BLS評価からファーストエイド・アセスメントへ

BLSにおける「大丈夫ですか?」「反応なし!」「呼吸なし!」という評価手順は、一般的に心停止を判断するためのものと思われています。確かにそのとおりで、最悪の事態である心停止をできるだけ早く認識する、逆の言い方をすると「心停止でない」ことを確認するために、最低限にシンプルな内容になっています。
 
しかし、実際に一般の立場で救急対応する場合、心停止であるケースはきわめて稀なはずです。
 
で、あるなら最初から心停止以外の想定も踏まえて傷病者評価をしていくという視点は、きわめて現実的だとは思いませんか?
 
そこでBLS横浜では、「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」や「傷病者アセスメントコース」という形で、心停止以外のファーストエイド評価も含めた心肺蘇生法アセスメントを提唱しています。
 
これは「大丈夫ですか?」という最初の傷病者へのアプローチの際に、呼吸、循環、神経系という命に直結する3つの視点を持って評価していく方法です。
 
まず、「大丈夫ですか?」と呼びかける段階では「反応」という中枢神経の働きを確認しています。細かく言えば意識レベルをチェックすることも含まれてきますが、この段階では肩を叩いて呼びかける刺激に反応があるかどうか、だけのチェックで構いません。
 
呼吸確認は胸から腹の動きを10秒以内で目視。AHAならびにJRCガイドライン2010の新しいやり方です。原則的に10秒以内に呼吸が確認できないか、死戦期呼吸だったら、この時点で心停止と判断します。(反応なし+呼吸なしor死戦期呼吸)
 
循環に関しては、基本的な考え方は、息をしていれば心臓も動いている、と判断します。そのためあえて脈を取ることはこの段階では必須ではありません。しかし別の視点として、全身をざっと見回しての【大出血の有無】、そして【顔色】の観察をこの項目に含めることを推奨しています。
 
大出血は命に関わるような大出血のことで、放っておけば止まるような出血は問題ではありません。
 
顔色については、もし心停止であれば、顔色が真っ白だったり、どす黒かったりと、心停止を判断する材料にもなりえます。時間をかけて確認するものでもありませんが、「大丈夫ですか?」と呼びかける反応確認時に、顔色についても少し気にしてみる、という程度で見てみることを勧めています。
 
ここまでは普通のBLSで教わることとほとんど変わりありませんが、神経系に関してもう一点、【脊椎損傷の可能性】を考慮するということが、BLSでは終わらないファーストエイドにつながる初期評価としては大切です。
 
これはもしかすると、傷病者に近づく前の【状況評価】の範疇に含まれるといったほうが正確かもしれません。
 
つまり安全確認と合わせて、傷病者の近づきながら周囲の状況を観察し、倒れている原因を考える、その中で強い外力が掛かって頸椎をいためている可能性はないか考えるということ。
 
もし、反応があったり、呼吸があればCPRは必要ではなく、呼吸が止まらないか観察しつつ救急車を待つ、もしくは気道管理を行うことが必要な応急処置になるわけですが、この段階で頸椎損傷の可能性を考慮しないと、とんでもない失敗にもつながりかねません。
 
救急法講習によっては、意識がなく、呼吸があれば回復体位(昏睡体位)にするようにと指導している場合が多いようですが、例えば交通事故で頸椎をいためている可能性がある人、呼吸が安定しているにも関わらず、救急車が来るまでの10分間に体を横向きにする必要があるでしょうか?
 
心停止の場合は、頸椎損傷の可能性が、ということは二の次でいいと思いますが、心停止でない状況が多い以上、呼吸、循環に次いで優先順位が高い脊椎保護という視点は欠かしてはいけないのではないかと考えています。
 
現時点、BLSも含め、心肺蘇生法講習は心停止という一般にはきわめて稀なシチュエーションに特化した非現実的なトレーニングになっています。そこに呼吸、循環、神経系という命に関わる項目を明確に打ち出し、特に脊椎損傷についての知識を盛り込むことで、心肺蘇生法講習はオールラウンドに対応できるファーストエイド基礎講習になり得ます。
 
さらに、心停止を否定できた後は、焦ることなく呼吸、循環、神経系という優先順位にそってさらに詳しく観察、評価していくという拡張性を持たせることができます。呼吸器系のアセスメントは気道と呼吸そのものにわけて考えていけますし、循環に関しては脈拍数や脈の性状、ショック兆候を含めた抹消循環の評価、毛細血管再充満時間、神経系では意識レベルの評価など。
 
BLSを中心とした基礎を学んだ人が、さらに本格的なファーストエイド・アセスメントという学ぶべき課題があるということを示すことは継続学習にも人間の成長のためにも意味があるかと思います。
 
せっかく心肺蘇生法が当たり前の世の中になってきたのですが、そこをほんの少し拡張して、倒れている人すべてに対応できる技術を標準に、つまり「普通救命講習」としてとらえて、さらに医療従事者のアセスメントに通じる道筋を示すこと。
 
これがBLS横浜が展開している「傷病者対応スキル」の普及活動の方向性です。
 


 

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