ハートセイバー小児ファーストエイドコースの奥深さ

先日、7月末にリリースされたばかりのAHAの最新講習プログラム、Heartsaver Pediatric First AId CPR AEDコースを開催しました。
 

AHAハートセイバー小児ファーストエイドCPR AEDコース

 
Pediatricというのは、「小児」という意味です。
 
つまり、ハートセイバー小児ファーストエイド&CPR AEDコース。
 
AHAコースの中でもハートセイバーシリーズですから、「対応義務のある市民向け」です。
 
米国労働安全衛生局OSHAが定める、職業上必要な救命スキルの、ライセンス認証をするプログラムになります。
 
子どものいざというときに備えなければならない職種、つまり、主には学校教職員や保育士向けのやや高度な応急処置&救命処置講習です。
 
成人傷病者を対象としたハートセイバー・ファーストエイドは、オフィスから工場、作業現場まで幅広い守備範囲がありますが、このAHA小児ファーストエイドコースは、学校や保育所に限局されています。
 
そのためより深く、具体的にファーストエイドの真髄に迫っている感じがあり、’開催していても新たな気づきが多く、改めて「ファーストエイドは個人スキルではなくシステムである」ということを痛感するに至りました。
 
特に小児だからこそ、そうしたファーストエイドの本質が見えやすいのかもしれません。
 
例えば、皆さんもよくご存知の通り、小児の救命の連鎖小児は「予防」から始まっています。(日本版ガイドライン2010では、成人も小児も共通で予防からになりましたが、米国版AHAガイドラインでは、依然成人と小児で違います)
 
子どもは予備力が少なくて心停止に陥ってしまったらほとんど助からない。
 
また、子どもは呼吸原性心停止が多く、いきなり心臓が停まることは少ない。
 
こんなことから小児BLSでも予防、というか心停止に至る前からの介入を教えているのですが、それがファーストエイドになるとさらに顕著になってきます。
 
コースDVDの各論部分の解説でも、必ずprevention、つまり予防から論じられているのです。
 
またファーストエイドはシステムであるという点が何度も示唆されているのも興味深いところです。
 
例えば、学校での授業中に糖尿病による低血糖発作を起こした子どもを救助する場面では、教員は携帯電話で職員室(保健室?)へ電話して、その子の応急救護計画は用意されているかと聞くのです。
 
教員の個人スキルとして、低血糖発作だとは気づいて処置もわかっているものの、糖分の入ったジュースを飲ませるという処置の前には、持病を抱えた子どもに関する情報と事前の打ち合わせ内容を確認しているという場面です。
 
低血糖発作と判断して、糖分を摂らせるというのは、見方を変えれば、診断→治療です。
 
無理矢理飲ませるのでない限り、大きな害もありませんから、ファーストエイドの範疇でいいと思いますが、厳密にいうなら本来は医師にしか許されていない判断です。
 
そんな心理的な負担を現場の教員ひとりに負わせるのではなく、予めリスクがある子どもに関しては対応をプロトコルとして決めておいて、学校のシステムとして子どもを守る準備をしておく。
 
これが本来の学校にあるべき応急救護計画ではないでしょうか?
 
 
また、DVDで示される別の場面。これは保育園のようですが、乳児をこれから預けようとしているママさんが、園の見学に来て、説明を受けている場面があります。
 
そこで母親は保育園の緊急時対応計画について尋ねています。それに答える保育士の説明が見事で、園で行なっている事故予防対策、救急医療機関との連絡体制などを説明しつつも、「私達も皆訓練を受けています。医療機関に引き継ぐまでの対処は、応急処置の範囲としてはしっかりとやらせていただきます」と毅然とした笑顔で伝えていました。母親は赤ちゃんに語りかけながら、「これで安心してあなたを預けてママは仕事に行けるわ」と。
 
こうしたやりとりの中から読み取れるのは、学校や保育所などにおいて、ファーストエイドは教職員個人のスキルではなく、学校施設全体の安全管理システムとして構築しなければいけないということです。
 
養護教諭や保育園ナースがすべてを背負うのではなく、個々の教員も含めて、皆、システムの一部。それがうまく動くようにするのは「計画」なのです。
 
もちろん学校は医療機関ではありませんので、専門的な対応は求められていません。
 
基本は119番して救急車を呼ぶこと。
 
しかし、その119番にしても対応計画を練っておかないとスムーズな引き継ぎはできません。
 
例えば職員室の電話から119を押しても消防にはつながらないかもしれません。外線のゼロ発信が必要な場合もあるでしょう。
 
また学校のどこに救急車が到着するのか? 普段は閉じているゲートを誰が開けるのか? 誰がどういう経路で学校内を誘導するのか?
 
親御さんへの連絡体制も強調されています。
 
 
これまで、BLS横浜では、子どものファーストエイドは、AHAのファミリー&フレンズ・ファーストエイドforチルドレンを中心に開催しており、学校教職員向けにもそれでいいかと考えていましたが、ファーストエイドを個人スキルとして考えるか、システムとして捉えるか、という点で、両者のプログラムは決定的に違っているということに、いまさらながら気付かされました。
 
学校の先生たちにも、学校現場におけるファーストエイドはどうあるべきか、システムという概念で考えていただくためにも、Heartsaver Pediatric First AId CPR AED(HS-PFA)コースは価値があると思います。
 
 

 
 
 
 


 

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