蘇生現場でポケットマスクを使った後の洗浄・消毒

人工呼吸用のポケットマスクは、一度使ったら再使用できるんですか?

そんな質問をよくいただきます。

ポケットマスクの洗浄・消毒と交換パーツ

ポケットマスクとは


家族相手ならいざしらず、職業的に救命処置にあたる人にとって、いくら救命のためとはいえ、口対口人工呼吸はありえません。(医療従事者が病院内でダイレクトなmouth to mouth人工呼吸をしてしまったら、それは感染事故です)

感染防護機能や、医療機器承認を受けているかという点では、現実的なところで人工呼吸をしようと思ったらポケットマスクが最低ラインと考えています。

そのため、BLS横浜では、保育士や学校教職員など職業人向け心肺蘇生法研修では、ポケットマスク を基本として練習して頂いています。

ポケットマスクは洗える部分と使い捨ての部分で構成されている

結論からいいますと、マスク部分は洗浄消毒可能、フィルターと一方向弁(マウスピース部分)は交換、というのがメーカーの推奨です。

フィルターは構造上、洗浄ができないので、再生使用はできません。無理やり洗うことはできるかもしれませんが、繊維状の部分の目が潰れてしまって通気が悪くなるので現実的ではありません。

そのため、マネキン相手に練習する場合は、フィルターは外しておくことを推奨しています。BLS横浜で講習中に貸し出しているポケットマスクにフィルターがついていないのはそのためです。

一方向弁(マウスピース部分)については、マネキンでの練習の場合は、洗浄・消毒して再生使用することはできますが、実際の傷病者に対して使った場合は、なるべく交換する方向で考えたほうがいいかと思います。現実的にはフィルターをつけていれば、吐瀉物等が一方向弁まで及ぶことはないと思いますが。

ポケットマスクの洗浄方法


さて、マスク部分と一方向弁の洗浄についてですが、洗い方は家庭用の食器洗いと同じです。

スポンジなどに食器洗い洗剤をつけて普通にこすり洗いします。

一方向弁の内側については、哺乳瓶などの筒物を洗うときのブラシを使います。100円ショップなどで太さ違いのものがセットで手に入ります。

消毒前には洗浄が必要

外部の救命講習の手伝いに行くと、ポケットマスク使用後に洗わずに消毒液入りのバケツにボチャンと漬けているのを見ることがありますが、これは間違いです。

消毒前には、タンパク成分を落とすための洗剤での洗浄が必要です。消毒薬はタンパク成分を固着させる働きがあるからです。これは医療界の常識です。

ポケットマスクの消毒方法


洗剤をすすいだ後、0.5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬し、その後、水洗、自然乾燥 というのが正式な消毒方法になります。

次亜塩素酸ナトリウムというのは、家庭用の漂白剤と同じ成分です。キッチンハイターを薄めて作れます。

0.5%というのは恐らく米国のEPA勧告に従ったものと思われますが、実際のところかなり濃い目で、家庭で扱う上ではすこし危ない気もします。

そこで、ノロウィルス対策などでも一般的な0.1%の溶液に少し長めに漬けるというやり方でいいかと思います。

家庭用のキッチン用漂白剤の場合、濃度は6%程度ですので、500mlの水に対してペットボトルのキャップ2杯くらいです。

この濃度でも、服に跳ねると色落ちしますので、気をつけて。

ポケットマスクの交換パーツ


本来、ポケットマスクのフィルターと一方向弁は単回使用の使い捨てですから、製品として交換パーツも販売されています。

アップデートパック ということで、フィルターと一方向弁のセットのものが販売されていますが、価格は約2千円。

ポケットマスクは新品で買っても2700円程度ですから、実際に傷病者・患者に使って汚染されたのであれば、まるごと新品に変えてしまったほうが精神衛生上もいいのではないかと思います。

その他、フィルター だけを単体で買うと約700円。一方向弁(吹き込み口) だけだと約1600円。

いずれにしてもメーカー純正品は高いですね。

米国では練習用のサードパーティー品が多数あるので、ある程度数をまとめて購入するのであれば輸入のほうがおすすめです。

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