーマニュアルの中の一文をご紹介して終わります。

パルスオキシメトリで表示される数値の解釈
パルスオキシメトリはヘモグロビンの酸素飽和度を示しているだけであることを認識することは重要である。以下のことは評価できない。

  • 血液中の酸素含有量(すなわち血液によってどのくらいの量の酸素が運搬されているか)
  • 組織への酸素供給量
  • 換気の効率(血液中の二酸化炭素レベル)

PEARS®プロバイダーマニュアルG2010版 p.33


PEARS®を知ると看護業務の仕方が変わる

BLS横浜でも提供しているアメリカ心臓協会のPEARS®プロバイダーコース。

PEARS®を受講した看護師さんからは、「日々の仕事の仕方が変わった」という感想をいただくことが多いです。

PEARS®は、BLSやACLSと同じ急変対応研修のひとつと思われがちですが、そこで身につけるスキルは急変時だけに使うものではありません。ここがPEARS®とBLS/ACLSの大きな違いです。

PEARS®コースで学ぶのは、「酸素化と灌流」という人間(動物)が生きる基本的なしくみとそれが破綻するメカニズムを理解すること。そして、その変化を先読みして、予兆を探す訓練、さらに他者を巻き込み、救命の連鎖をつなげることで患者の安定化を図る(心停止を予防する)ということです。

通常の医療現場における観察は、現状維持を確認することがメインで、ある意味、「変わらない」ということを前提に見ていることが多いのではないでしょうか。

しかし、この視点を「変わるかも、、、こういう症状が出てくるかもしれない」に変えると、あたりまえですが、「気づく」レベルが上がります。

なにかあったら報告してください、とはよくいいますが、その「なにか」がわからないから、見落としてしまうのです。

その点、PEARS®を勉強すると、生命維持が破綻しかけてくると、人体にどんな変化が現れるかがわかるようになります。

そうなると、それらの「症状が出ていない」ことを確認するのが日々の観察の視点となるのです。

変化なしというのは、予想される症状が出現していないということです。この考え方は看護師教育ではあまり教えられることがない部分かもしれません。そんな思考をPEARSのシミュレーションから身につけることができるようになるのです。

 

これが、おそらく日々の業務の仕方が変わった、という感想につながってくる部分なのではないかと思っています。

看護師の記録では、「著変なし」といった現状維持を示す記載をよく見かけますが、病態から懸念される悪化傾向がはっきり頭の中にあれば、「○○は見られない」といった具体的な記載に変わるかもしれませんし、記録として残すアセスメントも、もっと焦点化された内容になるかもしれません。

先読みができるということ。

大抵の場合は、懸念していたことが起きずに終わることが多いと思います。

しかし、そこで「こんなことがあるかも」と考え、その生理学的身体的変化をイメージして、予測的に関わっていくようになると、日々の仕事の取り組みがまるで違ったものになる可能性があります。

 

例えはうまくないかもしれませんが、オフィスビルの入り口に立っている警備員を想像してみてください。今日もなにもないんだろうなと思いながら立っているのと、「もしかしたらあの人はテロリストかもしれない」と常に考えて立っているのでは、仕事の密度は違いますし、仕事が終わった後の達成感も違うかもしれません。

今日も暇だったなと思って終わるのか、今日も何事もなく仕事を負えられたと思えるのか。

 

PEARS®は、医療現場にいる臨床家としての基本姿勢や考え方にも大きなインパクトを与える可能性を秘めています。

 

PEARS®プロバイダーコース


看護学生さんから見たPEARSプロバイダーコース

BLS横浜主催の PEARSプロバイダーコース with シミュレーション を受講してくださった看護学生さんから、感想を頂きました。

看護学生の実習前のトレーニングにも最適なPEARSプロバイダーコース

このときは、現役の看護師さん4名と、救急救命士さん1名、そして看護大学4年生の学生さん1人という6人編成。

そんななかで、学生さんが感じたこととは、、、

 

受講前は、他の受講者の方は臨床経験を積んだ上での受講で、学生の自分が参加するのは早すぎるのではないかと不安に思っておりました。

ですが、実際受講してみてPEARSで学ぶ体系的アプローチの方法は、小児だけでなく成人にも通ずる部分が多数あり、(第一印象による評価、ABCDEによる一次評価の方法など)これらの概念を実習へ行く前に知っておきたかったと感じました。

私は実習中、報告を行うことが苦手でした。

観察から得た情報を適切に他者に伝えていくことが重要であることは理解していましたが、いざ報告となるとあれもこれも…と情報を盛り込んでしまい、上手く報告することができていませんでした。

