野外救急法はリスクマネージメントの一部にすぎない

昨日は、子どもたちにアウトドア活動を教える団体からの依頼で、指導者の皆さんを対象とした心肺蘇生法&ファーストエイドを開催しました。
 
場所は団体の活動拠点にもなっている山中にある古民家。
 
築240年だそうです。黒光りする歴史的建造物の中で開催する救命講習とあいなりました。
 
築240年の古民家でファーストエイド救命講習
 
15-6名ほどの参加でしたが、皆さん、アウトドアガイドだったり、野遊びを教えるアウトドア活動家。人並み以上に危機管理意識が強く、また野外でのトラブルを何度も切り抜けてきた方たち。
 
講習中に飛び交う質問も非常に具体的で、現実的。私たちも救命講習のあり方を考えさせられました。
 
 
例えば、緊急通報。
 
街中を想定した講習であれば、「あなた119番お願いします! あなたはAEDを持ってきてください」というお作法に+α程度のディスカッションで終わりますが、山の中では根本から考え直さなければいけません。
 
まず携帯電話の電波が通じるのか? アマチュア無線? 伝令?
 
また、救急隊員が入山口から歩いて現場まで来てくれるのか? 着てくれないなら、救急車が入れる最寄のランデブーポイントはどこなのか?
 
実はこのあたりのことは、事故やケガが発生した後に考えるのでは遅い話です。
 
シビアな現実をいいますと、救急車や応援がくるまでに何十分も何時間もかかる場所で、心停止や命に関わる事故が発生した場合、その時点でほぼ運命は決定付けられています。つまり、助からない、助けられないケースが多いという現実。
 
ですから、事故やケガが発生した後の対応(つまりファーストエイド)を知っておくのは大事ですが、それ以前に事故を起こさないための注意と準備の方がもっともっと重要です。
 
山の中での119番通報をどうするのか? 講習会の中では一律な答えは出せません。あらかじめ、活動地域の携帯電話の電波状況、近くの山小屋や民家の場所、救急車が進入できるアクセスポイントのチェックをする、場合によっては地元消防本部に救助体制を相談する、などの事前計画をしておくべき部分です。
 
「山ではAEDがないけど、どうしたらいいですか?」という質問に対しては、ルート上の山小屋にAEDがないか、あらかじめ確認しておきましょう、というのが一般的な答えかもしれませんが、ツアーガイドのような責任ある立場の人からの質問であれば、「顧客の健康状態を把握した上で必要なら持っていくことも検討したらどうでしょうか?」という答えも出てきます。
 
つまり野外救急法は、それだけが単独で存在しているのではなく、アウトドアフィールドでの危機管理・安全対策の数あるパーツのひとつとしてあるのだという認識が重要です。
 
そして危機管理の中で、事後の対処であるファーストエイドは最後の奥の手。それを使わなくていいようにするのが本来の安全対策なのではないでしょうか?
 
参加者の皆さんからの質問に、いわゆるファーストエイド講習の範囲で答えようとするとあまりに無理があるのを感じました。
 
ファーストエイド講習では、基本、事故/ケガが発生したという前提で話が進んでいきます。しかし、野山を前提とした場合、八方塞でなにもできないという状況にすぐぶつかります。となると、そもそも事故を起こさない予防措置・対策を、というのはある意味自然な流れかもしれません。
 
公募講習などで、あらかじめ決めたプログラムに沿って教えるのとは違って、具体的なニーズがあっての依頼講習の場合、インストラクターとしても固定観念にとらわれない自由な幅広い発想が必要なことを痛感しました。
 
野外活動する人に必要なのは、ファーストエイドそのものではなく、ファーストエイドを通して考える総合的な危機管理対策、マネージメントなのだと思います。
 
それを培ってもらうためには、私たちはファーストエイド講習を通じて何をどう伝えていったらいいのか? おおいに考えさせられました。
 
幸い、同団体からは、次回は9月にサバイバルをテーマにした合宿での講習も依頼されています。そのときまでには、ファーストエイドの枠に縛られない危機管理としてのファーストエイドが提供できればと思っています。
 

 
 


 

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