「救急蘇生法の指針2010 市民用・解説編」リリース!

10月末に開催された日本救急医学会総会で待望の「救急蘇生法の指針2010(市民用・解説編)」が発表されました。あわせて日本版「JRC蘇生ガイドライン2010」も書籍としてリリース。
 
ようやく日本の蘇生教育がガイドライン2010として動き始めました。
 
まず「JRC蘇生ガイドライン2010」と「救急蘇生法の指針2010」の関係性を説明しておきます。
 

JRC日本版蘇生ガイドライン2010      「救急蘇生法の指針2010市民用・解説編」

 
「JRC蘇生ガイドライン2010」は、日本の心肺蘇生法全般の基準を示した蘇生科学の原本です。その原本では論文ベースでのエビデンス(科学的根拠)を中心に記述されており、その内容を実践するにはどうしたらいいか、という具体的な方法を示したのが「救急蘇生法の指針2010」です。
 
「JRC蘇生ガイドライン2010」は、以前からインターネットで無料公開されていましたが、今回「救急蘇生法の指針2010」が出たことで、ようやく日本国内基準に則ってガイドライン2010講習が開けるようになりました。
 
いま、各消防本部や日本赤十字社などが「救急蘇生法の指針2010」に基づいた新しいテキストや講習プログラムを作成中で、日本赤十字社に関しては12月1日からガイドライン2010講習に切り替えるそうです。
 
 
さて、その「救急蘇生法の指針2010 市民用・解説編」で示されている日本版ガイドライン2010に基づいた新しい心肺蘇生法についてかいつまんでご紹介します。
 
・A-B-CからC-A-B
・強く速くの強調 少なくとも5センチ、少なくとも100回/分
・「見て聞いて感じて」の廃止
・反応確認→緊急通報→呼吸確認→胸骨圧迫→人工呼吸
 
など、基本的な部分はAHAガイドライン2010と同じです。
 
しかし、小児の扱いに関しては、AHAガイドラインと大きく違っています。
 
消防の普通救命講習や日本赤十字社の救急法基礎講習に相当するAHAプログラムは、ファミリー&フレンズCPRです。それと比較した場合ですが、、、
 
AHAは市民向けの簡略化された講習であっても、子どもの心停止の原因を意識した子どもに最適化された内容を教えています。それに対して、日本版ガイドライン講習では、「子ども」という区分けが基本的になくなりました。
 
つまり日本版の心肺蘇生法は大人も子どもも手順は同じ。呼吸原性心停止であっても、先にCPRをしてから通報、と教えるのではなく、成人の基本である心原性心停止と同じで、まずは通報で統一されることになりました。
 
これは日本独自の実行性(implementation)を上げるための方策と言えそうです。
 
圧迫の深さに関しては、いちおう子どもは「胸の厚さの約1/3沈み込む程度」という形で記載されています。
 
またAEDの小児機能(小児パッド)の適応を未就学児としている点も日本独自の部分です。AHAではG2005のまま8歳を目安にしています。
 
これは従来のように8歳で区切った場合、小学校が1-2年生は小児用パッドで、3年生以上は成人用ということになり、運用上ややこしいという点を配慮した模様。
 
乳児に関しては、呼吸原性であるから胸骨圧迫30回の完了を待たずに、できるだけ早く人工呼吸2回を行う、と微妙な形で、成人との違いが示されています。
 
 
今回、日本版心肺蘇生法では、大人の心原性心停止(突然の心室細動)に合わせて子どもの特性には目をつぶった形になっています。
 
そこで最初から子どもを相手にすることが前提の立場の人(保育士・幼稚園/学校教諭)、保護者に関しては、「子どもに最適化した一次救命処置の習得が望まれる」とあり、消防に関して言えば、これは新設される普通救命講習IIIといった形で具現化されていく模様です。
 
また水難事故も通報のタイミングなどが今回のユニバーサルアルゴリズムでは不適切ですので、ライフセイバーなどは医療従事と同等の内容の心肺蘇生法を実施してもらうのが理想という記載がありました。
 
 
実際の講習展開に関しては、日本のフラグシップ講習である日本赤十字社の動向が大きく注目されるところです。
 
また追加情報が入ったらお知らせします。
 
 

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