PEARSプロバイダーコースの中で、SBAR を用いた報告のシュミレーションを行いましたが、A-B-C-D-E評価を用いることで、どこに問題が生じているのかつかみやすく、おのずと報告の方向性を見出すことに繋がりました。

学生のうちに受講することは決して性急なことではないと感じています。

実習に行く前の基礎看護学や成人看護学などを学んだ段階など、もっと早い時期にPEARSを受講しておくと、基礎と実際の看護の結びつきがより理解でき、思考過程のみならず、実践に繋がる看護をより深めることに繋がったのではないかと感じました。

いずれにせよ、就職前にPEARSを学んだことは私にとって大きな収穫となりました。

 

本格的な病院実習の前に習得しておけば良かった、という感想でした。

BLSより難しい高度な内容、というイメージが強いかもしれませんが、PEARSは緊急事態の対応を学ぶというよりは、日々の観察の仕方を学び、そこで気づいたことをどう医療実践に活かしていくのかという、看護師としての業務を学ぶ講習と言えるかもしれません。

 

こんな学生さんの声もあり、医学科、看護学科、救急救命士学科などの医療系学生のみなさんが参加しやすいような学生限定PEARSプロバイダーコースを企画しています。

一般の医療従事者に混じって学ぶことでの学びもあると思いますが、緊張せずに等身大で学びたいという学生さんは、ぜひどうぞ。

 

【学生限定】 PEARS®プロバイダーコース
医療系学生(医学、看護、救急救命)向け特別版

2018年1月6日(土) 横浜


吸気性喘鳴→上気道閉塞が分かったらどうする?

PEARSプロバイダーコースは、生命危機に陥った原因が呼吸のトラブルか、循環の問題かを考え、それぞれ「タイプ」を判定することで、適切な安定化の介入を行い、目の前で命を落すのを防ぐ方法を学ぶプログラムです。

診断(判定)することが目的ではありません。ゴールはその先にあります。

PEARSで、生命危機の判定ができて、目の前にいる人が上気道閉塞だとわかったとしても、判定しか学んでいないと、「案の定、窒息で目の前で命を落としました」ということになってしまいます。何のために判定をするのか? 介入をするためです。

PEARSで学ぶ介入は一般論であっては、学んでいないに等しいと言っても過言ではありません。職種や、職場環境、訓練の程度によって、できることは変わってくるからです。

医師ならアドレナリンの筋注をするかもしれませんが、看護職はまずは医師に報告して指示を取り付けなければなりません。

救急救命士は救急車内にアドレナリンは積んいても、それを注射することは許されていません。また養護教諭も、本人がエピペンを持っていない限りは注射できません。

であれば、どうするか?

 

アナフィラキシーによる上気道閉塞への介入はアドレナリン筋注と知っていても、それぞれの立場に応じてどう行動するかはまったく違うということこそが重要です。

ですから、「アナフィラキシーによる上気道閉塞→アドレナリン筋注」という一般論を闇雲の教えるのではなく、ここに向けてあなたはどう行動しますか? という点を各自に考えてもらう必要があるのです。

この部分が如実に浮き彫りになるのが、シミュレーション・トレーニングの効用です。

座って他人事としてのディスカッションをするのではなく、(仮想訓練ながら)当事者として、自分の問題として考え行動することからの学び。

現場に自分を投入するからこそ気づき、学べる点が、机上の思考訓練とは違います。

それこそが重要です。

 

アナフィラキシーによる上気道閉塞という生命危機状態。そこで注射用のアドレナリンがない、もしくは使えない状況だったらどうするのか? それでも当事者となれば対応しなければならないのです。ここでなにもできないと立ち尽くすのか、少しでも効果がありそうなことをやってみる、は、大きな違いです。

 

まとめとしては、受講者の個々の実行動につながる学習でないと、それは趣味としての勉強に近いものであり、実務上の研修とはいえない、ということです。

「わかる」と「できる」は違います。この隔絶はあまりに高いハードル。

このハードルを低くするのがシミュレーションの目的です。

 

アナフィラキシーによる上気道閉塞。これままさに学校教職員向けのエピペン講習でも言えることですが、さらに1つ付け加えると、自分で助けようと思うのではなく、システムとして助ける方法という視点に立つことも重要です。学校システム、消防や病院という救急対応システムとの協働をどうするか?

自分の手で、決定打となる救命処置ができないとしても、救命の連鎖というシステム概念の中で、自分がどんな役割をはたすのかという視座に立てば、なにもできないということは絶対にありません。