パルスオキシメーターでは、呼吸の有無はわからない

パルスオキシメーター、最近は値段が下がって1万円以下でも買えるので、学校やスポーツ現場でも使われることが増えてきているようです。

学校の保健室にもパルスオキシメーターが置いてあるところもあるんじゃないでしょうか?

パルスオキシメーターは、れっきとした医療器具なので、使い方を誤ると危険な場合があります。特に、人間は道具があると使いたくなる、また頼ってしまう傾向があり、道具がない場合に比べてミスジャッジすることが増えがちです。

急変対応にパルスオキシメーターを使うと


意識不明の人が倒れていると呼ばれて行って、その時たまたまパルスオキシメーターを持っていたら、、、

呼びかけても返事がなかったので、すぐにパルスオキシメーターを着けました。結果、脈拍数110回/分と出たらどうでしょう?

なにを考え、どう行動しますか?

パルスオキシメーターでわかること、わからないこと

パルスオキシメーターは呼吸状態を確認する道具、というイメージが強いかもしれませんが、指先の血流の有無と脈拍数、そして経皮的酸素飽和度だけです。

なんらかの数字が出れば、指先の血流はある、との判断はできますが、今現在、呼吸をしているかどうかはわからない、という点、注意が必要です。

SpO2の数値が出たとしても、呼吸をしていないケースはありえます。

あくまでも血中の酸素とヘモグロビンの結合割合を近似的に算出しているだけで、呼吸停止しても数値が下がるには時間がかかるからです。

つまり、パルスオキシメーターは呼吸をしているという前提で使うものであり、自発呼吸をしているかどうかを確認する道具ではないということです。

パルスオキシメーターの値が信用できない場合

寒冷やショックなどで抹消循環が悪い場合、パルスオキシメーターは正しい数字を示しません。エラーになればまだいいのですが、高めに数値が出てしまう場合非常に危険。

つまり、傷病者の状態が安定している条件下でないと信用できません。

こうした特性を知らない人がパルスオキシメーターを過信してしまうリスクが日常的になっています。あくまでも医療機器、中途半端な知識・理解の人が使うと危険という話。

このあたりの話は、詳しくはブログ過去記事もご参照ください。

実例:パルスオキシメーターの不適切使用

平成28年9月に大分の学校で起きた死亡事故では、意識不明の傷病者に対して目視による呼吸確認をせず、パルスオキシメーターの数字が出たことで「呼吸あり」と判断した結果、気道異物による呼吸停止(窒息)に気づかず死に至った可能性が指摘されています。

大分県立南石垣支援学校における事故調査報告書(令和元年7月)

大分県教育委員会(令和元年7月)


本件から学べる点は多々ありますが、今回特に着目いただきたいのは「5.前提となる事実 [PDFファイル/5.36MB]」の p.28 に書かれているパルスオキシメーターを装着したときの事実の描写と、同 p.39 にある学校側が保護者向けに説明した文書の中の下記の記述です。

「呼吸はあったか」という質問への答え
「呼吸、脈等はパルスオキシメーターで確認していましたが、血中酸素飽和度は正確な測定ができなかったということです。」

呼吸については、確認していませんでした。

後日指摘により訂正されたようですが、救護対応していた養護教諭らはパルスオキシメーターで脈拍数110回/分と表示されたことで、呼吸できていると誤認していた可能性が伺えます。

冷静に考えれば、酸素飽和度が表示されないことから、呼吸状態(この場合は特に気道開通)を疑うこともできたかもしれませんが、意識不明の傷病者を目の前にして、脈拍がある=心臓が動いている=生きている、という安心感が、呼吸もしているという早合点につながったのかもしれません。

頭部から出血していたなどの複雑な要因はありますが、パルスオキシメーターを持ってきたことが、判断を誤らせた要因として否めない案件ではないかと考えています。

本来の救急対応手順に従えば…

今回の検証の中でも指摘されているとおり、意識不明の人がいたとき心肺蘇生法の手順に従って、「反応なし+呼吸なし」を確認し胸骨圧迫を行っていれば、心停止ではなかったとしても、結果的には窒息解除の手順(胸部突き上げ法)となり、気道異物による窒息を解除できた可能性はありえます。

傷病者の状態が悪いときは、パルスオキシメーターは使い物にならない点は医療従事者は知っています。しかし、市民からしたら「頼れる医療機器」として勘違いしてしまうリスクが露呈された事故ではないでしょうか。

血圧計やパルスオキシメーターを応急救護の備品として用意することのメリットとデメリット。

不慣れな人にとっては致命的なデメリットもあります。逆にメリットはなにかあるでしょうか?

使い方自体は簡単ですが、その解釈や精度の点では不利益も大きい。

あると使いたくなる人間の性を考えると、医療従事者以外は基本的にこうした医療機器は持たないほうがいい、と思います。

医療者にとっても、こういう事例を見ると、PEARSやPALSの体系的アプローチで、酸素飽和度の評価が呼吸の一番最後の項目になっている点が、納得いただけるのではないでしょうか?

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