PEARSプロバイダーコースに関するお問い合わせが増えています。
PEARS(Pediatric Emergency Assessment, Recognition, and Stabilization)は、心停止を予防するためのアセスメントと安定化(医師による治療を受けるまで悪化させないこと)を学ぶコースです。
心停止になってしまった場合の対応、つまりBLSですが、すでにBLSを学んだ人が心停止の手前で手を打つ方法を学ぶ、やや高次概念のプログラムといえます。
そのため、PEARS学習者は、小児・乳児への医療者レベルでのBLSを習得していることが前提となっています。特に小児救命を学びたい方は、まずはBLSの基本を押さえた上での参加を強くお勧めします。(BLS横浜では、受講履歴や修了カードの有効期限などは問いません)
PEARSプロバイダーコースに参加するにあたって、知識面として理解しておいていただきたいのは下記の点です。
1.小児に多い心停止の原因と、心停止に至るまでの機序
2.ヘルスケアプロバイダーレベルにおける小児の胸骨圧迫適応条件
3.「補助呼吸」とはなにか?
子どもの蘇生法は心停止から始まるわけではありません。心拍数60回未満で循環不良の徴候があれば、人工呼吸による酸素化(補助呼吸)を経て、胸骨圧迫を開始する場合があります。心臓が動いていても、です。
大人の蘇生とは違うこういった小児特有のやり方の意味と理由を理解していますか?
このようなことを学んだことがない方は、日本版ガイドラインでも米国版ガイドラインでもどちらでも構いませんので、まずは小児BLSを勉強して下さい。
基本的にはPEARSのテキストか、BLSプロバイダーマニュアルをご覧いただければいいのですが、日本版JRC蘇生ガイドラインがPDFで無料公開されていますから、それを精読するのも手です。

技術面では、BLSプロバイダーコースとほぼ同じBLS実技試験が課されています。
そこで求められるのは、
・バッグマスクによる人工呼吸
・小児・乳児の二人法CPR(15:2)
・乳児の二人法CPR(胸郭包み込み両母指圧迫法)
などです。
市民向けの救急法講習には含まれない、これらを練習する機会は、日本ではAHAのBLSプロバイダーコース受講以外はないのが現状です。
大学や病院勤務の方であれば、シミュレーションラボセンターのドアを叩くか、小児科の医師に相談して個別に練習させてもらうという手もあるかもしれません。
強調しておきたいのはAHAのBLSプロバイダー資格を持っていることは要件ではないという点です。最新ガイドラインに基づいた医療者レベルでの小児・乳児BLS(含む二人法)ができることが重要です。
PEARSプロバイダーコース受講を希望される方は、この辺りの知識や技術の習得具合をご自身で確認いただいた上で、参加をご検討ください。
※本記事は、最新事情に合わせてリライトしました(2022年10月30日)