用手的に行える気道確保の仕方はいろいろありますが、一般に推奨されているのは頭部後屈あご先挙上法。普通の救命講習やBLS講習で練習する、あのやり方です。
医療者や救命のプロに関しては、高エネルギー外傷では頚椎に負担をかけにくい下顎挙上法が推奨されていますが、現実的には外傷コース以外では訓練されていません。
BLS講習でよく使われているマネキン、リトルアン(レールダル社)でもいちおう下顎挙上法の練習はできます。ポケットマスクを頭側から両手で保持して下顎挙上して、頚部を動かさずに呼気を吹き込むことがかろうじて可能。
下顎挙上法で口対口人工呼吸をするやり方も昔の文献では紹介されています。下顎の引き上げに両手を使うために鼻を塞ぐことができません。そこで自分の頬を傷病者の鼻に押し当てて塞ぐというかなり荒っぽいやり方。これも一応リトルアンで練習可能。でも相当難しいです。
口の中に指を入れて、舌と下顎ごと掴んで持ち上げる「舌引き上げ法」は、最近の教科書ではほとんど見ることはありません。唾液に触れる感染のリスクと、反応が残っていると噛まれる危険、更には嘔吐反射を引き起こすリスクなどから、基本的には勧められません。
このように気道確保法はいろいろありますが、大事なことは、いくら頚椎損傷の可能性があっても、気道確保が優先されるということ。下顎挙上法は難しい手技です。練習して習得しておくことが望ましいですが、それが有効に行えているという評価の仕方を知っていることも重要です。
下顎挙上法が効果的に行えなければ、ためらわず頭部後屈顎先挙上法に切り替えるべきです。
処置を行った以上、それを評価して、必要なら修正する責任が生じます。
産業界やビジネス界で言われているPDCAサイクルと同じです。