昨日、名古屋の中学校での「服に火がついて大やけどをした」という報道がありました。焼けただれた腕の写真が公開されていて、印象に残っている方も多いかもしれません。
やけどのファーストエイドといえば、水で冷やす、の一言につきますが、今回のケースのように服に火がついた場合は、どうしたらいいでしょうか?
熱傷を冷やす云々のまえに、火を消さなければなりません。
水をかければ一石二鳥ですが、そんなにすぐに水が用意できるわけもなく、その間もどんどん燃え広がっていきます。
米国の一般教養 止まれ!倒れろ!転がれ!
こんな場合に、自分本人やまたそれを発見した人がどうしたらいいか、という点は、米国では、幼稚園の段階で子どもたちに教え込まれています。
キーワードは、Stop Drop and Roll.
Youtubeで検索すると、トレーニング動画がたくさん見つかります。
例えば、こんな感じ。(英語が苦手な方は、先送りして1分10秒あたりから見てみてください)
STOP
服に火がつくと、逃げようとして走ってしまいがち。すると風を受けて燃え広がるので、まずは立ちどまること。
もし、火がついて走り回っている人を見つけたら、自分はまず安全圏に避難しつつ、遠くから、「止まれ!」と叫びます。
Drop
炎は上に向かって広がっていきます。
炎や熱気を吸い込んで喉の奥をやけどすると、腫れてきて、呼吸困難がおきます。上気道閉塞という致命的な状態。だから地面に倒れて、頭や顔のやけどを防ぎます。
Roll
次に、地面を転がって、燃えている部分を地面にこすりつけるようにして火を消します。
この段階になると、救助者が近づくことができますので、厚めの衣類で覆って空気を遮断して消火を試みたり、可能であれば水を掛けるなどの救助活動を始められます。
火が消えたあと
服についた火が消えたら、水をかけて冷やしますが、熱傷範囲が広い場合は、冷やし過ぎも禁物。
粗熱が取れたあとは全身をくるんで保温します。できれば毛羽立った毛布よりは、災害時に使うようなエマージェンシー・ブランケット(アルミ箔のシート)など、皮膚に張り付かないようなものが理想的です。
また指輪などのアクセサリーがあれば、早めに外します。
このあと、どんどん腫れてきて、外せなくなるからです。
全身やけどに近い状態だと、そこから死に至るとしたら、皮膚の体温調整機能が破綻したことによる低体温症、焼けただれた皮膚からの水分漏出によるショック、バリア機能の破綻した皮膚から感染することでおきる敗血症などです。
やけど=氷水以外の冷たい水で冷やし続ける、ですが、範囲の広いやけどでは、その限りではないという点も知っておいてください。
以上、BLS横浜の ハートセイバー・ファーストエイド講習 でお伝えしている内容でした。