血液分布異常性ショックとは?

ショックでいちばん多いのは出血や脱水などによる「循環血液量減少性ショック」ですが、「血液分布異常性ショック」も理解しておくべき重要な病態です。

ファーストエイドで問題となる「血液分布異常性ショック」は、ずばりアナフィラキシー・ショックです。

蜂に刺されたり、食物による急性アレルギー反応の結果生じます。

簡単にいうと、アレルギーによってヒスタミンなどの体内物質が血液中に大量放出されて、全身の血管が広がってしまう病態です。

血管が広がると、血圧は下がります。

また血管の「網の目」が大きく広がってしまうため、血液の中の水成分が血管外に漏れ出てしまい、見た目上の血液量が減って酸素運搬能力も下がります。

つまり、本来は血液内にあるべき「水」が血管外の細胞の隙間に移動してしまうという血液分布に問題があるゆえに生じるショックです。

「血液分布異常性ショック」は、血管が太く広がる病態のため、「循環血液量減少性ショック」のように手足が冷たくならずに、温かくむしろポカポカしていることがありえます。

顔色も青白くなるよりは紅潮することもありますし、蕁麻疹が見られるかもしれません。

さらには手首(橈骨動脈)など末梢の脈をとっても、弱くはならず、むしろドクドクとはっきりと力強く触れることもあります。(血管拡張により血管の弾力に依存する拡張期血圧が低くなり、収縮期血圧との差が大きくなるため)

体の中で起きていることは「細胞への酸素供給不足」であり、間違いなくショックですが、その症状は一般的なショック症状(顔色が青白く、手足が冷たく、じっとりしている)とは異なりますので注意が必要です。

最後に参考まで、PEARSプロバイダーコースでは、「血液分布異常性ショック」といったら、アナフィラキシーショックだけではなく、感染症の成れの果てとしての敗血症性ショックも重要な鑑別ポイントになっています。

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