ACLS プロバイダーコース の受講条件として、アメリカ心臓協会(AHA)としては、BLS プロバイダー資格は求めていない という点は、これまでに何度も説明してきました。
これは PALS プロバイダーコース でも同じです。
PALS プロバイダーマニュアルにちゃんと書かれています
先日、発売開始になった、最新の蘇生ガイドライン2020準拠の PALS プロバイダーマニュアル【英語版】の3ページにはこのように書かれています。(日本語版はまだ発売されていません。日本語訳はBLS横浜独自のものです)
【英語原文】
The PALS Provider Course does not include detailed instructions on how to perform basic CPR or how to use an automated external defibrillator (AED), so you must know this in advance. Consider taking a BLS course to prepare, if necessary.
【BLS横浜による日本語訳】
PALSプロバイダーコースには、基本的なCPRの実施方法やAEDの使用法に関する詳細な説明は含まれていないため、事前にこれを知っておく必要があります。 必要に応じて、準備のためにBLSコースを受講することを検討してください。
「必要に応じて」「検討」
この部分は、以前の G2015版に比べて、より突っ込んだ表記に変わっていることにお気づきでしょうか?
必要に応じて受講を検討してください。
求めているのは技術を習得していることであって、その手段の1つとして BLS プロバイダーコースの受講がある、という点が明確に表現されています。少なくとも資格の有無の問題ではないのです。
これまでは、やもすると AHA-BLS が唯一の手段であり、その資格が受講要件と勘違いさせるような表記だったかもしれません。
それが完全に是正されました。
講習の実際
医療者であれば病院内で BLS 研修はやっていると思います。ただ、小児専門病院であっても小児・乳児 BLS 研修がきちんと行われているかというと、実際のところあやしく、一般病院であれば、小児 BLS はほとんどノータッチです。
そんな日本の現状を考えれば、成人蘇生と小児蘇生を対比して学べる AHA-BLS プロバイダーコースが必須とも言えます。
ただ、PALS/PEARS/ACLS コースを年間70回開催しているインストラクターとしての肌感覚では、有効期限内の AHA-BLS 資格を持っている人でも、PALS コース内のBLS実技試験に1発で合格する人は多くはありません。
通報を忘れる、呼吸・脈拍確認の不備、圧迫が速すぎる、人工呼吸が入らない、など。
逆に AHA-BLS の受講経験がなく、小児蘇生は練習したこともないという人でも、テキストを読み、AHA の事前学習ビデオを見てくれば、20分~30分程度で合格まで達します。
正直なところ、BLS受講経験の違いというのは、ほとんど感じないのが現状。
そこでBLS横浜では、特に AHA-BLS 受講を PALS/ACLS/PEARS の受講要件とはしていません。
PALS 受講要件とするならば、むしろ PEARS®
強いてPALS 受講の要件を考えるとすれば、むしろ PEARS®プロバイダーコース の事前受講をおすすめします。
PALS も PEARS® の内容を含んでいると思われがちですが、むしろ PEARS® の内容は習得済みで、その上に PALS が構築されているイメージです。
異常な呼吸様式(陥没呼吸、鼻翼呼吸、シーソー呼吸など)や、ショックの基本などは理解しているのが前提で展開するのがPALS。
そこをきちんと教えているが PEARS® プロバイダーコースです。
更にいうと、PALS 受講前に ACLS を履修していると、本来の PALS の学習テーマに専念できるのでおすすめです。