救命技能の追加トレーニングを新設ーBLSブーストコース

ブースト Boost という単語、あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、新型コロナウイルスのワクチン接種で聞いたことがあるかもしれません。

 
ブースター接種
 

2回目以降の接種を指して使われていたのを覚えているかと思います。

Boost とは、引き上げる、増大させる、発展させる、という意味の英単語です。

効果を高めるために追加で何かを行うことを意味しています。

 
今回、BLS横浜の新企画として、一次救命処置 BLS の実施率や質を高めるためのブースター講習を企画しました。

 
BLSブースター講習
 

一度受けたBLS講習の効果を高めるための追加練習、それがBLSブーストコースです。

 

皆さん、考えたことがあるかもしれません。

いわゆる救命講習やBLS講習の修了証の有効期限、AHA なら2年ですし、日本の赤十字だと3年。

この間、何もせずに技術が維持されているのだろうか? と。

 

お気づきの通り、答えは否です。

 

これは昔から蘇生教育の研究テーマで議論されてきたところですが、救命講習で身につけたことは2年はおろか、1年ですら維持はできません。早ければ数ヶ月で習得した技能は劣化していくことが研究でわかっています。

じゃ、なんで資格の有効期限が2年とか3年なんだ? ということですが、これは主に社会事情と社会要請によるものです。

半年ごとに更新してね、というのも現実的に厳しいだろう、という配慮かどうかはわかりませんが、慣習的に2年程度と設定することが多いまま、現在に来ています。

 

短期集中型から反復練習へ

蘇生ガイドラインの改定に伴って、蘇生教育のあり方についても議論され、更新が続いています。

その流れのひとつが、短期集中型から反復練習へ、です。

受講者に蘇生技術を身に着けてもらい、それを長期保持するためには、1回6時間などの短期集中型の研修を2年ごとに実施するよりも、30分とか1時間程度の細切れにした短い研修を数週間や数ヶ月おきに実施するという反復練習型の指導の方が効果的ではないか、という点が言われるようになってきました。

本来は1日でやることを細切れにはするものの、2回目以降は前回やったことの復習を含むので、トータルしたときの習熟度と、その後の定着に関して優位な場合があるそうです。

これを具体化したのが、アメリカ心臓協会 AHA が推し進める RQI という最新の教育手法です。

RQI(Resuscitation Quality Improvement)

RQI は、インターネット接続されたマネキン管理システムを使った、新しいタイプの蘇生教育プログラムです。インストラクターを必要とせず、受講者は好きなときにBLSトレーニングをできるようになっています。

日本では一部の大学病院にデモ機として配置されているようですが、自分の空いた時間にシミュレーションセンターなどに配置されたRQI装置のところに行って、コンピューター指示に合わせて CPR を練習します。フィードバック装置でCPRの質の評価がされ、それが実技試験になります。ひとつの課題をクリアすると次の課題に進めるというようなしくみ。

これが年間計画として組まれており、短いスパンで練習と評価を繰り返すようになっています。HeartCode(R) BLS コースと組み合わせることで、インストラクターの介在なしにBLSプロバイダー資格が取得・更新できるようになっています。

反復トレーニング

RQIは画期的なシステムと言えますが、長期継続プログラムであるという点、また高価な装置と常時インターネット接続が必要なため、大学や病院などの医療教育機関以外での実装はほぼ不可能です。

公募講習の形でできるものではありません。

そこでBLS横浜ができることが「反復トレーニング」でした。

これまでも、BLS横浜独自制度として、BLSプロバイダーコースを受講した方は2年間の間の再受講は無料という「復習参加」制度を設けていました。

これは資格発行によって2年間の技術保証をした以上、その責任をまっとうしたい、ということで始めたもので、これまでもかなりの数の方が無料の復習参加制度を活用くださっています。

ただ、やっぱり時間が長い!

知識面やシミュレーションを通したノンテクニカルスキル訓練もブラッシュアップできるという反面、丸一日がかりになってしまうため、それなりにモチベーションが高い人以外は参加しづらいものだったかもしれません。

そこで5時間のフルサイズ復習参加の対局として、技術面(テクニカルスキル)だけに特化した練習の機会を約30分のBLSブーストコースとして企画しました。

BLSブーストコースの先

胸骨圧迫やバッグマスク人工呼吸の技術を磨いたところで、それだけで、現場で「できる」とは限りませんが、まずは基盤となる技術がおぼつかないと話になりません。

そういった意味で、ぜひ BLS ブーストコースをご活用ください。

技術練習は、例えばテニスで言ったら素振り練習みたいなものです。

それに続くのは練習試合。

決まりきった所作をこなすのではなく、相手の動きに合わせて状況判断し、臨機応変に動けるようになるためのトレーニングです。

BLS で言ったら、これがシミュレーション訓練になります。

BLS ブーストコースの中でも、約30分の技術練習後に参加の皆様のリクエストによっては、簡単なチームシミュレーションを行うこともできますが、あくまでもおまけの位置づけ。

きちんとしたシミュレーションを訓練するには、医療従事者であればACLSプロバイダーコースがチーム蘇生訓練として最適です。

BLS 横浜が展開する ACLS プロバイダー1日コースでは、「チームメンバー参加」と言って、受講者とは別のサポートメンバーを募集しています。無料で ACLS コース内で主に CPR チームとして動きを体験できますので、この機会もご利用ください。
 
 

タイトルとURLをコピーしました